バラは、さまざまな方法で分類されます。「オールド・ローズ」「モダン・ローズ」という分類方法も、とてもよく知られた分け方です。オールド・ローズにはオールド・ローズに共通する特徴があるし、モダン・ローズにはモダン・ローズに共通する特徴があるので、とても便利な分け方です。ここでは、オールド・ローズの特徴と、主な系統について説明します。
オールド・ローズは、ヨーロッパで古くから栽培されてきたバラ
▲ガリカ系の「シャルル・ド・ミル」(Rosa `Charles de Mills´)
1867年以前の系統のバラがオールド・ローズ
1867年にフランスのギヨーにより作出された「ラ・フランス」はモダン・ローズ第1号とされるバラです。このラ・フランスより以前に作出されたバラの系統を「オールド・ローズ」、ラ・フランス以降に作出されたバラの系統を「モダン・ローズ」と呼び分けています。
オールド・ローズは、主にヨーロッパの原種バラを元に改良されてきた園芸品種群で、親とする品種の違いから、ガリカ系統、アルバ系統、ダマスク系統など、さまざまな特徴をもつ系統のバラがあります。ヨーロッパの絵画に盛んに描かれてきた、ヨーロッパで古くから栽培されてきた品種がオールド・ローズなのです。
▲ルノワール「花瓶のばら」
ルノワールの絵画にも、オールド・ローズらしい、花びらの多い丸い咲き方のバラが描かれています。
オールド・ローズの特徴は、花びらの枚数が多く、香りがよく、樹形はシュラブ(半つる性)で一季咲き
▲一般にコモン・モスと呼ばれるオールド・ローズ(Rosa centifolia var muscosa)
オールド・ローズは、花びらの多い八重のカップ咲きで香りのよいものが多く、しかも育てやすいという優れた特徴があり、現代でも愛好家の多いバラです。日本では、明治時代以降バラといえばモダン・ローズ一辺倒になっていたところに、1990年代にオールド・ローズが紹介されると同時に人気となりました。
オールド・ローズは枝先を2mていどまで長く伸ばすシュラブ・タイプ(半つる性)の樹形がほとんどで、アーチ仕立てにしたり、壁にはわせたりと、庭に取り入れやすいことから、これをきっかけに日本で西洋風ガーデニングが盛んになりました。良いところの多いオールド・ローズですが、そのほとんどが春だけの一季咲きです。
【オールド・ローズに多く見られる特徴】
樹形 | シュラブ(半つる性) | 自立はするものの、枝先を伸ばせば2mくらい |
花形 | 花びらの枚数の多い八重咲き | ロゼット、クォーターロゼットなど |
花色 | 白、ピンク色、赤、赤紫 | 白~ピンク色の濃淡が豊富 |
花径 | 小輪~中輪 | 大きくても8cmていど |
花期 | 一季咲き | 春のみ。返り咲き性質のあるものも少しある |
香り | 強い | ダマスク系統を中心によく香るものが多い |
強健さ | 強健で育てやすい |
強健で育てやすいものが多いが、 高温多湿な日本の夏は苦手 |
「オールド・ローズ」「モダン・ローズ」という分け方は便宜的なもの
「オールド・ローズ」、「モダン・ローズ」という分類方法は、じつは学術的なものではなく、便宜的な分け方です。場合によっては原種をオールド・ローズに含める方もいます。(当サイトでは、オールド・ローズと原種は別としています)。
20世紀に作出されたオールド・ローズもある!
