古来より「花の女王」と称えられるバラは、人との関わりが深い花です。その関わりの深さゆえに、多くの花言葉をもちます。今回は、バラに込められた思いと花言葉についてまとめています。それぞれに豆知識を織り込んで書いていますので、楽しんで読んでいただければ、と思います。
バラは愛と美の女神アフロディーテを象徴する花!
人とバラの関わりは古く、紀元前2000年ごろに建てられたクノッソス神殿のフレスコ画にバラが描かれているそうです。
ギリシア神話によると、バラは愛と美をつかさどる女神アフロディーテと共に生まれた、完璧な美しさをもつアフロディーテを象徴する花とされています。
バラの花言葉は「愛」「美」「情熱」
▲ミロのヴィーナス(ヴィーナスはローマ神話でのアフロディーテ)
アフロディーテは愛と美をつかさどる女神です。このため、バラも愛と美を象徴する花とされています。しかし、アフロディーテにはもうひとつつかさどる事柄があります。それは性です。
もともとアフロディーテは古代オリエントや小アジアの豊穣をつかさどる精霊が形を変えたものとされています。「植物がたくさん実る」ことをつかさどる豊穣の女神という側面と、さらに「子どもがたくさん生まれる」ことをつかさどる女神という側面をもっているのです。
このことから、ギリシア神話では、アフロディーテはしばしば浮気者として描かれます。夫がいながら愛人をもち、愛人の子どもを授かったりしています。
ということで、バラは「性」も象徴する花なのです。バラの花言葉として語られる「情熱」という言葉は、じつは「性」から転化した花言葉ではないかな~と、思っています。確かなことは、分かりませんが。
▼バラとギリシア神話について詳しくは、こちらをご覧ください。
赤いバラの花言葉は「愛」「美」「情熱」
数ある花色のなかで、赤いバラにつけられている花言葉は「愛」「美」「情熱」です。
バラそのものの花言葉と同じですね。プロポーズで赤いバラが選ばれるのは、花言葉からして、もっともふさわしいチョイスと言えそうです。
このごろではバラを贈る本数にも意味をもたせるのが流行しているそうで、108本のバラの花束で「結婚してください」というプロポーズの意味になるのだそうです。俳優の三上真史さんがこの方法でプロポーズしたとして、話題になりましたね。こんなときに使うバラは、もちろん赤バラですね!
バラがキリスト教と結びついた後には、赤バラは聖職者の殉教の血の色とされたそうです。それも「情熱」といえば「情熱」ですね。
▼三上真史さんのプロポーズについて詳しくは、こちらをご覧ください。
白バラの花言葉は「純粋」「純潔」「わたしはあなたにふさわしい」
白バラは、キリスト教世界で聖母マリアを象徴する花とされています。
聖母マリアといえば処女懐妊の末にキリストを産んだとされている女性です。そのことから「純粋」「純潔」という花言葉が生まれました。
しかしキリスト教が盛んになったのは、ホメロスによりギリシア神話が描かれた時代より、はるかに後の時代のことです。
紀元前から、ギリシアやローマの人々の暮らしにバラは欠かせない花として根付いていました。たとえばローマ帝国の5代皇帝ネロは、とくにバラが好きで、晩さん会では床をバラの花で埋め尽くし、バラの花びらを天井から降り注ぎ、バラの香水を振りかけたほどだといいます。
キリスト教では、こうしたバラの使われ方をよしとしなかったようで、当初、バラをキリスト教と結びつけることはなかったのだそうです。
中世に入り、キリスト教が隆盛を極めると、白ユリとともに白バラも聖母マリアを象徴する花とされるようになります。
聖母を象徴する花なのだから、ということで、当時のキリスト教では一般の人がバラを栽培することを禁止し、修道院の庭でひっそりとバラが栽培されるようになったのだといいます。
「わたしはあなたにふわさしい」という花言葉は、白バラが結婚式のブーケなどによく使われることから、つけられた花言葉なのかなぁ、と思います。
ところで「白」というとお葬式を思い浮かべてしまいがちですが、キリスト教のお葬式では白いカーネーションが使われるのが一般的で、白バラが使われることはあまりないそうです。なぜなら、バラにはトゲがあるので、葬儀にふさわしくないとされるからだそうです。
それなら結婚式ならトゲがあってもいいのかと・・・ちょっと深読みしてしまいそうです(^^;
ピンクのバラの花言葉は「上品」「しとやか」「あたたかい心」「感謝」「幸福」
