日本、朝鮮半島、中国北部を原産地とする原種バラ、ロサ・ルゴサ(和名ハマナシ)を交配の親にしたグループがハイブリッド・ルゴサ系統です。
ハイブリッド・ルゴサ系統のバラについて紹介します。
ハイブリッド・ルゴサ系統はハマナスを親とするバラ
ハイブリッド・ルゴサは寒さに強く、やせた土地でもよく育つ強健種
▲交配の親となった原種バラ、ロサ・ルゴサ(ハマナス)
北海道の道花に指定されているバラ、ハマナス(「浜茄子」または「浜梨」)は、学名でロサ・ルゴサ(Rosa rugosa)といいます。ロサ・ルゴサは、日本、朝鮮半島、中国北部を原産地とする原種バラです。このロサ・ルゴサを交配の親にし、ロサ・ルゴサの性質が強く受け継がれている一連のバラがハイブリッド・ルゴサ系統です。
ロサ・ルゴサは、日本では東北から北海道にかけて多く自生していることから分かるように、耐寒性の強いバラです。また、和名の「浜茄子」に「浜」の字があるように、砂浜などの痩せた海岸地域の土地でも元気に育ちます。
ヨーロッパには、18世紀末のイギリスにロサ・ルゴサが渡りました。当時イギリスでは、ロサ・ルゴサの鋭い棘が侵入者よけになると、倉庫の周りに植えられていたそうです。
ロサ・ルゴサは、特にその耐寒性が注目され、ドイツやハンガリーなどの寒さの厳しい国で多くの園芸品種が作出されました。
大輪の花を返り咲きする。香りも良く、赤い大きなヒップも楽しめる
▲ロサ・ルゴサの実(ヒップ)はミニ・トマトくらいの大きさ
ロサ・ルゴサは花径6~8cmていどの大型の濃いバラ色の一重咲きの花で、原種には珍しく返り咲きする性質があります。その性質を受け継いで、ハイブリッド・ルゴサ系統のバラも大輪で、返り咲きするものが多くあります。
花形は一重またはカップ咲きが多くあります。
香りもよく、春に咲いた花なら夏にはミニトマト大の真っ赤なヒップが楽しめます。
樹形はシュラブ樹形。枝の長いものはつるバラとしても使える
▲ハイブリッド・ルゴサ系統のフラウ・ダグマー・ハストラップ
日本の海岸に自生しているハマナス(ロサ・ルゴサ)は、痩せた土地と潮風の影響から50cmていどの背丈の低い木立性樹形が多く見られますが、庭で管理すると大型化し、1.5mほどのシュラブ樹形になります。イギリスに渡ったロサ・ルゴサは、2.4mもにもなる大きなシュラブ樹形だったそうです。
ハイブリッド・ルゴサ系統の自然樹形は、ほとんどがシュラブ樹形です。2mを越える枝の長いものもあり、つるバラのように扱えます。
まとめ
日本に自生するロサ・ルゴサは、良いところの多いバラです。花が美しく、返り咲きし、荒れ地に強く、病気にかからず虫もつかない、香りが良い、ヒップも楽しめる・・・と、こう書きならべてみると、つくづく素晴らしいバラね。
完全四季咲き性をもつ中国のバラと同時期にイギリスに渡ったので、当時のヨーロッパでは中国バラとの交配に熱心になり、ロサ・ルゴサはあまり注目されなかったよう。
ロサ・ルゴサが注目されたのは、その耐寒性の強さから、寒さの厳しいドイツやハンガリーなどでした。
記事内で紹介している「フラウ・ダグマー・ハストラップ」もドイツで作出された品種です。花の雰囲気や、葉脈がくぼむ葉の感じが原種のロサ・ルゴサ(ハマナス)そっくりで、花の色が優しい桃色の可愛らしい品種ですね!