バラは春も夏も秋も咲きますが、秋だからこそ、その美しさを堪能できるバラがあります。それが黒バラと呼ばれる深い黒みを帯びた赤バラです。今日は黒バラがなぜ黒く見えるのかと、黒バラの代表品種8種を紹介します!
黒バラは、秋にこそ真価を発揮する!
黒xバラというと、ゴシックな雰囲気もあり、人気の高いバラです。中には真っ黒なバラがあると思っている方もいるようですが、真っ黒なバラはありません。「黒バラ」というのは、バラの世界では「黒みを帯びた濃い赤バラ」をさします。
花びらは高級感あるベルベット質で、見る角度により白っぽい光沢が現れます。
黒バラは、ゆっくりと花が成熟する秋に特に黒みが増し、花本来の美しさを発揮します。秋にこそ楽しみたいのが黒バラなのです。
黒バラは、なぜ秋の方が黒くなるの?
▲春バラの「パパ・メイアン」
じつは春に咲く黒バラは、あまり黒みを感じられないことが多くあります。上の写真を見てもわかる通り、黒みのない黒バラは、赤バラと変わりありませんね。ところが同じ株のバラでも、秋になると黒みが強くなり、黒バラと呼ぶにふさわしい色になります。春の黒バラと秋の黒バラはどこが違うのでしょうか?
赤バラと黒バラの違いは、ベルベット質の違いであると、岐阜大学の先生は指摘しています。
ベルベット(ビロード)は、普通は経(たて)と緯(よこ)の糸を交差してつくる平面構造の織物に、垂直方向の糸を並べて立てる3次元構造にした織物です。垂直方向の糸の手触りが滑らかで、光の当たる方向により美しい陰影が出るのが特徴です。
これと同じように、黒バラの花びらの表面にも、縦長の細胞がびっしりと垂直方向に並んでいるそうです。この細胞に高さがあり、密度が濃いほど光が当たったときに多くの影ができ、黒みを帯びて見えるのです。春バラでは垂直方向の細胞の高さも密度もあまりなく、秋バラでは垂直方向の細胞の高さが高くなり密度が濃くなります。このため、黒バラは秋に咲く花の方が黒みが強く見えるのです。
黒バラの代表品種8選!
1、ルイ14世【HP】
Rose, Louis X IV, バラ, ルイ 14世, / T.Kiya
黄色いおしべと濃い花色のコントラストが美しい、ハイブリッド・パーペチュアル系統(またはチャイナ系統)のオールド・ローズ。1895年フランスのギヨー作出。強い芳香があります。トルコのハルフェティ地方に咲く黒バラはこの品種。
▼トルコの黒バラについては、こちらをご覧ください。
2、シャルル・マルラン【HT】
Rosa Charles Mallerin / Nunzio_Zotti
殿堂入りした最初のバラとして有名な 「ピース」を作出したフランスのフランシス・メイアンが1947年に作出したのが「シャルル・マルラン」です。素晴らしいダマスク香があります。
3、パパ・メイアン【HT】
シャルル・マルランを作出したフランシス・メイアンの息子のアラン・メイアンが1963年に作出したバラが「パパ・メイアン」です。花径15cm。シャルル・マルランを交配親にしています。強いダマスク・モダン香があり、香りの良いバラとしても人気があります。
▼パパ・メイアンについての品種紹介は、こちらをご覧ください。
4、ミスター・リンカーン【HT】
Rose Mr. Lincoln バラ ミスター リンカーン / T.Kiya
パパ・メイアンと同じ交配親をもつ「ミスター・リンカーン」。ただし作出者はフランスのメイアンではなくアメリカの Swim & Weeks 。作出年は1964年です。花径は14cmていど。ダマスク・モダンの強香をもつ強健種。
5、オクラホマ【HT】
パパ・メイアン、ミスター・リンカーンとともに、これもまったく同じ交配親をもつバラです。この3品種を合わせて黒バラ3兄弟と呼ぶこともあります。花径は13cmていど。樹形はパパ・メイアンに比べるとコンパクトで、パパ・メイアンよりも花つきがいいので、鉢植えに向いています。香りはもちろん素晴らしいダマスク・モダン香。1964年アメリカSwim & Weeks作出。
6、黒真珠【HT】
花径8~10cmのパパ・メイアンよりも黒みの強い黒バラです。日焼けしにくく、寒冷地の方が美しい花形に咲きます。1988年鈴木省三(京成バラ園)作出。英名ブラック・パール。日本を代表する黒バラです。微香。
7、ブラック・バカラ【HT】
Rose Black Baccara バラ ブラック バカラ / T.Kiya
もっとも黒みの強い黒バラのひとつです。2000年フランスで作出されたブラック・バカラは、花びらがしっかりとして日焼けしにくい。花径9cmほどですが花もちがよく、花枝が長いので切り花として使いやすいバラです。微香。
8、真夜【F】
HTの多い黒バラの中でも貴重なフロリバンダ系統の黒バラです。咲き進むと青みを帯びるブルーイングする品種なので、時間を経るとじょじょに紫みを帯びてきます。花径は7cm。強いダマスク香があります。2010河本合伸志作出。
まとめ
黒バラは香りのよい品種が多いので、自宅で育てていても楽しみですね。そろそろ秋バラも終わりですが、黒バラの姿と香りをじっくりと楽しみに、今年最後のバラ園に出かけてみてはいかがでしょうか?