横浜大さん橋ホールを会場に、2019年5月15日~19日の日程で開催された「ばらフェスタ2019」を3回に分けて詳細レポートします。今回は第1弾。ウェルカム ローズ ガーデンメイアンの庭。講演は「バラの家」木村卓功さん。バラのある暮らし紹介は「モロッコのバラ」です。


会場の大さん橋ホールは海の上!

▲海の上を散歩すること5分。大さん橋ホールに到着

なとみらい線「日本大通り駅」のほど近く。「象の鼻パーク」と「山下公園」の間の道を海に向かって歩くと、海に突き出た板張りの歩道を歩くこと5分、大さん橋ホールに到着します。会場前にはバラ苗を売るショップが出ていて、お客さんで賑わっていました。

 

ウェルカムローズガーデンはナチュラルなのに華やかな、女性らしい庭

▲ウェルカムローズガーデン全景 写真提供/天女の舞子

口を入り、バラのトンネルをくぐると、正面にウェルカムローズガーデンが出迎えてくれます。円形の白い噴水を中心に、たくさんのバラと花々であふれたガーデンの制作は、第3回「国際バラとガーデニングショウ」のガーデン部門コンテストで大賞を受賞した、かたくり工房の阿部容子さん。

 

▲バラいっぱいのウェルカムローズガーデン

 

バラの品種名も、可愛らしいネームタグを使ってガーデンの雰囲気を壊さずに書いてあり、とても分かりやすくなっています。バラの他にはツゲのトピアリーやアジサイ、デルフィニウムなどが組み合わせてありました。

 

ピンクの濃淡のバラを中心に、はっきりした赤バラをポイントに散らし、穂状のデルフィニウムでバラにないすっきりした青をプラスしてあります。全体にナチュラルなのに華やかな、女性らしい雰囲気ですね^^

 

ムッシューメイアンのサロン・ド・ローズ

▲円形の芝生の庭と水色の玄関風建物とバラがあるボーダー花壇

写真提供/天女の舞子

治時代、生糸は日本の重要な輸出品でした。横浜を拠点に世界中に生糸が輸出されていました。一方、フランスのリヨンは絹織物産業で栄え、「絹の都」とも称された街。その縁もあり、横浜とリヨンは1959年に姉妹都市を提携しました。今年は姉妹都市提携からちょうど60年。この節目をお祝いして、リヨンと縁の深いメイアン社のバラを集めたバラの庭が作られました。題して「ムッシュー・メイアンのサロン・ド・ローズ」。

 

世界的に有名なバラのナーセリー・メイアン社は、19世紀の半ばにリヨンでバラの育種を始めたことからスタートします。メイアン社のバラといえば、第二次世界大戦の終戦を記念して命名された「ピース」や、だれもが愛さずにいられない「ピエール ドゥ ロンサール」、素晴らしい香りでロザリアンを魅了する「ボレロ」など、名だたる名花ぞろいです。

 

▲世界中の人々に愛されている「ピエール ドゥ ロンサール」

 

そんなメイアン社のバラと宿根草を組み合わせ、おしゃれなフランス風のガーデンが造られました。青い玄関と円形の緑の芝生を中心にシンメトリーにまとめられています。

 

木村卓功さんのトークショウ「大成功のバラ栽培」

▲最新作「シャリマー」を紹介する木村卓功さん

場の一番奥には、ステージが設えられていて、バラに関わる多くの方のトークショウが開催されました。わたしは初日の午後に行ったので、木村卓功さん、河合伸志さん、玉置一裕さんのトークショウに参加しました。詳細レポート第1弾では、木村卓功さんのトークショウ「大成功のバラ栽培」について紹介します。

 

木村卓功さんは、ロサ・オリエンティスのブランド名で次々新しいバラを発表しているバラの育種家です。思わず「漁師さん?」と、言いたくなるほどの日焼けっぷりの謎が今回のトークショウで明らかになりましたよ! 今回の詳細レポでは、ご本人に成り代わりまして、木村卓功さん風の話し言葉でその内容をご紹介します。実際の話し方とは少々違うかもしれませんが、ナンチャッテ木村卓功さんということでお読みください!

