秋の気配を感じると、ひらひらと風にそよぐコスモスの花が恋しくなります。従来の白、ピンクの濃淡、紅の他に黄色やオレンジ色、黒赤まで、さまざまな品種が楽しめるコスモスを、原産地や名前の由来、品種、花言葉、育て方、コスモスの名所まで多角的にご紹介。
コスモスの原産地は、意外にもメキシコ!
▲一般的なコスモスは、学名で「コスモス・ビピンナタス」=「大春車菊」(和名)をさす
少し涼しさをはらんだ秋風に乗り、ふわふわと軽やかにそよぐピンクや白の花。コスモスは、日本の秋の風景に欠かせない花として親しまれていて、秋の季語にもなっています。さだまさしさんが作詞・作曲し、山口百恵さんが歌った「秋桜」の最初のフレーズが口をつく方も多いことでしょう! 明治の歌人・与謝野晶子はこんな歌を残しています。
こすもすよ強く立てよと云ひに行く女の子かな秋雨の中
心中をせんと泣けるや雨の日の白きこすもす紅きこすもす
「コスモス」は、花径8~10cmの大きな花なのに、茎が細く風によくなびく風情や、ピンクの濃淡を中心にした愛らしい花色、糸のように細い葉も、どこをとっても可憐で、儚い印象さえ感じさせる草花です。与謝野晶子もコスモスに、弱くもろいところのある女性の姿を重ね合わせているのですね。
「コスモス」は、キク科、コスモス属の総称です。日本で一般に「コスモス」と呼ばれているのは、学名でいえば「コスモス・ビピンナタス」(Cosmos bipinnatus)という種類で、和名では「大春車菊」(おおはるしゃぎく)または「秋桜」(あきざくら)と呼ばれる一年草です。
日本人にとても愛されているこのコスモスの原産地は、意外にもメキシコの高原地帯です。メキシコシティから1時間も車で走れば、一面に広がる野生のコスモスの草原が見られるそうです! メキシコでの花期は9~10月です。
コスモスは18世紀末に原産地のメキシコからスペインに渡り、日本には幕末に渡来しました。日本でこれだけ広く親しまれるようになったのは、1909年(明治42年)に文部省が全国の小学校に栽培法をつけて配布してからのこと。今や日本人にとても愛されているコスモスですが、日本での歴史は浅く100年ちょっとの外来植物だったのですね。
コスモスの花の名前の由来は「宇宙」と同じ!
▲宇宙をさす「コスモス」も、花の「コスモス」と語源は同じ
1789年、スペインからメキシコに派遣された植物調査隊のビセンテ・セルバンテスがこの種をマドリード王立植物園に送り、当時、植物園長だったガバニエス神父がこの植物に「コスモス」の名を与えました。
コスモス(Cosmos)は、ギリシア語で「飾り」「美しい」の意味をもつkosmosに由来します。花が美しいことにちなんで、こう名付けられたのですね。
ちなみにkosmosには「秩序」「整列」という意味もあり、ここから宇宙をさすコスモス(cosmos)の単語が生まれました。花の「コスモス」と宇宙をさす「コスモス」は、語源が同じだったのですね!
