バラの芽吹きから冬の休眠期まで、1年をとおしてバラがどんなふうに育つのか追いかける「そだレポ」企画です。今回はデルバールの「ローズシナクティフ」です。季節ごとに更新していくので、お楽しみに!
「ローズシナクティフ」は、こんなバラ
▲「ローズシナクティフ」 出展/デルバールJAPON公式
フランスはパリ近郊にあるバガテル公園で開催される「バガテル国際バラ新品種コンクール」は、世界屈指のバラのコンクールです。2006年に開催された同コンクールで、金賞とベストフレグランス賞をダブル受賞したのがデルバール社の「ローズシナクティフ」です。
「バガテル国際バラ新品種コンクール」について、京成バラ園のヘッドガーデナー・育種家の村上敏さんはこう語ります。
「バラの品種改良をけん引してきたフランスは育種家の数も飛びぬけて多い。歴史的な重みと、多くの育種家の研鑽の場がフランスです。 パリ近郊のバガテル公園でのコンテストで認められるということは芸術の都パリといわれるとおり、世界が認める美しさ、香り、それに加え丈夫で育てやすいというお墨付きをいただいたということです」。
つまりデルバールの「ローズシナクティフ」は、「世界が認める美しさ、香り、それに加え丈夫で育てやすいというお墨付き」のバラなのです!
日本国内でも越後丘陵公園「第2回 国際香りのばら新品種コンクール」で金賞を受賞しています。香りの評価は「上品な甘さとウッディノートのあるブルー系の香り」。もちろん強香です。
じつはこのバラ、デルバールと資生堂とのコラボレーションで誕生した品種です。このバラから資生堂のオードパルファム「ローズシナクティフ」が作られているほどなので、香りのすばらしさは折り紙付き。
「ローズシナクティフ」は香りだけでなく、バラ品種としても優秀です。
明るい藤紫色の花は花径8~10cmの大輪花。フリルのある丸弁高芯咲きで、とてもエレガントな印象。花つきが良く、1枝に5~6輪の房咲きになります。
耐病性がとても高く、ほんの少しの薬剤散布で病気を防除できます。樹高150~200cmとやや大型のシュラブ樹形で、地植えで育てればかなり見ごたえのある株になります。コンパクトに仕立てれば、鉢栽培もできます。
「バラの家」のスコアは、樹勢/強い ウドンコ病/強い 黒星病/強い 耐陰性/普通 耐寒性/普通 耐暑性/強い。
どれも頼もしいスコアです。耐暑性も強いのが、近年猛暑続きの日本ではありがたいですね。
「ローズシナクティフ」は、何度か名前を変えています。「エモーション・ブルー」「ローズシネルジック」と表記されている場合もあります。
今回育てる「ローズシナクティフ」の環境DATA
関東の農園/朝~夕方までよく日の当たる環境で、盆栽用の花台に載せて管理
一昨年の春に新苗でお迎えした株
今年の目標/香りを上手く伝えられたらいいな。シュートが出にくいようなので、今年はベイサルシュートが出てほしいです!
育てる人/天女の舞子
*バラの育て方は、育てる場所により、それぞれの木の状態により、また目的や好みによっても人それぞれです。ここで紹介する育て方は、一例として参考になさってください!
