秋に発生する大型イモムシ「オオタバコガ」「ヨトウムシ」と「ホソオビアシブトクチバ」について紹介します。どれも秋花の蕾を食害する厄介者です。害虫をしっかり防除して、キレイな秋花を咲かせましょう。
秋バラの蕾を食べる大型イモムシは「ホソオビアシブトクチバ」「オオタバコガ」の幼虫と「ヨトウムシ」
▲せっかくの蕾に大穴! 写真提供/天女の舞子
夏の終わりの夏剪定を経て気温が少し涼しくなってくると、バラはまた旺盛に生長し始めます。新芽を伸ばし蕾をつけて、秋バラの開花に向けちゃくちゃくと準備を整えていきます。
ところがこの時期に、せっかくの新芽や大切な蕾をかじったり穴を開けて中から食い荒らす害虫がいます。代表的なのが「ホソオビアシブトクチバ」や「オオタバコガ」の幼虫、「ヨトウムシ」(ヨトウガの幼虫)です。
これらはどれも蛾の幼虫で、終齢幼虫になると5cm前後と大型になるイモムシたちです。大型なので大食漢で、大きく育った幼虫ならたった1匹でもバラに深刻な被害をもたらす困った害虫です。
それぞれについて詳しく紹介します。
「ホソオビアシブトクチバ」は春にも秋にもよく発生する
▲春と秋に発生する「ホソオビアシブトクチバ」の幼虫
ホソオビアシブトクチバの幼虫は、グレーがかった黒褐色のツルリとした肌をもつイモムシです。終齢幼虫の体長は5.5~6cmとかなり大型。発生時期は5月~10月ですが、盛夏にはあまり多くなく、春と秋によく見かけます。
「ホソオビアシブトクチバ」について詳しくは、こちらのページをご覧ください
「ヨトウムシ」(夜盗虫)は、夜に活動する大型イモムシ
▲カラスヨトウの成虫
ヨトウムシ(夜盗虫)とは、チョウ目ヤガ科の蛾の幼虫をさす総称です。多くは昼は土中など暗い場所に潜んでいて、夜になると出てきて食害する性質をもつので「ヨトウムシ」(夜盗虫)と呼ばれています。
バラにつく「ヨトウムシ」は「ヨトウガ」や「ハスモンヨトウ」など数種類います。また、たとえば上記の「ホソオビアシブトクチバ」のように、ヨトウガの幼虫でもないのに夜に動き回る性質のあるイモムシもいるので、ヨトウムシの同定は難しいところですが、とにかくどちらもバラの困った害虫です。
「ヨトウムシ」の発生は年2回。とくに被害が多いのが春(5月~6月)と秋(10月~11月)です。春も秋もよく発生し、どちらもバラシーズンと重なるのでバラが被害に遭いやすい害虫です。
「ヨトウムシ」は広範な野菜も食害します。キャベツ、白菜、ブロッコリー、トマト、ピーマンなどさまざまな野菜につきます。近所に菜園があるなら、バラにも来やすい環境なので注意が必要です。
▲「ヨトウガ」の卵塊 写真提供/天女の舞子
「ヨトウガ」の卵は上の写真のように、葉裏に塊で産み付けられます。「ヨトウガ」の種類により卵の色はいくつかあり、薄緑色の卵も見かけます。
▲新芽や若葉を丸ごと食害
「ヨトウムシ」は終齢で5cmほどになるイモムシで、1匹でも大きな被害になります。新芽や若葉をキレイに食べてしまったり、蕾もむしゃむしゃ食べてしまいます。
▲蕾をガクごと丸かじり!
蕾を上からごっそり食べてあれば、そして近くに犯人がみつからなければ、それはおそらく「ヨトウムシ」のしわざでしょう。
▲バラ鉢の裏に隠れていた「ヨトウムシ」 写真提供/天女の舞子
「ヨトウムシ」は、昼は株元の土のなか浅いところに隠れていたり、鉢の裏に潜んでいたりで、なかなか見つけられません。
上の写真はバラの鉢裏に隠れていたイモムシです。おそらく「ヨトウムシ」でしょう。「ヨトウムシ」の体の色は薄茶色や緑色で毛はありません。「ハスモンヨトウ」の幼虫には大きな黒い斑点があります。
夜に懐中電灯片手に新芽や蕾をチェックすると、食害中の「ヨトウムシ」を発見することができます。日が昇っても早朝ならまだ枝の上にいて、見つけやすいので試してみてください。
「オオタバコガ」の幼虫は広範囲な植物につき、秋バラの蕾に穴を開ける!
