バラ栽培でよく使われる専門用語「ピンチ」とは何か? その種類効果やり方をまとめて紹介します。ピンチは四季咲きバラの栽培で欠かせない手入れです。少しややこしいところもありますが、しっかり覚えましょう!


「ピンチ」は、英語で「つまむ」という意味

▲洗濯物を干す「ピンチ」とバラ栽培の「ピンチ」は、同じ語源

ラの育て方でよく登場する「ピンチ」という言葉。バラ栽培の専門用語の一つで、初心者にはよく分からないものだと思います。今回は、ピンチについて紹介します

 

「ピンチ」を英語表記すると「pinch」です。この「pinch」には大きく2つの意味があります。ひとつは「つまむ」という意味。もうひとつは「危機」とか「苦境」という意味です。

 

つまり「ピンチとチャンス」の「ピンチ」も、洗濯物を干すときに使う「ピンチ」も、英語ではどちらも同じ「pinch」を使うのです。バラ栽培で使う「ピンチ」は、洗濯物を干すときに使う「ピンチ」と同じ「つまむ」という意味から専門用語として定着したようです。

 

バラ栽培の「ピンチ」の種類と目的

▲芯を摘み取る=ピンチ

ラ栽培の「ピンチ」を日本語で表記すると「摘芯」または「摘心」の文字があてられます。枝の芯を摘み取ることで、その芯を生長させるために使うエネルギーを分散させる目的で行う作業です。

 

目的は同じでも、実際の作業にはいくつかの種類があります。

 

1、枝先につくつぼみを摘むピンチ(「摘蕾」とも言います)

 

2、シュートの先を5枚葉の上で摘むピンチ(これも「摘蕾」を兼ねています)

 

3、開花調整のためのピンチ(「摘蕾」とも言います)

 

4、花や花殻を摘むピンチ(普通は「花殻切り」と言います)

 

こう並べてみると、「ピンチ」は、どれもつぼみや花を切り取る作業だということが分かります。バラにとって一番エネルギーを使うのは「花を咲かせること」なので、花を咲かせるエネルギーを枝葉を充実させる方に使わせるために行う作業が「ピンチ」なのです。

 

つまり、「花より木の充実を優先したい」ときに行うのが「ピンチ」です。

 

「ピンチ」は、年に何度も花を咲かせる四季咲きバラで行われる作業です。一季咲きのバラやつるバラでは、基本的に行いません。ただし新苗を育てるときや、弱った株を回復させたいときなどは「花より木の充実を優先したい」ので、「ピンチ」します。

 

次に、それぞれの「ピンチ」のやり方と効果を紹介します。

 

1、枝先のつぼみを摘む「ピンチ」のやり方

▲枝先のつぼみを折り取る「ピンチ」

先につぼみが見えたら、まだ枝が柔らかいうちに枝先をつまんでポキリと折り取ります。

 

▲きれいに折れました

 

枝が柔らかい内にピンチすれば、簡単に折り取れます。

 

枝先をピンチをするタイミングと、その効果

先をピンチするタイミングには、新苗を購入してすぐのとき、挿し木苗のミニバラを購入してすぐのとき、生育期に花を咲かせたくないとき、の3つのタイミングがあります。それぞれのやり方と効果と見ていきましょう。

 

新苗を購入したら「ピンチ」する!

▲購入したての新苗のつぼみはピンチします!

先のつぼみをピンチするときは、まず新苗を購入してきてすぐのときが考えられます。新苗はまだ株に体力がないので、新苗についているつぼみや花、花殻は、ピンチで取り去ります。指先で折り取れないときは、もちろんハサミで切り取って構いません。

 

▲やがて株元から新しい枝が発生!

 

ピンチをすることで、開花に使うエネルギーを株の充実にあてられます。分枝したり株元から新しい枝(ベイサルシュート)が発生するのを促す効果があります。

 

ミニバラを購入したら「ピンチ」する!

▲挿し木苗のつぼみや花はピンチします!

ニバラはほとんどが挿し木苗です。挿し木苗は新苗よりもっと体力のない苗なので、購入したらすぐにつぼみや花をピンチで取り去ります。自分で挿し木した苗も同じように、木がしっかり生長するまでつぼみをピンチして、木を育てる方にエネルギーを振り分けます。

 

▲ピンチを続けて1か月半後のミニバラ

 

購入後、ピンチを続けて育てた1か月半後のミニバラです。上の写真の真ん中に写っているオレンジ色の花の「ナポリ」という品種です。分枝で枝が増え、株元からの新しい枝(ベイサルシュート)が伸びてきました。葉数も増え、全体にこんもりと元気に生長しています。これなら秋花は咲かせられそうです。

 

生長期に花を咲かせたくないときは「ピンチ」する!

