「歯ブラシ立て?」。リオ五輪男子体操団体で金メダルを獲得した表彰台で白井健三選手がもらした一言が天然でかわいいと評判ですが、わたしとしてはチト寂しい気持ちも・・・。いや、白井健三選手はかわいいんですけど! でも、手にしている歯ブラシ立て疑惑の記念品よりも、ビクトリーブーケが欲しかった! ビクトリー・ブーケなしの表彰式では花がない・・・いや、華がないですよやっぱり!
リオ五輪ではビクトリー・ブーケなし!
リオ五輪のビクトリーブーケはどんなのだろう~? って、期待していた人も少なからずいるはず! でも、今回のリオ五輪ではなかなかビクトリー・ブーケが登場しなくてヤキモキしましたよね。
最近の五輪ではメダル授与の表彰式とビクトリーブーケを渡すフラワーセレモニーを分けて行うことがあるので、いつみられるかな~って期待していたのですが、どうやらリオ五輪では「ビクトリーブーケなし!」なんだとはっきり分かったのが、この男子体操団体金メダルの表彰式でメダルとともに歯ブラシ立て・・・ではなくて、記念品が渡されるのを見たときでした。
がっかり・・・。
ビクトリーブーケとは、オリンピックなどで勝者に贈れらる花束です。メダルとともに勝者をたたえ式典に華を添えるもので、おそらく、古代ギリシアの英雄ヘラクレスが、オリンピアの庭に植えたオリーブの枝をオリンピック大祭の勝者に与えたことに由来するオリーブ冠と似たような性格のものではないかと思われます。
ビクトリーブーケは生花を使うので、同じものをいくつも用意するのは準備も管理も大変です。リオ五輪ではビクトリーブーケを記念品に変えることで、かなりのコスト削減につながっていると思うのですが、なんとも味気ない感じがしますね。
ロンドンもソチも、ビクトリー・ブーケのセンスがよかった!
オリンピックに限らず表彰式でメダルとともに花束を渡すことはかなり以前からありました。たとえば1997年のNHK杯でのビクトリーブーケは完全に花束でした。たくさんの花を集めたものを大きな包装紙で囲んで手にもつあたりにリボンを飾る、花屋でよく見かけるタイプの花束です。しかも花束は1種類ではなく、何種類かあったようです。
長野五輪では周りの包装紙は消え、赤や黄色の色鮮やかな花をまとめ、手元に紫がかったピンク色のリボンを飾っています。このときの花は長野県特産のアルストロメリアを使い、フラワーデザイナーの村松文彦さんがデザインしたものだったそうです。
Olympics: Track and Field-Women’s 4x400m Relay-Final / Hampton University
ロンドン五輪(2012年)ではイギリス王室のアンドリュー王子とセーラ妃のウエディング・ブーケを担当して注目を集めたジェーン・パッカーのフラワーショップで、クリエイティブ・ディレクターを務めるスーザン・ラップワースさんが担当。
イギリスの国花であるバラを、ピンク、オレンジ、黄色、緑がかった黄色の4色使い、それぞれの色のバラの間を十字に区切るようにしてラヴェンダー、ミント、ローズマリー、小麦を組み合わせた大胆なデザインでした。ラッピングは使わず、上の写真のように花首をぎゅっと集めたラウンド・タイプのブーケです。
ビタミン・カラーが元気な印象ですね。リボンはメダルを下げるリボンと同じ紫色です。
Korea_Kim_Yuna_Free_Sochi_16 / KOREA.NET – Official page of the Republic of Korea
フィギュア・スケートで羽生結弦選手が大活躍したソチ五輪(2014)では、ロンドン五輪とはまったく異なり、緑、白、紫、黄色の小花をラウンド・ブーケにしたシックなビクトリー・ブーケでした。使用花材は白と緑のポンポン咲きのスプレー・マム、濃い紫色のスターチス、黄色いソリダコ、それらを銀灰色のユーカリの葉とレモンリーフで取り囲んでいます。
写真はキム・ヨナ選手。右手にビクトリー・ブーケが握られていますね。リボンはスカイ・ブルーです。
ビクトリーブーケは、きゅっとまとまったラウンドブーケが定番化しているようです。持ちやすく、手を動かしても崩れないので実用的な形ですね。ロンドンのビクトリーブーケも、ソチのビクトリーブーケもとってもおしゃれですね!