コスモスは「短日植物」の代表!だから基本的な開花時期は「秋」
▲コスモスは高い秋空によく似合う
日が短くなると花芽をつける植物を「短日植物」といいます。コスモスは代表的な短日植物です。なので本来は、8月に種をまき、徐々に日が短くなる「秋咲き」が自然な姿です。
しかし近年では品種改良により、あまり日の長さに影響されない「早咲き」(早生品種ともいいます)のコスモスが主流になってきています。そのため、春に種をまいて夏に咲かせることも増えてきています。
コスモスの種類いろいろ
もともとのコスモス・ビピンナタス(大春車菊)は一重咲きで、花色は白、ピンク、紅の3色でしたが、品種改良により、さまざまな品種が作り出されました。特徴的な花びらをもつ品種を中心に、いくつか紹介しましょう。
コスモス・センセーション
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原種のコスモス・ビピンナタスをもとに1930年代にアメリカで作出された園芸品種が「センセーション」です。コスモスといえばだれもが思い浮かべるのが、この「センセーション」でしょう。広い場所に群植するには最適な、丈夫で育てやすい品種です。
種撒きから約70日で開花する早咲き(早生)品種なので、時期をずらして撒けば夏から晩秋まで長く花を楽しむことができます。花色は白、ピンクの濃淡、紅。
コスモス・ベルサイユレッド
コスモス 種 【 ベルサイユ レッド 】 実咲小袋 ( コスモスの種 花の種 )
コスモスの「ベルサイユシリーズ」は、切り花にするためにサカタノタネが育成した品種です。従来のコスモスに比べて茎が太くかたく、花びらもしっかり肉厚なので、庭はもちろん、花瓶に生けても長く楽しめます。花色は白、ピンクの濃淡、紅があります。なかでもひときわ濃い紅色の花を咲かせるコスモスが、「ベルサイユレッド」です。
コスモス・ピコティ
ピコティは、白い花びらに桃色や紅色の覆輪が入るコスモスです。覆輪の色や幅、入り方などがバラエティに富んでいて、ほとんど単色の花や、まるで絞り模様に見える花もあります。
コスモス・シーシェル
コスモス 種 【 シーシェル 】 1dl ( コスモスの種 花の種 )
花びらが筒状になる個性的な咲き方のコスモスです。花色は白、ピンクの濃淡、紅。紅色は、花びらの表と裏の色の差がはっきりしていて、特にユニークな印象です。
コスモス・ダブルクリック
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半八重~八重咲きになる、豪華でボリューム感のある人気のコスモスです。
コスモス・イエローキャンパス
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玉川大学農学部で開発された、世界初の黄色いビピンナタス(大春車菊)系のコスモス「イエローガーデン」をもとに品種改良されたのが「イエローキャンパス」です。咲き始めはやや白っぽく、気温が下がるにつれはっきりとした黄色になるという特徴があります。キャンパス・シリーズは「秋咲き」品種です。
キバナコスモス
▲繁殖力が旺盛で、夏の暑さにも強いキバナコスモス
キバナコスモスは、学名を「コスモス・スルフレウス」(Cosmos sulphureus)といい、コスモス・ビピンナタス(大春車菊)と同じコスモス属ですが、別種のコスモスです。キバナコスモスと大春車菊を交配することはできません。
こちらもメキシコ原産の一年草(本来は多年草ですが、日本では一年草扱い)ですが、暑さに強く、原産地ではコスモス・ビピンナタス(大春車菊)よりも標高の低いところに自生しています。
▲キバナコスモスの黄花品種は、くっきりした濃い黄色
キバナコスモスは、糸のように細い葉をもつコスモス・ビピンナタス(大春車菊)よりも幅の広い葉をもち、花色は黄色、オレンジ色、赤。一重咲きの他に八重咲き品種もあります。花の雰囲気や花色のバリエーションから、コスモス・ビピンナタス(大春車菊)よりもマリーゴールドに似た印象がしますね。
夏の暑さに強いので、6月~11月まで長く花を咲かせます。繁殖力が強く、こぼれ種でもよく増えるので、一部のキバナコスモスは野生化しています。
チョコレート・コスモス
▲シックな花色のチョコレート・コスモスの原種は、絶滅したと伝えられている
