神奈川県平塚市にある「花菜ガーデン」(かながーでん)は、9.2ヘクタールの広大な敷地をもつ、神奈川県立の施設です。一角にあるバラ園「バラの轍(わだち)」は、1500種、2300株を植栽する見ごたえあるバラ園です。「花菜ガーデン」について、詳しく紹介します。
9.2ヘクタールの広大な公園の一角に咲く1500種、2300株のバラを巡る散策はまるでバラの時間旅行!
▲園内のあちこちにロマンティックな演出が!
神奈川県平塚市にある「花菜ガーデン」(かながーでん)は、正式名称を「神奈川県立花と緑のふれあいセンター」という神奈川県が運営する公共の施設です。施設全体の広さは9.2ヘクタール。横浜スタジアムの約3.5倍の広さがあります。
▲花菜ガーデン園内図 出展/花菜ガーデン公式
園内は、半円形の芝生広場(センターフィールド)を中心に大きく3つのゾーンに分けられます。
1、「フラワーゾーン」
ピンク色の○があるあたりを中心にした「フラワーゾーン」は、四季折々の花が植えられたゾーンです。バラ園「バラの轍(わだち)」も、このゾーンにあります。バラ園の他にも桜や紅葉が楽しめる場所もあります。
花菜ガーデンのバラ園「バラの轍(わだち)」にはコンセプトがあります。バラの品種改良の歴史を追って、原種からオールド・ローズ、モダン・ローズと順に見ていくことができるのです。バラの歴史を知っている人にとっては、まるで時間旅行を楽しんでいるような気持ちにさせてくれるバラ園です!
センターフィールドの少し上にある赤い☆の場所には「みはらしデッキ」があります。天気がよければここから富士山が望めますよ!
2、「アグリゾーン」
緑色の○があるあたりが「アグリゾーン」です。ここは野菜の植えつけや収穫、田植えや稲刈などの農園体験ができるゾーンです。季節ごとに催されるさまざまな体験イベントは大人も子どもも楽しめます!
3、「めぐみの研究棟ゾーン」
水色の○があるあたりが「めぐみの研究棟ゾーン」です。ここには展示室、図書室、会議室、レストラン、ショップなどがあります。入園窓口もここにあります。
バラを原種から順に、品種改良の歴史を追いながら観られる「バラの轍(わだち)」は、生きた教材!
▲「バラの轍」オールド・ローズのコーナー
紀元前からの栽培の歴史をもつバラは、歴史が長いだけに複雑な品種改良を重ねて現在に至っています。それが初心者には「バラは分かりにくくて難しい」と頭を悩ませてしまう原因でもあり、バラ好きの人には「バラは奥深くて面白い」と探求心をかきたてられるものになっていますよね。
世界には、現代バラ(モダン・ローズ)の成立に深い影響を与えた原種バラがいくつもあります。バラの改良史の中心をになうヨーロッパで作りだされた、優雅な印象のオールド・ローズ。ヨーロッパのバラに中国や日本のバラを交配させたことで完成したモダン・ローズ。
こういったバラの歴史に登場するバラたちは、普通はバラの本やサイトで写真を見るに留まります。でも、それらを分かりやすい構成でまとめて見られるのが、ここ、花菜ガーデンのバラ園「バラの轍」です。
当サイトの品種写真の多くもここで撮影させていただいたものです。
▲原種コーナーに建てられた看板
「バラの轍」は、日本の原種バラを集めたコーナーから始まります。
園内にはひとつひとつの品種を示すネームプレートの他に、バラの歴史を記したやや長い文章の看板もいくつかあります。これらの看板を読みながらゆっくり歩いていけば、バラの交配の歴史を実際のバラを見ながら学ぶことができるように設計されているのです。
日本を含む、世界じゅうのバラの原種と交配腫を集めたオールド・ローズのコーナーでは、ほとんどのバラが春だけしか咲きません。でも、ここを訪れるためだけに春に足を運んでもいいくらい、充実したオールド・ローズガーデンになっています。
溢れんばかりの花びらをもつバラ、素晴らしい芳香をもつバラ、黄バラの親となったバラ、ヨーロッパのバラ文化に強い影響を与えた4つの中国原産のバラなど、バラの改良史に重要な役割を果たした貴重なバラ品種が一堂に会しています。
▲彫像の周りに植えられた「ラ・フランス」
原種のコーナー、さまざまな系統のオールド・ローズのコーナーを過ぎ、バラのアーチを連ねたトンネルをくぐると、レンガの壁に囲まれた小さなスペースに出ます。
ここでは中央に石の彫像が置かれ、その周りに1種類だけのバラが植えられています。
明らかに他と区別して特別扱いされているこのバラは「ラ・フランス」。1867年にフランスのギヨーにより作出された、完全四季咲き性をもつ剣弁高芯咲きのバラ。モダン・ローズ第一号とされるエポック・メイキングなバラです。
バラの見せ方の演出も凝っていますね!
