つるバラの誘引のしかたで必ず登場する「水平に誘引しましょう」という言葉。なぜそうするのか、その理由を知っていますか? 今回は、つるバラを水平に誘引する理由を、つるバラの性質に沿って紹介します。
初心者ロザリアンYOUです。つるバラの誘引は「枝を地面に水平に」って言われるけれど、どうしてなの? 水平にしなかったらどうなっちゃうの?
植物には「頂芽優勢」という性質がある
▲赤い点が頂芽
植物には「頂芽優勢」という性質があります。茎(または枝)の一番上にある芽(頂芽)が、それより下にある芽よりも優先して生長するという性質です。高校で生物を取っていた方なら授業で習ったと思います。
このメカニズムには「オーキシン」という植物ホルモンが関係しています。オーキシンは、頂芽を優先的に生長させ、それより下の芽の生長を妨げる効果があります。
上の図の赤い点が頂芽です。それぞれの枝の一番上にある芽です。この株では赤い点の芽が育ち、それより下の緑色の点の芽は、オーキシンにより生長を阻害されます。
もし黒いラインのところで枝を切れば、緑色の点が頂芽となり、今度はこの芽が生長を始めます。
つまり木立ちバラの剪定は、「頂芽優勢」のメカニズムを利用して良い芽を選んで育てるために行う作業なのです。
花芽にも「頂芽優勢」が適応される
▲「頂芽優勢」で枝の先にしか咲かない
花芽でも「頂芽優勢」のメカニズムは適応されます。
もしつるバラを真っ直ぐ立てたままで育てたら、上の図のように枝の高いところだけに固まって花が咲きます。ちょっと寂しい感じの咲き方ですね。
枝を水平に誘引すれば花数が増える
▲枝を水平に誘引すれば花芽が増え、花数が多くなる
枝を水平に誘引して人為的に頂芽を増やせば、上の図のように結果的に花芽がたくさんつくことになります。枝の短い木立ち樹形のバラではこんなことはできませんが、枝の長いつるバラならではの花数を増やす方法です。
確かに花数がずっと増えたわね! だからつるバラは、なるべく地面に水平に誘引した方がいいのね。よく分かったわ。でも──たしか、夏ごろに「つるバラは枝を立てて管理しましょう」とかなんとか聞いたような気がするんだけど?
それは、つるバラの夏のシュート枝の管理ね。これも「頂芽優勢」が関係しているのよ。
生長時期のシュート枝は、枝を立てて管理
▲夏のシュート枝は立てて管理
つるバラは春花の後、勢いの良い長い枝を伸ばします。こういう枝を「シュート」といいます。株元から発生したシュートなら「ベイサルシュート」、枝の途中から発生したシュートなら「サイドシュート」と呼び分けています。
これらシュート枝は、来年花を咲かせる大事な枝です。枝が長ければ長いほどたくさんの花芽をつけることができるので、生長時期のシュート枝は長く伸びるように管理します。
シュート枝でも「頂芽優勢」が適応されるので、しっかり枝を立てて、つるバラに頂芽を意識させておけば、枝が上に上にと長く伸びてゆきます。
枝が横になると長くなるのをやめ、脇芽が伸びてくる
▲左が立てて管理した場合。右が寝かせて管理した場合
ところがシュート枝が生長している時期に水平に誘引してしまうと、頂芽優勢が崩れ、長くなることをやめてしまいます。花芽のときと同じように、つるバラは「頂芽がたくさんある!」と思い、脇芽をたくさん伸ばし始めます。
脇芽は細く貧弱で、よい花の見込めない枝ばかりになってしまいます。こういうことにならないように、シュート枝が生長している時期、つまりシュートが発生してからその年の休眠時期までは、枝を立てて管理するのです。
そして休眠時期になったら、他の枝と同じように横に寝かせて誘引します。こうすることで、枝にたくさんの花芽をつけさせることができます。
まとめ
今回は「つるバラの枝を横になるべく水平に誘引するのはなぜか」という疑問から、「頂芽優勢」の性質を利用したバラの管理についていろいろ紹介しました。
木立ちバラの冬の剪定も、つるバラの冬の誘引も、さらにつるバラのシュート枝の夏の管理も、どれも「頂芽優勢」を利用したものだと理由が分かれば、ばらばらの管理だったものが一本の線につながって理解しやすくなるのではないかな。
手入れのしかたは違うけれど、どれも「頂芽優勢」が関係していたのね! つるバラのシュートを夏に立てて管理するのも、冬に水平に寝かせて誘引するのも、その理由がわかってスッキリしたわ。
つるバラには枝の堅いタイプと柔らかいタイプがあって、それぞれ少し誘引のしかたが違います。詳しくは、それぞれのページをご覧ください。
▼枝の堅いタイプのつるバラの誘引のしかた
▼枝の柔らかいタイプのつるバラの誘引のしかた
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