植物学的にいうと、バラとは、バラ科、バラ属に属する植物です。ここでは分類学の父と称されるスウェーデンの植物学者リンネが作り上げた2命名法による、バラの学名表記について紹介します。さらに、なぜ学名を知ることが大事なのか、その理由についても書いています。
バラの学名を知ろう!
バラはバラ科、バラ属に属する植物です。
バラ科にはバラ属以外にもいくつもの属が含まれています。
バラ科の植物いろいろ
▲左は桜(バラ科サクラ属) Rosaceae Cerasus
▲右は桃(バラ科モモ属) Rosaceae Amygdalus persica
▲左はリンゴ(バラ科リンゴ属)Rosaceae Malus
▲右はコデマリ(バラ科シモツケ属コデマリ)Rosaceae Spiraea cantoniensis
どれもバラ科の仲間です。他にもイチゴやナシ、ビワなどもバラ科です。バラ科にはいろいろな属のいろいろな花が含まれているのですね。
バラの学名表記は?
わたしたちが普通「バラ」と呼んでいる植物は
バラ(バラ科バラ属) Rosaceae Rosa
です。
右側にアルファベット表記したものが学名です。Rosaceae の部分が「バラ科」を表し、イタリック体の Rosa の部分が「バラ属」を表しています。学名は通常、科名の下から「属名+種小名」で表記されます。
上の写真は日本に自生している原種のバラ「ハマナス」です。これを「属名+種小名」で学名表記すれば
Rosa rugosa (ロサ・ルゴサ)
となります。rugosaの部分が種小名です。この学名から「バラ属ルゴサ種の植物」という意味が読み取れます。原種のバラは、だいたいこういう学名表記になります。
学名は基本的にラテン語で表記されています。ただし、中にはギリシア語や外来語が含まれる場合もあります。種小名には、多くはその種の特徴をよく表す形容詞が使われていますが、人名や地域名などが使われている場合もあります。
属名は先頭の文字を大文字に、種小名は小文字で表記されます。属名と種小名はイタリック体(斜体)で表記されます。
種小名の最期に「L.」というように大文字+ピリオドがついている場合がありますが、これはこの学名を発表した研究者(=学名の命名者)の名前の頭文字です。正式な学名表記では、命名者の名前は省略せずきちんと書かれます。
学名表記の詳細はまた別のページにまとめています。
ロサ・ルゴサ(Rosa rugosa) 以外にも、バラの原種にはさまざまな種類があります。
ヨーロッパの原種バラにはロサ・カニナ(Rosa canina)、ロサ・ガリカ(Rosa gallica)などがあります。
中国の原種バラにはコウシンバラ(Rosa chinensis)、ナニワイバラ(Rosa laevigata)などがあります。
日本の原種バラには、ロサ・ルゴサの他にもサンショウバラ(Rosa hirtula)や、テリハノイバラ(Rosa wichuraiana)などがあります。
これら原種の種小名を頭に入れておくと、たくさんあるバラの系統や品種改良の歴史を理解するのに役立ちます。
▶学名表記の詳細についてはこちらをご覧ください
園芸品種の学名表記は?
▲園芸品種のピース
原種のバラを交配させて人工的に作り出されたのが、園芸品種のバラです。
園芸品種の学名は基本的に「属名+種小名+`園芸品種名´」で表記されます。バラの場合は複雑に交配がくり返されているためか、種小名が省略されていることが多いようです。
Rosa `Peace´
このように、「属名+`園芸品種名´」で表記されます。この学名からは「バラ属のピースという園芸品種」という意味が読み取れます。園芸品種名の前後には`品種名´ と、引用符のちょんちょんをつけて表記されます。
どうして学名表記をするの?
▲クリスマスローズ(ヘレボルス・オリエンタリス Helleborus orientalis)
たとえばこの花、なんだかご存知ですか? 「クリスマスローズ」ですね。「ローズ」とついていますが、バラとは何の関係もありません。キンポウゲ科クリスマスローズ属の植物でヘレボルスと呼ばれることもあります。じつはこのヘレボルスが学名で、Helleborus と書きます。
このヘレボルスは大きく2種類に分けられます。
クリスマスの頃に開花するヘレボルス・ニゲル (Helleborus niger)と、春になりイースターの頃に咲くヘレボルス・オリエンタリス (Helleborus orientalis)です。
この花は、クリスマスの頃に咲くから「クリスマスローズ」という名前がつけられたので、厳密に言えば冬に咲くヘレボルス・ニゲルだけが「クリスマスローズ」で、春になってから咲くヘレボルス・オリエンタリスは「クリスマスローズ」ではありません。
両者を区別する意味でヘレボルス・オリエンタリスを「春咲きクリスマスローズ」とか「レンテンローズ」(イースター前の四旬節=レント に咲くバラという意味)と呼ぶこともあります。
なんだかややこしいですね。
一般に流通している花の名前は、このように紛らわしいものが多くあります。でも、学名には同じものが二つと存在しませんから、学名表記すればその植物が何なのかはっきり分かります。
「これはヘレボルス・ニゲル です。冬に咲きます」
「これはヘレボルス・オリエンタリスです。春に咲きます」
と言えば、混乱することはありません。
また、学名は世界共通の名称ですから、国や地域により同じ植物がさまざまな呼び方をされて混乱するということがありません。
「クリスマスローズ」と聞いて「バラの仲間かな?」と勘違いすることもないし、ヘレボルス・オリエンタリス の方を見て「春になって咲くのにどうしてクリスマスローズって言うんだろう?」と頭を悩ませなくても済みます。お店によって「クリスマスローズ」「春咲きクリスマスローズ」「レンテンローズ」などと表記が違っていて「同じ花なのか、別の花なのかよく分からない・・・」と思うこともありません。
まとめ
学名は基本ラテン語で表記され、バラの原種の学名を知ることで複雑やバラの系統や品種改良の歴史を理解しやすくなります。
バラに限らず植物の流通名は意外と紛らわしいことが多いのですが、世界共通語である学名を知ることで、それがどんな植物なのかきちんと知ることができます。
きちんと植物を理解しようと思えば欠かせない学名。これからちょっと気にしてみてくださいね!
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