バラの病気や害虫防除に欠かせないハンドスプレー農薬。手軽に使えるけれど「農薬」です。ハンドスプレー農薬の安全で正しい使い方を紹介します。
初心者ロザリアンYOUです。わたしはいつもハンドスプレータイプの便利な薬剤を使っているけれど、これってよく考えたら「農薬」なのよね。安全で正しい使い方を教えて!
農薬は安全性が担保されている。むやみに怖がらなくてOK!
▲正しい使い方をすれば、農薬は安全なもの
バラ栽培に農薬散布は欠かせないものですが、できれば使いたくないのが多くの方の本音です。
「農薬」ときくと「残留農薬」「人体に影響」なんて言葉が頭をよぎるし、古い時代の推理小説だと農薬を使って事件を起こすなんてのもあるし──とにかく「危険なもの!」というイメージが強いですよね。農業経験のない人にとり、「農薬」は「毒物」と同義語に思えてしまいます。
農薬はたしかに「毒物」の一種ですが、だからこそ農薬取締法で厳しく管理されているものです。農薬として販売されている薬品は、くり返し安全性評価を行い、そのうえで農薬登録が許可されているものだけです。だからむやみに怖がる必要はありません。
農薬を安全に使う5つの注意
安全性が国により担保されているとはいえ、それはもちろん「定められた使用方法を守っている限り」という条件つきです。「どんな使い方をしても安全」なわけではありません。農薬を使う際の注意点を5つにまとめました。
1、希釈倍率と年間使用回数、適用植物を守る
多くの農薬は、原液や粉末を水に溶かして薬液を作ります。それぞれの農薬には決められた希釈倍率があるので、それをしっかり守りましょう。濃い方が効果があるのでは? と、安易に濃くするのは危険です。
また、ほとんどの農薬には年間使用回数に制限があります。なかには年1回しか使えないものもあります。人体や環境に配慮して安全性が確認されているのが、その回数までなので、自分のため周りの方のため、そして自分が住む環境を悪化させないために、決められた年間使用回数を守りましょう。
どんな農薬も適用植物が定められています。バラに使うなら「バラ」または「花木」が適用植物として記載されている農薬のみを使いましょう。どんな農薬を使ってもいいわけではありません。
2、体調の優れない日、風の強い日は散布しない
自分を守るため、さらに他の人や環境に配慮して、体調の優れない日や風の強い日は散布しないようにしましょう。
散布する際には風向きにも注意が必要です。農薬によっては車の塗装が変色したり、魚類に影響が出るものもあります。車や池が近い場所、ペット小屋や子どもの遊具に近い場所などでの散布は注意してください。
3、散布スタイルは厳重に
実際に散布する際には、長袖・長ズボン、ゴム手袋、農薬用マスク、ゴーグル、フードつきレインコートなどを着用し、自分が吸い込まないよう注意して散布します。
散布後は、散布時に着用していた衣服はその都度ほかの衣服と分けて洗濯しておきましょう。
4、散布当日は、そのエリアに入らない!
農薬散布した後は、少なくとも当日はそのエリアに入らないようにしましょう。とくに子どもやペットには注意が必要です。
5、保管場所に注意
農薬は安全性の高いものですが、間違った使い方をすれば事故につながりかねません。保管場所には注意しましょう。とくに小さい子どものいる家庭では、カギつきの場所に保管することをおすすめします。
わかるんだけど──。こんなに厳しい注意があって「農薬は安全です」って言われても・・・。でも、これってバラ園とかすごい広いお庭に撒くときの話よね? ハンドスプレー農薬ならここまでしなくて平気よね?
