横浜大さん橋ホールを会場に、2019年5月15日~19日の日程で開催された「ばらフェスタ2019」を3回に分けて詳細レポートします。今回は第2弾。シシリー・メアリー・バーカーの世界を庭で描いた「妖精の棲む庭」、横浜とバラの関わりを資料と庭で見せた「横浜薔薇ものがたり」、横浜イングリッシュガーデン・スーパーバイザーの河合伸志さんの講演「横浜イングリッシュガーデンの魅力」、「禅の庭」、「ローズキャンドルのある暮らし」を紹介します。


妖精が棲む庭~シシリー・メアリー・バーカーの世界~

▲人気の妖精画「フラワーフェアリーズ」の世界をガーデンに!

絵画家「シシリー・メアリー・バーカー」の名前を知らなくても、愛らしい子どもの妖精と花を組み合わせたイラストをご存知の方は多いでしょう。わたしも幼い頃に見て、すっかりイギリスに憧れたもんです! 会場には、そんなシシリー・メアリー・バーカーの「フラワーフェアリーズ」の世界をガーデンに再現されていました。

 

芝生につけられた小径の両側を彩るバラと穂状の草花の茂み。遠くでよく見えませんが、中央には妖精が座って本を読んでいるような石像が見えます。花いっぱいのイングリッシュガーデンですね! 

 


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制作は、ウェルカムガーデンと同じ「かたくり工房」の阿部容子さん。阿部容子さんは、シシリー・メアリー・バーカーの大ファンなんだそうです! 

 

ガーデンのイメージ・イラストによると、赤いつるバラが壁を覆い、庭の中央には白い妖精の像がいるイメージです。当初、窓枠は黒っぽかったものが、全体のバランスから赤枠に変更されたようです。こういうガーデン・イラストを観るのも楽しいですよね^^

▲「妖精の棲む庭」のイメージ・イラスト 画/阿部容子

出展/「ばらフェスタ2019」公式

 

この「妖精の棲む庭」には、シシリー・メアリー・バーカーが妖精とともに描いた草花が取り入れられています。デージー、ラベンダー、キングサリ、ライラック、ビバーナム、スナップドラゴン、アジュガ、オダマキ、リシマキア・ヌムラリアの9種類の草花です。会場には、これらの妖精イラストも展示されていました。

 

いくつかをピックアップして紹介します。

 

デージー(ひなぎく)


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ージーの草丈は15~40cm。ピンク、白、赤などの花色があります。細い花びらが集まって、黄色い雄しべを中心にまるく咲く愛らしい花です。バラの株元に!

 

ラベンダー


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ラに少ない青紫色の花を、穂状に咲かせるラベンダーは、バラを引き立てる植物として古くから庭で愛されてきました。ハーブの女王ともいわれるほど良い香りは、虫よけ効果も期待できます。

 

キングサリ(キバナフジ)


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鮮やかな黄色い花を咲かせるキングサリは、和名を「黄花藤」と呼ばれ、「ゴールデンチェーン」の別名ももつつる性植物です。日本では少し栽培が難しいのですが、バラ咲く庭のアクセントとしてイギリスの庭で取り入れられているのを見かけました。

 

ライラック


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イラックは、フランス語で「リラ」と呼ばれる赤紫色の花を咲かせる落葉花木です。花は良い香りがして、ハート形の葉とともに、ヨーロッパで愛されています。

 

スナップドラゴン


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精の棲む庭の左側手前に群れ咲いているのがスナップドラゴン。和名の「キンギョソウ」の方が馴染みのある名前ですね^^ 色鮮やかな黄色やピンクの花を穂状に咲かせます。

 

ばらフェスタ公式ガイドブックには、阿部容子さんのガーデン制作秘話が載せられていました。一部を転載して紹介します。

 

会場の限られたスペースの中で、奥行きを感じさせる空間をつくるにあたり、鏡や傾斜、遠近法の効果を取り入れています。また、バラの花色にはない、ブルー系の草花をプラスすることで、花々が引き立て合い、調和するナチュラルなガーデンを再現しました。ガーデンのどこかで、妖精たちは花を磨き、茎が新鮮に見えるように、植物の世話をしているかも!? ぜひ、花々の間で遊ぶ妖精を見つけてください。