バラ色とは、「ピンク色」をさします。ヨーロッパのバラの原種が白かピンク色だったことを思えば、「バラ色」=「ピンク色」なのも頷けますね。
もともと「rose」という単語には、「安楽」とか「楽しい」とか「上手くいく」といった良い意味あいが込められています。たとえばフランス語で「la vie en rose」(素晴らしい人生)とか、英語で「come up roses」(成功する)と使われます。
ピンク色のバラには、もともとの「rose」がもつ良い意味あいを表す花言葉が並びますね。普段のさりげない花のプレゼントにピンク色のバラは最適です。
そういえば、最近観た重松清さん原作のドラマ「ブランケット・キャッツ」に、ピンクのバラを効果的に使った物語がありました。
会社をリストラされて家を手放さなければならなくなった夫が、情けない気持ちで空回りぎみに奮闘する様子を描いたものだったのですが、その奥さんがリビングにピンク色のバラを飾っていたのです。夫はその意味に気がつかず、「きっとダメ夫だと思われているんだろうなぁ」と自分のふがいなさに唇を噛んでいました。でも終盤、ふとした拍子にピンク色のバラが「感謝」という花言葉をもつことを知り、気持ちが救われるという物語でした。
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ピンク色はカラーセラピーでも気持ちを前向きに、ハッピーにする色とされています。
黄色いバラの花言葉は「友情」「献身」「薄れゆく愛情」「嫉妬」
良い意味とあまり良くない意味が混在するのが、黄色いバラの花言葉です。
良くない意味は、やはりキリストの12人の使途ユダの衣の色が黄色だったことに由来しているのでしょう。イスカリオテのユダは、銀貨30枚と引き換えにキリストを裏切った弟子です。この逸話から、キリスト教社会では黄色は「裏切りの色」というネガティブな意味合いが定着しているようです。
愛情が絡む間柄でプレゼントするのは少しためらわれる黄色いバラですが、風水的には黄色は素晴らしい意味あいをもちます。とくに上の写真のように山吹色がかった黄色は金運をアップさせてくれる運気を呼び込む色とされています。
黄色はビタミンカラーとしても人気の色です。「元気が湧いてくる色だから黄色い花が好き!」という方も意外と多いものです。わたしも黄色い花、大好きです。ただし、黄色いバラは色があせやすく、他の色と組み合わせるのが難しい、ガーデニングでは難易度の高い色だなぁと思います。
じつは花言葉は、どこかの偉い人が「これ!」と決めたわけではありません。
それぞれの人がそれぞれの感性で気ままにつけているのが花言葉なので、あまり気にすることはないのですが・・・。日本では、どんなに素晴らしい花でも、残念な花言葉のために敬遠されるのでは可哀想ということで、花卉産業のグループで悪い花言葉をどんどん良い花言葉にイメージチェンジしているそうです。
その結果つけられたのが「友情」や「献身」という花言葉なのかなぁ、と思います。
花言葉の起源や由来については、この記事の最後に、詳しく載せたページへのリンクを貼ってあります。興味のあるかたは、そちらをご覧ください!
▼ここでは書ききれませんでしたが、父の日と黄色いバラの関係について興味のある方は、こちらをご覧ください。
オレンジ色のバラの花言葉は「絆」「信頼」「愛嬌」
▲園芸種のすべての鮮やかな黄バラの親「ソレイユドール」
バラの原種は北半球に150~200種類あるといわれていますが、ヨーロッパに自生している原種は白かピンク色のバラしかありません。
そのため、オールド・ローズに分類される古い時代のバラは、ほとんどが白かピンク色の濃淡です。黄色系のバラは、中国からきた淡いクリーム色のバラの影響を受けたバラが、ごくわずかあるだけでした。
鮮やかな黄色系のバラを作ることは、長らくバラの育種家の夢でした。
それを実現させたのがフランスの育種家ペルネ・デュシェです。1900年にデュシェが作出した「ソレイユ・ドール」(フランス語で「黄金の太陽」の意味)という名のオレンジ色のバラを親に、すべての黄色系品種は作り出されています。
上の写真のバラが「ソレイユ・ドール」です。ほんとうに、夕陽のように色鮮やかなオレンジ色ですね!
バラの愛好家が待ち焦がれたオレンジ色のバラなのですから、きっと素晴らしい花言葉があるに違いないと思うのですが、それは日本に伝わっていないようです。わたしなら「最高の仕事」なんて花言葉をつけたいですね!
