バラの芽吹きから冬の休眠期まで、1年をとおしてバラがどんなふうに育つのか追いかける「そだレポ」企画です。今回はドミニク・マサドのチャリティローズ「絆KIZUNA」です。季節ごとに更新していくので、お楽しみに!
チャリティローズ「絆KIZUNA」は、こんなバラ
▲チャリティローズ「絆KIZUNA」 出展/バラの家
アプリコットから淡ピンクまでの柔らかなグラデーションに咲く チャリティローズ「絆KIZUNA」 は、フランスの育種家ドミニク・マサドさんを代表する品種です。
2011年の東日本大震災直後に、被災者のために贈られたのがこの チャリティローズ「絆KIZUNA」で、売り上げの10%が被災地のために使われています。未曽有の大災害を受け、いち早く動いてくれたドミニク・マサドさんとフランス・オールドローズ協会には、多大な感謝と惜しみない拍手を送りたいものです。
ドミニク・マサドさんは長らくフランスの名門ナーセリー・ギヨーでバラの育種を務めてきた方。近年独立し、独自ブランドを展開しています。華やかさと複雑な花色のバラ、さらに香りの強いバラが多くあります。
チャリティローズ「絆KIZUNA」はフルーティーな香り。香りの強さは「中香」です。樹形は90~120cmのシュラブ樹形。
「バラの家」のスコアは、樹勢/普通 ウドンコ病/普通 黒星病/普通 耐陰性/普通 耐寒性/普通 耐暑性/普通。
耐病性が特別強いわけではないけれど、通常の管理ができれば問題なく育てられそうです。
ちなみにイギリス・ワーナー社のミニタイプのつるバラに「絆(キズナ)」というバラがあります。こちらは濃いピンク色でポンポン咲きの小花を咲かせる、まったく別品種です。
今回育てる チャリティローズ「絆KIZUNA」の環境DATA
関東の農園/朝~夕方までよく日の当たる環境で、盆栽用の花台に載せて管理
一昨年の春に新苗でお迎えした株
今年の目標/主幹同士がくっついて伸びているのが気になります。樹高が高くなりがちなので、撮影しやすいようコンパクトに育てたいと思います。
育てる人/天女の舞子
*バラの育て方は、育てる場所により、それぞれの木の状態により、また目的や好みによっても人それぞれです。ここで紹介する育て方は、一例として参考になさってください!
1月16日の「絆KIZUNA」/冬剪定・植え替え
▲現在の樹高は120cmほど 写真提供/天女の舞子
チャリティローズ「絆KIZUNA」は、その収益金の一部が東日本大震災の被災地に寄付される特別なバラです。震災からもう10年以上たちますが、今もこのバラの人気が高いのは、チャリティローズという側面だけでなく、バラの品種としても優れているということだと思います。
わたしがこのバラを選んだのは、いくつかの理由があります。まず、さまざまなナーセリーの品種を育てることで、その特徴を知り、バラ育てのスキルアップに生かしたいという思いがありました。
つぎに、じつはドミニク・マサドさんがギヨーの育種家をしていたときの品種「ソニアリキエル」を育てたことがあって、とても気に入っていたので他の品種にも興味があったから。
そして、花がキレイで香りが良くて、そのうえ強健で育てやすいと、「絆KIZUNA」をべた褒めしている動画を観たこと。さらに、我が家はピンク系のバラがとても多くて、オレンジや黄色系がないことなどから選びました。
これから1年、チャリティローズ「絆KIZUNA」のそだレポをしていきます。
現在の樹高は120cmほどで、10号鉢で育てています。上の写真のとおり、今日は風が強くて大変ですが、冬剪定と植え替えをしていきます。
▲直立した主幹が3本 写真提供/天女の舞子
主幹は3本ありますが、どれも直立してくっついて生えています。真ん中の主幹を取りたい気もしますが、剪定バサミが入らないし、けっして状態の悪い枝でもないので、このまま育てることにします。
▲冬剪定後は樹高45cmに 写真提供/天女の舞子
冬剪定後の樹高は45cmほどです。切ろうか迷った真ん中の主幹は株元にしか芽がなくて、1本だけ短くなってしまいました。
▲よく白根が発達した健康そうな根 写真提供/天女の舞子
じつは昨年8号鉢から10号鉢にサイズアップしたのですが、根鉢を抜いてみると、思いのほかよく根が回っていました。
