バラの蕾に大穴を開け、若葉や新芽を食い荒らす大型イモムシ。おもに「ホソオビアシブトクチバ」と「ヨモギエダシャク」について紹介します。どんな食べ方をするのか、成虫と幼虫の姿などを豊富な写真で。さらに駆除の方法も一緒にどうぞ。


バラの蕾に大穴開ける困った害虫「ホソオビアシブトクチバ」

▲蕾に大穴を見つけたときのショックときたら・・・

も膨らんできたし、もうしばらくしたら咲くな~♪ と楽しみにしていたら、蕾に大穴開けられてしまったとか、上からがっつり食べられてしまったとか・・・ロザリアンならそんな経験だれしも一度はあると思います。

 

この犯人は、おそらく「ホソビアシブトクチバ」の幼虫です。(「ホソオビアシブトクチバ」以外にも該当する害虫はいます)。

 

「ホソオビアシブトクチバ」と、まるで早口言葉のように長い名前ですが、簡単に言ってしまえば蛾の幼虫のイモムシです。大きくなると体長6cmほどになり、こうなると1匹でもバラの若葉や新芽までむしゃむしゃ食べて丸坊主にしてしまいます。

 

花粉の香りにつられるのか、バラの蕾が好物で、ときに上の写真のように大穴を開けてくれます(==

 

「ホソオビアシブトクチバ」はどんな虫?

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_ESJ3442 Parallelia arctotaenia / papilioshih

▲前翅に目立つ白い帯模様が特徴

ソオビアシブトクチバはヤガ科の昆虫。翅を広げたときの左右の幅は約5.5cmで、前翅の白い帯模様が特徴の蛾です。

 

成虫の活動時期は5~10月。

 

夜行性で、街灯や明るい窓の近くに集まります。昼の間は林などで休息しています。

 

▲つるりとした灰褐色の幼虫

 

発生は年2回。

 

幼虫は暗い灰褐色のイモムシで、バラやウバメガシ、サルスベリなどを好んで食べ、シャクトリムシのような動き方をします。(シャクトリムシはシャクガ科の幼虫なので、正確にはシャクトリムシではないそう)。老齢の幼虫は体長6cmほどになります。

 

幼虫はヨトウムシと同じように夜に動き回る性質があり、昼の間は見つけにくい場所に隠れています。

 

生まれたばかりの小さい幼虫は葉裏や葉の縁にくっつくようにして隠れていて、あるていど大きくなった幼虫は株元の木質化した枝に擬態してくっついていたり、鉢の縁や土に浅く潜って隠れています。

 

若葉を貪欲に食べる「ヨモギエダシャク」

▲「ヨモギエダシャク」に食べられ、大事な若葉が丸坊主に・・・

ラの蕾を食べ若葉を食い散らす大型イモムシは「ホソオビアシブトクチバ」がもっともメジャーですが、「ヨモギエダシャク」というシャクトリムシもバラにつきます。こちらも大食漢で、老齢の幼虫になると、ものすごい速度で枝先の若葉を食べつくします。

 

「ヨモギエダシャク」はシャクガ科の昆虫。つまりこちらも葉を食べているのは蛾の幼虫です。「ヨモギエダシャク」はバラ以外にも幅広い農作物につくので農家にとても嫌われています。

 

「ヨモギエダシャク」は、どんな虫?

Ascotis selenaria - Giant looper - Дымчатая пяденица полынная
Ascotis selenaria – Giant looper – Дымчатая пяденица полынная / Cossus

▲「ヨモギエダシャク」の成虫

モギエダシャクは、シャクガ科の昆虫。翅を広げたときの左右の幅は約5~6cmで、薄い灰褐色の地に褐色の斑紋と筋模様がある蛾です。

 

成虫の活動時期は5~10月。

 

走光性があり、街灯や明るい窓に集まります。

 

▲幼虫は、背中に突起があるのが特徴

 

発生は年3回。

 

幼虫は緑色のシャクトリムシで、老齢になると6cmほどになります。

 

「ヨモギエダシャク」の幼虫はミカンなどの柑橘類、ナシ、モモ、クリなどの果樹、大豆などの豆、チャ(茶)など幅広い農作物に被害をもたらします。バラにもつきます。なんと我が家ではバジルにもつきました。

 

幼虫は、背中に一対の突起があるのが特徴です。

 

▲エダシャクの仲間かな?

