バラにはいくつかの系統があります。ハイブリッド・ティー系統とか、フロリバンダ系統とか。これらは一体何で、どんな意味があるのかを紹介します。
バラって品種名の他に系統名が表示されているよね。そもそもバラの系統って何? どうして必要なの?
すべてのバラは系統に分類される!
▲品種タグに「ハイブリッド・ティー」の文字 写真提供/ハナたろう
バラは世界中に多くの原種があり、それを元に交配し栽培されてきた歴史の長い植物です。そのため園芸品種は膨大で、その数は今や3万品種とも4万品種ともいわれています。
それらのバラを、特徴の似通ったいくつかのグループに分類しているのが「バラの系統」です。バラの系統は*ARS(American Rose Society)により設けられ、世界じゅうのバラが同じ概念で系統別に分類されています。
*ARS(American Rose Society)は、バラの世界でもっとも権威ある分類データベースを発表している機関。
つまりバラの系統は、似通った性質をもつバラをグループ分けしたものっていうことね。たとえばよく聞く「ハイブリッド・ティー系統」は、どんな性質なの?
「ハイブリッド・ティー系統」は、簡単に言うと「大輪で四季咲き性をもつ木立ちバラ」。「ハイブリッドティー系統」の略記号は「HT」なので、ラベルにこの略記号がついていれば、それは「大輪の花を四季咲きさせる、木立ち樹形の品種」という目印になるの。
「HT」の2文字だけでそれが分かるなら、品種を選ぶときにすごく参考になるわね! 他の系統の特徴も教えて!
モダンローズの代表的な系統とその特徴
▲モダンローズの扉を開いた「ラ・フランス」
1867年にフランスのギヨーが作出した「ラ・フランス」は、年に何度も花を咲かせるという、それまでにない特徴をもつ画期的なバラでした。「ラ・フランス」以降、バラの育種は「四季咲き」をモットーに行われてきたという面があります。
そのため「ラ・フランス」以前のバラの系統をオールドローズ、「ラ・フランス」以降のバラの系統をモダンローズと便宜的に区別しています。
まず、モダンローズの代表的な系統とその特徴を紹介します。
1、ハイブリッド・ティー系統(HT)
▲「ピース」(HT)は、花径15cmにもなる巨大輪
大輪または巨大輪の花を四季咲きさせるグループ。存在感ある1輪を求めた切花のバラに多いのがこの系統で、モダンローズの代表的な系統。整った剣弁または半剣弁高芯咲きの品種が多く、花色も多彩です。
樹形は1~1.5m。枝がしっかりしていて支柱なしで自立できます。
2、フロリバンダ系統(F)
▲抜群の花付き「アイスバーグ」(F)
花径5~6cmの中輪花を房咲きで、さらに四季咲きさせるグループ。HTが花1輪で魅せるタイプなのに対して、Fは花数の多さで魅せるタイプ。花1輪の豪華さはHTに及ばないけれど、いつも花を咲かせていたいガーデンローズには、こちらの系統の方が人気があります。
樹形は1~1.3m。枝がしっかりしていて、支柱なしで自立できます。
3、ラージフラワードクライマー系統(LCL)
▲豪華な花をたっぷり咲かせる「ピエールドゥロンサール」(LCL)
大輪の花を咲かせるつるバラです。ハイブリッド・ティー系統のバラが突然変異でつる性になった品種が多くあり、HTが木立ちバラなのに対してLCLはつるバラです。
ただしHTは四季咲きですが、LCLはほとんどが春のみの1季咲きです。花枝が長いのも特徴で、とくに長いものだと1m近くになります。
枝先は2.5mほどまで伸び、壁面やフェンスを華やかに彩ります。枝は硬いけれど、長いので自立することができません。
4、ミニチュア系統(Min)
▲樹高が小さいミニチュア系統「レディメイアンディナ」(Min)
花径3cmまでの小輪の花で、葉も小さく、樹高も30cmほどと小さい木立ちバラのグループがミニチュア系統です。多くは四季咲きですが、一部1季咲きもあります。
品種改良により、花径10cm近いものや樹高2mにもなるつるタイプの品種も登場しており、他の系統と見分けのつかないものが多くなっています。
系統の特徴として、樹勢が強く、花を咲かせるサイクルが早く、ハダニに弱いものが多いグループです。
5、シュラブ系統(S)
▲イングリッシュローズを代表する品種「グラハムトーマス」(S)
