東京オリンピック・パラリンピックのビクトリーブーケはどんなデザインで、どんな工夫があるのか? 東京オリ・パラに華を添えるビクトリーブーケについて紹介します。
メダル授与式で選手が手にする花束「ビクトリーブーケ」が復活!
▲柔道男子66キロ級金メダル阿部一二三選手 出展/TOKYO2020公式
いよいよ東京オリンピックが開幕し、毎日熱戦が続いています。日本選手の活躍も期待以上ですね^^ メダル授与式で選手が手にする花束「ビクトリーブーケ」が3大会ぶりに復活し、制約の多い大会に文字通り「華(花)」を添えてくれています。
▲シドニー五輪 女子マラソン高橋尚子選手(中央) 出展/読売新聞
メダリストに花を贈る習慣は、1984年のロサンゼルスオリンピックから定着したと言われています。2000年のシドニーオリンピックではオーストラリアに自生する紅色のテロピア ワラタを主役に、黄色いカンガルーポーなどをあしらったオーストラリアらしいブーケでした。
▲ロンドンオリンピックのビクトリーブーケ 出展/flowerona
https://flowerona.com/london-olympics-2012-the-victory-bouquet-key-facts/
とくに話題を集めたのが、2012年ロンドンオリンピックのビクトリーブーケです。使われている花材はピンク、黄色、オレンジ色、緑色の4色のバラを3輪ずつ固めて配置し、それぞれの間にローズマリー、ラベンダー、ミント、小麦を十字に挟んだ凝ったデザイン。
デザイナーは、アンドリュー王子とセーラ妃のロイヤルウエディングでブーケ制作を担当したジェーンパッカーさん。すべてイギリス国産の花材を使用し、こだわりぬいた花束でした。
▲ソチ五輪 男子フィギュア羽生弓弦選手 出展/wiki
2014年のソチオリンピックでは、緑と白のマム(小菊)に紫色のスターチス、黄色のソリダゴを組み合わせ、外側を葉もの花材で包んでいます。
緑は草原を、白は雪山を、紫は黒海を象徴し、ソチの自然を表現したブーケでした。
Rio 2016 Olympic logo / carlbob
▲リオ五輪では、大会ロゴの記念品がブーケ代わりに贈られた
しかしこの後、2016年リオデジャネイロオリンピック、2018年平昌オリンピックではブーケはなく、記念品のみになってしまいました。
「大会後も記念に残るものを贈りたい」と、その理由を述べている記事を以前どこかで読みましたが、それだけではないでしょう。
オリンピック・パラリンピック合わせて5000個近いビクトリーブーケが必要になるので、それだけの数の同じブーケを準備するのが、とても大変だというのが本音と思われます。
温度管理の必要ない記念品を準備するのと、すべて手作りし冷蔵庫でしっかり管理しなければならない生のブーケを、しかも同じものを5000個準備するのとでは、その大変さは雲泥の差です。
コロナ禍の中、ほとんどの会場が無観客で開催されている東京オリンピックですが、なんとか生花でのビクトリーブーケを実現してくれて、メダリストに華やかさを添えてくれて、ほんとうに良かったと思います。
どんな花材を用いるか、さらにどんなデザインにするかなど、試行錯誤が続けられた東京オリンピックのビクトリーブーケについて、以前に記事にしていますので、興味のある方はご覧ください。真夏開催の大会に生花を用意する大変さや、東京らしい花材のこだわりなど、さまざまな努力がうかがえます。
▼リオ五輪当時、東京五輪のビクトリーブーケへの展望を記した記事
東京オリンピックのブーケは爽やか。パラリンピックのブーケは可愛らしい!
▲東京オリンピックのビクトリーブーケ 出展/TOKYO2020公式
では、東京オリンピック・パラリンピックのブーケについて、詳しく紹介します。
今回の東京オリンピックのビクトリーブーケでは、ブーケ+記念品(大会マスコットのぬいぐるみ)という、これまでのいいとこ取りの花束となりました。
これなら大会後もぬいぐるみが記念に残るし、その分花材も抑えられるし、いいアイデアですね。
オリンピックブーケの花材は、黄緑色のトルコギキョウ、ヒマワリ、リンドウ、ナルコランです。今大会は東日本大震災からの復興五輪という意味合いも込められているので、被災地で育てられた花を中心にブーケがつくられています。
トルコギキョウ・ナルコラン
トルゴギキョウは、福島県が県をあげて生産に取り組んでいる花で、この花の栽培を通して復興への希望となっている農産品です。葉先の白い覆輪が涼し気なナルコランも福島県産です。
ヒマワリ
宮城県石巻市立大川小学校では、東日本大震災で多くの方が犠牲になりました。やがて大川小学校の母親は、子どもたちの鎮魂のため丘にひまわりを植え始めました。
この実話をもとにして絵本「ひまわりのおか」がつくられるなど、ヒマワリは被災者の想いを伝える象徴的な花です。夏らしさも伝わりますね。
リンドウ
リンドウは岩手県を代表する花で、日本で生産されているリンドウの半分以上が岩手県産です。さらにリンドウの紺色は東京オリンピックのエンブレムと同じ色をしています。
▲ブーケはひとつひとつ手作りされる 出展/日テレニュース24
ビクトリーブーケはひとつひとつ手作りされ、ハンドル(持ち手)部分にはビニール袋に入れた半固形の保水剤(おそらく高分子ポリマー)が入れられ長くきれいな状態を保つように工夫されています。
実際に選手の手にあるビクトリーブーケを見ると、さらにハンドル部分をハランで包んでいるようです。
最後にエンブレムと同じ紺色のリボンを飾り、オリンピック・マスコット「ミライトワ」のぬいぐるみをセットして、ようやく完成。とても手が込んでいますね。