古い土を落としてよくチェックしたところ、癌腫なし、コガネムシの幼虫もいませんでした。白根がよく発達して健康そうです。
▲同じ10号鉢に土替え完了 写真提供/天女の舞子
去年と同じ10号鉢に新しい培養土で植え戻しました。
硬質赤玉土を鉢底石代わりに少し敷き、「薔薇の土」(カインズ。肥料ナシ)に元肥として「マグァンプK」大粒(ハイポネックス)を規定量の半分25gと、根腐れ防止剤「ミリオン」(ソフトシリカ)を軽く一握り混ぜた培養土を使っています。
少し斜めに植えているのは、ベイサルシュートが出ればいいな! というオマジナイのようなものです。こうすると出やすいという説があるんですよね^^
3月19日の「絆KIZUNA」/芽吹き・冬剪定の手直し
▲どの枝からも旺盛に芽吹いてきた 写真提供/天女の舞子
3月になり、「絆KIZUNA」が旺盛に芽吹いてきました。短く残した主幹からも芽吹いています。
1月の冬剪定では芽が見にくかったこともあり高さ45cmにしましたが、大きくなる品種だし後々の撮影のしやすさを考えると、もう少しコンパクトに育てた方がいいかも──ということで、今日は剪定手直しをします。
▲樹高30cmに剪定手直し 写真提供/天女の舞子
冬剪定の手直し後。樹高30cm×幅16cmになりました。
さらに、内芽になりそうなところや複数芽吹いているところを芽かきしました。
▲地際の芽を芽かき 写真提供/天女の舞子
短く残した主幹からは、3つの芽が出ています。こちらも地際の芽をかきとりました。
時期的に少し遅い剪定手直しなので、春の開花が通常より少し遅れるかも知れませんね。
最後に活力剤「リキダス」と液肥「微粉」(ともにハイポネックス)を規定量に薄めて株元に散布。さらに「ダコサプ」(ダコニール+サプロール)を芽薬として霧吹きで散布しました。
4月8日の「絆KIZUNA」/ベイサルシュート発生
▲新芽が伸び、樹高36cmに 写真提供/天女の舞子
全体に新芽が伸び、樹高36cm×幅23cmになりました。地際からベイサルシュートが1本伸びてきました。
▲ほかにもベイサルシュート候補が2本 写真提供/天女の舞子
ほかにも、ベイサルシュートになりそうな芽が2本あります。うち1本は短くカットした主幹から伸びているので、結果オーライでしょうか。
▲ベイサルシュートの先をピンチ 写真提供/天女の舞子
ベイサルシュートの長さが26cmほどなので、そろそろ最初のピンチのしどきです。枝先を指でソフトピンチしました。ピンチ後の長さは、20cmていどです。
【追肥】
「バイオゴールドセレクション薔薇」(バイオゴールド)を10号鉢基準量(30~50粒)の半量20粒を与えました。冬の植え替え時に、元肥(マグァンプK)を基準量の半量混ぜているので、多肥にならないよう、追肥は半量にしています。
【薬剤散布】
トップジン+オルトランを散布
育てた人紹介/天女の舞子
植物を育てようと思ったきっかけは、香りのある花に惹かれたからです。なかでも香りがあり、年に何度も咲いてくれるバラに興味をもったことから、ふらりと出かけたのが「国バラ」(国際バラとガーデニングショウ)でした。ここで、バラの魅力にハマりました。
いざバラを育て始めたのはいいけれど、右も左も分からないうえに育てる環境が良くなかったらしく、最初は失敗の連続でした。でも失敗をバネに原因を探り、どうすれば上手くいくか試行錯誤を繰り返し今に至ります。まだまだ経験や勉強不足を感じることもありますが、必要な時期に必要な作業をムリなくこなせるようになってきました。ようやく初心者マークが取れたかな?
以前の日当たりの悪い住宅地の庭から、日当たり抜群の畑に栽培スペースを移し、そのおかげで、どのバラも驚くほどぐんぐん生長するようになりました。青空や雲の様子を観察したり、風の音や鳥のさえずりに耳を傾けながらバラのお手入れする時間は、なにものにも代えがたいです。
育てるときの目標は「無理なく、楽しく」。花や香りでまわりの人も笑顔にできたらいいな(^_^) 関東在住
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