バラには大きく3回の見ごろがあります。春の1番花のシーズン、初夏の2番花のシーズン、秋バラのシーズンです。それぞれどんな特徴があるのか、比較して紹介します。
春の1番花シーズンはバラ園が最も輝く時期!
▲バラ園の花の量は、春の1番花シーズンがもっとも多い
バラには、春だけ咲く一季咲きのバラと春、夏、秋の3シーズン花を咲かせる四季咲きのバラ、春以降もぽつぽつ咲く返り咲きのバラがあります。
春は、一季咲きのバラも四季咲きのバラも返り咲きのバラも咲くので、バラ園の景色がそれこそバラ一色になるほどゴージャスです。フェンスもアーチもどこもかしこもバラの花に埋もれるようになる、一年で一番バラ園が美しい季節です。
▲つるバラが花を咲かせるのは、ほぼ春だけ
冬の休眠期にたっぷり蓄えたエネルギーを使って咲く春の1番花は、サイズも大きく色も鮮やかです。葉の色も瑞々しく、花も葉も景色としてもきれいなのが春バラの特徴です。だれの心もひきつけ、一気に魅了する春バラのバラ園。ほんとうに美しいです!
▲あまりに咲かせ過ぎて、水分不足でところどころ花首が下がっている春バラ
春バラの欠点は、春はどんどん気温が上がるので、あまりにたくさん花を咲かせる株だと水分補給が間に合わず、花首が下がってしまいがちなこと、花が咲き急ぐのですぐに花形が崩れてしまい、花もちが良くないことなどが挙げられます。
しかし次々花開くので、一輪の花形が崩れてもあまり気にならないという面もあります。春のバラ園はとにかくパワフルですね!
初夏の2番花は、花数が少なく、花が小さくなりやすい
▲「カクテル」の夏花。花びらが剣弁のように細くなっている
爆発的に咲いた春の1番花が終わった後、6月下旬~7月中旬ごろに咲くのが2番花です。2番花は四季咲き品種と返り咲きする品種が咲きます。返り咲き品種は、春よりも花数はかなり減ります。春が10割だとすれば、2番花は1~2割くらいしか咲かない品種もたくさんあります。
1番花の後で得たエネルギーだけで咲くので、2番花は小さくなりがちです。また、気温がどんどん暑くなっていくシーズンなので、散るのも早くなります。
暑くなってからのバラは、剣弁咲きの品種でなくても花びらが中心から左右に分かれて反り返り、細くなる傾向があります。春バラのふっくらした花形とは、少し違った印象に咲くことが多いですね。
2番花シーズンはアジサイとのコラボレーションが楽しめる!
▲アジサイの奥にたくさんのバラが咲くガーデン
バラの1番花が終わるころに、入れ替わりでアジサイが咲き始めます。バラだけでなくアジサイも植えているガーデンなら、咲き始めたアジサイと咲き残った1番花のバラが同時に楽しめます。さらにアジサイが咲き進むと、今度はバラの2番花が同時に観られるようになります。
アジサイには、バラにない青系の花色が多いので、それまでとまた違った雰囲気のガーデンになるのも嬉しいですね。しかも梅雨時期に重なるので、1番花のシーズンよりもぐっとお客さんも少なく、ゆっくり観てまわれるのもこの時期ならではの良いところです。
秋バラには秋バラの楽しみ方がある!そこを理解して出かけよう!
▲秋のバラ園は落ち着いた雰囲気
秋バラのシーズンは、関東でいえば10月中旬~11月上旬です。秋に咲くバラは、ほとんどが四季咲きのブッシュ樹形のバラで、つるバラはほぼ咲いていません。ところどころ返り咲きのバラも咲きますが、花数はぐっと少なくなります。
しかも春の瑞々しい葉と違い、秋のバラの葉は色が濃く量も少ないことが多い。秋のバラ園の様子は、春の爆発的な景色ではなく、良く言えば落ち着いた雰囲気、悪く言えばかなり寂しい雰囲気です。
秋バラは花数がぐっと減る
▲株を覆うように房咲きする春花の「桜木」(シュラブ系統)
日本の観光バラ園では、秋バラを一斉に咲かせるために夏の終わりに剪定して調整しているので、ある程度まとまって咲いている様子を観ることができます。でも「ある程度」です。春花のように爆発的な咲き方はしません。
ハイブリッド・ティー系統などの一輪咲きのバラは春も秋もさほど花数が変わりませんが、フロリバンダ系統などの房咲きする品種は房が小さく、花数が少なくなってしまいます。
シュラブ系統のバラの場合、花数がかなり減るだけでなく咲かないこともあります。
▲房咲きにならず、まばらに咲く秋花の「桜木」
上の写真は、シュラブ系統の「桜木」の同じ株を春と秋に撮影したものです。春バラは葉が見えないくらいびっしりと咲いているのに比べ、秋バラはかろうじていくつかパラパラ咲いているという状況ですね。
品種により差はありますが、春花と秋花では、これだけ違いがあるのです。
▲つるバラがゴージャスに咲く春のバラ園
つるバラの場合は、さらに違いが顕著です。春には、アーチやトレリス、フェンスなどをゴージャスに彩るつるバラですが、秋には、ほとんど咲きません。
▲同じバラ園の秋の様子。返り咲きのバラがまばらにぽつぽつ咲いている
上の写真は、同じバラ園の春と秋の様子です。秋に咲くつるバラもあるといいますが、実際はこの通り。咲いていても1株に数輪です。春とは比べ物になりません。
バラは春と秋の年2回が大きな開花シーズンといわれ、バラ祭りもたいてい春と秋に行われます。でも、春と同じように花に埋もれるようなバラ園の景色が、秋にもう一度観られると思ったら肩透かしをくらってしまいます。このため、秋のバラ園を寂しいとか、バラがあまり咲いていないと失望する人もいるようです。
秋はつるバラが多い立体的なバラ園より、平面的に植えられているバラ園を選んで!