▲9月初旬までつぼみはピンチします!

季咲きバラのばあい、5月中旬に1番花が咲き、その後6月下旬~7月初旬に2番花が咲きます。さらに8月初旬~中旬に3番花が咲きますが、3番花はあまり良い状態で咲かないことも多いです。

 

花を咲かせると株はエネルギーを消耗するので、1番花を咲かせたら秋まで咲かせずつぼみをピンチし続けるとか、2番花まで咲かせて秋までつぼみをピンチするとか、それぞれの株の状態により開花を調整します。

 

秋花を咲かせるには9月初旬に切り戻しをしますが、若い木はそれまでピンチを続けることが多いです。9月初旬のころには、木はかなり生長しているので、花を咲かせることができる状態に仕上がっているはずです。もちろん、木の状態が悪ければ、秋花もあきらめてピンチすることもあります。そこは、それぞれの木の状態で判断します。

 

2、ベイサルシュートのピンチのやり方

▲株元から出る元気な枝がベイサルシュート

元から出る元気な枝は、ベイサルシュートと言います。この枝を放っておけば、やがて枝先につぼみをつけ、花を咲かせます。ベイサルシュートは来年の主幹になる大事な枝なので、花を咲かせるエネルギーを枝の充実に振り分けるためピンチします。

 

ベイサルシュートのピンチには、もうひとつ目的があります。それは、分枝を促す目的です。枝が増えればそれだけ葉も増え、光合成する量が増えます。つまり、分枝させることで株が生長するのに役立ちます。

 

つるバラ、オールドローズ、シュラブ樹形のイングリッシュローズのベイサルシュートは、基本的にピンチせずそのまま伸ばします。ベイサルシュートのピンチは、木立ち樹形の四季咲き品種で行います。

 

▲HTなら30cm Fなら20cmを目安に最初のピンチを!

 

ベイサルシュートのピンチは、ハイブリッド・ティー(HT)系統のバラなら30cmになったら、フロリバンダ系統(F)のバラなら20cmになったら最初のピンチをする目安です。写真は、ポリアンサ系のバラなので、フロリバンダ系統と同じ20cmを目安に最初のピンチをします。

 

▲枝先をぐいっとつかんで、5枚葉の上で折り取ります!

 

ベイサルシュートの枝先をつかんで、5枚葉の上でポキリと折り取ります。

 

▲きれいに折り取れました

 

枝先がきれいに折り取れました。もちろんハサミで切ってもいいのですが、こうして折った方が、枝への負担が少ないのでおすすめです。

 

ベイサルシュートをピンチした後の効果

▲3本に分枝しました

ンチ後、3本の枝が伸びてきました。ベイサルシュートの太さによりますが、その後伸びてきた枝は1~2本を残し、それ以上は切り取ります。このベイサルシュートは太さがあるのと、真ん中の②の枝があまり状態が良くないので、②を切り取り、①と③の2本の枝を残しました。

 

ピンチをした効果としては、1本だったベイサルシュートが2本になり枝葉が増えたことと、この後こんもりとした樹形に育ってくれることが期待できます。

 

3、開花調整のためのピンチのやり方と、その効果

▲デスデモーナの2番花

れは必ずやらなければいけない作業ではありませんが、花の咲く時期を調整して、株に負担をかけずに長く花を楽しみたいときにおすすめの方法です。

 

上の写真は、イングリッシュローズの「デスデモーナ」です。花を咲かせられる枝は8本ありますが、去年調子を崩してしまったので、全部を一斉に咲かせるのは怖い感じです。そのため、少しずつ咲くようにピンチで開花調整しました。

 

1番花は4枝咲かせ、残り4枝はブラインドになったものも含めてつぼみや枝先をピンチしました。1番花が終わった後に1~2週間遅れでピンチした枝の1番花が開花。その後、さらに2週間たてば最初に咲かせた4枝の2番花が開花し、次にまた1~2週間たてばピンチした枝の2番花が咲いてきます。

 

こうすれば、1度に咲く花数は減りますが、長く咲いている状態が楽しめ、株にかかる負担を減らせます。

 

4、花や花殻を摘むピンチのやり方とその効果

▲咲いてすぐに摘むのが株に負担をかけない方法ですが・・・

ラは、花を咲かせるために一番エネルギーを使うので、つぼみの内にピンチした方がいい。それじゃ花を咲かせた後はいつ切ればいいのか? それは咲いてすぐに切るのが、株のためには一番負担をかけない方法だと思うのです。でも、それじゃ何のためにバラを育てているのか、分からないので・・・。

 