濃い黒赤のシックな花色の「チョコレート・コスモス」は、チョコレートを思わせる甘い香りがするコスモスです。学名は「コスモス・アトロサンギネウス」(Cosmos atrosanguineus)といい、他のコスモスと同じメキシコ原産の植物です。やや耐寒性があるので、日本でも暖地では多年草になります。
葉は、キバナコスモスよりさらに幅広く、ダリアのような塊根ができます。
キバナコスモスと交配した、さらに暑さに強い園芸品種「ストロベリーチョコレート・コスモス」が開発されています。こちらはチョコレートコスモスより大輪で、花や茎がしっかりしているので、切り花にして長く花が楽しめます。
コスモスの花言葉
▲コスモスは、日本でもヨーロッパでも乙女のイメージと重なる
コスモスの花言葉は、基本的には語源となったギリシア語の「kosmos」の意味から派生しています。「kosmos」には「秩序」「整列」という意味があります。この反対語がカオス「chaos」で、「混沌」という意味をもちます。
不安定な混沌の状態(chaos)とは異なり、秩序のある整列した状態(kosmos)は美しいということから、コスモスは「美しい」「飾り」といった意味もあわせもちます。
そのため花言葉には、良い意味あいのものが並びます。イギリスをはじめとするヨーロッパに伝わるコスモスの花言葉を順にみてみましょう。
調和
平和
美
謙虚
純真
無垢
乙女の愛情
キバナコスモスとチョコレート・コスモスの花言葉
▲一部は日本でも野生化している「キバナコスモス」
同じコスモス属でも、コスモス・ビピンナタス(大春車菊)とキバナコスモスやチョコレート・コスモスでは、受ける印象がかなり違います。そのため、花言葉も別の言葉があてられています。
キバナコスモスの花言葉は「野性的な美しさ」
繁殖力が旺盛で、こぼれ種でどんどん増えていく強さや、はっきりとした花色からの連想でしょうか。たしかにキバナコスモスの美しさは、コスモス・ビピンナタス(大春車菊)よりワイルドに感じられますね。
チョコレート・コスモスの花言葉は「恋の終わり」
良い意味合いが並ぶコスモスの花言葉ですが、チョコレート・コスモスだけは少し悲しい花言葉をもちます。じつは原種のチョコレート・コスモスは絶滅したといわれていて、現在あるチョコレート・コスモスはすべて絶滅した原種をもとに作出された園芸品種なのです。このエピソードからの連想で「恋の終わり」という花言葉が生まれたのでしょうね。
コスモス・ビピンナタス(大春車菊)の育て方
▲コスモスは、荒れ地でも育つほど丈夫で育てやすい
コスモスは発芽率がよくほとんど病虫害がなく、初心者でも簡単に育てられる植物です。
植える場所
コスモスはメキシコ原産の植物です。乾燥には比較的強いのですが、多湿は苦手です。よく日の当たる水はけのよい場所に植えましょう。荒れ地でも育つような丈夫な植物で、あまり肥料は必要ありません。逆に多肥にすると葉が茂りすぎて株ごと倒れてしまうことがあります。
種撒きの時期
こぼれ種で増えるほど発芽率がよいので、基本は種まきして育てます。発芽適温は15~20度。遅霜の心配のなくなった5月以降に種まきします。
種撒きから約70日で開花する早咲き品種は、咲かせたい時期から逆算して種をまきます。たとえば9月初旬に咲かせたいなら、6月下旬に種まきします。
短日植物の秋咲き品種は、どんなに早く撒いても花が咲くのは秋になってからです。早く撒きすぎると背が高く育ちすぎるので、8月に撒いて10月に開花させます。
植え方
花壇に種をまくときには、20~30cm間隔で2~3粒の種を撒き、軽く5mmほど土をかぶせておきます。植えた直後に水やりしておけば、よほど乾くとき以外は特別な水やりは必要ありません。
鉢で小苗まで育ててから花壇に定植することもできます。こちらは乾かさないよう、適宜、水やりしてください。
間引き
混みあっていると良い苗にならないので、双葉が伸びてきたら何回かに分けて間引き、最終的に1カ所に1本の苗を残します。
追肥
あるていど育ってきたら、1株あたりティースプーン1杯ていどの化成肥料を与えると、よい花が咲かせられます。
育て方のポイント!
鉢で小苗を育ててから花壇に定植するときには、なるべく土を崩さずに植え替えます。
背が高くなりすぎると風で倒れやすいので、草丈が50cmほどになったら支柱を立てて補強します。
コスモスが見られる名所
可憐なコスモスが一斉に咲く景色が楽しめる、コスモスの名所をいくつか紹介します!