▲オオタバコガの成虫 出展/千葉県公式
オオタバコガは、体長1.5~2cm×翅を広げた長さが3.5~4cmの薄茶色の夜行性の蛾です。幼虫は早いものなら5月から発生しますが、秋の9月以降にとくに多く発生します。
一年間に4回ていど発生を繰り返します。
「オオタバコガ」の幼虫は、野菜ではトマト、なす、きゅうり、ピーマン、レタス、キャベツなどにつき、花ではバラ、カーネーション、トルコギキョウなど広範囲の植物を食害します。
バラではとくに秋バラの蕾に穴を開ける害虫として知られています。
「オオタバコガ」の一生(ライフサイクル)を知ろう!
成虫になって3日後から、1つずつ産卵する
▲蕾にポツリと1個の卵 写真提供/天女の舞子
オオタバコガの成虫の寿命は約10日間で、羽化して3日後にはもう卵を産み始めます。
「オオタバコガ」の卵はポツリ、ポツリと1個ずつ産卵するのが特徴です。1個ずつとはいえ、1匹で200~300個も産むので、卵をひとつ見つけたら近くに大量に産み付けられています。
卵を産む場所は若葉の裏、蕾や果実の表面が多いです。卵の色はややクリームがかった白。
幼虫は蕾や実に穴を開ける
▲バラの蕾を食害する「オオタバコガ」の幼虫 写真提供/天女の舞子
卵は3~5日後に孵化し、幼虫の姿で2週間ていど過ごします。終齢の幼虫は3.5~4cm。幼虫の色は上の写真のような淡い緑色~濃い緑色~黄褐色までさまざまです。(下記の駆除の項目に黄褐色の個体を掲載しています)。
体に長い毛がまばらに生えているのが特徴です。上の写真でも目を凝らせば長い毛が分かるでしょうか? 毒性はなく、人を刺すことはありません。
「オオタバコガ」の幼虫は新芽や葉を食害するだけでなく、上の写真のように蕾に大穴を開けてしまいます。発生時期が秋バラの開花時期と重なるので、秋バラの蕾が上がってきたらとくに注意したい害虫です。
野菜の場合、トマトやピーマンなどの実や結実したキャベツに穴を開けて中から食害します。
土に潜って蛹になる→成虫に
▲オオタバコガの蛹 出展/you tube【おたま日記】
幼虫になって約2週間。終齢を迎えた幼虫は土に潜って蛹になります。蛹の状態でまた2週間ていど過ごし、羽化して成虫となります。
「オオタバコガ」は年間4回ほど発生し、秋の早い内に生まれた幼虫は蛹の状態で越冬します。秋遅いめ、9月下旬以降に生まれた幼虫は蛹になれず死滅していきます。
蛹で越冬した個体は翌年5月ごろに成虫になりますが、越冬できない蛹も多いので、春に発生する量はあまり多くありません。
大型イモムシを駆除する4ステップの対策方法
ステップ1、農薬を予防散布する
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大型イモムシとくに「オオタバコガ」は薬剤抵抗性が強い害虫で、農薬が効きにくいという特徴があります。しかし、孵化して間もない小さい幼虫なら農薬がよく効きます。
希釈して散布する農薬なら「オルトラン水和剤」「スミチオン乳剤」「アファーム乳剤」(ステップ4で紹介しています)、ハンドスプレーなら「ベニカXネクストスプレー」などが効果的。
これらの農薬は植物内に広く浸透して殺虫効果が持続する性質があります。夏剪定を終えたバラには、10日に1回を目安に定期的に薬剤散布して目に見えないほど小さな幼虫のうちに駆除してしまいましょう。
花に入り込み花びらを汚す小さな害虫「スリップス」にも効果があるので、一石二鳥です。
乳剤に展着剤は不要ですが、水和剤には展着剤を混ぜて散布します。同じ農薬ばかり続けて使わず、ローテーション散布するとより効果的です。
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【農薬】住友化学園芸 オルトランDX粒剤 200G |
土に散布するタイプの農薬は、オルトラン水和剤と同じ成分を含む「オルトランDX粒剤」。また「ベニカXガード」も効果があります。これらは葉に散布するタイプより薬剤の持続性が高く、公式発表では1カ月間効果が持続するとありますが、実際に使ってみた体感で2カ月ていどは効きます。
我が家は「ベニカXガード」を定期的に散布しているので、木立ちバラが被害に遭うことはありません。
ステップ2、卵を取り除く
▲「ヨトウムシ」の卵塊 写真提供/天女の舞子
翅のある成虫を来させないため、畑なら防虫ネットを使うのがもっとも効果的ですが、景観を楽しみたいバラに防虫ネットを使うのは現実的ではありません。農薬の予防散布をしていても、バラに卵を産み付けられることはよくあります。
秋バラの蕾が上がってきたら害虫パトロールを強化して、卵が産み付けられたのを見つけ次第、自力で取り除くのがバラでの効果的な方法です。
「ヨトウムシ」の卵は葉裏に塊で産み付けられます。卵のついた葉っぱごと取り除いて処分しましょう。
「ヨトウムシ」は何種類もいるので、上の写真とは異なる薄緑色の卵も見かけます。
▲「オオタバコガ」の卵 写真提供/天女の舞子
「オオタバコガ」の卵は上の写真のように、バラの蕾にひとつずつバラバラに産み付けられます。ひとつ見つけたら、その近くに多くの卵があるはずなので、手でなで落としましょう。軍手をつけて蕾を優しくなでればポロリと落とせます。
地面に落ちた卵はそのままで大丈夫です。
ステップ3、効きが悪くなってきたら農薬をチェンジする!