2020東京五輪に向けて、日本の花の取り組みは?
4年後には日本で東京オリンピックが開催されます。「まさか予算削減のため、リオ五輪にならってビクトリーブーケなしなんてことは・・・」と、心配になるところですが、ご安心を。今のところ、ちゃんと花でのおもてなしを考えているようです。
8月2日の「news every」(日テレ)によると、切り花100万本、鉢植え7万個、ビクトリーブーケ4296個を予定しているそう。ものすごい数ですね! すべて国産の花でまかないたいとニュースでは伝えていました。
しかし開催されるのは真夏です。予定では2020年7月24日が開会式。生花にとっては厳しい季節ですが、大丈夫なんでしょうか?
ニュースによると、花材の候補には大菊、スプレー菊、アジサイ、ダイヤモンド・リリーが挙がっているとのことでした。菊は一年じゅう出回る花材なのでなんとかなりそうですが、7月末~8月上旬ではアジサイの季節にはやや遅いし、秋に咲くダイヤモンド・リリーを用意するのはかなり大変なような気がします。
これらの花材を夏に咲かせるための研究費として予算を1億円取っていたそうですが、経費削減のため予算なしになったとも言っていました・・・。
真夏のビクトリー・ブーケ・デザインコンテストも開催
東京五輪をにらんでか、8月6日・7日にお台場のヴィーナスフォートで「ヴィクトリーブーケ・デザインコンテスト2016」が開催されました。東京都花き振興協議会主催の同展は、東京五輪のビクトリー・ブーケ担当者を決めるものではありませんが、花き業界の盛り上がりを感じますね!
花材に菊を使った作品もたくさんありましたが、いわゆる仏花を連想してしまうようなものではなく、どれも可愛らしい印象のブーケでした。「菊」ときいて、やや身構えてしまったのですが、そこはハイセンスなフラワーデザイナーの手によるブーケです、まったく問題なさそうでしたよ。
ところで、なぜダイヤモンドリリー?
Nerine Curiosity / Ashley Basil
日テレのニュースで候補に挙がっていた花材にダイヤモンドリリーがあるのですが、これ、どうしてなんだろう? と疑問に思えたので調べてみました。
ダイヤモンドリリーは南アフリカ原産のヒガンバナ科の球根植物で、ネリネとも呼ばれます。ヒガンバナといえば彼岸のお墓参りの時期に咲くことから「シビトバナ」「ユーレイバナ」とも呼ばれ、日本人には忌み嫌われている花です。毒々しい真っ赤な花が血を連想させ、さらに全草に毒を持つのも嫌われる要因です。
ヒガンバナとよく似ていることからダイヤモンドリリーも、これまで日本ではあまり人気のない花でした。でも、欧米では花びらに光が当たるとキラキラすることから盛んに品種改良がおこなわれてきた花です。
日本でもっとダイヤモンドリリーの魅力を知ってほしいと品種改良を続けている生産者が東京都清瀬市の横山園芸さんです。花き業界ではダイヤモンド・リリーといえば横山園芸といわれるほど、知名度のある生産者さんなのだそう。
東京にゆかりのある花としてダイヤモンド・リリーに白羽の矢が立ったということなのでしょうか。
もともとダイヤモンドリリーは8月下旬から9月植えつけで、10月中旬から咲く花です。夏に咲かせるのは、それも大量に咲かせるのはかなり難しそうに思えます。しかも長く飛び出した雄蕊も、花びらも、ちょっとした衝撃で折れてしまうので、扱いの難しさもありそうです。
難しいところの多い花ですが、東京五輪のビクトリーブーケに採用されれば、人気が出そうですね!
まとめ
今回は、東京五輪のビクトリーブーケについてまとめてみました。リオ五輪が終われば4年後には東京五輪開催です。真夏の時期に生花を扱わなければならない東京五輪の花事情は、なかなか厳しいものになりそうです。4年なんてあっと言う間に過ぎそうですね。
さまざまな難問を乗り越えて、五輪会場がたくさんの花で彩られますように。そして「センスいいね!」と世界じゅうから言ってもらえるようなビクトリーブーケになりますように、と、期待しています!