太陽の丘えんがる公園(北海道紋別郡遠軽町)見頃は8月中旬~9月下旬
起伏のある丘一面に混合コスモスやキバナコスモス1000万本ものコスモスが咲き競う、日本最大級のコスモス園です。北海道の雄大な自然とコスモスが360度の大パノラマで楽しめる展望台もあります。見頃は8月中旬~9月下旬。
▼詳しくは、えんがる町観光協会の公式サイトをご覧ください
面白山高原コスモベルグ(山形県山形市)見頃は9月
出展/山形市観光協会公式ウエブサイト
面白山高原コスモベルグは、約7ヘクタールの花畑にキバナコスモスなどが咲きます。見頃は9月。コスモベルグは花の名前の「コスモス」と、ドイツ語で「山」を意味する「ベルグ」を合わせたロマンチックな名前です。
▼詳しくは、山形市観光協会公式ウエブサイトをご覧ください
吹上コスモス畑(埼玉県鴻巣市)見頃は10月中旬~下旬
【秋桜の想い】#吹上コスモス畑#東京カメラ部 #ファインダー越しの私の世界 #花の写真館 #ドリーミーフォト #夕焼け #コスモス pic.twitter.com/jOIpNauYGv
— わか (@waka_photo_7) 2017年10月28日
吹上コスモス畑は、JR高崎線吹上駅南口から徒歩30分。荒川河川敷では約8万9000㎡に「センセーション混合」、「キャンパスイエロー」、「ピコティ」、「シーシェル」、「ブライトライト混合」などさまざまな品種のコスモスが約1万2000本植えられています。見頃は10月中旬~下旬。10月下旬にはコスモスフェスティバルも開催されます。
▼詳しくは、鴻巣市のサイトをご覧ください。
鷲ヶ峰コスモスパーク(和歌山県有田川町)見頃は9月末から10月初旬
「夜景とコスモス」
去年からずっと見たかった景色。
最初霞んでた空も少し晴れて
夕暮れも素敵な場所でした!が!ナビはすぐ迷子なるし
兎やらキジが飛び出してくるし
驚きと戸惑いの連続でした…。#鷲ヶ峰コスモスパーク#キリトリセカイ#ファインダー越しの私の世界 pic.twitter.com/no2pho5Xcd— 雪飴(snowcandy) (@yukihuumi) 2017年10月14日
鷲ケ峰の頂上からは天気が良ければ遠く淡路島、四国まで見渡せる360度の大パノラマが楽しめます。コスモスパークの名のとおり、秋には辺り一面にコスモスが咲き誇ります。夕景、夜景と絡めてコスモス畑が撮れるスポットとして、写真好きにはたまらない場所です。コスモスの見頃は9月末から10月初旬。
▼詳しくは、有田川町観光協会のサイトをごらんください
まとめ
原産地、種類、花言葉、育て方、名所まで、さまざまな角度からコスモスを紹介しました。コスモスといえば、秋の季語ともなっているほど、秋を連想させる花です。わたしが幼い頃には、ピンク色のコスモスの花に赤とんぼが止まっている景色が秋の定番でした。
今ではもともとの白やピンク色のコスモスよりも、キバナコスモスの方がよく見かけますね。キバナコスモスは暑さに強く、まだ残暑厳しい夏の終わりから長く花を咲かせます。花の雰囲気からあれはマリーゴールドの一種だと思っていたんですが、コスモスだったのですね。勉強になりました。
コスモスは直撒きでも抜群の発芽率なので、広い場所を花いっぱいにする景観用の植物(ワイルドフラワー)として使われます。休耕田や、スキー場、河川敷など、秋になると日本じゅうのあちこちでコスモスの花が群れ咲きます。今では品種改良によりコスモスを夏から咲かせられるようになっているようですが、やっぱり秋になると観たくなる花ですよね!
コスモスは秋バラと同じ時期に咲きます。ローズガーデンにも上手に取り入れたいですね。