バラの花が終わったら、花がら切りをします。バラの花がら切りは、花がらを取り除くだけでなく、切り戻しも兼ねた作業です。次の花を状態良く咲かせるための花後剪定のしかたをバラのタイプ別に紹介します。


バラの花が終わったら、花がら切りをしよう!

▲ハラハラ散る「レディエマハミルトン」の咲き終わり

しく咲いていたバラも、いつかは咲き終わります。品種によっては、上の写真のようにボロリと花びらが落ちて咲き終わりが分かりやすいバラもあれば、花びらが茶色く変色してもまだ枝先に残っているバラもあります。

 

▲茶色く変色するまで枝先に残る「グリーンアイス」 写真提供/ORCA

 

こういう咲き終わった花を「花がら」と呼びます。「咲きがら」と言う場合もあります。漢字をあてるなら「花殻」です。「花柄」と書く場合もありますが、「花柄(かへい)」と紛らわしいので当サイトでは「花がら」または「花殻」と書いています。

 

ちなみに、「花柄(かへい)」は、花のすぐ下の細い枝をさします。詳しくは、バラの各部位を紹介したページを参照してください。

 

▼各部位の名称はこちらからどうぞ

 

バラの花が終わったら、この「花がら」を切るわけですが、ただ汚れた花を取り除くのではなく、次の花をキレイに咲かせるための切り方があります。今回は、バラの花がらを切る方法を、3つのタイプの咲き方別に紹介します。

 

タイプ1、バラの花がら切り(切り戻し・花後剪定)の基本!

▲花が咲いている枝の半分まで切り戻す

ず、バラの花がら切りの基本から。花枝の先に大きな1輪の花を咲かせるタイプ1のケースで紹介します。

 

上の図の下の方に3本短く描いてあるのが主幹です。去年より前に出た古い枝ですね。そこから今年新しく伸びた枝の先に花が咲きます。この図では大きな1輪の花が咲いていますね。

 

この花が終わったら、「今年新しく伸びた枝の半分のところ、株の外側についている5枚葉の上でカット」します。これがバラの花がら切りの基本です。

 

この位置まで切り戻しておくと、切り戻したところからまた新しい花枝が伸びてきて、次の花(2番花)をキレイに咲かせることができます。

 

どうして花のすぐ下で切らず、長く切り戻すの?

YOUYOU

花のすぐ下でカットしないのはどうして?

くのバラは年に何度も花を咲かせます。花がらを切るのは、花が汚くなったから取り除く──というよりも、次に咲く花を良い状態で咲かせるために行う切り戻しの作業という意味合いが大きいです。

 

そのためバラの花がら切りは通常、「花がら切り」「花がら摘み」とは呼ばず「花の切り戻し」または「花後剪定」と呼びます。

 

次に咲く花を良い状態にするには、ある程度太さのあるところまで枝を切り戻す必要があります。だから、半分の位置まで切り戻しましょうと言われるのです。

 

もし花のすぐ下でカットしてしまったら──枝が細いので、次に咲く花は小さくて貧弱な、状態の悪い花になってしまいます。

 

5枚葉の上で切る理由は?

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わたしの育てているバラは7枚葉のもあるけど、5枚葉を探さないとダメなの?

年は品種改良が進んで、さまざまなタイプのバラがあるから、7枚葉のバラも増えています。7枚葉のバラなら7枚葉の上でカットします。

 

「5枚葉の上で切りましょう」というのは、花のすぐ下は3枚葉のことが多いのですが、ここで切るのはダメですよって意味です。もっと枝が太く充実した場所には5枚葉(品種によっては7枚葉)があるので、ここまで切り戻しましょう。

 

株の外側についている葉の上で切るのはどうして?

YOUYOU

株の外側の葉の上で切るのはどうして? ちょうど半分のところにあるのは株の内側についている葉なんだけど、どうすればいいの?

れは樹形と関係があります。次に伸びる枝は葉の付け根から伸びます。外側についている葉の上でカットすれば、外側に向かって新しい枝が伸びます。反対に内側についている葉の上でカットすると、新しい枝は内側に向かってしまい、樹形が悪くなります。

 

外広がりの樹形は見た目がいいだけではなく、日光がまんべんなく当たり、風通しも良く、病気や害虫被害に遭いにくい樹形です。

 

ちょうど半分の位置に株の内側についている葉しかなかったら、もう1段下げて、外側についている葉のところで切りましょう。

 

基本を踏まえた応用編の小技として、あまりに外側に広がりすぎる樹形の場合は、わざと内側の葉の上で切り、全体の樹形をコンパクトに抑えるテクもあります。

 

タイプ2、房咲きタイプの花がら切りの方法

▲枝先にいくつもの蕾をつける房咲き

はタイプ2のケース、枝先にいくつもの蕾をつける「房咲き」するタイプのバラの場合の方法です。

 

房咲きタイプのバラの咲き方は、まず中心に1輪咲き、その花より遅れて周りの蕾が開花します。最初に咲く蕾を「主蕾(しゅらい)」、周りの蕾を「副蕾(ふくらい)」または「側蕾(そくらい)」と呼びます。

 

▲青丸の位置にあった主蕾の花がらを切り取ったところ

 

房の中心にある主蕾が咲き終わったら、その花がらを花のすぐ下で切っておきます。上の写真は、青丸のところに主蕾の花がらがあり、取り除いたところです。

 

主蕾に遅れて側蕾が次々と咲いてきていますね。側蕾がだいたい咲ききったタイミングで枝の切り戻しをします。

 

