いざバラを買おうとすると、バラの苗にはいくつかの種類があることに気がつきます。どの苗を選ぶべきか、迷ってしまうこともありますよね。それぞれどんなメリット・デメリットがあるのか、分かりやすく説明します。


バラの苗には「新苗」「大苗」「鉢苗」の3種類がある

ラの苗をさす言葉には、意外といろいろな種類があるものです。新苗、一年(生)苗、大苗、二年(生)苗、鉢苗、開花苗、裸苗、長尺苗、接ぎ木苗、挿し木苗・・・。バラの苗を選ぼうとして、困ってしまった経験はないですか? 「あれ? 新苗って何だっけ?」「初心者ならどれを選べばいいんだろう?」・・・と。

 

初心者が必ず押さえておきたいのは「新苗」「大苗」「鉢苗」3種類です。ここでは、バラの苗の種類を、「新苗」「大苗」「鉢苗」を中心にそれぞれ分かりやすく説明します。

 

バラは、通常、接ぎ木で作られる

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ラの苗は、通常、「芽接ぎ」または「切り接ぎ」という方法で、台木に、咲かせたい品種のバラを接ぎ木して作られます。「芽接ぎ」は9月ごろに行われ、「切り接ぎ」は1月ごろに行われます。現在では「芽接ぎ」で作るのが主流のようです。

 

接ぎ口には固定させるためのビニールテープが巻かれています。

 

バラ苗を作る国により、台木にするバラは違う

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▲日本の苗木の台木に利用されているロサ・ムルティフロラ(ノイバラ)

ラ苗の台木は、日本ではロサ・ムルティフロラ(ノイバラ)が使われます。ロサ・ムルティフロラは日本原産の原種バラで、病気にかかりにくく、夏の暑さにも冬の寒さにも強い日本の気候によく合った強健なバラです。

 

ただし近年、ロサ・ムルティフロラの台木は*根頭がん腫病にかかりやすくなっているようです。どのナーセリーでも予防対策を取っていますが、少しは出てしまうようです。

 

*根頭がん腫病は、アグロバクテリウムという細菌により発症するバラ科の植物の病気です。根頭がん腫病を発症すると、株元や根に大きなコブができ、生育障害を引き起こします。重症になると、バラを枯らしてしまうこともあります。それだけでなく、根頭がん腫病は次々と感染していくという怖さがあります。何本ものバラを育てている方にとって、とても恐ろしい病気なのです。根頭がん腫病にかかったバラは、基本的に廃棄処分します。

 

ヨーロッパの苗は主にロサ・カニナロサ・ラクサを台木にしていて、アメリカの苗ドクター・ヒューイマネッティというバラが台木に使われています。(ロサ・ルゴサなど、他にも何種類かの台木があるそうです)。

 

ロサ・カニナの台木は生長するのにやや時間がかかり移植に弱いところがあるけれど根頭がん腫病にかかりにくいという特徴があります。ドクター・ヒューイの台木はとても立派な大きな株になるけれど寿命が短いなどと、それぞれ少しずつ特徴が異なるようです。

 

「新苗」とは、接ぎ木して間もない赤ちゃん苗

▲新苗は、ひょろっとした1本の幹の先につぼみや花がついた状態で売られる

接ぎなら9月ごろに、切り接ぎなら1月ごろに作った苗木を春まで育てて4月ごろから販売されるのが「新苗」です。芽接ぎで作った新苗なら、接いでから半年ちょっと経っています。切り接ぎで作った新苗なら、接いでから3ヵ月ほどしか経っていません。「新苗」は、まだまだ赤ちゃんのような苗です。

 

新苗はひょろりとした幹が1本立っていて、多くはつぼみや花がついています。ただし、つるバラの新苗にはつぼみはついていません。つるバラでも例外的に、カクテルのようにシュラブ系統のつるバラの場合は、つぼみがついていることがあるようです。

 

新苗は日本特有の苗で、輸入苗の新苗というのはありません。このため、すべて輸入苗の正規のイングリッシュ・ローズに新苗は、ありません。

 

新苗は「1年(生)苗」「春苗」という呼び方がされることもあります。

 

新苗のメリットとデメリット

▲新苗は、実際の花を見て選ぶことができる

苗のメリットは、実際の花を確認して選べること。他の苗に比べて、価格が安いことが挙げられます。

 

ブランドバラの新苗で3000円弱。ノーブランドバラの新苗で1000円ていどです。

 

デメリットは、接ぎ木してからあまり時間が経っていない赤ちゃんのような苗なので、接ぎ口を守りながら生長に合わせて適切な管理が必要なこと。新苗は、そのまま育てるには適さない小さな鉢に植えられているので、すぐに植え替えや鉢増しする必要があるのもデメリットといえます。

 

また新苗についている蕾は、株にエネルギーを回すために開花させず、秋まで繰り返し摘み取らなければいけません。せっかくの蕾を摘むのは、バラ好きにはかなり勇気のいることです。四季咲きバラなら、秋の花から楽しめます。

