日本人にとって、「」といえば「ソメイヨシノ」です。でも、数年前から新しい桜に植え替えられつつあるってご存知ですか? その理由と新しい桜「ジンダイアケボノ」について紹介します。


「ソメイヨシノ」が姿を消しつつあるって知ってる!?

▲満開の「ソメイヨシノ」

いピンクのつぼみが膨らんで、開けばほぼ白い花。近くで観れば白い花びらだけれど、遠くから景色としてみればほんのりピンクを感じさせる「桜色」。日本を代表する桜「ソメイヨシノ」の花色は、とても日本人の好みにかなった色だと思います。わたしも、このほんのり上品な桜色が大好きです。

 

「ソメイヨシノ」は、江戸時代後期に「エドヒガンザクラ」と「オオシマザクラ」が交雑してできた園芸品種です。日本には200種以上の桜の品種がありますが、桜の名所と呼ばれる場所に植えられている桜のほとんどがこの「ソメイヨシノ」で、ただ桜といえば、それはこの「ソメイヨシノ」をさすくらい、日本人には馴染みの深い桜です。

 

▲ごく淡いピンクの、綿菓子のような「桜色」

 

でも、今この「ソメイヨシノ」が次々姿を消しているってご存知ですか?

 

「ソメイヨシノ」は、傘のように広がった枝先に葉が出るより前に花が咲きます。しかも木が若いうちからよく花を咲かせるので、戦後に好んで公共施設に植えられました。単一品種が大量に植えられたので、春になると一斉に花開き、日本の春を代表する景色をつくってきたのが、この「ソメイヨシノ」です。

 

▲テング巣病蔓延で切られてしまった、かつての桜山

 

でも「ソメイヨシノ」は、「テング巣病」という伝染病にかかりやすい品種です。しかも大きく張り出した枝は交通標識を隠すというのでばっさり切り詰められたり、太い根がアスファルトを凸凹にしてしまうなど街路樹として嫌われる側面もあります。伝染病にかかったり枝を切り詰められたり太い根を切られたりした「ソメイヨシノ」は、その多くが枯れたり弱ったりしてきています。

 

そのため数年前から、「ソメイヨシノ」寿命60年説が噂されるようになりました。そして今、枯れた「ソメイヨシノ」にかわって新しい桜がどんどん植えられているのです。

 

新しい桜「ジンダイアケボノ」は、アメリカ帰りの桜の突然変異種

▲「ジンダイアケボノ」は、「ソメイヨシノ」よりピンクが濃い 出展/wiki

本花の会では、テング巣病の蔓延を抑えるため平成17年から「ソメイヨシノ」の配布を中止、平成21年から苗木の販売も中止しています。それに代わり、今熱心に植えられているのが「ジンダイアケボノ」(神代曙)という桜です。

 

「ジンダイアケボノ」は、少し変わった誕生秘話をもちます。

 

Akebono cherries 3, in Vancouver BC
Akebono cherries 3, in Vancouver BC / wlcutler

▲バンクーバーの「akebono」

 

1912年に日本からアメリカのワシントンDCに寄贈された「ソメイヨシノ」と、別種の桜がアメリカで交雑してできた実生の桜に米名「akebono」(日本名「アメリカ」)という品種があります。これを逆輸入して日本の神代植物園で接ぎ木して育てたうちのひとつが、「アメリカ」と異なった特徴をもっていました。

 

それが「ジンダイアケボノ」(神代曙)です。

 

「ジンダイアケボノ」は、「ソメイヨシノ」より木が少し小さく、開花が1~2日早く、ピンク色が少し濃い色をしています。花により濃淡があり、花色が自然なグラデーションになるのも特徴です。もちろんテング巣病にかかりにくい品種です。それ以外は「ソメイヨシノ」によく似た特徴の桜です。

 

「桜色」の概念が変わっていくのかも・・・

▲ほぼ白に近いピンクが「桜色」のはずだけど・・・

ちろん「ジンダイアケボノ」もきれいだけれど、わたしは「ソメイヨシノ」のあの「ほのかなピンク色」が好きですねぇ。白でもないピンクでもない「桜色」としか表現できない色だと思うのです。

 

どんどん「ソメイヨシノ」が減り、いつしか「ジンダイアケボノ」が一番メジャーな桜になってしまえば、春の天気予報でおなじみ「開花予想」の標準木も「ジンダイアケボノ」になってしまうのでしょうか。

 

そして、「桜色」の概念も、「ソメイヨシノ色」から「ジンダイアケボノ色」に変わってしまうのでしょうかね? 少し寂しい気もします。

 

まとめ

「ソメイヨシノ」は、江戸末期につくられた園芸品種ですが、早く育ち若いうちから花をつけることから、戦後の荒廃した日本の公共施設に好んで多く植えられてきた桜です。その典型例が学校や上野公園の「ソメイヨシノ」です。

 

単一の桜をまとまって植えているので、一斉に咲いた姿は圧巻ですよね! 今や桜の名所と呼ばれる場所の桜はほとんどがこの「ソメイヨシノ」です。でも、一斉に植えられた桜は、今一斉に寿命を迎えようとしています。原因はテング巣病と悪環境のため「ソメイヨシノ」がどんどん枯れてきているからだそうです。

 

寿命60年といわれる「ソメイヨシノ」ですが、過酷な環境の街路樹ではなくよい環境で育てればもっと長く生きられるそうです。戦後の日本を彩り日本人を励まし続けてくれた「ソメイヨシノ」、どこかに残してほしいと思いますね。

 

▼桜にまつわる小ネタを集めています。一緒にどうぞ!

 

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