青バラ(紫バラ)の歴史的名花「ブルームーン」を紹介します。美しい紫色の花色、強いブルーの香り、そして育てやすさから、作出以来半世紀を経た今でもなお人気の高いバラです。
ブルームーン
blue moon
DATA
バラの系統 | ハイブリッド・ティー【HT】 |
開花のしかた | 四季咲き、1~数輪の房咲き |
花径 | 13cm |
花形 | 半剣弁高芯咲き |
香り | 強香(ブルー系) |
樹形 | ブッシュ樹形(高さ1.5mx幅0.8m) |
作出情報 | 1964年/ドイツ・タントウ |
備考 | 独名/Mainzer Fastnacht |
ブルームーンは、花の色も形も香りも素晴らしい、人気のバラ!
▲凛と咲く、秋バラの「ブルームーン」
紫色のバラは日本人にとても人気が高いのですが、なかでも1964年にドイツで作出された「ブルームーン」は、作出以来半世紀を経てもなお人気のある、紫バラを代表する名花です。
「ブルームーン」はラヴェンダー色の花色、整った半剣弁高芯咲きの花形、さらに大輪で花もちも良いバラです。花びらの枚数はそう多くなく、咲き進むとゆったりとしたカップ咲きになります。
1輪~数輪の小さな房咲きになり、1輪だけを咲かせた方が大輪になりますが、すべて咲かせると花の咲いている状態を長く楽しむことができます。
春以降も晩秋までよくつぼみを上げます。ただし花びらが薄いので雨で傷みやすく、開花しないこともあります。
香りは柑橘類を思わせる、ブルー系に特有の爽やかな強香です。
やや水揚げは悪いようですが、切り花にして部屋に飾ると素敵です。
驚くべき樹勢の強さ。育てやすい青バラとして今も変わらぬ人気
▲樹形は直立ぎみなブッシュ樹形
確かにとても魅力的な花ですが、「ブルームーン」が「歴史的名花」と言われる理由は、花の美しさではなく、その樹勢の強さからです。
青バラの先駆けとなったのは、1957年にアメリカで作出された「スターリング・シルバー」というバラでした。美しい青みを帯びた花の色は、画期的として世界中で注目されたそうです。でも、残念ながら「スターリング・シルバー」は、樹勢が弱くうどん粉病にかかりやすい育てにくいバラでした。
この「スターリング・シルバー」を親にもつバラをさらに交配して作出されたのが「ブルームーン」です。「ブルームーン」は、「スターリング・シルバー」の樹勢の弱さを克服して、とても樹勢が強く育てやすい青バラだというところが評価され、「青バラの歴史的名花」と呼ばれているのです。
樹形は直立ぎみなブッシュ樹形で、背が高くなりぎみです。
夏に青バラに特有の落葉があります。
「ブルームーン」は、青バラの交配親としても貴重で、「シャルル・ド・ゴール」や「ブルー・リバー」などの親となりました。
別名の「Mainzer Fastnacht」は、ドイツのマインツで開催されるカーニバルの意味です。仮装行列が延々続く有名なお祭りです。
▼青バラの改良の歴史はこちらからご覧ください。
つるブルームーンも人気!
枝替わりの「つるブルームーン」もあり、こちらもとても人気があります。枝はトゲが少ないのですが、太く硬くなるので、やや扱いにくいところがあります。
つる性が安定しておらず、ブッシュ樹形に戻りやすいので、短く切り詰めないよう注意が必要です。「つるブルー・ムーン」の苗を購入するときには、長尺苗を選ぶと失敗がありません。
枝が硬く花枝が長いので、背の高い壁や家の壁などに、高さを出して誘引すると効果的です。
花言葉は「幸せの瞬間」「決してあり得ないこと」
バラは古くから愛と美をつかさどる女神アフロディーテ(ヴィーナス)を象徴し、捧げられた花です。バラの花言葉はその由来のとおり「愛」と「美」です。が、それ以外は花色ごとに花言葉が決められています。赤いバラなら「愛情」「情熱」、白いバラなら「純潔」「尊敬」といったように。
▼バラの色別の花言葉については、こちらをご覧ください。
しかし「ブルームーン」は、それ単独で花言葉をもっています。それは花言葉以前に、「青い月」に込められた隠語だったのですが──。
数年に一度現れる青く見える満月を「blue moon」と呼びます。この「blue moon」が現れるのがとても珍しいことから、「極めて稀なこと」「決してあり得ないこと」といった意味が込められるようになりました。
さらに、滅多に見られないものが見られたということから「幸せの瞬間」という意味も込められています。
じつはこれ、バラの「ブルームーン」だけでなくカクテルの「ブルームーン」も共通の意味を持ちます。カクテルでは、より進化した意味あいが込められるそうです。
カクテルといえば、大人のデートで飲まれることが多いお酒ですよね。デートでもしも女性が「ブルームーン」を頼んだら、それは「(あなたからのプロポーズは)決してあり得ないこと」という意味をもちます。つまり、やんわりとプロポーズをお断りするときに使われる小道具なのだそうです。
同時に「幸せの瞬間」という意味ももつため、男性側としては彼女がどちらの意味を示しているのか悩ましいカクテルですね。
バラの「ブルームーン」は、切り花でも流通しています。誤解を与える恐れがあるので、女性から男性に贈るのは避けた方がいいかもしれませんよ!
口コミと値段の目安
バラ苗ショップからのコメント
青いバラの銘花。蕾は濃い桃色で開くと藤色になります。肥料の量や温度によって青が強く出たりします。
暗い気分を明るく変えてしまうほどの素晴らしい香りを放ちます。ダマスクとティ香が混ざり合い、甘さと華やかさが共存する香りです。
トゲは少なく、強健で育て易い品種です。(花ひろば)
ロザリアンの口コミ
初めて、好きになった薔薇です。‘ブルー・ムーン’この薔薇との出会いが、私のそれからの人生を変えました。
10年間、ずっと変わらず、元気で咲いていてくれます。
夏に、少し葉を落としますが、四季咲きなので、秋も楽しめます。これからも、ずっと元気でいてほしい。。。そんな大切な薔薇なのです。
バラ苗の値段の目安
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まとめ
1957年、初めて登場したラヴェンダー色のバラ「スターリング・シルバー」は、花色は美しいけれど樹勢が弱くうどん粉病にかかりやすい育てにくいバラでした。
それから7年後の1964年に発表されたのが「ブルームーン」です。「スターリング・シルバー」の欠点だった樹勢の弱さを克服し、樹勢の強い育てやすい青バラとして、人気を博しました。その人気は今でもなお健在です。
つるブルームーンもとても素敵です。
枝が太く硬くなるので、誘引する場所を選びますが、家の壁面などの広くて背の高いところにゆったり誘引するととても映えるバラです。
古い品種はじょじょに人気をなくしていくものですが、「ブルームーン」が作出以来半世紀を経た現在でもなお人気なのは、花の美しさや香りの良さ、さらに樹勢の強さといった植物としての魅力があるのはもちろんですが、ネーミングが良かったところもあると思います。
これが日本人には意味の分からない独名の「マインツァー・ファクトナット」(Mainzer Fastnacht)だったら、こんなに人気にならなかったんじゃないかなぁ~と。
「ブルームーン」、とても素敵な名前だと思います^^