 

壁で囲まれた空間はとても美しかったのですが、もっと間近で見られると良かったかなぁと思いました。周りの壁がもっと低ければ奥の方を覗きこめるし、どんな植物が植えられているのか良く観察できるし。できれば間の小径を歩いてみたくなりました^^

 

横浜薔薇ものがたり

▲大正3年(1914年)発刊のバラのカタログ 写真提供/天女の舞子

西洋のバラが日本に入ってきたのは、ここ横浜からでした。横浜港は明治9年に開港したのですが、明治の中頃まで、バラは外国人住宅の庭だけで見られる花でした。まさに高嶺の花だったのです。

 

そんな中、横浜の園芸商「横浜植木株式会社」は、大正3年(1914年)発刊の植物カタログに、16品種のバラを載せ、新品種の輸入や育種も手掛けるようになりました。当時のカタログが会場に展示されていました。それが上の写真です。

 

右下の花びらの表がほぼ白い薄ピンク色で、裏が濃いピンク色のバラは「ラ・フランス」です。半剣弁の花びらでふっくら咲く特徴を上手くとらえたイラストですね。

 

横浜を起点に西洋のバラが日本じゅうに広まり現在に至るかと思うと、横浜市の花がバラなのも頷けます!

 

▲昔の横浜をイメージしてつくられたローズガーデン

 

新旧の横浜をイメージしたローズガーデンが2つつくられていました。ガス灯が灯り、レンガの壁を背景にバラが咲く庭は、昔の横浜をイメージしてつくられたローズガーデンです。制作は、横浜イングリッシュガーデンのガーデナー・チーム。横浜イングリッシュガーデンは、2018年に開催された「世界バラ会議」で優秀庭園賞を受賞しています。

 

ここには、横浜にゆかりのバラがたくさん使われているそうです。バラとカスミソウという、今では少しレトロな雰囲気がするかつての大人気の花の組み合わせがされていて、設えだけでなく、花でも時代を感じさせるデザインになっていました。

 

河合伸志さんのトークショウ「横浜イングリッシュガーデンの魅力」

▲横浜イングリッシュガーデン・スーパーバイザーの河合伸志さん

細レポート第2弾のステージ上でのトークショウは、横浜イングリッシュガーデン・スーパーバイザーの河合伸志さんの講演をお届けします。

 

横浜イングリッシュガーデンは、横浜駅からほど近い街中にありながら、2018年の「世界バラ会議」で「優秀庭園賞」を受賞した、世界的に認められたバラ園です。日本のバラを含めた数多くのバラが高い水準で管理されていること、ネームプレートがきちんと添えられていることなど、受賞の理由はさまざまですが、もっとも特徴的なのが「他に類を見ない混植ガーデンであること」という理由です。

 

▼詳しくは、こちらをご覧ください。

 

横浜イングリッシュガーデンにはバラがたくさん植えられていますが、「バラ園」とはうたっていません。バラだけでなくさまざまな植物が植えられていて、バラの季節はもちろん、バラ以外の季節も楽しめるようにつくられているのです。河合伸志さんは、そんなバラを主役にした混植ガーデンをつくる秘訣を話してくれました。題して「横浜イングリッシュガーデンの魅力」。自分の庭に取り入れられる具体的なアイデアもたくさん聞けましたよ^^

 

今回も、ご本人に成り代わりまして、河合伸志さん風の話し言葉でその内容をご紹介します。実際の話し方とは少々違うかもしれませんが、ナンチャッテ河合伸志さんということでお読みください!

