ときどき見かける冬に赤くなるバラの枝。バラの枝が赤くなる仕組みと、赤くなっても大丈夫なのかについて、紹介します。

YOUYOU

初心者ロザリアンYOUです。少しずつ冬の植え替えを進めているんだけど、なんか異様に赤い枝の株があるの。これって大丈夫なの? まさか病気?


冬にバラの枝が赤くなるのは、冬越しの準備ができたサイン!心配ナシ!

▲赤く染まったレディエマハミルトンの枝

さが厳しくなり葉も減ってくると、驚くほど赤くなっているバラの枝に気がつきます。最初に赤い枝に気づいたときは、深刻な病気じゃないか、もしかして枯れてしまうんじゃないかと、YOUちゃんのように心配になるかもしれません。

 

でも大丈夫。これはバラが冬の寒さに耐える準備ができたっていうサインで、ごく正常なことです。病気ではありません。

 

YOUYOU

冬にバラの枝が赤くなっても問題ないのね、良かった安心したわ。ところで、どうして枝が赤くなるの?

あいびーあいびー

調べてみたんだけど、これが意外と難しくて。かみ砕いて説明するけど、専門家ではないので曖昧なところがあっても許してね。

冬にバラの枝が赤くなる理由は?

▲冬の寒さに耐えるバラたち

物は、種類により耐えられる最低気温が決まっています。南国の植物を氷点下の寒いところに置いておけば枯れてしまいます。

 

ところが、寒さ厳しい環境でも平気な顔をして耐える植物もあります。バラも比較的寒さに強い植物です。代表的な寒さに強いバラは、ロサ・ルゴサ(ハマナシ)です。なんとマイナス40度でも耐えるそうです。一般的な現代バラは、マイナス10度以上あれば大丈夫なようです。

 

マイナス、つまり氷点下でも植物が耐えられるのは、植物自身が細胞まで凍ってしまわないような工夫をしているからです。その工夫のひとつが、細胞内に糖をため込むことです。

 

植物は細胞内に糖類をため込むことで凍らないようにしている

▲図1 低温順化前の植物の細胞

から冬にかけて気温が低くなってくると、植物は冬を乗り切るための準備を始めます。これを「低温順化」といい、氷点下になっても細胞まで凍って枯れてしまわないようにする植物の知恵です。

 

中学生の理科の授業を思いだしましょう。まず、上の図1を見てください。これは、「低温順化」前の植物の細胞です。

 

植物細胞は、細胞壁に囲まれています。ひとつの細胞の中にはオレンジ色の大きな円で描いた核と、それ以外の物質でできています。核以外の物質は「細胞質」と呼ばれます。細胞質には、葉緑体やミトコンドリアが含まれています。

 

葉緑体にはクロロフィルが多く含まれているので、葉は緑色をしています。

 

▲図2 低温順化が始まった植物細胞

 

気温が下がり植物の低温順化が始まると、細胞内に糖類やアミノ酸、タンパク質などが蓄えられます。この糖類は、アントシアニンという赤~青の色を出す化合物のひとつです。アントシアニンが増えてくると、人の目には赤く見えるようになります。

 

やがて、役目を終えた葉緑体は分解されていきます。寒くなると植物は光合成をやめ、それまで光合成に使っていたエネルギーを冬越しのために温存するようになるのです。

 

さらに低温順化が進むと、光合成をするための葉は不要となり、落ちてしまいます。これは、植物が紅葉する仕組みと同じです。バラの枝でも同じことが起きているのです。

 

▲図3 氷点下の植物細胞

 

やがて気温が氷点下になると、植物細胞も水分の多いところから凍り始めます。まず凍るのは細胞と細胞の間です。ここは水分の通り道で、あまり化合物が含まれていないので凍りやすいのです。

 

一方、細胞内には糖類などのさまざまな物質が含まれているので、凍りにくくなっています。

 

細胞外の氷の粒はどんどん周りの水分を吸収します。細胞内の水分も細胞外の氷の粒に引き寄せられ、細胞内は乾いた状態になります。乾いた状態になることで、さらに細胞内が凍るのを防ぐことができます。

 

YOUYOU

なるほどー。細胞内に糖類などの化合物を蓄えることで、細胞まで凍ってしまわないようにしているのね。その準備で紅葉したり、枝が赤くなったりするってワケね。

 

ということは──枝が赤くなった方がいいってことよね? でも、枝が緑色のままの株もあるんだけど、逆にこっちの方が心配なのかな?

枝が赤くなるかどうかは、品種次第

▲真っ赤に染まった冬の紅玉の枝

ラは、品種により枝が赤くなるタイプと赤くならないタイプがあります。我が家では「レディエマハミルトン」や「紅玉」が冬に枝が赤くなるタイプです。これらの品種は、若葉が銅葉になるので、もともとアントシアンが多い品種なんでしょう。

 

▲日光の当たらない裏側は緑色のまま

 

たとえ枝が赤くなる品種でも、日光の当たらない裏側は緑色のまま。枝が赤くなるかどうかは、陽当たりと密接な関係があるようです。

 

▲冬に枝が赤くならない品種の方が多い

 

これはつるバラの「アンジェラ」です。アンジェラの枝は冬も緑色のまま。それでもまったく問題ありません。枝が赤くなる品種もあれば、赤くならない品種もあるのです。

 

まとめ

冬に枝が赤くなる現象について紹介しました。バラ栽培を始めたばかりの方には、心配になる現象のひとつですが、結論としてまったく問題ありません。冬を迎える準備ができたというバラからのサインです。

 

寒くなると赤くなるのはバラだけではありません。ホウレンソウやキャベツなんかも赤くなります。赤い色はアントシアニンという赤~青を発色する色素由来の糖類で、このため「冬の寒さに当たったホウレンソウは甘い」なんて言われるんですね。赤いバラの枝も甘いんだろうか──もちろん、薬剤使っているので試してみる勇気はありませんけれど。

 

ところで今回、寒い地方でバラを育てる場合に重要な「ハーディネスゾーン」について知りました。「ハーディネスゾーン」は米国農務省が定めた耐寒性ゾーンマップです。植物ごとにどの地域まで冬越し可能なのかを知る指標となります。

 

バラでも品種により耐寒性の強いものと弱いものがあります。本文で紹介したように、ロサ・ルゴサ(ハマナシ)は耐寒性がとても強く、ハーディネスゾーン3以上の地域で冬越し可能です。ハーディネスゾ-ン3は「-39.9度から-34.5度」の寒さになる地域なので、とてつもなく寒さに強い品種です。

 

ドイツなどの寒さ厳しい国では、ロサ・ルゴサの系統のバラがよく栽培されているのも納得です。日本でも信州や東北北部、北海道など、寒冷地にお住まいの方は、バラ栽培にもさまざまな工夫があるんでしょうね。

 

YOUYOU

ちょっと理科の授業のようなところは難しかったけれど、とにかく病気ではないって分かってホッとしたわ。冬のホウレンソウが美味しいと言われるのと同じ原理っていうのにもビックリ!

 

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