つるバラを誘引するオベリスク。見た目は素敵なんですが、少し使いにくいところもあります。バラのオベリスク仕立ての作り方を、アイデアも交えて紹介します。


そもそも「オベリスク」とは?

The Washington Monument, viewed from the Lincoln Memorial
The Washington Monument, viewed from the Lincoln Memorial / SchuminWeb

▲アメリカの「ワシントン・モニュメント」

ベリスクは、古代エジプト期につくられ、神殿などに建てられた記念碑です。ほとんどのオベリスクは四角形の断面をもち、上にいくにつれ細くなる石柱です。最上部はピラミッド型の四角錘をしていて、エジプトではここが金や銅などの金属で装飾され太陽神のシンボルとしていたそうです。また、この柱の影を利用して日時計の役割もはたしていました。

 

近現代では、エジプトに限らず欧米を中心に建てられ、街のシンボルとなっているケースがよく見られます。

 

たとえば上の写真は、アメリカの首都ワシントンDCの中心にある高さ約46mの巨大オベリスクで、1884年に完成しました。「ワシントン・モニュメント」「ワシントン記念碑」と呼ばれるもので、初代大統領ジョージ・ワシントンの功績を称えて建造された記念碑です。

 

ガーデンオベリスクは、つる植物を誘引するもの

▲高さ3mほどある巨大オベリスク

本には街にオベリスクを建てる習慣はないので、「オベリスク」といえばもっぱら「ガーデンオベリスク」をさします。「ガーデンオベリスク」はフェンスや壁のないところにつる植物を誘引するための支柱で、円筒形のタイプが多く出回っています。

 

ロザリアンならつるバラの誘引に利用する方が多いです。オベリスクにつるバラを巻きつけ花の塔のように仕立てるのは、つるバラのアーチと同様にロザリアンの憧れのひとつです。

 

でも実際に使ってみると分かるのですが、オベリスク仕立ては少し難しい点がいくつかあって、思うようにいかないことが多いものです。次にオベリスク仕立ての難点を紹介します。

 

オベリスク仕立ての難しいところ

難点1、枝の堅いつるバラにはあまり向かない

▲紅玉のオベリスク仕立て

ーデンオベリスクの幅は、10号鉢に挿せるていどの直系28cmくらいの商品がほとんどです。枝の堅いタイプのつるバラを、この細い円筒に巻きつけるのは結構ムリがあります。力任せに曲げて枝が折れ曲がってしまうこともあるし、うっかり手を離した枝が顔に跳ね返ってトゲで怪我をする恐れもあります。

 

上の写真で誘引している「紅玉」は、枝の柔らかいタイプなので無理なく巻きつけることができますが、枝の柔らかいタイプのつるバラは決して多くありません。

 

難点2、つるバラが収まりきらない

▲オベリスクから盛大にはみ出したシュート

るバラのシュートは2mくらいまで長く伸びます。このシュートは来年の花を咲かせる大事な枝です。真っ直ぐ立てて長くなるよう管理しますが、よほど大型オベリスクでない限り、枝がオベリスクからはみ出し収集がつかなくなってしまいがちです。

 

よく見かける高さ1.5mていどのオベリスクでは、つるバラを誘引するには小さすぎます。もっと大きなオベリスクを探す、またはつるバラ以外のバラ品種を選ぶ必要があります。

 

難点3、裏側に陽ざしが届かない

▲広いガーデンならどこでも花つきバッチリだけど

い庭の中央に立てたオベリスクなら、たとえ裏側でも明るく、花つきもバッチリです。でも個人宅ではそうも行きません。家の側や塀の前に立てたオベリスクにぐるぐる巻きにしたつるバラは、裏側は極端に暗くなってしまいます。さらに風通しも悪くなり、梅雨時期を中心に蒸れてしまう恐れがあります。

 

まんべんなく花を咲かせたいなら、なるべく構造物から遠く、開けた場所に設置するのが望ましいです。ところが開けた場所に設置すると、別の問題が出てきます。

 

難点4、軽い鉢ではバランスが悪く、風で倒れてしまう

▲直系1m以上の巨大な鉢なら倒れる心配はないけれど・・・

ベリスクを庭土に差して使うなら問題ないのですが、鉢に差して使う場合は上の部分が大きくなるのでバランスが悪く、風で倒れてしまいがちです。

 

よほど大きくて重い鉢なら倒れる心配はありませんが、軽くて使い勝手の良いプラスチック製では倒れるリスクが高くなります。壁面に留めつけるなどの工夫ができればいいのですが、開けた場所に設置した場合、それも難しいのが現状です。

 

開けた場所に鉢に差したオベリスクを置く場合は、素焼きなどの重い大鉢を使うなど、倒れない工夫が必要です。

 

オベリスクの使い方アイデア5選!