人によっては3分咲きで切るとか、5分咲きで切るとか、8分咲きとか、わたしみたいに8~10分咲きまで枝に置いておく人もいます。もう花が散ってしまうまで枝に置いておく人もいます。それぞれです。

 

この、花や花殻をカットする作業も、じつは意味あいからすれば「ピンチ」のひとつと言えます。花に使うエネルギーを取り去ることで、株の充実をはかる作業なのですから。でも普通、この作業は「ピンチ」ではなく「花殻切り」と言います。

 

▲花が咲いている枝の半分にカットする

 

花殻切りのやり方は、その花が咲いている枝を半分にカットするのが基本です。5枚葉の上で切ってください。花が咲いている枝は手で折り取れるほど柔らかくないので、ハサミで切ります。

 

「ピンチ」と「摘蕾」はどう違う?

▲「ピンチ」は枝先のエネルギーを分散させるのが目的

こまで紹介してきたように、つぼみが見えたら、枝先をつぼみごと摘むのが「ピンチ」です。なので、少し特殊な「シュートのピンチ」以外のピンチは、「摘蕾」(てきらい)と言う場合もあります。作業として蕾を摘むから「摘蕾」なんですね。

 

この場合の「摘蕾」は、意味あいとしては、「開花エネルギーが集中する芯を摘むことで、他にエネルギーを分散させる」ことを目的としています。

▲つぼみを減らすことで残したつぼみを大きく開花させる「摘蕾」

 

一般的に「摘蕾」は、ハイブリッド・ティー系統(HT)のバラなどで、立派な大輪花を咲かせたいときに行う作業をさします。たとえば枝先に3つのつぼみがついたら、脇の2つは摘んでしまい、真ん中の1つにエネルギーを集中させるという目的で行います。正確に表現するなら「側蕾摘み」(こんな言葉はたぶんないでしょうけど)とでも言えばいいでしょうか?

 

「ピンチ」の「摘蕾」と、「側蕾摘み」の「摘蕾」は、言葉は同じでも、意味あいは違います。通常は「ピンチ」の「摘蕾」を「ピンチ」と呼び、「側蕾摘み」の「摘蕾」を「摘蕾」と呼んでいます。

 

でも使う人や状況により「ピンチ」を「摘蕾」と呼ぶこともあるので、少し紛らわしいです。

 

「ソフトピンチ」と「ハードピンチ」の違いは、ハサミを使うかどうかの違い

▲「ソフトピンチ」がうまくいった枝

で折り取る「ピンチ」を「ソフトピンチ」、ハサミで切り取る「ピンチ」を「ハードピンチ」と呼び分ける場合もあります。でも、「ピンチ」は道具を使わず手で折り取るのが基本のやり方です。その理由は、バラへのダメージが最小限に抑えられるからです。

 

手で折り取る「ソフトピンチ」が上手くいくと、上の写真のように、「ピンチ」のあとがほとんど分からなくなります。

 

▲「ハードピンチ」だと新しく伸びた枝が細く角度がつく

 

ハサミを使って切る「ハードピンチ」だと、新しく伸びた枝が細く、しかも角度がついてしまいます。見た目も良くないし、細い枝では将来、良い花や葉がつかないおそれがあります。

 

だから、とくにベイサルシュートのピンチは手で折り取る「ソフトピンチ」の方が優れているのです。

 

でも、ピンチのタイミングが遅くなってしまったら仕方がありません。枝が堅くて折り取ることはできないので、ハサミを使う「ハードピンチ」で切り取りましょう。

 

まとめ

今回は「ピンチ」についてまとめました。

 

じつは「そだレポ」を書いていて、ふと「新芽のピンチ」と「摘蕾」の差が分からなくなってしまって──。それでちゃんと調べ直してみたのです。

 

その結果、「ピンチ」は「エネルギーが集中する芯を摘むことで、枝の充実にエネルギーを分散させる」という意味合いをもっていること。「摘蕾」は、その名の通り、「つぼみを摘む行為」をさす言葉。ということが、分かりました。「ピンチ」は「摘蕾」を兼ねていることがほとんどで、「摘蕾」と言い換えることも可能です。

 

でも、一般的には「新芽のピンチ」と「シュートのピンチ」を「ピンチ」と言い、脇のつぼみを落として大輪の1輪を咲かせようとするのを「摘蕾」と呼びならわされています。

 

当サイトでは「ピンチ」はなるべく「新芽をピンチ」「つぼみをピンチ」または「シュートをピンチ」と書くようにしていこうと思っています。「ピンチ=摘む」という意味合いで使うこともあります。

 

「摘蕾」は、脇のつぼみを落として大輪の1輪を咲かせようとする作業に対してのみ使うようにしようと思います。

 

言葉遣いってなかなかややこしい!

 

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