バラの芽吹きから冬の休眠期まで、1年をとおしてバラがどんなふうに育つのか追いかける「そだレポ」企画です。今回は河本バラ園の「シュクレ」です。季節ごとに更新していくので、お楽しみに!
「シュクレ」は、こんなバラ
▲「シュクレ」出展/河本バラ園公式
フランス語で「砂糖」を意味する「シュクレ」(sucre)は、2016年、河本純子さん作出のバラです。
花色はクリーム色から淡いピンク色のグラデーション。中輪で、花びらの先が尖る宝珠弁のカップ咲き。カップの内側は花びらが折りたたまれるボタンアイが現れたり、ロゼットになったりと、河本ローズらしい繊細でロマンチックな印象の花です。
フルーツ系の甘い強香があります。
樹形の記載は「河本バラ園」でフロリバンダ、「バラの家」ではシュラブとなっています。おそらく、100cmまでのコンパクトサイズに管理すればフロリバンダ同様に育てられ、もう少し大きく120cmほどに育てるならシュラブ樹形になるのでしょう。
「バラの家」のスコアは、樹勢/普通 ウドンコ病/普通 黒星病/普通 耐陰性/普通 耐寒性/弱い 耐暑性/強い。
耐病性がそこまで弱いわけではないので、通常の薬剤散布ができれば問題なく育てられそうです。耐寒性が低いので、冬は防寒があった方が良さそうです。逆に耐暑性は高いので、近年多い猛暑にも比較的耐えてくれそうです。
今回育てる「シュクレ」の環境DATA
関東の農園/朝~夕方までよく日の当たる環境で、盆栽用の花台に載せて管理
一昨年の春に新苗でお迎えした株
今年の目標/ベイサルシュートが出やすい品種で枝分かれも多いので、すぐ枝が混みあってしまいます。上手く枝の管理をして、適度な間隔を保ちつつ、交差のないキレイな樹形を目指したい。あと、コンパクトに育てようと思います。
育てる人/天女の舞子
*バラの育て方は、育てる場所により、それぞれの木の状態により、また目的や好みによっても人それぞれです。ここで紹介する育て方は、一例として参考になさってください!
1月23日の「シュクレ」/冬剪定・植え替え
▲昨年の葉がまだ茂っている「シュクレ」 写真提供/天女の舞子
わたしがバラを選ぶ基準はほぼ「香り」です。「シュクレ」は、強香品種ということで選びました。人気の河本純子さんのバラということもあります。
これから1年、「シュクレ」のそだレポをしていきます。
今日は、昨年の葉がまだしっかり残っている「シュクレ」の冬剪定と植え替えをします。現在のサイズは樹高42cm×幅50cm。10号鉢で育てています。
▲昨年たくさんのベイサルシュートが発生した株元 写真提供/天女の舞子
昨年たくさんベイサルシュートが出てきて株元が混みあってきたので、悩みながら3本くらい取り除いた覚えがあります。比較的、ベイサルシュートがでやすい品種だと思います。
シュートが出やすいほかにも、とにかく枝分かれが旺盛で、剪定したところからいくつも枝が伸びてきます。風通し確保のために適宜、枝をすかす作業が必要です。
河本バラ園の品種はトゲの少ないものが多いと思われますが、この品種は多い方ですね。大きめのトゲがしっかりついていますが、不思議とトゲのないツルリとした枝もあります。
▲冬剪定後のサイズは高さ20cm×幅25cm。しっかり冬剪定 写真提供/天女の舞子
株元の低い位置にいい芽が見つからず悩みましたが、だいたいの高さをそろえてしっかり冬剪定しました。勢いの良いベイサルシュートは少し短くしています。冬剪定後のサイズは高さ20cm×幅25cm。
これだけ短くカットしているのには理由があります。この品種は枝が長く伸びてしまいがちなので、そだレポするにあたり、あまり大きいと撮影しにくいからです。広い場所が確保できるなら、ここまで短くしなくてもいいと思います。
主幹6本のうち、4本の枝は芽が確認できない状態で切っていますが・・・最悪でも芽が確認できている残り2本から枝が伸びるから大丈夫でしょう。シュートが出やすく枝が込み入ってくる品種なので、安心してわりと思い切った剪定をしています。
▲根に異常なし! 写真提供/天女の舞子
まず鉢から根鉢を抜き、土を落として根のチェックをします。ものすごく根張りがいいわけではありませんが、しっかりした根で、病気や害虫被害もありません。健康です。
▲新しい培養土で植え替え完了 写真提供/天女の舞子
去年と同じ10号鉢に植え戻しました。硬質赤玉土を鉢底石代わりに少し敷き、「薔薇の土」(カインズ。肥料ナシ)に元肥として「マグァンプK」大粒(ハイポネックス)を規定量の半分25gと、根腐れ防止剤「ミリオン」(ソフトシリカ)を軽く一握り混ぜた培養土を使っています。