 

ちなみに・・・じつは人のいない内に会場内をいろいろ撮影しようと写真を撮っていて、トークショウに遅れてしまいまして。あわててしまって、河合伸志さんの写真を撮りそこないました(^^; 上のちょっと不自然な画像は、合成でそれらしくつくったものです。(汗)

 

混植庭園を美しくつくるコツ

▲バラだけでない、庭園としての美しさが光る横浜イングリッシュガーデン

浜イングリッシュガーデンの魅力はいろいろありますが、混植庭園だということが一番の特徴だと思います。混植庭園というのは、自然まかせの庭園ではないんです。自然に見えるように、人間が手を入れて管理しているものです。きめ細かい管理が必要になるんですよ。

 

今日は、皆さんのお庭でも取り入れやすい混植庭園のアイデアを、いくつか持ち帰ってもらおうと思います。

 

まずバラと組み合わせる植物を選ぶときの基本として、バラと同じ環境で育つ植物を選びます。たとえばバラとサボテンを組み合わせようとしても無理がありますよね。サボテンは乾いた環境が好きだし、そんな乾いた環境ではバラは育ちません。

 

▲こぼれ種で増えるエリゲロン

 

宿根草は、開花期の長いものを選ぶといいですね。たとえば長く咲いて、バラにない花色があるゲラニウム穂状に軽やかな花が咲くガウラこぼれ種で増え4月~11月まで長く咲き続けるエリゲロン。バラの足元って花が咲いていないので、これらの宿根草をバラの足元に植えると、美しい景色になります。

 

クレマチスはさまざまな品種がありますが、1~1.5mの木立性のバラに組み合わせるなら、つぼ型のクレマチスも面白いですね。

 

▲花色や咲き方のバリエーションが多いダリア

 

花色や花の形にバリエーションが多いダリアは、多くは秋バラと一緒に花が咲きます。銅葉のダリアなら、花も葉も楽しめますフィソカルプス(別名アカバコデマリ、テマリシモツケなど)は、花も葉も紅葉も楽しめます。こんなふうに、いくつもの役割をしてくれる植物を取り入れると、花のない時期も庭がきれいに保てます。

 

バラは、いつでも咲いているわけじゃありません。横浜イングリッシュガーデンのお客さまにも、「なんだ、バラ咲いていないじゃないか!」と叱られることがあるんですが──。たとえバラが咲いていない時期でも、庭として見ごたえのある景色をつくりだしたいとスタッフ一同で頑張っています。

 

宿根草は放置草ではない! 手入れは必要

▲穂状の花は宿根性のサルビア・ネモローサ

さん、バラはしっかり手入れされるんですが、宿根草=放置草だと思っている方も多いんです。でもそれは違います。バラほどではないけれど、宿根草も手入れが必要です。たとえばグラス類など生育旺盛なものは、あえて根を切ったり、わざと切り戻したりして生育を抑えることもあるんです。

 

バラ以外のものも、病害虫対策は必要です。ヨトウムシ、アブラムシ、ハダニはいろんな植物を渡り歩くので、バラだけでなく、他の植物も対策することで、バラへの被害も抑えられます。

 

たとえばフダンソウ(スイスチャード)を一緒に植えておき、ポツポツと穴が開いてきたら害虫対策の開始です。こんな風に、害虫のつきやすい植物をあえて側に置き、その様子を見て、防除のタイミングをはかる目安にすることもありますよ。

 

あいびーあいびー

横浜イングリッシュガーデンが素敵なのは、バラがきれいなのはもちろん、バラ以外の植物との混植が素晴らしいんですよね! 庭づくりのヒントが濃縮されているように思えて、行くたびにいろいろ写真を撮るのですが、今回のお話しはとても参考になりました。──っていうか、もっと2時間くらいかけてじっくりお聞きしたかったくらい! 横浜イングリッシュガーデンは、これからのアジサイの季節も素敵なんですよね~♪

「禅の庭」へのいざない

▲板張りの縁側に座って庭を眺めることができる

くの来場客でにぎわう会場の、盆栽に仕立てられたミニバラの鉢が並ぶ壁の奥に、ひっそりと造られていたのが「禅の庭」です。土色の塀が張り巡らされた中には、砂が敷かれています。まるで海のように見える砂に浮かぶ苔に覆われた緑の島。山のように見える二つの大岩。岩の向こうから、たわわに花をつけるバラの花。紅色の絞り模様が入ったバラです。

 

庭の手前には板張りの縁側がつくられていて、来場客はここに座り、しばし会場の喧騒を離れて静かな時間を過ごすことができるようになっていました。

 