ほかのどの系統にも属さないバラがシュラブ系統のバラです。オールドローズとモダンローズを交配してできたイングリッシュローズが、代表的なシュラブ系統のバラです。
イングリッシュローズはオールドローズの特徴を色濃く残していて、木立ち樹形とつる樹形の中間の樹形、つまり半つる性(シュラブ樹形)のものが多く、カップ咲きやロゼット咲きなど他のモダンローズにない花形が多く、さらに香りの強い品種が多くあります。
樹高は1~2mほどと幅があり、枝先が柔らかく噴水状に枝垂れながらも何とか自立する樹形のものや、何かに誘引が必要なほど枝先が長くなるタイプもあります。そのため枝先が長くなるものは「つるバラ」と表記されることが多いです。
花は中輪~大輪で、四季咲き性は品種によりまちまちです。しっかり四季咲きする品種もあれば、ほぼ1季咲きの品種もあります。
今世紀に作出されるバラの多くは、このシュラブ系統のバラです。
今回はモダンローズの系統のみを紹介しましたが、もちろんオールドローズにもさまざまな系統があります。
アルファベット1~3文字の略記号に、こんなにたくさんの情報が込められていたのね!知らなかったわ!
花のサイズや1季咲きか四季咲きか、樹形はどうか、どれくらい枝が伸びるのかまで、いろんな情報が読み取れて便利よね。いつも花が咲いている花壇にしたいからフロリバンダを選ぼうとか、花数は少なくてもいいから存在感のあるハイブリッド・ティーを植えようとか──ね。
つるバラはよく「クライミング」って言われるから「クライミング系統」かと思っていたんだけど。これによると「ラージフラワードクライマー系統」って言うのね。「ラージフラワードクライマー系統」って初めて聞いたわ。
ちょっと間違いやすいんだけど、「クライミング」って言い方は、系統での分け方じゃないのよね。
バラの分類方法は、「系統」の他にもいろいろある!
▲シュラブ樹形
バラの分類方法はいろいろあります。「系統」は、元になった原種の特徴が色濃く出ている品種をグループ別に分類していますが、他に花形による分類や樹形での分類もあります。
混同しやすいのが「系統」での分類方法と「樹形」での分類方法です。
当サイトでは、樹形は 1、木立ち(ブッシュ)樹形 2、半つる(シュラブ)樹形 3、クライミング樹形 4、ランブラー樹形 の4種類に分類しています。
▼樹形について詳しくは、こちらをどうぞ
つまりクライミングは「樹形」での分類方法で、「系統」での分類方法ではないのです。
なるほど、そうなのね。って──ちょっと待って! 「シュラブ」って、どっちにもあるじゃない! 「シュラブ系統」もあるし「シュラブ樹形」もあって・・・これ、ややこしいなぁ。
気がついた? じつは今回はそこに気づいてもらいたかったの。「シュラブ系統」と「シュラブ樹形」はとくに混同しがちなので、注意してね。
──それに、シュラブ系統の説明文ってピンとこない感じ。樹高に幅があって、木立ち樹形もつる樹形もあるんでしょ? 大輪もあれば中輪もあるし、1季咲きも四季咲きもあるし・・・なんか分かりにくい。
まとめ
今回は、バラの系統とは何か、さらにバラの系統を知るメリットは何かについて紹介しました。バラの系統は、それぞれ似通った特徴をもつ品種群をグループにして分けているものです。
たとえ初めて見たバラでも、そのバラが何系統かを知ることで、どんな育ちかたをしてどんなふうに花を咲かせるかまで、あるていど知ることができます。だからバラの系統を知ることはとても意味があります。
品種選びでは、とくに重要ですね。
しかしシュラブ系統だけは別です。シュラブ系統は、HT、F、Min、LCLなど、それまでの範疇に入らないバラたちです。そのため品種により特徴がバラバラで、つかみどころがありません。
樹形にも「シュラブ樹形」というのがあるため、さらにややこしい印象です。
じつは「シュラブ」の記事を書く前段階として、今回の記事をつくりました。近年作出されるバラの多くがシュラブ系統のバラです。「シュラブ」はバラの世界を豊かにしたのは確かですが、ややこしくなってしまっている原因でもあると思います。
「シュラブ」には「シュラブ系統」と「シュラブ樹形」があるということだけ、今回は押さえておいてください。
たしかにHTやF、LCLは定義がしっかりしていて分かりやすいけど、MinとSはいろいろありすぎて分かりにくいわね。Minは前に教えてもらったけど、あれもややこしかったなぁ!