オレンジ色のバラの花言葉とされる「絆」「信頼」「愛嬌」は、どれも温かな色味から想像してつけられたのかなぁ、と思います。
紫色のバラの花言葉は「誇り」「気品」「尊敬」「エレガント」「王座」
紫色は、洋の東西を問わず古来より王侯貴族の色です。
古代ヨーロッパでは、アッキ貝という巻貝の分泌液を用いて紫色の布を染めていました。とくにローマ帝国ではアッキ貝で染めた紫色の布は、貴重で高価な染物として輸出しており、紫色は特権階級にふさわしい色として定着していました。カエサルの紫色のマントや、クレオパトラの紫色の旗はとくに有名です。
紫色は権力者の色として、一般人が着用することが禁じられていました。
ヨーロッパでは、現在では「ロイヤル・ブルー」として濃い青が王族の色とされていますが、じつはアッキ貝が乱獲のため減少してしまったため紫色に染めることができず、やむなく青色になったもので、もともとは「ロイヤル・パープル」と呼ばれる紫色が王家の色です。
▲貝紫(ロイヤル・パープル)の色見本(RGB/127, 17, 132)
日本語ではアッキ貝で染められた紫色を「貝紫」(かいむらさき)または「帝王紫」(ていおうむらさき)と呼んでいます。高級な和装品でときどき見かけますよ。
このため、紫色には高貴な意味合いの花言葉がつけられます。
「誇り」「気品」「尊敬」「エレガント」「王座」。
どれも王侯貴族にふさわしい花言葉ばかりですね。
ちなみに、日本では紫色の布は紫草の根で染められていました。聖徳太子が制定した冠位十二階でも最上位が紫色となっています。中国でも紫色は最高位を表す色として、一般人が身に着けてはいけない禁色とされていた時代がありました。
紫色が、西洋でも東洋でも、王侯貴族など限られた高貴な人のための色だったというのは、何だか不思議な話ですね!
青いバラの花言葉は「不可能」「夢叶う」
▲遺伝子工学を駆使してつくられた青色素をもつバラ「アプローズ」
白とピンク色の濃淡しかなかったバラは、多くの育種家が長い年月をかけて品種改良を繰り返すことで、さまざまな花色を獲得していきました。でも、まだ作り出せていない色のバラがあります。それが青色です。
そのため、青いバラには「不可能」という花言葉がつけられています。
本当の青バラが存在しないため、バラの世界で「青バラ」といえば、通常は「紫色のバラ」をさします。紫色のバラには上で紹介したように、高貴な色にふさわしい花言葉がつけられています。
ということはつまり、「不可能」という花言葉をもつバラ(=本当に青い色のバラ)はじつは存在しないということです。
(ただし、「ブルームーン」だけは近い花言葉をもちます。「ブルームーン」について詳しくは、下記を参照してください)
ところが、2004年、サントリーが遺伝子工学を駆使して、強引に青色素をもったバラをつくりあげてしまいました。それが上の写真の「アプローズ」という名のバラです。
長年の夢がかなったということから、青バラには「夢叶う」という花言葉が追加されました。
(写真で見て分かるように、青色素を持っているとはいえ、人の目で見た「アプローズ」は、青というよりも紫色をしていますけれど)
今のところ、「夢叶う」という花言葉をもつバラは「アプローズ」だけです。
▼「ブルームーン」について詳しくは、こちらをご覧ください。
まとめ
バラの花言葉を書いたサイトはたくさんあるので、当サイトでは読物として楽しめるような構成で紹介しました。
花言葉を気にするときって、どんなときでしょう? やはり、どなたかに花をプレゼントするときでしょうね。でも花言葉って、じつはそんなに厳密なものでもなんでもありません! 花と人との長い関わりのなかで、いろんな人が花に思いを乗せたその集合体なので、一つの花にいくつもの花言葉が存在します。
バラの花言葉も、細かいことを言い出せばキリがありません。赤でも濃い赤はどうだとか、つぼみだったらどうだとか、絞り模様だったらどうだとか、果ては葉っぱやトゲにまで花言葉をつけていることがあります。
もう花言葉なんて、気にしすぎないのが一番だと個人的には思っています!
ただし、赤いバラの花言葉だけはとても有名なので、異性に贈るときには気をつけたいですね。カップルならいいのですが、友だち関係だったり、会社の上司なんかにプレゼントすると、いらぬトラブルに発展しかねないですから!
▼花言葉の起源や由来については、こちらをご覧ください。