残念ながら、ハンドスプレー農薬でも基本は同じよ! だって、バラ園や広いお庭に撒くものと中身が同じなんだもの。
「ベニカXファインスプレー」は年間使用回数4回まで
▲「ベニカXファインスプレー」は、マルチに使えて便利だけれど・・・
今回、とくに注意喚起したいのが「ベニカXファインスプレー」についてです。殺虫効果が高く、アブラムシやハダニの駆除に、わたしも便利に使っている薬剤ですが、「年間使用回数4回まで」という回数制限があることは、あまり知られていません。
バラの先生でも「バラの近くに置いておいて、気が付いたら1日に何度でもジャンジャン使ってください」って発言していることがあって、以前からとても気になっていました。
そうなの!? わたしも今まで予防効果を期待して、けっこう何回も使っていたわ──。
これ1本あればとりあえず何にでも使えるという便利さから、そういう人は多いと思うわ。でもね、本当は年間4回までなのよ。
使用回数に縛られず使いたいなら「アタックワンAL」
バラの病気の予防と害虫の防除、両方の効果があり使用回数に制限なく何度でも使えるハンドスプレータイプの農薬ならフマキラーの「アタックワンAL」という商品があります。回数制限を気にしたくない方には、こちらの商品がおすすめです。
ただし「アタックワンAL」も農薬です。上に書いた5つの使用上の注意は守ってください。
今まで「アタックワンAL」を使ったことがなかったのでオススメしてこなかったんだけど、今度実際に使ってみますね!
追記
「アタックワンAL」は、確かに法律上、使用回数の制限がありません。ただし、それはこの商品が登録された時点での話。現行法では使用回数の制限があります。より正しく使いたいという方は、ハンドスプレー農薬のデータベースをご覧ください。
▼バラに使うハンドスプレー農薬と土に撒く農薬をまとめて紹介
ハンドスプレー農薬を吸い込んだらどうなる?
ハンドスプレーって気軽に使えるから、じつは農薬用じゃない普通のマスクをつけて使っているんだけど・・・。吸い込んだら、どんな影響があるの?
農薬は、その毒性の強さにより「毒物」「劇物」「普通物」の3種類に分けられます。「毒物」「劇物」に区分される農薬は、購入する際に印鑑と住所・氏名などの記帳が必要で、厳重管理が義務付けられています。
でも、ほとんどの農薬はそこまで毒性の高くない「普通物」で、ハンドスプレータイプの農薬はすべてが「普通物」に分類されているものです。
もちろん吸い込むようなことがあってはいけませんが、万一散布液を吸い込んでしまっても、喉や鼻に刺激を感じるていどです。皮膚についた場合は、刺激をうけたりかゆみが出たりする可能性があります。また、農薬散布をして気分が悪くなることもあり得ます。
皮膚についた場合は、石けんでしっかり洗っておけば大丈夫です。喉や鼻への刺激や、気分が悪くなった場合には、心配なら医療機関を受診してください。
もっと気軽に使いたいなら農薬以外の商品を
バラ専用高濃度ニームオイル ローズディフェンス80ml 【薔薇物語】
使用回数を気にしたくない、散布時の装備を厳重にしたくない、そもそも農薬を使いたくないという方は、農薬以外の商品を使いましょう。
たとえばわたしはマンションのベランダ栽培なので、お隣や下の階への配慮もあってスプレー式の農薬は極力使いません。
現在わたしがメインで使っている葉面散布剤は「ニームオイル」と「次亜塩素酸水」です。ニームオイルはニンニクのような臭いで害虫がくるのを減らし、食欲減退させて数を減らす効果があります。オイルが葉の表面につくことで、病気予防にも(たぶん)なっていると思います。
次亜塩素酸水は安全性の高い殺菌剤で、病気の予防に役立ちます。どちらも劇的な効果はありませんが、毎日散布することで、手数勝負で病虫害を防除しています。
「マイローズ殺菌スプレー」や「ベニカXファインスプレー」も持っていますが、なるべく使わなくてすむようにしたいと考えています。
アースガーデン 園芸用殺虫・殺菌剤 やさお酢(1000ml)【アースガーデン】
たとえばお酢を使ったものなど、人体に影響のないハンドスプレータイプの商品は、他にもいろいろあります。こういう農薬以外の防除薬は、どれも劇的効果は見込めません。手数をかけて効果を引き出します。自分のライフスタイルに合った商品を取り入れてください。
お酒とトウガラシやハーブを使って、安全な害虫忌避剤を手作りするのも手です。無農薬、減農薬に興味のある方はゼヒ試してみてくださいね!