 

新苗はあまり初心者向きではなく、バラを育てた経験がある人向きの苗です。

 

新苗の購入から開花までのカレンダー

▲秋までは、すべて蕾を摘む

に新苗を購入したら、摘蕾と、2回ていどの鉢増しを繰り返しながら秋まで管理します。花は秋花から咲かせられます。5月に新苗を購入したとすれば、約5ヵ月後の秋から花が楽しめることになります。

 

「大苗」とは、しっかり育った大人の苗

▲葉も花もない、枝だけの状態で売られる大苗

苗を、さらに地植えで育てて秋に掘りあげたものが大苗です。大苗は、9月~2月ごろに出回ります。芽接ぎで作った苗なら1年以上育ててあり、切り接ぎで作った苗でも10ヵ月ていど育ててあるので、しっかりとした大人の苗といえます。

 

大苗にはがっしりした30~40cmほどに切り詰めた幹が2~3本あるのが特徴です。大苗は秋からバラが休眠している冬に流通します。多くは6号ていどのプラスチック鉢に植えられていますが、これは仮植えなので、そのままこのポットで育てられるわけではありません。12月中旬~2月の間にかならず植え替えが必要です。

 

バラが休眠する12月中旬~2月に植えつければ、翌年の春からバラの花が楽しめます。

 

大苗は二年(生)苗と呼ばれることもあります。

 

大苗のメリットとデメリット

苗のメリットは、約1年間しっかり育てた大人の苗なので、新苗で必要な鉢増しという作業や、接ぎ口がはがれないように気を配る必要がありません。このため、初心者でも失敗しにくい苗です。

 

デメリットは、秋から冬に出回る短く切り詰めた苗なので実際の花を確認することができないところです。また、新苗に比べて価格が高くなります。

 

ブランドバラの大苗で5000円前後。ノーブランドバラの大苗で2000円ていどです。

 

大苗の購入から開花までのカレンダー

▲大苗なら、購入した次の春から花が楽しめる

苗を休眠期の12月~2月に植えつけておけば、翌春から花を楽しめます。12月に大苗を購入したとすれば、半年後から花が楽しめます。

 

「鉢苗」と「中苗」は、注意が必要

▲鉢苗は実際の花が見られ、しばらく植え替えせずに育てられる

苗は、大苗をポットに植えたものです。春バラのシーズンと秋バラのシーズンに店頭に出回ります。

 

春に出回るものは、接ぎ木してから約1年半ナーセリーでしっかり育てられた大苗を、冬に鉢に植えたものです。秋に出回るものは、新苗を秋まで鉢で育て続けたものです。

 

どれも大苗と同ていどの期間を経ているしっかりした大人の苗です。

 

「バラの家」では、新苗をそのまま鉢で育てたものを「中苗」と呼んでいます。「新苗」より育っているけれど「大苗」ほどではないという意味で「中苗」なのでしょう。

 

鉢苗は株元から大きな幹が数本出ていて、しかも蕾や花がある状態です。鉢苗はプラスチック鉢に植えられていますが、新苗のポットのように仮のものではなくそのままバラが育てられる大きさのある鉢です。鉢苗の鉢は最低でも6号の大きさがあり、イングリッシュローズには7号鉢が使われています。

 

鉢苗のメリット・デメリット

苗のメリットは、実際の花が見られるということ。さらに、しっかりと植え込んであるので、しばらくその鉢のまま植え替えしなくていいということです。(しばらくといっても、花が終わるまでの数カ月です)。

 

従来の鉢苗は、しっかり育った大苗でしかも花が見られるということで、メリットの多い苗でした。

 

しかし近年では、流通上のトラブルを防ぐためバラの生育に適さない剪定をしていたり、早春の手入れがきちんとされていなかったり、ナーセリーでの植え替え回数が多いので根頭癌腫病のリスクが高いという鉢苗が増えてしまい、デメリットの多い苗が増えてしまいました。

 

きちんとしたナーセリーの鉢苗なら問題ありませんが、そうでないナーセリーの苗が増えたため、だれにもオススメできない低品質で高額な商品のことも多いです。

 

鉢苗は大苗同等の値段です。ブランドバラなら5000円前後します。

 

「鉢苗」の購入から開花までのカレンダー

▲鉢苗なら、購入してすぐ花が楽しめる

苗は、購入したときについている蕾からすぐに咲かせて楽しめます。

しかし問題の多い鉢苗の場合は蕾を摘み、少しの花だけを咲かせるに留めた方が株に優しい手入れといえます。

 

つるバラの苗

枝先を長く残したつるバラの苗「長尺苗」

 

▲枝先を長く残したつるバラの苗は「長尺苗」

るバラにも「新苗」と「大苗」がありますが、近年では、枝先を長く残した「長尺苗」と呼ばれる苗がメインです。

 