今年もたくさんベイサルシュートが出るよう願いを込めて、わざと斜めに植えています。株元がよく日に当たることで、出やすくなるようです。
3月19日のシュクレ/芽吹き
▲赤い新芽の芽吹き 写真提供/天女の舞子
シュクレの赤い新芽が芽吹いてきました。思った通り、ベイサルシュートになりそうな芽も株元から出てきています。
芽が確認できない1月の段階で短く冬剪定したので、これは想定内なんですが──写真右から2本目の枝に、いい芽がありません。しばらく様子を見ますが、いずれ切り取るかもしれません。
「シュクレ」はベイサルシュートがどんどん出るので、いずれ切り取る枝が出てもあまり気になりません。
▲全体に軽く芽かきを 写真提供/天女の舞子
同じ場所から複数の芽が出ているところや、株元の混み合いそうな芽を中心に軽く芽かきしました。
最後に活力剤「リキダス」と液肥「微粉」(ともにハイポネックス)を規定量に薄めて株元に散布。さらに「ダコサプ」(ダコニール+サプロール)を芽薬として霧吹きで散布しました。
4月8日の「シュクレ」/ベイサルシュート発生・発蕾
▲全体に新芽が伸び、樹高45cmに 写真提供/天女の舞子
新芽が伸びて、全体にボリュームが出てきました。現在のサイズは樹高45cm×幅51cmほどです。枝が垂れてきているので、そろそろ支柱が必要そう。
▲ベイサルシュートの先をピンチ 写真提供/天女の舞子
株の中央からベイサルシュートが伸びてきました。株元から28cmの高さがあったところ、枝先をピンチして14cmになりました。
▲蕾が3つ 写真提供/天女の舞子
小さな蕾が上がってきました。今のところ3つあります。
【追肥】
「バイオゴールドセレクション薔薇」(バイオゴールド)を10号鉢基準量(30~50粒)のところ20粒を与えました。冬の植え替え時に、元肥(マグァンプK)を基準量の半量混ぜているので、多肥にならないよう、追肥は規定量より減らしています。
【薬剤散布】
トップジン+オルトランを散布
4月23日の「シュクレ」/蕾ふくらむ
▲蕾が10輪に 写真提供/天女の舞子
シュクレの蕾が10個くらいになりました。大きな蕾(主蕾)の横に小さな蕾(副蕾)がついているものもあります。
副蕾を摘んで主蕾を大きく育てることもできますが、わたしは取らずにどちらも咲かせることが多いです。このあたりは好みで、どちらでもいいですね。
▲来週には咲きそう 写真提供/天女の舞子
蕾は大きくふくらんでいて、ガク割れも始まっています。来週には咲きそうです。
そろそろ薬剤散布したいのですが、雨が降ってきたので中止。他のバラ鉢にマメコガネみたいな甲虫がひっくり返っていました。現状、被害はないですが、そろそろ警戒が必要ですね。
▲支柱を立てた状態で樹高50cm×幅45cm 写真提供/天女の舞子
早いうちに支柱を──と考えているうちに、先日の強風で枝が1本倒れて枯れてしまいました。そこで、慌てて支柱を立てました。
とりあえず5本の支柱を立て、それぞれ主幹を留めつけました。すべての主幹を留めようと思えばあと4本くらいの支柱が必要ですが、あまり支柱だらけにしても見た目がよくないので、これで様子を見ます。
支柱を立てて樹高50cm×幅45cmくらいになりました。
バラのそだレポと関係ありませんが、右側に写っているのは八重オダマキの「ホワイトバロー」です。花が可愛くて、あまり手入れしなくても毎年咲くので気に入っています。
育てた人紹介/天女の舞子
植物を育てようと思ったきっかけは、香りのある花に惹かれたからです。なかでも香りがあり、年に何度も咲いてくれるバラに興味をもったことから、ふらりと出かけたのが「国バラ」(国際バラとガーデニングショウ)でした。ここで、バラの魅力にハマりました。
いざバラを育て始めたのはいいけれど、右も左も分からないうえに育てる環境が良くなかったらしく、最初は失敗の連続でした。でも失敗をバネに原因を探り、どうすれば上手くいくか試行錯誤を繰り返し今に至ります。まだまだ経験や勉強不足を感じることもありますが、必要な時期に必要な作業をムリなくこなせるようになってきました。ようやく初心者マークが取れたかな?
以前の日当たりの悪い住宅地の庭から、日当たり抜群の畑に栽培スペースを移し、そのおかげで、どのバラも驚くほどぐんぐん生長するようになりました。青空や雲の様子を観察したり、風の音や鳥のさえずりに耳を傾けながらバラのお手入れする時間は、なにものにも代えがたいです。
育てるときの目標は「無理なく、楽しく」。花や香りでまわりの人も笑顔にできたらいいな(^_^) 関東在住
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