2月13日の「ローズシナクティフ」/冬剪定・冬の植え替え
▲冬剪定前。樹高は50cmていど 写真提供/天女の舞子
強香のバラ、なかでも資生堂から香水がつくられているほど香りの良いバラということで興味をもったのがデルバールの「ローズシナクティフ」です。品種名もステキですね。
ブルーローズが好きなので、青みがかったモーブピンクの花という点もポイントが高いです。香りのバラを集めていると、どうしてもピンク系ばかりになってしまいがちなので、モーブの花色は貴重です。
これから1年、「ローズシナクティフ」のそだレポをしていきます。
今日は冬剪定と冬の植え替えをします。冬剪定前の樹高は約50cm。蕾もついていますが、切り取ります。
▲樹高15cmにしっかり冬剪定 写真提供/天女の舞子
大きくなりがちな品種なので、樹高15cmにしっかり冬剪定しました。1本の主幹にひとつの外芽を残す感じにしています。
たっぷり場所があり、大きくなっても平気なら、ここまで短くする必要はないと思います。
▲若い枝の切り口から樹液が! 写真提供/天女の舞子
半袖でも大丈夫なほど暖かかったせいか、剪定した切り口から樹液が溢れてきました。おそらく昨年出てきた新しい枝です。
数分すると、雫ができるくらいになりました。
▲よく発達した健康な根 写真提供/天女の舞子
8号鉢から根鉢を抜き、しっかり土を落としてチェックしました。根はよく発達していて、病気も害虫もありません。健康な根です。
状態がいいので、8号鉢から鉢増しして10号鉢に植えていきます。
▲10号鉢に植え替え 写真提供/天女の舞子
10号鉢に植え替え完了です。
硬質赤玉土を鉢底石代わりに少し敷き、「薔薇の土」(カインズ。肥料ナシ)に元肥として「マグァンプK」大粒(ハイポネックス)を規定量の半分25gと、根腐れ防止剤「ミリオン」(ソフトシリカ)を軽く一握り混ぜた培養土を使っています。
植え替えが終わったころには、樹液のしたたりは止まりました。ひどいときには2週間も止まらず、生長に悪影響が出ることもあると聞くので、止まってよかったです。
3月19日の「ローズシナクティフ」/芽吹き
▲しっかりした芽だけを残して芽かき 写真提供/天女の舞子
ローズシナクティフが芽吹いてきました。
しっかりした芽を残し、小さな芽は指で取り除きました。様子を見ながら芽かきをして、よい枝を伸ばしたいと思います。
芽薬として「ダコサプ」(ダコニール+サプロール)を噴霧器で散布しました。
4月8日の「ローズシナクティフ」/新芽が伸びる
▲葉が展開し、ガッシリ繁茂 写真提供/天女の舞子
全体に葉が展開し、新芽が伸びてきました。現在のサイズは樹高23cm×幅38cmです。
小さいながら、ガッシリと育っています。
【追肥】
「バイオゴールドセレクション薔薇」(バイオゴールド)を10号鉢基準量(30~50粒)の半量20粒を与えました。冬の植え替え時に、元肥(マグァンプK)を基準量の半量混ぜているので、多肥にならないよう、追肥は半量にしています。
【薬剤散布】
トップジン+オルトランを散布
4月30日の「ローズシナクティフ」/花枝が伸びて蕾ふくらむ
▲樹高50cm、蕾は6つ 写真提供/天女の舞子
花枝がぐっと伸びてそれぞれの先に蕾がつきました。蕾は6つついています。
株のサイズは樹高50cm×幅40cm。強風で花や枝が被害に遭わないよう、今日は支柱立てをします。
▲長い3本の枝に支柱を 写真提供/天女の舞子
風の影響を受けそうな長い枝3本に支柱を立てました。短い枝はそのまま様子を見ます。
5月7日の「ローズシナクティフ」/蕾のガク割れ
▲6つの蕾が順にガク割れ 写真提供/天女の舞子
ローズシナクティフには現在6つの蕾があります。
▲開花まで、もうひといき! 写真提供/天女の舞子
早いものから順にガク割れしてきていますが、開花までもう少しかかりそう。来週には咲くかな?
5月12日の「ローズシナクティフ」/春花が開花
▲春の一番花が開花 写真提供/天女の舞子
ローズシナクティフの春の一番花が開花し始めましたが、連日の風雨でだいぶ外弁が傷んでいます。
現在の株のサイズは樹高65cm×幅60cmです。
▲最初の1輪はオープンカップ咲き 写真提供/天女の舞子
一番咲き進んでいる花はオープンカップ咲き。外側の花びらが雨で傷んでいます。開き始めたばかりなのに、内側の花びらが腐って茶色くなっている花もあり、雨の影響がかなり出てしまいました。
撮影時間が夕方のせいか、鼻を近づければなにかしら香るかな?というていどの香りの強さでした。ほかのバラも香りがしないので、このところの雨のせいか時間のせいかもしれません。
▲花色比較 写真提供/天女の舞子
青バラ4輪の花色比較です。下が「ローズシナクティフ」で、上3輪が左から「イエライシャン」「マミーブルー」「ブルーリバー」です。
「マミーブルー」がわたしが思っている青バラに一番近い基準となる花色で、それと比較すると「イエライシャン」が藤色寄り、「ブルーリバー」が赤みがかっています。「ローズシナクティフ」はピンク寄りかな? という印象です。
5月15日の「ローズシナクティフ」/満開~咲き終わり
▲ふっくらと満開に 写真提供/天女の舞子
春の一番花が満開です。
▲咲き始めはふっくらした丸弁高芯咲き 写真提供/天女の舞子
花形はふっくらとした丸弁高芯咲きからカップ咲きに。花径は10cmていどの大輪です。
せっかくの満開ですが、今年の春の一番花は雨傷みがひどく、少し残念でした。
▲咲き終わりは茶色く残ったり散ったり 写真提供/天女の舞子
花保ちは1週間弱でしょうか。茶色くなって枝に残ったままの花もあれば、写真のように花びらが散っている花もあります。
▲花びらをかじるハナムグリ 写真提供/天女の舞子
そういえば背中に斑点があるのでこれはハナムグリだと思いますが、花びらをかじっていました。
ハナムグリは花粉を舐めにくるだけかと思っていましたが、ついでに花びらも食害するんですね! 証拠写真をありがとうございます。
5月23日の「ローズシナクティフ」/花後の切り戻し
▲切り戻す前からたくさん芽吹いている 写真提供/天女の舞子
春の一番花が完全に終わったので、花枝を切り戻します。今年そだレポしている「絆KIZUNA」と同じように、切り戻す前からもう新しい芽がいくつも出ています。これ、切り戻ししないとどうなるんでしょうね?