▲モダン・ローズ第一号のラ・フランス
バラを紹介する写真では、上のようになるべく整った花を探して撮影したものを使いますが、じつはこのバラ、大輪の花を支えるには枝が細く、ほとんどの花はうつむいて咲いてしまいます。
彫像の周りに咲いているラ・フランスがうつむいているのは、別に水が足りなくて萎れかけているわけではなくて、こういう特徴をもったバラだからなのです。これも実際に見なければ、なかなか分からないことですよね!
モダン・ローズのコーナーは圧巻の美しさ!
▲色とりどりに咲くバラの波。モダン・ローズのコーナー
ラ・フランスの小庭を過ぎると、一気に視界が開け、色とりどりのバラが咲き乱れる光景が広がります。
モダン・ローズのコーナーに入ったのです。
ここではアーチや、壁面を彩るバラなどさまざまなバラの仕立てが楽しめます。中でも圧巻なのが地面から1mほどと、低く作ったパーゴラ(花棚)です。こういう仕立て方をベッド仕立てといいます。ベッド仕立ては低い位置に誘引してあるので、一斉に花開いたつるバラや半つる性のバラを上から見下ろして楽しめるのが特徴です。
▲ベッド仕立ての間を抜ける通路は狭く設計されている
しかも花菜ガーデンのベッド仕立ては波状になっているので、春のバラのシーズンにはまるでバラの海のように見えますよ! これはおそらく湘南の海をイメージしてデザインされているのでしょうね。
ベッドとベッドの間に通る通路は人がすれ違えないほど狭くて、まるで周りじゅうをバラに囲まれたような気分にさせてくれます。
▲ベンチとつるバラのコーナーはバラ園のあちこちに!
白いベンチとつるバラという乙女心をくすぐるコーナーもあちこちにあります。ただし、バラのハイシーズンはとても混んでいるので、こういう写真撮影向きの場所でゆっくり座ってくつろげる暇がないのが残念ですが。
▲イングリッシュ・ローズのコーナー
オールド・ローズの花形に、モダン・ローズの四季咲き性を兼ね備えたイングリッシュ・ローズのコーナーもあります。
他にもミニチュア・ローズのコーナーや、香りの良いバラばかりを集めた「香りのバラ」のコーナーも充実しています。
▲フロリバンダ系統の花菜ローズ
花菜ガーデンの開園を記念してバラの育種家・河合伸志さんが作出したバラ「花菜ローズ」も、モダン・ローズのコーナーで見ることができます。花菜ガーデンの「バラの轍」は、バラ好きにはたまらない、バラ三昧な一日が過ごせる充実したバラ園です。
おすすめは無料講演会やガイドツアー
昨日の花菜ガーデン🌹 pic.twitter.com/cM1r225ZJF
— 咲良 (@sakuranotabi) 2018年5月6日
広大な敷地を誇る花菜ガーデンでは、花の展示会や野菜や米の収穫体験など、1年じゅうさまざまなイベントが催されています。春と秋のバラのシーズンにはローズ・フェスティバルが開催されます。ローズ・フェスティバルでは、バラの専門家による講演会やガイド・ツアーが行われます。
2016年、春のローズ・フェスティバルでは園芸研究家鈴木満男さんによるバラの講演会。デビッド・オースティン・ロージズ㈱のテクニカル・スペシャリスト平岡誠さん、京成バラ園ヘッドガーデナーでありNHK趣味の園芸の講師も務める村上敏さんによるバラ園ガイド・ツアーが行われました。ガイド・ツアーは花菜ガーデンのガーデナーによるものもあります。ローズ・フェスティバルに合わせてバラ苗やバラの切り花などが購入できるローズ・マーケットも出店しました。(ガイド・ツアーは天候により中止になることもあります)。
花菜ガーデンは公共の施設です。そのためか、これら講演会もガイドツアーも無料で参加することができます! ただし、それぞれ定員が設けられていて、当日の開園時間から受付を開始して、定員になり次第受付終了となります。
講演会の内容やガーデンを案内してくれるガイドはそのときどきで異なります。また、開園時間は季節によって異なりますので、お出かけの際には下記の花菜ガーデンの公式サイトで詳細をチェックしてくださいね!