 

世界のトレンドは手入れの楽なバラ

▲2018年、世界バラ会議コペンハーゲン大会で殿堂入りした「ノックアウト」

ラにもトレンドがありまして。世界のバラは今、美しいだけでなく強いバラが求められています。2018年デンマークで開催された世界バラ会議では耐病性が抜群に高い「ノックアウト」が殿堂入りしましたし。2020年からフランスでは公園や一般家庭で農薬がほぼ使えなくなるという社会背景もありますから。

 

私も、庭木や草花のように扱える手入れの楽なバラを目指して育種しています。

 

よく「バラの家」の実店舗にいらしたお客さんが「木村卓功さんはいないんですか?」って言われるんですが、私は通常、店にはいません。毎日、畑にいます。

 

畑ではまだ世に出ていない品種が5000品種植えられています。この中から優れたバラを選んで残す作業をしているんです。でも近所は普通の農家ですから。どこの農家さんも畑で何かを作って出荷する作業をしているのに、私は違うので・・・。

 

「あそこのセガレは大丈夫か? 仕事もしないでバラ見てウロチョロして大丈夫か?」なんて、言われています。

 

今朝も朝8時~10時までバラを見て、香りを嗅いで、どのバラを残そうか選抜作業をしてきました。ピーク時は午前中いっぱい選抜作業をしています。バラの香りっていいわねぇって皆さんおっしゃるんですが、これが仕事になるとすごい辛いんですよ。香りを嗅ぎ過ぎて、ついにどれを嗅いでも香りが分からなくなる!

 

わたしは花粉症はないはずなんですが。バラの畑にいくと鼻水は出るし目はかゆくなるし──で、これはバラ花粉症じゃないかと思って医者に行ったんですがね。はっきり「バラ花粉症なんてありません!」って医者に否定されまして。でもね、そんな話を京成バラ園の武内俊介さんにしたら、「わかる!」って同調してもらえました。

 

バラは結婚と同じ。顔だけで選んじゃダメ!

いたい皆が失敗するのは、好みの花で選ぶからなんです。結婚と同じで、顔だけで選んじゃダメ! まずバラの栽培環境で選んで、次に好きな花を考えるといいですね。バラ選びのコツを順を追ってくわしく紹介しましょう。

 

1、庭の広さを考える

よくバラの鉢をズラーッと並べている光景を見かけますが、庭やベランダなど、バラを育てる場所のキャパを考えて選びましょう。

 

2、陽当たりを考える

昔ながらのHTなんかは日陰に弱いものが多いです。21世紀になって出てきたシュラブ系統は、日陰に強いものが多いです。

 

3、自分がどのくらいバラに手をかけられるかを考える

ほとんどの人はバラは好きだけれど薬剤散布は嫌い。やっぱり無農薬を好む方が多いですね。従来のバラは手をかけて育てるイメージでしたが、なかには消毒しなくても育つバラがあるので、手をかけられない方はそういうのを選んでください。

 

4、最後に好みのバラを選んで!

これまでの3つのポイントを考えてから、はじめて好みのバラを選んでください。

 

早くきれいに咲かせる極意

▲小さい内につぼみを取る

ラの育種って、じつはすごいお金がかかるんです。毎年、外国の高級車1台買えるくらいかかるんですよ。なるべく早くいいものを作るのが、お金の節約のためにも大事になってくる。そのため、いいな、と思うバラを小さい芽のうちに台木に接ぎ木するんです。これを、接ぎ木から1年でかなり大きく育てています。そのためどうしているか、を紹介しましょう。

 

1、葉を落とさない

葉は光合成で栄養を作り出すのに大切なものです。なるべく葉を落とさないようにするのが大事

 

2、根を健全に伸ばす

バラは、地面を境に上と下がシンメトリーの大きさになっています。木を大きく育てるには、それだけ長く生長した根が必要ということです。根を育てるためには、土が大事だともいえます。

 

3、つぼみを取り続ける

バラは、葉で栄養を作り、枝や根に蓄え、つぼみや花で消費します。なるべく早く大きく育てるためには、最初のうちはつぼみを取り続けることが大事なんです。

 

2019年、今年の最新品種を紹介!