 

「ヨモギエダシャク」の幼虫の多くは緑色をしていますが、「ホソオビアシブトクチバ」のような暗い灰褐色の種類もいるようで、上の写真もエダシャクの仲間だろうと思います。背中に微妙に突起があるように見えるので、「ヨモギエダシャク」の色違いかもしれません。

 

この子は、近くの蕾をがっつり食べ散らかしてありました。

 

生まれたばかりの幼虫は1cmほど

▲生まれたばかりの幼虫が、葉の裏側から細かく食べた痕

こからは「ホソオビアシブトクチバ」「ヨモギエダシャク」共通で、生まれたばかりの幼虫について紹介します。

 

生まれたばかりの幼虫は、長さ1cmほどの細くて小さなイモムシです。どちらも上の写真のような細かい食害痕のある葉を裏返すと見つけられます。

 

▲長さ1cmほどの小さな幼虫

 

いました! 緑色なのでこれは「ヨモギエダシャク」ですね。「ホソオビアシブトクチバ」なら黒褐色です。どちらも背中を丸めて尺取り状に動きます。大きさは1cmほど。まだ生まれたばかりです。

 

▲危険を察知すると糸を吐いてぶら下がる

 

幼虫は、薬剤散布したり割り箸でつまもうとすると、一斉に糸を吐いてぶら下がります。この状態で風に乗ってほかの葉に移動して逃げるのです。写真は「ヨモギエダシャク」ですが、「ホソオビアシブトクチバ」も同じように糸を吐きます。

 

わたしはこの性質を利用して、ニームオイルを散布してぶら下がってきた小さい幼虫をピンセットでつまんで捕殺しています。ニームオイルでなくても、おそらくただの水でも同じようにぶら下がると思います。

 

小さい幼虫駆除には「オルトラン」。育ってしまったら「アファーム乳剤」「テデトール」

 
オルトランDX粒剤 200g 住友化学園芸 花と野菜の害虫退治に 浸透移行性 殺虫剤

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虫駆除は、なるべく生まれたばかりの小さいうちに行います。幼虫が大きくなればなるほど農薬効果が薄くなります。

 

イモムシ類に効果がある薬剤は「アセフェート」です。商品名でいうと「オルトラン」が、「アセフェート」を主原料にした農薬です。

 

株元に散布する「オルトランDX」(住友化学園芸)や希釈して葉面散布する「GFオルトラン水和剤」(住友化学園芸)など、「オルトラン」と名のつく農薬が効果があります。また「ベニカXファインスプレー」(住友化学園芸)も少しは効果がありそうです。「ベニカXガード」には「アセフェート」が入っていないので、たぶんあまり効きません。

 

「アファーム乳剤」(シンジェンタ)は30種類以上の害虫に適応する農薬で、こちらはかなり大きくなってしまった幼虫にも速攻で効果があります。

 

「ゼンターリ」(住友化学園芸)もイモムシ類によく効きますが、残念ながらバラが適用植物になっていないので使えません。

 

育ってしまった幼虫はテデトール推奨。大型イモムシの見つけ方と駆除のしかた

▲「ホソオビアシブトクチバ」は夜行性。昼は物陰に 写真提供/天女の舞子

まれたばかりの小さい幼虫をちまちまテデトール(手で取る)するのは大変なので農薬使用をおすすめしますが、がっつり食べられている食害痕を見つけたらかなり育った大きな幼虫なので農薬は効きにくくなっています。

 

上で紹介した「アファーム乳剤」を使うか、犯人を探してテデトールを推奨します。

 

▲これだけがっつり食べられていたら、もうかなり大きい!