▲平面的な植栽の秋のバラ園。たくさんの花が咲いている
それでは秋のバラ園は行く価値がないかといえば、そうでもありません。秋バラには、春バラにない魅力があるので、それをよく理解して楽しみましょう。まず、秋に訪れたいバラ園は、春とは違った視点で選びましょう。
秋に咲くのは、主に木立ち(ブッシュ樹形)のバラです。ハイブリッド・ティー系統のバラ(ブッシュ樹形)は秋も春と同じくらい咲きます。フロリバンダ系統のバラ(ブッシュ樹形)は、春のように房咲きにならず、枝先に1輪咲きすることが多くなります。
シュラブ樹形のバラも咲きますが、品種や仕立て方によりけり。枝先のあまり長くならない品種なら比較的よく咲きますが、つる仕立てにした大型のシュラブ樹形のバラはあまり咲きません。つるバラは、ほぼ咲きません。
▲自然樹形に仕立てた秋花のイングリッシュ・ローズ(シュラブ系統)
このため秋に訪れるなら、つるバラで立体的に演出しているバラ園より、平面的な植栽を多く取り入れているバラ園の方がたくさん花が咲いていて、見ごたえがあります。
ハイブリッド・ティー系統のバラ、とくに黒バラは秋にこそ楽しみたい!
▲秋花の「ピース」。たっぷりとした大輪で、ピンク色の覆輪もきれいに出ている
秋に特に楽しみたいバラは、ハイブリッド・ティー系統のバラです。秋は春よりも気温が低く、つぼみからゆっくり時間をかけて花開きます。そのため、その花本来の良さが引き出され、より美しい花になることが多いのです。
しかも、秋は春よりもずっと花が長もちします。
黒バラは秋にこそ観るべきバラ!
▲春花の「パパ・メイアン」。これではただの赤バラにしか見えない
秋にこそ観るべきバラもあります。それが黒バラと呼ばれる黒みの強い赤バラです。上は黒バラの代表的な品種「パパ・メイアン」の春花です。「パパ・メイアン」と書いてなければ、これが黒バラとして有名な「パパ・メイアン」とは思えませんよね。ただの赤バラです。「パパ・メイアン」の良さが出ていません。
▲日焼けしてしまった黒バラ「ブラック・バカラ」の春花
黒バラは、その濃い色のため日焼けしやすいという欠点があります。陽ざしの強い日が続きやすい春の黒バラは、無残にも日焼けでチリチリになってしまうことが良くあります。これではせっかくの花が台無しですね。
▲本来のゆうゆうとした花形、美しい濃い黒赤に咲いた秋花の「パパ・メイアン」
黒みを帯びた美しい濃い赤、整った美しい花形。秋花の黒バラは、その花本来の美しさがじゅうぶん引き出されています。「パパ・メイアン」は強い香りをもつバラとしても有名ですが、秋花は香りも素晴らしいのです!
黒バラはとくに秋にこそ観たいバラといえますね!
秋バラを見るなら、景色よりも花一輪を見る気持ちで!
▲手前のアーチのつるバラは咲いていないけれど、奥の四季咲き品種はたくさん咲いている
四季咲きのバラを多く植えているコーナーなら、秋でも場所によってはバラがたくさん咲く景色が見られます。が、ほぼ一季咲きのつるバラや古い時代のオールド・ローズを多く植えているコーナーだと、花が咲いているといってもあちらに1輪、こちらに2輪といった感じで、景色として花を見るには見ごたえがありません。
▲つるバラとシュラブ系統のバラが多い秋のバラ園
秋は、バラ咲く景色ではなく、花一輪の豊かな美しさを楽しむ季節と思って出かけてみてはいかがでしょうか。見物客も春ほど多くないので、ゆっくり見てまわることができます。心行くまでバラの香りを楽しむにも、秋はぴったりですよ!
まとめ
春バラ(1番花)、夏バラ(2番花)、秋バラの比較をしてみました。春バラはなんといっても花数が多く、ゴージャスなバラの景色が楽しめます。夏バラは花数はぐっと減り、花のサイズも小さくなりがちです。
秋バラは1輪の花や香りを楽しむならいいのですが、春バラに比べると花数も葉も少ないので、景色としての見ごたえは春にかないません。
春のバラ園があまりに素敵だから、同じ景色が夏や秋のバラのシーズンにも観られると勘違いされがちですが、そうではありません。春バラ、夏バラ、秋バラ、それぞれに特徴があります。特徴を知った上で季節ごとのバラ園を楽しんでくださいね!