▼トウガラシ+ハーブスプレーの作り方はこちらから
まとめ
今回は、バラ栽培初心者でも知っておきたい農薬の基礎知識を紹介しました。農薬は、決められた使い方を守ればけっして怖いものではありません。とはいえ正しい使い方を知らなければ、やはり危険なものに変わりありません。
たとえハンドスプレー式農薬でも同じです。簡単に使えるからと侮らず、使用方法を守って使いましょう。とくに「ベニカXファインスプレー」は使用回数に制限があることは軽視されているように思うので、注意してください。
農薬以外の商品もあるので、上手に利用してくださいね。
ニームオイルや次亜塩素酸水って、農薬ほどの重装備は必要ないと思うけど、それでも吸い込んだりしないように使い捨てマスクくらいはした方がいいわよね?
もちろん!
参考文献
農薬工業会「教えて!農薬Q&A」https://www.jcpa.or.jp/qa/a5_08.html
農力「農薬の安全性」https://www.i-nouryoku.com/agora/anzen/anzen_03.html
住友化学園芸「ベニカXファインスプレー」https://www.sc-engei.co.jp/guide/detail/1241.html
▼バラ初心者YOUのQ&A一覧は、こちらからどうぞ
▼病気と害虫対策の記事一覧は、こちらからどうぞ
▼「土と肥料・薬剤・園芸資材について」の記事一覧はこちらからどうぞ
質問で~す!昔から疑問なのですが。スプレー散布。
さてはて、どれくらい散布すればええのやら???
①かる~く全体に。
②葉の表側が全体に濡れるくらいに。
③葉の表も裏側も全体に濡れるくらいに。
これって、どのスプレーにも記載されてないような。。。
使う頻度にも変わるのでしょうけど。
難儀なうどんこ病に黒星病・・・
ま、もう秋になったので。台風だけが心配ですが。
はい。2週間のカーポート避難で、アドバイスいただいたように。
こりゃ、来月半ばには咲かないだろうと思われる小さい蕾は全て。
ピンチしました。
そこそこ蕾は大きくなってからでも開花まで、けっこうかかりますしね。。。
この秋は残念ですが。天候にはどうしようもないです。
今年の春から夏にかけて購入した新苗ですから(笑
来年の春に、大きな花を咲かせてもらいます。
ORCAさん、こんにちは。
薬剤散布は、
「葉裏を念入りに、薬液がしたたり落ちるほど全体にたっぷりと」
が基本になります。
ウドンコ病は葉裏から侵入するようですが、
初期の黒星病は葉裏が黒くならないので、
もしかしたら黒星病だけは葉表から侵入するのかもしれません。
そこはまだハッキリ分かっていないようです。
なので黒星病の場合は、葉の裏表、両方を念入りにした方がいいかもです。
害虫も葉裏に潜むので、害虫対策でも葉裏を念入りに散布します。
薬剤散布は回数制限のあるものが多いので、
1回の散布量をたっぷりかけて効果を引き出します。
サッとかけてもたっぷりかけても1回にカウントされるので。
そういえば、ORCAさんのように切花にしやすい品種を探している方には
京阪園芸取り扱いの「F&Gローズ」がいいかも知れないです。
「F&G」は、フラワー&ガーデンの略で、
切花にも庭バラにも、どちらにも向く品種という意味です。
花枝が長く、大輪の整った花を咲かせるタイプをそろえていますよ。
新苗はムリさせず、今年は来年に備えて樹を充実させる方がいいですね。
きっと来春はたくさん咲いてくれますよ^^
あいびー