 

「ホソオビアシブトクチバ」は夜に動き出す性質があるので、昼はバラの株元の目立たないところに隠れています。

 

自分と同じような色の木質化した枝やロープにくっついていたり、鉢の縁に隠れていたり、株元の土に浅く潜っていることもあります。昼に幼虫を探すなら、「ホソオビアシブトクチバ」の隠れそうなところを狙いましょう。

 

もしくは懐中電灯片手に夜のパトロールをするか、早朝ならまだ枝の上にいるので見つけやすいと思います。刺したり噛んだりしないので、素手でいけます。

 

できる方は「テデトール」からの「フミツブース」(踏みつぶす)のコンボ技で。わたしのように、そこまでできない方は牛乳パックやビニール袋に台所用洗剤液を入れておいて、割り箸でつまんだ幼虫を中に集めゴミとして処分します。

 

▲「ヨモギエダシャク」は昼の間も枝の上

 

「ヨモギエダシャク」は、昼の間も枝の上でむしゃむしゃ葉っぱを食べています。枝のふりして隠れていることもありますが、明るいうちによく探せば見つけられます。こちらも刺したり噛んだりしません。

 

上の写真は、1匹だけつるバラにいるのを黙認していた「ヨモギエダシャク」ですが、体長5cm以上とこれだけ大きくなるとさすがに食べ方がすごい(== ついに割り箸でつまんで排除することにしたんですが、糸を吐いてアガパンサスの茂みに逃げられてしまいました(--;

 

おまけ/バラにつく、お尻にツノのあるイモムシ

▲見慣れない可愛らしいイモムシ発見!

前一度だけ見慣れないキレイな緑色のイモムシをバラに見つけました。お尻にツノがある太ったイモムシで、調べてみるとツノのあるイモムシは「スズメガ」の幼虫とのこと。

 

この幼虫は太っていてかわいらしいし、写真でみたスズメガの成虫もキレイだったので娘が水槽で育ててみることに。でも、スズメガの幼虫はクチナシの葉を食べるんですよ。この子はバラ専門──アナタはだぁれ?

 

育つにつれ大食漢になるイモムシくん。やがてこのイモムシの餌にバラの葉をいくつも摘むのがもったいなくなり、途中でフェンネルの葉をあげたことがあるんですが、そのときは転げまわって嫌がってました。よほど嫌いだったらしいです。

 

お詫びに咲き終わりの花を入れてあげたら、すぐに寄ってきてムシャムシャ食べたあげく花の中に潜り込みうっとりしていました。

 

▲正解は「カラスヨトウ」でした!

 

育て始めてから1カ月半。6月中旬にこの子は成虫になりました。やはりスズメガではなくヤガ科の「カラスヨトウ」でした。カラスヨトウには何種類かいるようですが、たぶん「オオシマカラスヨトウ」かな?

 

「ヨトウ」とついているけれど、「カラスヨトウ」の幼虫は夜行性ではないそうです。

 

まぁ、バラの葉や蕾を食べ散らかすロザリアンの敵で間違いないけどね。「戻ってこなくていいからね~!」と、窓から逃がしてやりました。

 

まとめ

今回は、バラの葉や蕾を食べる大型イモムシについて紹介しました。こういうタイプのイモムシで最も有名なのが「ホソオビアシブトクチバ」。成虫も幼虫も夜行性で、昼は物陰でじっとしているので、なかなか見つけられません。

 

それ以外にも「ヨモギエダシャク」や「ヨトウムシ」(ヨトウガの幼虫)もバラの葉や蕾を食害します。

 

どれも幼虫が小さいうちに駆除できればいいのですが、大きく育ってしまうと広範囲にがっつり食べられてしまいます。こうなると農薬も効きにくいので、なんとか犯人を探し出しテデトールで駆除します。

 

エリックカール氏の絵本「はらぺこあおむし」の影響か、イモムシやシャクトリムシは子どもに人気があります。我が家の娘も「毛虫や派手な極彩色のは嫌だけど、緑色でまるまるしてるのは可愛い」とか言ってます。

 

どの虫もただ一生懸命生きてるだけなんだけど、ごめんね生活圏を共有できないんだ。心を鬼にして、うちのバラは守りましょう!

 

 

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