バラにはさまざまな樹形があり、樹形を知ることでそのバラの育ちかたや適した仕立て方まで理解することができます。今回は、基本的な樹形について紹介します。

YOUYOU

バラって、鉢で育てられるコンパクトサイズのタイプから、家の壁を覆えるくらい大きくなるタイプまで、いろんな樹形があるわよね。バラの樹形について、基本的なことを教えて!


バラの基本樹形は3種類。当サイトでは4種類に分類

▲4種類のバラの基本樹形

ラの基本樹形は、木立ち樹形とつる樹形、その中間の半つる樹形に分けられます。基本として、この3種類は覚えておきたいですね。それぞれの特徴を紹介しましょう。

 

木立ち樹形(ブッシュ)の特徴

 

▲木立ち樹形(ブッシュ)

立ち樹形は「木立性」、「ブッシュ」ともいいます。単に「ブッシュ」または「ブッシュ樹形」「ブッシュタイプ」「ブッシュローズ」などと呼ばれる場合もあります。

 

木立ち樹形は枝が堅く、自立できる樹形です。樹高1mちょっとに管理できる、コンパクトでまとまりが良いところが特徴です。地植えでもあまり場所を取らず、鉢栽培もしやすいので、狭い庭やベランダでも気軽にバラを育てて楽しむことができます。

 

系統でいえばハイブリッドティー系統(HT)やフロリバンダ系統(F)が木立ち樹形のバラです。

 

花は中輪~大輪で、四季咲きする品種がほとんどです。枝が堅いので、上向きに花を咲かせます。

 

▲木立ち樹形のバラ「アイスバーグ」(F)

 

代表的な木立ち樹形の品種は、「ピース」(HT)や「アイスバーグ」(F)です。

 

つる樹形の特徴

▲つるバラの人気品種「ピエールドゥロンサール」(LCl)

る樹形は、枝が長く伸びる樹形です。「つる性」とも呼ばれますが、日本では「つるバラ」と呼ぶことが一般的です。枝の長さは品種により、2mから長いものでは10mに達するものもあります。

 

つる樹形は枝が長いので、自立することができません。そのため、フェンスや壁、アーチなどに誘引して枝を支えます。一斉に咲いた景色はとても美しいのですが、それなりに広い場所が必要です。

 

系統でいえば、ラージフラワードクライマー系統(LCl)やハイブリッドムルティフロラ系統(HMult)がつる樹形のバラです。

 

花は小輪~大輪までありますが、多くは春のみの1季咲きです。

 

当サイトではつる樹形を2つに分けています。それぞれの特徴を紹介します。

 

クライミング樹形

▲つるバラのクライミング樹形

ライミング樹形は、ラージフラワードクライマー系統(LCl)のつるバラの樹形です。「クライミング」と略して呼ばれることが多いです。枝が太くて堅く、枝の長さは2.5~3mていど。

 

枝が太くて堅いので、およそ1.5mくらいまでは自立しますが、それより先は自立できずに下垂します。このため、たとえば1mていどのあまり高さのないフェンスに誘引するのは難しく、高さも広さもある家の壁やアーチに仕立てるのに向きます。

 

大輪の豪華な花を咲かせるものが多く、ほぼ1季咲き。ただし、少し返り咲く品種もあります。クライミング樹形のバラには、木立ち樹形のハイブリッドティー系統の品種が、突然変異でつる樹形になった「つる〇〇」という品種がたくさんあります。

 

▲クライミング樹形の「つるブルームーン」(LCl) 写真提供/ハナたろう

 

代表的なクライミング樹形の品種は、「ピエールドゥロンサール」や「つるブルームーン」です。

 

ランブラー樹形

▲つるバラのランブラー樹形

ンブラー樹形は、ハイブリッドムルティフロラ系統(HMult)のつるバラの樹形です。枝が柔らかく、枝の長さは6mから長いものでは10mにも達します。

 

とても長く伸びるので、広い塀や壁、大型フェンス、大型アーチなどに誘引して咲かせます。匍匐させてグラウンドカバーのように仕立てることもできます。枝が柔らかいので扱いやすく、クライミング樹形では誘引しにくい長くて低いフェンスにも誘引できます。

 

ランブラー樹形のバラの多くは小花をたっぷり咲かせます。春のみの1季咲きです。

 

▲大型アーチに誘引したランブラー樹形のバラ

 

代表的なランブラー樹形の品種は「ブルーランブラー」や「キューランブラー」です。

 

ランブラー樹形はとても広い面積が必要なので一般家庭で取り入れるのは難しいため、ホームセンターではほぼ見かけません。

 

YOUYOU

木立ち樹形とつる樹形。どちらも良く分かったわ。つるバラにはクライミング樹形とランブラー樹形があるのね。今まで「つるバラ=クライミング樹形」だとばっかり思っていたけど、ランブラー樹形というのもあるのね。

あいびーあいびー

ランブラー樹形は一般家庭で扱いにくいので、一般の愛好家レベルでは無視していいと判断されているようなの。だから専門店でも「つるバラ=クライミング樹形」という前提になっていることが多いみたい。

半つる樹形(シュラブ)の特徴

▲半つる樹形(シュラブ)

つる樹形は、「半つる性」または「シュラブ」といいます。単に「シュラブ」、または「シュラブ樹形」「シュラブタイプ」「シュラブローズ」とも呼ばれます。

 

半つる樹形は、その名の通り「木立ち樹形」と「つる樹形」の中間のような樹形です。ある程度の高さまでは自立しますが、枝先が細く先にいくにつれ枝垂れます。全体の形としては噴水のような樹形です。

 