▲孵化したばかりのイモムシの食害痕
孵化して間もない「ヨトウムシ」は、葉の裏から食害し始めます。上の写真のように、葉が細かいレース状に穴が開いていたら、小さなイモムシの食害痕です。じつは写真は別の害虫(ヨモギエダシャク)の幼虫の食害痕ですが、孵化して間もない「ヨトウムシ」の食害痕もそっくりです。
孵化して間もない「ヨトウムシ」は、昼の間も葉の上にいるので、レース状に穴が開いている葉を見つけたら、今のうちに農薬散布して駆除しましょう。
何度も同じ農薬を使っていると効果が悪くなってきます。あまり効かなくなってきたら、別の農薬にチェンジして散布しましょう。ステップ4で紹介している「アファーム乳剤」もよく効きます。
一方「オオタバコガ」の幼虫は孵化してすぐに蕾に穴を開け、穴の中に潜ってしまう性質があるので、なかなか農薬をかけることができません。
「オオタバコガ」の幼虫の場合は、小さな穴の開いた蕾をみつけたら、蕾ごとカットして駆除しましょう。残念ながらその蕾はもう、咲いても穴だらけの醜い花にしかなりません。
ステップ4、大きく育った幼虫には「テデトール」または「アファーム乳剤」「ゼンターリ」「ベニカXネクストスプレー」
▲薄茶色の「オオタバコガ」の幼虫 写真提供/天女の舞子
大きく育ってしまった幼虫には農薬が効きにくいので、物理駆除「テデトール」(手で取る!)が確実です。「テデトール」からの「フミツブース」(踏みつぶす!)のコンボ技を決めてください。
フミツブースができない方はビニール袋や牛乳パックに集めて「ベニカXネクストスプレー」をシュッとかけておけば退治できます。
「オオタバコガ」には長い毛がありますが、毒はなく刺すこともないので手で取り除くことができます。「ヨトウムシ」には、懐中電灯片手の夜間パトロール、または早朝パトロールをオススメします。早朝ならまだ樹上に残っていることが多いです。
嫌な虫もしっかりつかめる!虫とりはさみ ステンレス 1287 サボテン Saboten 草取り 虫取り トング
▲虫を手でつかめない方に重宝する虫取りばさみ
大型イモムシは枝につかまる力が強く、割り箸などでは意外と取りにくいものです。そんなときには、虫取りばさみがあるとしっかりつかめて便利です。
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大きく育ってしまったイモムシに農薬を使うなら広範囲な害虫駆除に効果がある「アファーム乳剤」、またはBT菌という菌類を利用したオーガニック栽培にも使える殺虫剤「ゼンターリ」が効果的です。
ただし「ゼンターリ」はバラに適用がないので厳密には使ってはいけない薬剤です。
ハンドスプレーなら、上の項目でも紹介した「ベニカXネクストスプレー」が大型イモムシに適用があります。とくに「オオタバコガ」に適用があるハンドスプレーは貴重です。老齢幼虫にも効果があるので、大型イモムシ対策には頼りになる薬剤です。
まとめ
今回は、秋バラでとくに注意したい大型イモムシ「ホソオビアシブトクチバ」「ヨトウムシ」「オオタバコガ」の幼虫について紹介しました。どれも秋バラの蕾を食害する厄介者です。
「ホソオビアシブトクチバ」「ヨトウムシ」「オオタバコガ」は、それぞれ違う昆虫ですが対策はほとんど同じです。ぜんぶまとめて防除しましょう。
まずもっとも確実なのが、農薬の予防散布と卵のうちに駆除すること。塊で産み付けられる「ヨトウムシ」の卵、一粒ずつ産み付けられる「オオタバコガ」の卵。これらの卵を見かけたらさっそく駆除しましょう。蕾が上がってきたら毎日の害虫パトロールを強化して、見つけ次第取り除きましょう。
色鮮やかな花色と濃厚な香りが楽しめる秋バラ。害虫被害を抑えて美しく咲かせたいですね^^
参考文献
千葉県「病害虫発生予察注意報オオタバコガの多発生に注意について」/https://www.pref.chiba.lg.jp/lab-nourin/press/2024/20240717tyuihou03.html
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