▲樹高30cmにしっかり切り戻し 写真提供/天女の舞子
樹高60cm→30cmまで、かなり短く切り戻しました。もう芽が出ているので、問題ないと思います。やたら元気がいいので、切り戻した枝を3本ほど、鉢に挿してしまいました。うまく根付くかな?
撮影後に、バイオゴールド20粒を与えました。
6月17日・20日の「ローズシナクティフ」/春の2番花の蕾ふくらむ→開花
▲高さ80cm×幅70cm 写真提供/天女の舞子
まず6月17日の様子から。春の2番花の蕾がふくらんできました。
現在の樹高は80cm×幅70cmていど。もう一息で咲きそうな蕾(左端)がひとつ、ほかに5つほどの蕾があります。もう少し増えるかな?
▲開花までもう一息! 写真提供/天女の舞子
この蕾はそろそろ咲きそうですが、残念ながら明日は雨。花びらが傷んでしまいそうです。
▲2番花が開花。花径は6.5cm 写真提供/天女の舞子
ここからは3日後の6月20日のレポートです。春の2番花が開花しました。5月23日に芽吹いているところまで切り戻しをしているので、ちょうど1カ月で開花しました。
花径は6.5cm。1番花よりかなり小ぶりです。
▲外弁の雨傷みがひどい 写真提供/天女の舞子
正面からならまぁまぁ見られますが、じつは横からみると、外弁が雨でかなり傷んで茶色くなっています。今年は雨が多くてどのバラも傷んでいますが、「ローズシナクティフ」は傷みがひどいように思えます。
現在朝の7時半ですが、この花は鼻を近づければほんのり香ります。例年ならもう少し香りますが、暑すぎるせいか今年はどのバラも香りが弱いです。
撮影後に「ストレスブロック」(ハイポネックス)を水に薄めて与えました。早朝なのに既にかなり暑いので、暑さのストレスを和らげられるといいなと思います。
6月24日の「ローズシナクティフ」/2番花の切り戻し
▲開花から4日でもう咲き終わり 写真提供/天女の舞子
最初の2番花が開花した6月20日から4日後。気温が高いこともあり、ほとんどの花がもう終わりを迎えています。
上の写真の一番右端の枝を見れば分かるのですが、枝先に花がある状態でもう次の花(3番花)の枝が伸びていて、この枝先に蕾がついています。
▲2番花の切り戻し 写真提供/天女の舞子
2番花の花がらを切り戻しました。元の株のサイズが樹高80cm×幅90cm。切り戻し後の株のサイズは樹高75cm×幅70cmです。
▲花びらの枚数が少なくなってきた 写真提供/天女の舞子
まだキレイな花を1輪だけ残しましたが、これも終わり次第切り戻します。花びらの枚数は少なく、花色も薄いうえに花弁が傷んでいます。
7月4日・9日の「ローズシナクティフ」/3番花が開花~咲き終わり・切り戻し
▲早くも3番花が開花 写真提供/天女の舞子
まず前回のレポートで2番花の切り戻しをしてから10日後の7月4日の様子から。
2番花があるうちに3番花の花枝が伸びて蕾がついていたので、切り戻しからたった10日で3番花が開花しました。早いですね。
▲4日後には完全に枯れてしまった 写真提供/天女の舞子
続いて5日後の7月9日の様子です。7月4日に咲いていた花はすべて枯れていますが、新しい蕾もひとつついています。
▲花も蕾も夏花の特徴 写真提供/天女の舞子
新しく咲いた花もありますが、花径5.5cmと小ぶりで、花びらの枚数も少なくなっています。これはもう夏花ですね。咲いたばかりなのもあり、香りはそれなりあります。
蕾も1輪ありますが、花枝が短くすぐに蕾になっています。こちらも夏花の特徴ですね。
▲咲いている枝を残して3番花を切り戻し 写真提供/天女の舞子
まだ咲いている枝のみ残して他を切り戻しました。
水やり用の水に「ストレスブロック」(ハイポネックス)と竹酢液を薄めて潅水しました。
8月1日・19日の「ローズシナクティフ」/切り戻し・夏花のピンチ
▲高いところは77cmに達している 写真提供/天女の舞子