▼ミニチュア系統についてはこちらをご覧ください
▼バラ初心者YOUのQ&A一覧は、こちらからどうぞ
そうなんですよ・・・僕もはじめは何も分からずに購入して。
でも、各ショップでもあいまいな表記が多いですよね。
じゃ、どっち?とか思いますもん。
地植え、鉢植えでも樹高は変わってくるし。
今の季節。つぼみが出来ても、花がちっさいですね。
ピンチ?して。つぼみもずいぶん減らしたのに。
ピンチ・・・まだよくわかってないです。
どの辺で切るのか。。。
冬支度の剪定では。これでもか!!って思いっきり心を鬼にして
短く2~30cmまで切って剪定してくださいとショップに問い合わせて連絡がありました、葉も全ておとしてくださいと。。。
春のあと、同じくらいまでいかなくても短く切ってしまったんですよね。。。
でも鉢植えなので。あまり大きくしたくないのも事実。
シュラブ・・・育ててみないと。。。わかんないですね。
横張り性とか記載されてるのって・・・横???東西南北のどれかに向かって
枝が伸びるのか???
整理を考えると直立性が一番、たくさん並べるには管理しやすいと僕自身。
シュラブとかだと。鉢より枝が広がり、移動させるときにトゲで痛い。。。
フロリパンダ。房咲きなんですね。僕は切り花用に残念ながらメインのつぼみ以外は
出始めたころに切ってしまってます。
同じように、つぼみが育てば切り花としても。ええけど。
最初のつぼみが咲き終わる頃に、他のつぼみが咲き始めるので。。。
あ。そういえば。切り花ではスプレーバラってありますよね。
考えようによっては房咲きの一種になるんでしょうか?
ミニバラって、スプレーバラみたいな感じですよね。
あ。1鉢。バラをはじめて。ついに初めて枯らしてしまいました。。。
けっこうショック。。。 一度は復活してくれたのに。
ここで色々と教えていただきありがたいです。
青系統のバラ・・・予約しすぎて、どこに置こうか悩んでる最中です(笑
ORCAさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
ピンチのタイミングや深さなんかも
一度まとめたいと思っています。
が、
今年はシュラブについてしっかりした記事を書きたいと
思っているのですよ。
でも、書かなければいけない記事が多すぎて
なかなか時間が取れなくて・・・。
来年まで持ち越しになっちゃうかなぁ。
今年はバラの育種をテーマにした映画があったんですが
その記事も書きたかったのに、書けなかったし(==
つるバラについての要望も上がっているし
シェードガーデンやベランダ栽培についてもまとめたいし・・・。
そんな中、このYOUちゃんシリーズは
初心者のちょっとした疑問に答えるものなので、
比較的短時間に書くことができるので助かっています。
取り上げられそうな、ちょっとした疑問があったら教えてくださいね^^
ORCAさんは、1輪の完成度を求めるタイプなのかな?
わたしは1輪の美しさよりも、景色としての美しさの方を取りたいので
HTよりも房咲きしてくれるFやつるバラの方が好きですね。
切花のスプレーバラは房咲きのバラですね。
切花品種って、ガーデンローズとして出回らないものが多くて
詳しい系統なんかは分からないんですが
ミニとフロリバンダの交配品種かなぁ? って思います。
シュラブはHTとFのいいとこ取りのような性質で
1輪の完成度もありながら、房咲きするという品種も多くあります。
さらに香り高いものも多いので、人気になるのも頷けますね。
でも、確かに横張り性のものが多いです。
今年わたしがそだレポしているレディオブハミルトンなんてもろに横張りです。
おっしゃるように、鉢の隙なく並べたいなら直立性の方がいいです。
でも、新しい品種ならイングリッシュローズで直立性のものも出てきていますよ。
1鉢枯れちゃったんですね。
まぁ、プロが管理するバラ園だって枯れることはあるから・・・。
原因を見極めて改善するよう気をつけられれば結果オーライです。
元気出してください^^
あいびー