▲ロサ・オリエンティス初、タイプ0の「シャリマー」

サ・オリエンティスのカタログでは、育てやすさの目安を数字で表しています。タイプ1ならかなり育てやすく、タイプ3ならしっかり手をかけて育てるという風に、数字が少ないほど育てやすいバラです。

 

今年の春に発表した「シャリマー」は、ロサ・オリエンティス初のタイプ0。2年間無農薬で育ててまったく黒点病が出ませんでした。ウドンコ病にも強いけれど、黒点病には驚くほど強い。虫はつきますけどね。

 

庭木や草花のような感覚で育てられる、ロサ・オリエンティスの今後の育種の方向性を象徴するバラです。

 

▲タイプ0.5の「マイローズ」

 

このバラの花色は「赤」です。常に変わらない「赤」。退色もしにくく、低温期はやや濃い色、高温期はやや明るい色になりますが、グラデーションのないはっきりした「赤」です。整ったロゼット咲きで、花もちが良い。香りはありませんが、病気に強く、とても育てやすいバラです。

 

▲個性的な花色の「ル・サブリエ」

 

この繊細な美しさをもつバラは「ル・サブリエ」。フランス語で「砂時計」という意味です。淡い茶色をベースにピンクやときに紫を感じさせる花色、ボタンアイが現れるロゼット咲き。とても新奇性のある花です。育てやすさはタイプ3。私は今、育てやすいバラの育種を主眼にしていますが、一旦それを置いておいても世に出したくなったほど魅力あるバラです。

 

あいびーあいびー

バラの上手な選び方に、育て方の極意、ロサ・オリエンティスの最新品種の紹介と、とても充実した講演でした^^

ローズウォーターの故郷、モロッコのバラのある暮らし

「ばらフェスタ」では、いくつもの「バラのある暮らし提案」がされていました。それも順次、紹介していきます。第1弾では、モロッコのバラのある暮らし提案です。

 

▲モロッコ特有の宿泊施設「リヤド」をバラいっぱいに再現

 

バラの谷ときくとブルガリアを思い浮かべますが、モロッコにもバラの谷(ケアラ・ムグーナ)があります。そこではダマスクローズが栽培され、バラを蒸留してローズオットー(バラの精油)やローズウォーターが作られています。

 

バラ咲く5月にはバラ祭りが行われ、住民たちが旅人にローズウォーターやバラの花びらを振りかけて歓迎します

 

「ばらフェア」の会場につくられた青いタイルとピンクのバラの花びらが印象的な一角は、モロッコ特有の宿泊施設「リヤド」を、フラワーアーティストの曽我部翔さんが再現しました。大胆な色使いがとても印象的な空間です。

 

傍らに添えられた曽我部翔さんからのメッセージを転載して紹介します。

 

中東とヨーロッパの文化が迷路のように入り組み、洗練された極上の文化が生まれたモロッコ。

リヤドは「木が植えられた庭」や「邸宅」の意味があり、噴水や木々のある中庭を取り囲むように部屋が配置されている邸宅を改築したモロッコ特有の宿泊施設です。小さな美術館のようなリヤドは、モロッコを訪れる人たちを魅了しています。建物で囲まれた中庭で、バラの香りに包まれながら、穏やかな時の流れをお楽しみください。

 

▲リヤドの隣には、フラワーアレンジメント体験ができるスペースが

 

リヤドの隣のスペースでは、モロッコ風のインテリアに囲まれて、色鮮やかなバラを使ったフラワーアレンジメント体験ができるようになっていました。こちらも、とてもおしゃれな空間でしたよ!

 

あいびーあいびー

次回の第2弾詳細レポートでは、シシリー・メアリー・バーカーの世界を庭で描いた「妖精の棲む庭」、横浜とバラの関わりを資料と庭で見せてくれた「横浜薔薇ものがたり」、横浜イングリッシュガーデン・スーパーバイザーの河合伸志さんの講演「横浜イングリッシュガーデンの魅力」、「禅の庭」について紹介します。

▼第2回、第3回の詳細レポは、こちらからご覧ください。

 

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