系統でいえば「シュラブ系統」(S)のバラの多くが「シュラブ樹形」をしています。枝の長さはさまざまで、樹高1mていどにコンパクトに管理できるものから、枝の長さ3mていどまで長く伸びるものもあります。

 

花は中輪~大輪までさまざまです。大輪花の場合、枝先が細いので花を支えることができず、横向きからうつむき加減に咲きます。

 

▲シュラブ樹形のバラ。イングリッシュローズの「グラハムトーマス」

 

代表的なシュラブ樹形のバラは「イングリッシュローズ」です。ほぼすべてのイングリッシュローズがシュラブ樹形をしています。

 

また、近年の新しいバラの多くはイングリッシュローズを親に作出されているので、新しいバラのほとんどがシュラブ樹形をしています。

 

YOUYOU

「シュラブ系統」と「シュラブ樹形」・・・。系統のことを教えてもらったときも思ったけれど、同じ名前でややこしいわね。どっちのことを言っているのか分かりづらいわ。

あいびーあいびー

そうなの。専門家を含めた多くの方が「シュラブ」と略して言うので、さらに分かりづらい。でも、「シュラブ樹形をしているバラ=シュラブ系統のバラ」という側面もあるので、どっちの意味で使っても話が通じるのね。シュラブ樹形については次回また詳しく紹介するので、今回は「半つる性=シュラブ樹形」と覚えるだけでいいわ。

YOUYOU

ところで、ミニバラはどの樹形なの?

ミニバラにも4種類の樹形がある

▲つる樹形のミニバラ「つるスタリナ」

ニバラはサイズが小さいだけで、すべての樹形があります。木立ち樹形も、半つる樹形もつる樹形のミニバラもあります。

 

YOUYOU

そういえば、つるバラの「ランブラー樹形」は、あまり一般的じゃないから無視されがちだって、さっき言ったけれど、あいびーさんがこれを入れている理由は?

扱いやすいランブラー樹形のバラが出てきている!

▲ランブラー樹形のつるバラ「紅玉」

ライミング樹形のつるバラは大輪の豪華な花を咲かせますが、枝が堅いため誘引作業がやりにくいという扱いづらさがあります。トゲつきの枝が顔に跳ね返って怪我をする危険もあります。

 

そのため近年では、枝の柔らかいランブラー樹形のつるバラが好まれる傾向があります。しかもこれまでのランブラー樹形のように6m~10mにもなる大型のものではなく、もっと小型の扱いやすい品種が出てきています。さらに花のサイズが以前のものより大きく豪華になりつつあります。

 

たとえば上の写真の「紅玉」は、地植えなら6mほどに伸びますが、鉢植えで2mていどのコンパクトサイズに仕立てることもできます。

 


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「レイニーブルー」も枝の柔らかいタイプのつるバラですが、樹高は1.5~2mていどの扱いやすいサイズです。

 

今までにないこういう特徴のバラは「つるバラ」と表記されたり「クライミング」と表記されたり「シュラブ」として扱われたりします。わたしは小型の「ランブラー樹形」と捉えた方が分かりやすいと思います。

 

YOUYOU

うーん・・・。樹形も踏み込むとややこしいところがあるのね。

樹形は栽培環境で変化する!

▲関東ではつる樹形に育つ「アンジェラ」

つはバラの樹形は一定ではなく、栽培環境でかなり変化します。その代表的なものが「アンジェラ」です。アンジェラは、ドイツのコルデス社で育種された品種です。

 

我が家のベランダにもありますが、枝先2m以上になるつるバラです。でもこの品種、コルデス社では木立樹形のバラとして販売しているのです。

 

▲代表的な木立ち樹形のバラ「アイスバーグ」

 

代表的な木立ち樹形のバラ「アイスバーグ」と同じような樹形とされているのですね。その理由は、ドイツと日本の気候の違いにあります。

 

ドイツのように寒さ厳しい環境ではアンジェラは木立ち樹形ですが、もっと温かい日本の気候では大型化してつるバラになってしまうのです。日本でも北海道でアンジェラを育てると、木立ち樹形になるそうです。

 

つまり日本での栽培データが乏しい海外のバラを育ててみたら、やたら大型化してビックリ! ということも起こり得るってことです。

 

YOUYOU

バラの樹形もなかなか奥が深そうね。

あいびーあいびー

そうね。でもとりあえず今回は「木立ち樹形(=ブッシュ)」「半つる樹形(=シュラブ)」「つる樹形(クライミング、ランブラー)」の基本を覚えておいてね。

まとめ

バラの樹形の基本について紹介しました。バラにはさまざまな樹形の品種があります。木立ちバラを並べて生垣のようにしたり、クライミング樹形のバラをアーチやフェンスに誘引したり、ランブラー樹形のバラをグラウンドカバーのようにしたり、半つる性のバラを大型の茂みにしたりなどなど。

 

さまざまな樹形を組み合わせることで、バラだけで多彩な表現が可能です。我が家のどこにどんなふうにバラを咲かせようか──樹形を意識すると庭づくりの楽しみは一段と広がります。新しくお迎えするバラを選ぶ際には、樹形も考えて選んでみてください。

 

次回は樹形の第2弾。シュラブ樹形について詳しく紹介します。ちょっと、ややこしい話になるかも・・・。

 

YOUYOU

今回も後半にいくにつれ、ややこしくなっていったし、次回、初心者のわたしでもちゃんとついていけるかなぁ?

あいびーあいびー

なるべく分かりやすく紹介するね。近年のバラのほとんどがシュラブ樹形だから、聞いておいてソンはないわよ!

 

▼バラ初心者YOUのQ&A一覧は、こちらからどうぞ

 

▼こちらはやや専門用語が多く、より詳しい樹形の記事です

 

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