バラの中でも特別に強い芳香をもつロサ・ダマスケナ(Rosa × damascenaは、現代でも香料を採るバラとして栽培されている自然交雑による原種です。ロサ・ダマスケナの香りは「ダマスク香」と呼ばれます。ダマスク系統のバラは、ロサ・ダマスケナを交配の親にし、その特徴を受け継ぐ香り高いバラです。


ダマスク系統は、ロサ・ダマスケナを交配の親とする香り高いバラ

▲ロサ・ダマスケナ・トリギンテペタラ(Rosa × damascena trigintipetala

元前400年ごろの歴史家ヘロドトスが著した「歴史」に、「香りのよいバラ」として紹介されているのが、このロサ・ダマスケナ(Rosa × damascenaだといわれています。その後、クレオパトラの時代にはラの栽培が始められていたようで、そのバラもロサ・ダマスケナではないかと推測されています。

 

ダマスク」はシリアの首都「ダマスカス」を語源としており、かつてシリア一帯でロサ・ダマスケナが広く栽培されていたことがうかがわれます。

 

ブルガリアのカザンリク近郊のバラの谷では、ロサ・ダマスケナの変種、ロサ・ダマスケナ・トリギンテペタラ(Rosa × damascena trigintipetalaが現在でも香料を採るために栽培されています。このバラはブルガリアの地名を取って別名「カザンリク」とも呼ばれます。

 

この素晴らしい香りをもつバラ、ロサ・ダマスケナを交配の親にもつバラの系統ダマスク系統といいます。

 

ダマスク系統のバラはロサ・ダマスケナの香りを受け継ぎ、強い芳香をもちます。ダマスク系統のバラの香りは「ダマスク香」と呼ばれます。

 

ダマスク系統のバラを総称して「ダマスク・ローズ」と呼んでいます。

 

ダマスク系統には2系統ある

ロサ・ガリカ×ロサ・フォエニキアのサマー・ダマスク

▲ロサ・ダマスケナ・トリギンテペタラ(Rosa × damascena trigintipetala)=サマー・ダマスク

サ・ガリカとロサ・フォエニキアの交雑種とされるのが、春(初夏)のみ一季咲きのダマスク・ローズです。次に紹介する返り咲き性のある「オータム・ダマスク」と区別して、一季咲きのダマスク・ローズを「サマー・ダマスク」と呼ぶ場合があります。

 

ロサ・ガリカ×ロサ・モスカータのオータム・ダマスク

▲ロサ・ダマスケナ・ビフェラ(Rosa × damascena var. bifera)=オータムダマスク

サ・ガリカとロサ・モスカータの交雑種とされるロサ・ダマスケナ・ビフェラ(Rosa × damascena var. biferaは、別名オータム・ダマスクと呼ばれます。なぜ「オータム」なのかというと、秋に返り咲く性質があるからです。

 

実際は、返り咲くといってもほんの少しなのですが、ヨーロッパの原種や原種を交配した他の品種はすべて春のみの一季咲きだったので、オータム・ダマスクの返り咲き性はたいへん貴重でした。オータム・ダマスクの返り咲き性質は、後のポートランド系統ブルボン系統に受け継がれていきます。

 

オータム・ダマスクはフランス語で「四季」を意味する「キャトルセゾン」の別名をもちます。

 

ただし、サマー・ダマスクやオータム・ダマスクの交雑の起源については諸説あるようです。

 

▼ポートランド系統について詳しくは、こちらをご覧ください。

▼ブルボン系統について詳しくは、こちらをご覧ください。

花の色は明るいピンク色が多い

Rosa damascena - Mme Hardy
Rosa damascena – Mme Hardy / sammydavisdog

の色は明るいピンク色が多く、白バラや紅白のしぼりもあります。花径は7cmていどの中輪で、花形は半八重から八重のロゼット咲きやクオーターロゼット咲き。どの品種も強い香りがあります。

 

写真は、ダマスク系統の白バラ「マダム・アルディ」。樹形は2mていどのランブラー樹形で、枝先を誘引してつるバラのように扱うことができます。全体に、棘はやや多いめです。

 

ダマスク系統は、オールド・ローズ基本4種のうちのひとつ

ールド・ローズにはさまざまな系統がありますが、ヨーロッパで古くから親しまれてきた代表的な4つの系統を「オールド・ローズの基本4種」と呼んでいます。

 

アルバ系統

ガリカ系統

ダマスク系統

ケンティフォリア系統とモス系統(モス系統は、ケンティフォリアの変異種です)

 

の4系統が「オールド・ローズの基本4種」で、ダマスク系統はこのうちのひとつです。オールド・ローズの基本4種は、どれも花が美しいばかりでなく、香りもすばらしいのが特徴です。

 

まとめ

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バラの香りにはいくつかの種類がありますが、もっともよく知られたバラの香りといえばこのロサ・ダマスケナを親とする一連のダマスク系統のバラの「ダマスク香」です。古代からその香りが愛され栽培されてきたダマスク・ローズは、ブルガリアをはじめ、多くの国で現代でも香料を採るために栽培されています。

 

香料用のバラは花つきはあまり良くないのですが、ダマスク系統の品種には香りだけでなく、花付きの良い品種もあるそう。広い庭があれば、一本は欲しいバラですね。

 

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