シュラブ系統・シュラブ樹形のバラは「モダン・シュラブ」と呼ばれることがあります。その意味について紹介します。
バラの先生方が講演会や本の中でシュラブのことを「モダン・シュラブ」って表現するのを良く聞くの。これってどういう意味?もしかして「オールド・シュラブ」っていうのもあるの?
「モダン・シュラブ」の「モダン」は「モダン・ローズ」の「モダン」と同じ意味あい
▲オリビア ローズ オースチン(イングリッシュローズ)
バラの育種の歴史をざっくり説明すると、「原種」「オールドローズ」「モダンローズ」に分けることができます。
「原種」とは、自然に自生しているバラで、世界中に150~200種類の原種バラがあります。これら原種のバラを人工的に交配して創り出されたのがバラの「園芸品種」です。つまり、原種以外のバラはすべて「園芸品種」なのです。
▲「ラ・フランス」以降のバラが「モダン・ローズ」
園芸品種はさらに「オールド・ローズ」と「モダン・ローズ」の2つに分類することができます。この2つを分ける基点になるのが1867年です。
1867年にフランスのギヨーにより作出された「ラ・フランス」という園芸品種のバラは、それまでのバラと大きく異なる性質を持っていました。木立ち樹形で四季咲きするバラだったのです。
▲「ラ・フランス」1867年ギヨー作出/フランス
「ラ・フランス」の誕生以降バラの育種は、安定した四季咲き品種を創ることを主眼に進められました。この美しい花を年に何度も観られるという幸せに、人々は熱狂したのでしょうね。つまり「ラ・フランス」以前と「ラ・フランス」以降では、バラの世界がガラリと変わってしまったのです。
そこで、「ラ・フランス」以前のバラを「オールド・ローズ」、「ラ・フランス」以降のバラを「モダン・ローズ」と呼び分けられることになります。「モダン・ローズ」は、日本語では「現代バラ」と呼ばれます。
「モダン・シュラブ」の「モダン」も、これと同じ意味あいです。「モダン・シュラブ」は「現代バラの中のシュラブ系統のバラ」という意味で使われています。
つまり「モダン・シュラブ」とは、1867年以降に創られたシュラブ系統のバラってことね。それじゃ1867年より前に創られた「オールド・シュラブ」と呼ばれるバラもあるってことなの?
原種やオールド・ローズは、ほとんどがシュラブ~つる樹形
▲日本の原種バラ「ロサ・ムルティフロラ」
上の写真は日本原産の原種バラ「ロサ・ムルティフロラ」(ノイバラ)です。枝先が2mていどの大きな茂みをつくるシュラブ樹形をしています。下の方は花が地面についてしまっていますね。
▲ロサ・ダマスケナ・トリギンテペタラ(ダマスク・ローズ)
香料を採るバラとして有名な「ロサ・ダマスケナ・トリゲンテペタラ」(ダマスク・ローズ)もシュラブ樹形をしています。「ロサ・ダマスケナ・トリゲンテペタラ」はオールド・ローズです。
このように原種やオールド・ローズは、ほとんどがシュラブ樹形~つる樹形をしていますが、特に「オールド・シュラブ」という言い方はしません。
「オールド・シュラブ」とわざわざ断らなくても、「原種」とか「オールドローズ」と言えば、イコールシュラブ樹形またはつる樹形なのね。
その通りよ。「モダン・シュラブ」という言い方をするバラの先生は、「原種やオールド・ローズのシュラブ樹形のバラの話ではなくて、現代バラのシュラブ系統(樹形)のバラの話をしていますよ」ということを正確に伝えるために「モダン・シュラブ」という言葉を使っているのだと思うわ。
まとめ
シュラブ系統・シュラブ樹形のバラについてのちょっとした疑問「モダン・シュラブとは?」に答える記事でした。
シュラブ樹形は、じつは原種やオールド・ローズゆずりの樹形です。原種やオールド・ローズはほとんどの品種が一季咲きです。なかには返り咲きや四季咲きする品種もありますが、かなり稀です。
そう考えると、オールドローズの性質を受け継いだ現代のシュラブ樹形のバラが、きちんと四季咲きしないのはごく自然なことのように思えますね。
原種にオールド・ローズかぁ・・・。バラは紀元前から人と深いかかわりがあると言うし、そう考えるとバラには目眩がしそうなほど壮大な歴史があるのね。バラの歴史や原種、オールド・ローズにもちょっと興味が湧いてきたわ!
シュラブ系統・シュラブ樹形のバラについて全体を把握するには、次の順番で読み進めてください。
▼① バラの系統について
▼② イングリッシュローズについて
▼③ バラの樹形について
▼④ シュラブ樹形のバリエーションと四季咲き性について
▼⑤ シュラブ樹形のオススメの仕立て方について
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