▲花枝の半分まで切り戻し

 

このバラはもう側蕾も咲ききっているので、そろそろ切り戻しのタイミングです。基本の通りに切り戻します。

 

基本は「今年伸びた枝の半分の位置、株の外側についている5枚葉の上で切る」でしたね。ちょうど半分の位置にあるのが内側についている葉なので、その上のAまたは下のBの位置まで切り戻します。

 

▲切り戻し後

 

Aの位置まで切り戻しました。やがて葉の付け根から新芽が伸び、2番花が咲きます。

 

タイプ3、脇からどんどん花枝が上がるタイプの花がら切りの方法

▲花が咲き終わる前に側枝が伸びて蕾をつける

いて紹介するタイプ3は、近年の品種に増えているバラです。上の写真の真ん中の主幹を見てください。花がまだ咲き終わる前に、花の下からもう次の花枝が伸びて蕾をつけています。

 

つぎつぎ花を咲かせる連続開花性が強い品種で、花を楽しむという意味では嬉しいのですが、いつ切り戻していいか、ちょっと手入れに悩みますね。

 

▲赤丸、青丸の花が終わったら黄色のラインまで切り戻し

 

この場合は、脇から出てきた花枝も含めた房咲きだと考えると分かりやすいです。

 

まず赤丸で囲んだ花が終わったらこの花のすぐ下で切っておき、続いて左右の青丸で囲んだ蕾が咲き終わったら、それぞれの花の下で切ります。

 

最後にこの枝の半分のところ(黄色のラインを引いたあたり)まで切り戻すという手順になります。

 

2番花の花がら切りはどうする?

▲2番花が咲くイメージ図

こまでは、1番花の切り戻しの方法を紹介しましたが、2番花の切り戻し方法はどうでしょう? 考え方の基本は同じです。

 

上の写真イラストをみてください。1番花を切り戻したところから新しく伸びた枝先に、2番花が咲く様子をイラストで加筆しています。

 

この2番花が咲き終わったら、枝の半分あたり(黄色いライン)まで切り戻しておけば3番花を咲かせることができます。

 

▲3番花を咲かせないときは、2番花のすぐ下でカットをオススメ

 

基本はそうなんですが、少し問題があります。2番花は梅雨ごろに咲き、続く3番花は真夏の花となります。

 

2番花は1番花同様キレイに咲くことでしょう。でも3番花は花径も小さく花びらの枚数も少ない貧弱な花になりがちです。気温が高くなるため、どうしても春のように充実した花になる前に開いてしまうのです。

 

3番花や4番花などの夏花は観賞価値が低いので、咲かせず蕾のうちに摘みましょう(ピンチしましょう)と言われます。夏は花を咲かせない方が、ただでさえバラの苦手な暑い時期に体力を温存できるのでバラにとってやさしい手入れになるからです。

 

ということで。3番花を咲かせないときは、切り戻しをする必要がありません。切り戻しという作業は、次の花を状態良く咲かせるために行う作業だからです。

 

3番花を咲かせないなら、2番花の花がらを切り戻しではなく、花首で切ってしまうのをオススメします。こうすることで、少しでも葉を残し光合成に役立ててもらおうという作戦です。

 

切り戻しするタイミングは?

▲8分咲きで切り戻しをオススメされるけれど・・・

後に切り戻しするタイミングについて紹介します。

 

これまで「花が終わったら切り戻しましょう」と書いてきましたが、どの状態で「花が終わった」と判断しますか? 花もちが悪く3~4日で散ってしまう品種なら花の終わりが分かりやすいのですが、花もちがいい品種だとどのタイミングで切り戻せばいいか悩みますよね。

 

通常は、「8分咲きで切り戻す」が理想とされます。

 

上の写真くらいが8分咲きです。全開になる前の、まだまだキレイな段階で切ってしまうのです。このため「花がら切りではなく、花切り、または花摘みだと思ってください」と、ローズスタイリストの大野耕生さんは分かりやすい説明をしています。摘んだ花は花瓶に生けて楽しみましょうということですね。

 

1番花を早く切れば、それだけ2番花の開花が早くなります。切り戻しサイクルを早めることで、3番花でもいい状態に咲かせられるかも知れません。欲張って咲かせたいから、早め早めの切り戻しをオススメしているのです。

 

▲全開しても可愛いバラが増えている

 

上の写真は全開したバラです。ひと昔前の品種なら、全開した姿は美しくないものが多かったけれど、今は全開しても可愛いバラが増えています。

 

こういうバラなら、ロザリアンの本音としては「全開まで見届けたい」ではないでしょうか? さらに言うと「花が残っている限り咲かせておきたい」と思う人も多いのでは?

 

大丈夫です。全開まで咲かせても、花をいつまでも枝に残しておいても構いません。ただその代わり、次の花が咲くのが遅くなります。

 

早く切り戻して3番花まで咲かせるか、遅く切り戻して2番花までにするか、その判断はそれぞれの好みで構わないと思います。

 

まとめ

1番花の花がら切りの方法を3つのタイプのバラで紹介しました。

 

花の切り戻しは、ただ汚れた花がらを取り除くために行うのではありません。次の花を良い状態に咲かせるために行う必須作業です。しっかり切って、次のバラもキレイに咲かせましょう。

 

夏花を咲かせないときは花首でカットするとか、8分咲きで切り戻すというのはいわば応用編で、より良くするための小技です。好みで取り入れてください。

 

▼季節ごとのバラの手入れ一覧は、こちらからどうぞ

 

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