れまで見てきたように、オベリスクは少し使い方が難しいところがありますが、それらを踏まえたオベリスク仕立てのアイデアをいくつか紹介します。

 

1、庭土に立てて巻くならシュラブの中輪タイプがオススメ


【バラ苗】 ベルロマンティカ 大苗 木立バラ 【京成バラ】 四季咲き 黄色 バラ 苗 薔薇

ず品種選びから。

 

開けた庭の土にオベリスクを立て、そこにバラを巻きつけて育てるなら、つるバラのように大きくなりすぎないシュラブ樹形のバラがオススメです。大輪花の品種でもいいのですが、房咲きする花つきの良い中輪花だとオベリスク仕立ての良さがより引き立ちます。

 

たとえば「ベルロマンティカ」はどうでしょう。株元からよく咲き、木を覆わんばかりにたくさんの花を咲かせます。中輪花なので比較的細い枝でも咲き、樹高は1.8mていどまでなので、オベリスクからはみ出して枝が暴れすぎることもありません。

 


バラ 苗 京成 【レイニー ブルー (CL) 四季咲き】 2年生 接ぎ木大苗 薔薇 ローズ バラ の 苗 京成 バラ 園

 

「レイニーブルー」も樹高1.6mていどの、あまり大きくなりすぎないシュラブです。枝が細くしなやかなので、細いオベリスクに巻きやすい。中輪房咲きで花つきが良く、オベリスク向きの品種と言えそうです。

 

オベリスクに巻くタイプの仕立ては株から上が大きくなるので、鉢栽培ではバランスが悪く風で倒れやすくなります。また、壁のすぐ側に設置すると壁側が極端に暗く、風通しも悪くなってしまいます。生育不良、蒸れに繋がりやすいので、なるべく壁から離した開けた場所に設置しましょう。

 

2、枝の堅いつるバラ・シュラブ樹形のバラのオベリスク仕立て

▲別鉢に立てたオベリスクに誘引する

ラは、鉢植えにすることであまり大きくせずに育てることができます。とても日当たりの良い庭植えで育てれば3m近くまで枝を伸ばすつるバラでも、10号ていどの鉢で育てれば、そんなに大きく育ちません。根があまり大きくなれないので、土から上の部分も相応にあまり大きくなることができないのです。

 

鉢栽培のつるバラ、またはシュラブ樹形のバラを、上のイラストのように別の鉢に立てたオベリスクに誘引するのは、もっとも簡単なオベリスク仕立てです。この方法なら枝の堅いタイプのバラでも無理なく誘引することができます。

 

ただし大型つるバラを誘引するのは、よほど大きなオベリスクでないかぎり難しい。鉢栽培のコンパクトサイズのつるバラ、またはシュラブ樹形のバラなら、この方法で仕立てやすいと思います。

 

強風で倒れるおそれがあるので、あまり風の強くない壁際に置くといいと思います。オベリスクを立てた方の鉢には、背の低いものを植えましょう^^

 

3、中型シュラブ樹形のバラのオベリスク仕立て

 

▲前面半分だけ使ったオベリスク仕立て

く見かけるタイプの高さ150cmくらいのオベリスクを鉢に立てて使う方法です。樹高150cmていどの中型のシュラブ樹形のバラを選びます。

 

冬の誘引では、枝をオベリスクに巻くのではなく、前面半分だけ使って、やや立体的な支柱と捉えて留めつけます。

 

ポイントは、冬の誘引ではオベリスクの半分ていどの枝の長さに抑えることです。春の1番花は右の図のように咲き、続く2番花が咲いてもオベリスクからあまりはみ出さず、きれいに収めることができます。枝が長くなってきたら、順次トレリスの前面に留めつけていきます。裏側には回しません。

 

中型シュラブなら、比較的枝が柔らかいので誘引しやすく、大きくなりすぎないので枝がはみ出しすぎる心配もありません。とくに横張りタイプのシュラブをコンパクトに仕立てるのに適しています。

 

オベリスクは一番上にポイントになる飾りがあることが多いので、上がスッキリしているとオベリスクのデザインがよく映えます。

 

4、組み立てオベリスクのフェンス仕立て

▲オベリスクを分解して鉢付けのフェンスに

ベリスクの中には、2本のアーチを組み立てて使うタイプのものがあります。こういう商品なら、2本のアーチを平面的に並べてフェンスのように使うことができます。

 

▲短い支柱を横に渡してアーチを固定

 

両サイドにはみ出したアーチの足は、上の写真のように横棒を渡して固定したり、左右にもうひとつずつ鉢を並べてアーチを差すと安定します。わたしはダイソーで購入した緑色の短い支柱しかなかったので少し不格好ですが、同じ色で統一すればもっと見栄えが良くなります。

 

枝を広げて誘引できるので、中型シュラブ樹形のバラに使いやすいと思います。ちなみに上の写真のバラは、根の状態が悪かったので枝を切り詰め、やや長いめの木立ち仕立てにしたピエールドゥロンサール(つるバラ)です。

 

5、オベリスクは庭のアクセントに!

Old Swan House
Old Swan House / HerryLawford

後に、オベリスクに誘引しないという選択肢もアリだと思います。おしゃれなオベリスクは、形の良さがよくみえるように、あえて何も誘引せず、庭のアクセントとして飾っては? 意外とこれが一番効果的なオベリスクの使い方のような気がします。

 

まとめ

今回はオベリスクの意味と、ガーデンオベリスクの使いにくさ、それら使いにくさを克服するオベリスクの仕立て方アイデアを紹介しました。

 

ここで紹介したアイデアはごく一例です。園芸は趣味なので、枯らしさえしなければ何でもOKです。ご自身のアイデアでいろんなオベリスク仕立てを楽しんでください!

 

今年の投稿はここまでです。本年もありがとうございました。穏やかな年末年始をお過ごしください。

 

▼季節ごとのバラの育て方・手入れは、こちらからご覧ください

 

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