▲東京パラリンピックのビクトリーブーケ 出展/TOKYO2020公式
東京パラリンピックのビクトリーブーケは、少しデザインが異なります。使用花材はピンク色のバラ、黄緑色のトルコギキョウ、リンドウ、ハランです。
中央のバラ1輪は、アスリートを象徴していて、その周りのリンドウとトルコギキョウ、ハランは、アスリートを支える多くの人々や世界中で応援してくれる方たちがイメージされています。
バラとトルコギキョウは福島県産、リンドウは岩手県産、ハランは東京都産。産地の面からみると、東北の被災地を東京が支えるようなデザインになっています。
記念品のぬいぐるみ「ソメイティ」のピンク色に合わせて、ピンク色のリボンが飾られていて、パラリンピックのビクトリーブーケは可愛らしいイメージです。
記憶に残る瞬間に添えられる花
▲競泳女子400m個人メドレー金メダル大橋悠依選手 出展/毎日新聞
コロナ禍のなか、開催が1年延期され、直前まで開催の是非が取り沙汰されたトラブル続きの東京2020オリンピック・パラリンピック。それでも開幕してみれば、やはり毎日の熱戦から目が離せません。
オリンピックの記憶は、メダルを手に誇らしげな選手の笑顔に集約されます。大変な時期に開催された異例のオリンピックだったと、いずれ振り返られるだろう東京五輪の記憶に、小さなブーケが華を添えてくれます。
その存在感は、けっして小さくありません。
オリンピックの起源と理念
▲5色のスモークで空に五輪マークを
オリンピックは紀元前776年、古代ギリシアで始まったオリンピア競技が起源といわれています。これはゼウス神に捧げる競技祭でした。当時は争いの絶えない時代でしたが、4年ごとに開催されるオリンピア競技の間だけは休戦するほど、重要視された祭典でした。
近代オリンピックは、フランスのクーベルタン男爵の提唱により1896年に第1回大会がアテネで開催されました。これに先立つ1894年に発足されたIOC(国際オリンピック委員会)は、オリンピズム(オリンピックのあるべき姿。オリンピック精神)を定めています。
オリンピズムを集約して「スポーツを通じて平和な世界の実現に寄与する」ことを目的に掲げるとされることが多いのですが、これをかみ砕いて説明すると「いかなる差別も行わず、友情、連携、フェアプレーの精神をもって相互に理解しあうオリンピック精神に基づいて行われるスポーツを通して青少年を教育することにより、平和でより良い世界をつくることに貢献する」となります。
だからオリンピックでは勝敗ではなく、ルールを順守し正々堂々とプレーする「フェアプレーの精神」がより重要視されるのです。スポーツを通した精神修養をおさめるということが、オリンピックの大事な目的なのですね。
まとめ
このところ「ビクトリーブーケ」という検索ワードでサイトを訪れる方が増えています。せっかくオリンピックが開催されているのだから、なにか関連記事を書きたいと思っていたので、オリンピックのビクトリーブーケについてまとめてみました。
結果的にとても素敵なブーケに仕上がったと思いますが、真夏開催という厳しい条件下で5000個のビクトリーブーケを準備した関係者の皆さまのご苦労がしのばれます。
コロナ禍の最中のオリンピックで、わたしも開催には否定的でしたが、選手村のオーストラリアチームにより掲げられた「THANK YOU」「心より感謝いたします」の垂れ幕を見て思い直しました。
アスリートにとり、一生に一度かもしれないタイミングのオリンピックです。いくら厳しい条件がつけられたとしても、開催されるだけでどれだけ嬉しいことでしょう。そして彼らのがんばりが、笑顔が、感染症の大変さを共有している世界中の人々をどれだけ勇気づけてくれることか!
すべての大会関係者の皆さまに感謝します。ありがとうございます!
蛇足ですが、オリンピズムの理解できない選手に参加資格はないと思います。
参考文献
「オリンピック憲章 Olympic Charter 1996年版」/日本オリンピック委員会公式 https://www.joc.or.jp/
とんでもない数ですよね。同じ企画でその数・・・
ま、母の日ではないにしろ。大変だと思います。
でも、オリンピックブーケ用に栽培されてきた切り花たちでしょうから。
あとは、作り手と保管方法。
母の日。大手、個人店両方、生花店の経験があるので恐怖でした。
でも。花材は一応。それなりに揃うので・・・
一番困るのは、卒業式の私立なんかで卒業生が胸元か頭に付けるコサージュ・・・
単価は安いのに、高価な物を要求してくる。。。
肩こる仕事でしたわ。ま経営者がOGで赤字でやってましたけど。
赤字の為に・・・ま。後々のいただける仕事を考えたら。
プラスなんでしょうけど。
チマチマとワイヤー使って、ティッシュ使って。。。
見た目、ほぼほぼ同じのを数百。。。作り手が数人いると。
そろえるのが大変でしたね。
オリンピック、ま、大手の生花店中心にやってるんでしょうけど。
作り手の皆様。本当にお疲れ様です。
ORCAさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
5000個ってとんでもない数ですよね!
生花店にお勤めされていたなら、実感できて恐怖もひと一倍ですね。
デザインする人、花の生産農家や運送業者、ブーケの作り手さん、管理する人・・・。
ブーケひとつとっても、本当に多くの方が携わっています。
皆さんに感謝ですね^^
卒業式のコサージュづくりも細かい作業で
作り置きもできないし、大変そうです。
いくら良くできた造花でも、造花は造花。
生花には代えられないから。
生花のコサージュ、皆さんに喜ばれたと思いますよ^^
あいびー