春と秋のバラの見ごろ
春/5月中旬~6月初旬
秋/10月中旬~11月初旬
春と秋のローズフェスティバル
▲湘南の海をイメージして波のようなベッド仕立てに設えられたバラ
春と秋のローズフェスティバルでは、バラのガイドツアー、講演会など、さまざまなイベントが企画されています。どれも無料で参加できますが、当日の朝から先着順に受け付けます。事前予約はできないので、注意してください。
開催期間の目安は
春/5月初旬~6月初旬
秋/10月初旬~11月初旬
詳しい日程とイベント内容は、下記、花菜ガーデン公式サイトで確認してください。
花菜ガーデンのバラ園は、関東有数の規模です。
花菜ガーデンは、チェコの作家のカレル・チャペックのガーデニングを目指した園だそうです。チャペックの書いた園芸12か月は世界の園芸家が憧れているとか。園内には、チャペックの家と庭がイメージされています。
壁を這う蔦が色づきはじめました。 pic.twitter.com/AB0P74myff— 咲良 (@sakuranotabi) 2016年9月22日
春や秋のバラのハイ・シーズンには大型バスで来園される団体さんもいますので、かなり混雑します。園内の写真を撮ろうにも、人が入ってしまってなかなか思うように撮影することができないかもしれません。
バラのハイ・シーズンに行くなら、朝8時半、または9時の開園に合わせて訪れるのがベストです。(開園時間は時期によって異なります)。ガイド・ツアーの申し込みもできるので、一石二鳥ですよ!
訪れた人の口コミは?
春
リピートで6月上旬に行きました。
ガイドツアーにも参加してバラの知識が全く無く見ていたけど見方が変わって良かったと思います。バラの方は素晴らしく、特にバラが波の様に植えられているバラの海は大好きです。バラの海は秋には咲かないので行くなら春がおすすめです。帰りには向かいにあるJAの経営しているスーパーで新鮮な野菜や花を買って帰るのも楽しみです。
春
ガイドさんの解説もありますが、バラにあまり詳しくなくても、名前は表示してあるので、1人でゆっくり回りました。平日だったためあまり混んでおらず、静かな時間を過ごすことができました。野生種やオールドローズなど、他所ではなかなか見られない品種も見ることができます。花壇に踏み込まなければ写真も取り放題なので、撮影のお好きな方はスマホやデジカメの持参をお勧めします。
車を利用されない方は、帰りのバスがとても少ないので、あらかじめ時刻を確認しておかれるとよいと思います(チケット売り場付近に時刻表あり)。
アクセスと施設の案内
アクセス案内
■JR平塚駅北口より神奈川中央交通バス
8番乗り場:秦野駅行き 71・74・75系統
所要時間:約20分
「平塚養護学校前」下車、徒歩約5分
■小田急線秦野駅北口より神奈川中央交通バス
1番乗り場:平塚駅(北口)行き 71・74系統
所要時間:約25分
「平塚養護学校前」下車、徒歩約5分
■車の場合
小田原厚木道路平塚IC 「平塚東インター入口」 交差点を左折、県道62号 (平塚秦野線)「ひらつか花アグリ入口」を左折
駐車場/500円
開園時間と入園料・休園日
ピークシーズン、レギュラーシーズン、スローシーズンにより開園時間と入園料は異なります。また、それぞれの区切りの日にちは年によって変わりますので、詳しくはかならず下記の花菜ガーデンの公式サイトで確認してください。下は2016年の実施カレンダーです。だいたいの目安にしてください。
▲秋にはヒップも楽しめます(写真提供/かながわフォトライブラリー)
ピークシーズン(5月9日~31日)
午前8時30分~午後5時
休園日なし
大人880円、高校生・学生・20歳未満550円、小学生・中学生300円、シニア(65歳以上)550円
レギュラーシーズン(3月~5月8日、6月、9月~11月)
午前9時~午後5時(11月4日~30日は午後4時まで)
休園日なし
大人520円、高校生・学生・20歳未満300円、小学生・中学生200円、シニア(65歳以上)310円
スローシーズン(7月、8月、12月~2月)
7月、8月は午前9時~午後5時
12月~2月は、午前9時~午後4時
休園日/毎週水曜日(祝日の場合は翌日)、12月28日~1月4日
大人220円、高校生・学生・20歳未満110円、小学生・中学生300円、シニア(65歳以上)110円
レストランとショップ
神奈川県産の農水産物を使用したイタリアンテイストのメニューを揃えたレストラン「キッチンhana」。
神奈川県の特産物やバラにちなんだ雑貨などを扱う「ディア・チャペック」。
どちらも入園窓口の外にあるので、入園料なしで利用することができます。
体験プログラムとスクールの申し込み
花菜ガーデンでは1年を通して各種の体験プログラムやスクールが行われています。申し込みには2種類あり、当日の朝、先着順に申し込むタイプと、事前に花菜ガーデンのサイトにあるPDFをDLして記入したものをFAXまたは郵送で送付し申し込むタイプがあります。
詳しくは、花菜ガーデンの公式サイトで確認してください。
問い合わせ
神奈川県平塚市寺田縄496-1
0463-73-6170
花菜ガーデン公式サイト
*お出かけの際には、必ず公式サイトでご確認ください!