水やりだけお願いしてしばらく留守にして戻ってみると、以前咲いていた枝もすっかり花が終わっていました。高さがかなり不揃いだし、栽培スペースの都合もあってあまり大きくできないので、高さを切りそろえたいと思います。
剪定前の株のサイズは高さ77cm×幅67cm。
▲剪定後は高さ50cmに 写真提供/天女の舞子
剪定後の株のサイズは高さ50cm×幅50cmていど。剪定前の2/3ほどのサイズに。この時期にしてはかなり思い切った剪定になりました。
株元の枝はかなり太くてガッシリしています。株元に近い葉が黄色くなっていますが、病変はないので問題ないでしょう。
▲葉が茂り、耐暑性の高さを実感 写真提供/天女の舞子
ここからは、前回のレポートから18日後の8月19日の様子です。毎日酷い暑さですが、「ローズシナクティフ」は葉が茂り、とても元気そうです。耐暑性はかなり高そうですね。
夏花の蕾はピンチしていますが、ピンチしそこねた花が咲いていました。このところ薬剤散布をしていないので、虫にかじられてあまりキレイな花ではありません。蕾と一緒に、さっそくこの花もピンチしました。
9月12日・15日の「ローズシナクティフ」/施肥と秋剪定
▲9月15日の株の様子 写真提供/天女の舞子
いつまでも猛暑が続いているので、今年は9月中旬に秋剪定する予定です。事前準備としてその少し前の9月12日に固形肥料「バイオゴールドセレクション薔薇」(バイオゴールド)を10号鉢目安30粒~50粒のところ、半分の15粒与えました。まだ暑いので控え目です。
同時にコガネムシの幼虫対策を兼ねた害虫予防として「ベニカXガード」(住友化学園芸)を株元に散布。水やりの水に「ストレスブロック」(ハイポネックス)を混ぜて潅水しました。
▲カミキリムシにかじられた枯れ枝 写真提供/天女の舞子
枝の状態を確認してみると、1本、細いめの主幹が枯れています。枝の付け根に表皮がかじられた痕があるので、カミキリムシ被害でしょう。細いめの主幹なので、産卵はされていないと思います。
ほかにもエダシャクらしきイモムシがいたのでテデトール(手で取る)で駆除しました。
▲取り除いた花と蕾 写真提供/天女の舞子
花や蕾が3輪ありました。蕾はボーリングしているようです。咲いてもあまりキレイではなく、株自体は暑さに強いけれど、花は暑さに弱そうです。
▲秋剪定後の様子 写真提供/天女の舞子
秋剪定前の株のサイズは70cm×67cm。秋剪定後の株のサイズは高さ50cm×幅39cmになりました。
台風10号の長雨と大雨でもともと下の方の葉が落ちていたので、秋剪定後はほとんど葉がなくなってしまいました。カミキリムシにかじられた枯れ枝も取り除きました。
育てた人紹介/天女の舞子
植物を育てようと思ったきっかけは、香りのある花に惹かれたからです。なかでも香りがあり、年に何度も咲いてくれるバラに興味をもったことから、ふらりと出かけたのが「国バラ」(国際バラとガーデニングショウ)でした。ここで、バラの魅力にハマりました。
いざバラを育て始めたのはいいけれど、右も左も分からないうえに育てる環境が良くなかったらしく、最初は失敗の連続でした。でも失敗をバネに原因を探り、どうすれば上手くいくか試行錯誤を繰り返し今に至ります。まだまだ経験や勉強不足を感じることもありますが、必要な時期に必要な作業をムリなくこなせるようになってきました。ようやく初心者マークが取れたかな?
以前の日当たりの悪い住宅地の庭から、日当たり抜群の畑に栽培スペースを移し、そのおかげで、どのバラも驚くほどぐんぐん生長するようになりました。青空や雲の様子を観察したり、風の音や鳥のさえずりに耳を傾けながらバラのお手入れする時間は、なにものにも代えがたいです。
育てるときの目標は「無理なく、楽しく」。花や香りでまわりの人も笑顔にできたらいいな(^_^) 関東在住
▼そだレポ検索は、こちらのページを利用してください