Variegata di Bologna / mmmavocado
▲1909年に作出されたオールド・ローズ「ヴァエリガータ・ディ・ボローニャ」
オールド・ローズについて、誤解しやすいことがあります。「ラ・フランス」が作出された1867年以前に作られたバラだけがオールド・ローズと呼ばれると思われがちなことです。「1867年以前に作られたバラ」ではなく、正しくは「1867年以前に作られたバラの系統」をオールド・ローズと呼びます。
たとえば上の写真のブルボン系統の「ヴァエリガータ・ディ・ボローニャ」(Rosa `Variegata di Bologna´)は、20世紀になって作出された園芸品種ですが、オールド・ローズです。
オールド・ローズの主な系統
オールド・ローズには、ヨーロッパ原産の原種バラをもとに品種改良され、ヨーロッパで古くから親しまれてきた品種の系統と、18~19世紀にかけてヨーロッパにもたらされた中国のバラの影響を受けたバラの系統に分けられます。
オールド・ローズの主な系統を順に紹介します。
ヨーロッパで古くから親しまれてきたオールド・ローズの系統
ヨーロッパ原産の原種バラをもとに作られたオールド・ローズは、「アルバ系統」「ガリカ系統」「ダマスク系統」「ケンティフォリア系統(「モス系統」も含みます)」の、大きく4つの系統に分けられます。
1、アルバ系統【A】
▲アルバ系統を代表するオールド・ローズ「アルバ・セミプレナ」
ロサ・アルバ(Rosa × alba)を親とする系統のバラをアルバ系統と呼びます。「alba」は、ラテン語で「白」を意味します。その名の通り、アルバ系統はほとんどが白バラです。レモンのような爽やかな香りがします。
▼アルバ系統についてさらに詳しくは、こちらをご覧ください。
2、ガリカ系統【G】
▲ガリカ系統を代表するオールド・ローズ「シャルル・ド・ミル」」
ガリカ系統のバラは、赤、赤紫からピンク色の花が多く、咲き方は半八重咲きから丸弁カップ咲き、クオーターロゼット咲きと、オールド・ローズらしい特徴があります。香りも素晴らしい。
▼ガリカ系統についてさらに詳しくは、こちらをご覧ください。
3、ダマスク系統【D】
▲ダマスク系統を代表するオールド・ローズ「カザンラク」(ロサ・ダマスケナ・トリギンテペタラRosa × damascena trigintipetala)
ダマスク系統のバラは、甘く濃厚な香りをもつのが特徴です。バラの精油を採るために、ブルガリアやトルコで大規模に栽培されています。
▼ダマスク系統についてさらに詳しくは、こちらをご覧ください。
4、ケンティフォリア系統(含む「モス系統」)
▲ケンティフォリア系統を代表するオールド・ローズ「ジュノー」
ケンティフォリア系統のバラは、たくさんの薄い花びらが特徴です。交配にダマスク系統のバラが関わっていることから、甘く素晴らしい香りをもちます。
▼ケンティフォリア系統についてさらに詳しくは、こちらをご覧ください。
モス系統【M】
▲モス系統のオールド・ローズ「パーペチュアル・ホワイト・モス」のつぼみ
モス系統のバラは、ロサ・ケンティフォリアから枝替わりでできたバラといわれています。そのため、モス系統はケンティフォリア系統のひとつとされます。がくや花柄が苔のような腺毛に覆われた、ユニークなバラです。
▼モス系統についてさらに詳しくは、こちらをご覧ください。
中国からもたらされたバラの影響を受けたオールド・ローズの系統
18~19世紀にかけて、4種類の中国のバラがヨーロッパに紹介されます。中国のバラには、ヨーロッパのバラにない四季咲き性、木立ち樹形、ティー香、剣弁咲きの性質をもっていました。これら中国のバラとヨーロッパのバラを交配してできたのが、オールド・ローズ後期に登場した四季咲き、返り咲き性質をもつバラたちです。
チャイナ系統【Ch】
▲チャイナ系統を代表するオールド・ローズ「オールド・ブラッシュ」
中国からもたらされたバラの影響を色濃くもつのがチャイナ系統のオールド・ローズです。ほとんどのものが四季咲きします。
ブルボン系統【B】
▲ブルボン系統を代表するオールド・ローズ「スーヴニール・ドゥ・ラ・マルメゾン」
アフリカ大陸の南西に浮かぶブルボン島で発見されたバラ「ローズ・エドワード」をもとに作られたバラがブルボン系統のバラです。四季咲きに近い強い返り咲き性をもちます。
▼ブルボン系統についてさらに詳しくは、こちらをご覧ください。
ティー系統【T】
▲ティー系統を代表するオールド・ローズ「レディ・ヒリンドン」
ミルクティーのような甘い香りの「ティー香」をもち、大輪で、四季咲きするのがティー系統のオールド・ローズです。
▼ティー系統についてさらに詳しくは、こちらをご覧ください。
ノワゼット系統【N】
▲ノワゼット系統を代表するオールド・ローズ「ブラッシュ・ノワゼット」
ノワゼット系統のバラは、くり返しよく咲くシュラブ樹形のバラです。オールド・ローズのなかでは唯一、アメリカで作られた系統です。
▼ノワゼット系統についてさらに詳しくは、こちらをご覧ください。
まとめ
モダン・ローズにはない、優雅で優しい雰囲気や、多彩な咲き方、そして香りも楽しめる品種が多いオールド・ローズ。春だけしか咲かないというデメリットを補って余りある魅力的なバラです。
さまざまな系統のバラがあるので、それを一つ一つ見比べていくのも楽しいですね! オールド・ローズの細かい系統についてはまた別のページで紹介しています!
▼モダン・ローズの特徴と主な系統は、こちらをご覧ください。