バラといえば洋風庭園に咲かせるもの──という固定概念を覆し、枯山水の日本庭園に取り入れるという組み合わせがとても斬新です。複数の光源に照らされたバラの影が2重になって壁に落ちているのが、とてもきれいに思えました。

 

案内をしている方──おそらく運営の方──に話をきくと「これまで先生(制作した枡野俊明住職)はバラを使われることはなかったんですが、提案しましたら、それは面白いと言ってくださって。いろいろなバラを一緒に観て回り、このバラがいいと、先生がこれを選ばれました」と話してくれました。バラの品種名は分からないそうです。

 

バラを使った「禅の庭」をデザインしたのは、曹洞宗徳雄山建功寺住職であり、庭園デザイナーの枡野俊明さん。「ばらフェスタ2019」の公式ガイドブックに「禅の庭へのいざない」と題した枡野俊明住職からのメッセージがありましたので、一部抜粋して紹介します。

 

禅とは、「本来の自己に出会う」ことです。一点の汚れもないような美しい心を誰しもが持っています。その心に、もう一度自分で出会うように修行をします。そして、その心とともに生きていく。そうすることで、迷いや悩みの中にいても心が乱れることなく、いつも安定した気持ちでいられるのです。

~中略~

「禅の庭」を見て何を感じるかは、人それぞれです。また、そのときの心の状態によっても変わります。時を経て同じ庭を見るとき、必ず新たな感激や感動があります。私にとって「禅の庭」は、造ることも、眺めることも修行であり、またその道場なのです。

 

禅を体験したことがないので、これまではっきり知りませんでしたが、禅とは「本来の自己に出会う」ことなんですね。だとすれば、「禅の庭」こそ、狭くてもいいから身近に置いておきたい庭かもしれないと思えました。バラ咲く「禅の庭」。ロザリアンはここでどんな自己に出会うのでしょうね?

 

バラ咲くキャンドルのある暮らし

▲バラのキャンドルが並べられたコーナー

ャンドルの周りにドライフラワーがつけられていたり、繊細なレリーフのようにバラが浮かび上がっていたり、バラの花一輪がそのままキャンドルになっていたり。アンティークな雰囲気の一角に並んだアーティスティックなキャンドルは、キャンドル作家・有瀧聡美さん制作のもの

 

▲キャンドルの周りに柔らかな色合いのドライフラワーがつけられている!

 

キャンドルも素敵なんですが、一緒に並べられたキャンドルホルダーもおしゃれですね^^ 会場に有瀧聡美さんが座っていたので「どうやって作っているんですか?」と聞いてみると「わたしがウチのキッチンで型に入れて作ってるんです」と、ものすごく素っ気なく答えてくれました。

 

「香りもついているんですか?」「バラの花のはついてますけど、他のはついてません」と、これまた素っ気なく。こんなにロマンティックなキャンドルをつくる方なんだから、とっても思い入れたっぷりかと思いきや、意外とサバサバしたタイプの作家さんのようです。

 

▲このキャンドルに火を灯せます?

 

後で知ったのですが、有瀧聡美さんは、インテリア雑誌のコンテストで入賞しクラフト作品が掲載されたことをきっかけにキャンドル制作を本格的にスタートしたのだとか。「古道具やアンティーク家具を用いてDIYでつくりあげた自宅のアトリエでキャンドルを制作している」と説明されていました。「ウチのキッチンで~」って、おっしゃるから、思わず自分の家の殺風景なキッチンを思い浮かべてしまったけど、ぜんぜん別物だったようです! アハハw はぁ(ため息)。

 

「国際バラとガーデニングショウ」では、会場も広く、大勢の来場客でごった返していて、先生方や作家さんと話すことはほぼできなかったんですが、今回の「ばらフェスタ」ではバラの先生方や作家さんが気軽に話をされていたり、話しかけやすい雰囲気でした。アットホームで、以前よりじっくり楽しめました^^

 

あいびーあいびー

次回の第3弾レポートでは、玉置一裕さんの「最先端の世界のバラ」を紹介するトークショウのもようや、ローラン・ボーニッシュさんのブーケづくり、切り花コンテストなどについて紹介します。

▼第1回、第3回の詳細レポートも合わせてどうぞ!

 

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