長尺苗はつるバラにしては小さい鉢に植えられているので、バラの休眠期(12月中旬~2月)なら根の土を落として地植えまたは10号以上の鉢に植え替えを。バラの生長期(3月~12月中旬)ならバラの根鉢を崩さず地植えまたは10号以上の鉢に鉢増しをして育てます。

 

長尺苗にはすぐに花をつけられる長い枝があるので、冬に購入した長尺苗なら翌春から花が楽しめます。春に購入した長尺苗なら、購入してすぐに花が楽しめます。

 

長尺苗のメリット・デメリット

尺苗のメリットは、花がついていれば実際の花が見られること。そして、長い枝をすぐにフェンスや壁面に誘引することができることです。

 

デメリットは値段が高いことです。とくにネット購入の場合は送料がネックになり、苗より送料の方が高いなんてことも起こります。

 

つるバラの大苗は要注意!

▲壁いっぱいのつるバラ「ブルームーン」

るバラにも枝を40~50cmに短く切り詰めた「大苗」があります。

 

しかしつるバラの場合、やっかいなことが起きることがあります。ハイブリッド・ティー系統の枝替わりでクライミング樹形のつるバラになった品種は、大苗として短く切り詰めることで元のブッシュ樹形の性質のバラにもどってしまうことがあるのです。

 

上の写真の「ブルームーン」も、ブッシュ樹形にもどりやすい、つる性質が不安定なつるバラです。

 

木立ちバラの大苗なら初心者にオススメできますが、つるバラの大苗は品種の知識や栽培経験のある方向けと言えそうです。

 

「つるバラの大苗」の購入から開花までのカレンダー

▲一季咲きのつるバラ「ピエールドゥロンサール」

るバラの大苗を冬に植えつけた後の翌春は、つるを伸ばすためにエネルギーを使うためほぼ咲きません。本格的な開花はその次の年になることが多いです。

 

つまり12月に大苗を購入したとすれば、開花は1年半後の5月までおあずけです。

 

「イングリッシュローズ」などのシュラブ系統の品種なら、大苗を植えつけた次の春から開花するものもあります。

 

つるバラの新苗

▲つるバラ「紅玉」の新苗

るバラには、少ないながら「新苗」もあります。春に新苗を購入したら、2~3回の鉢増しをくり返しながら株を大きくしていきます。

 

「つるバラの新苗」は、翌年の春バラから咲かせられます。5月に新苗を購入したとすれば、ちょうど1年後の5月から花が楽しめます。

 

 

ミニタイプのバラ苗は、接ぎ木ではなく、ほぼ挿し木で作られる

▲ミニバラは、挿し木苗を寄せ植えにして売られていることが多い

ニチュア系統のバラや、ミニ・フローラ系統のバラは、接ぎ木ではなく挿し木で苗を作ることが多いです。挿し木とは、カットした枝を土に挿して発根させる方法です。

 

ミニバラは苗木で流通することはあまりなく、通常は開花している状態で売られています。が、ほとんどのミニバラの開花株は、挿し木してあまり時間のたっていない赤ちゃん苗の寄せ植えです。

 

挿し木苗は、じっくり育てればいずれ接ぎ木苗とそん色ないくらい立派に育てることができます。しかし、挿し木苗は、接ぎ木苗よりも生長がゆっくりで、手間がかかるという特徴があるため、バラ栽培の知識と経験のある方向けの苗といえます。

 

ミニバラは病気やハダニにかかりやすい品種がほとんどです。つまり品種的にも、苗の状態的にも、ミニバラを何年も咲かせ続けるのは、バラ初心者には難しいことなのです。

 

バラ初心者は、ミニバラの鉢は、切り花と同じように花が終わったらおしまいと考えておいたほうが良さそうです。

 

おもにバラ苗専門店で扱われる品種には、ミニバラの接ぎ木苗や挿し木から数年かけて育てたガーデンローズに適したバラ苗があります。どうしてもミニバラを育てたいなら、これらの品種を選ぶことをオススメします。

 

まとめ

バラの苗には主に「新苗」「大苗」「鉢苗」の3種類があります。

 

「新苗」は春に出回る若い苗で、育て方にコツがいりますが価格が安いのがメリットです。中級者以上向けの苗と言えます。

 

「大苗」は秋から冬にかけて出回る苗で、しっかり育った大人の苗です。ブッシュ樹形の品種なら問題ありませんが、つるバラの場合にはつるにならないというトラブルが起きることがあります。

 

「鉢苗」は、大苗をポットで育てたもので、大きく育った苗だし花も確認できる、もっとも初心者向けの苗と言われていました。しかし近年では、低品質で高価格なものが増えてしまい、あまり手を出さない方が良い苗になってしまいました。

 

バラ栽培の経験やお財布と相談しながら、自分にぴったりのバラ苗を選んでください!

 

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