枝先に蕾がつかない「ブラインド」が発生する原因と、その対処法を紹介します。数枚の葉が開いただけで生長を止める「出開き」についても対処法を紹介します。
バラの「ブラインド」とは?
▲蕾が上がると春花への期待にワクワク!
毎年4月下旬ともなれば、多くのバラに蕾が上がってきます。ちゃんと今年も咲いてくれるかと、ロザリアンとしてはホッと安堵すると同時に、花への期待がふくらむ楽しい時期ですね。
▲長く伸びだした枝先に蕾がつく
バラの蕾は、ぐぐっと長く伸びだした枝の先につきます。ところが──
▲枝は伸びているのに蕾がつかないのが「ブラインド」
あるていど長く伸びだしたはいいけれど、そのまま蕾をつけない枝があります。これを「ブラインド」と呼びます。
▲蕾の小さな残骸が黒く残っている場合も
蕾らしきものの残骸が、枝先に黒く乾いて残っているケースもあります。
バラの「ブラインド」とは、「蕾がつかなかった」または「蕾が育たなかった」枝をさします。
バラの「出開き」とは?
▲葉が数枚開いたまま生長を止めた「出開き」
ブラインドは「蕾がつかなかった、または育たなかった枝」ですが、よく似たものに「出開き」があります。「出開き」とは、芽吹いたけれど葉が数枚展開したまま生長を止めてしまったもの。つまり「枝になれなかった芽」です。
「出開き」はつるバラでよくみられますが、木立ち樹形やシュラブ樹形のバラでも発生します。
バラが「ブラインド」や「出開き」になる8つの原因
▲春は急激に寒くなる年もある!
ブラインドや出開きになってしまう原因は、いくつもあります。典型的な8つの原因を紹介します。
1、蕾が育つ春先に寒の戻りがあった
天候不順になりやすい春先は、ときに最高気温が20度ほどになったかと思えば、急激な寒の戻りで桜の花に雪が積もる年すらあります。
厳しい寒の戻りがあった年は、どんなバラにもブラインドが出やすいです。
2、日照不足
▲日照不足はブラインドになりやすい
十分な日照が得られない環境では、蕾がつかないブラインドが増えます。蕾がつけられるほど、枝に栄養分が貯えられなかったからです。
たとえ日向にある株でも、日差しの届かない株の裏側や内側は、日照不足からブラインドや出開きになりやすいです。
3、水切れさせた
▲生育時期に水切れさせるとブラインドになる
枝先に蕾や新芽の残骸らしきものが黒く乾いた状態で残っている場合、水切れさせた可能性があります。
4、樹勢が弱い品種
▲樹勢が弱い、初期生長がゆっくりな品種の苗はブラインドしやすい
樹勢の弱い品種や、初期生長のゆっくりな品種は、株が小さい苗のうちはブラインドになりやすいです。上の写真は河本バラ園の「アジュール」。大苗から最初の年の様子です。
これだけ葉が茂っているのに、蕾はたったの1つです。こういう初期生長がゆるやかなタイプは、2年目、3年目と株がしっかりしてくればじょじょにブラインドになりにくくなります。
5、枝に体力がない
▲体力のない株はブラインドになりやすい
これは根頭癌腫病の株です。芽吹いたけれど主幹の枝先から枯れてきて、芽が育つことができませんでした。この枝には芽を養うだけの体力がありません。
▲老朽化した枝もブラインドになりやすい
これはもう老朽化して芽を養う体力のない古い枝です。芽吹いてもブラインドにしかならない状態が数年続いたので、付け根から切り取りました。
6、肥料不足・適切な剪定や芽かきをしなかった
▲適切な芽かきがされていない株
日照や肥料の量にもよりますが、すべての芽を養えるほど株に体力がない場合もブラインドや出開きが発生しやすいです。自分の栄養状態から株自身が判断して、育てられない芽はブラインドや出開きにしてしまうのです。
適切な施肥、剪定、芽かきで、株の体力をつけ、エネルギーを分散させない株づくりをすればブラインドや出開きは減らせます。
7、肥料過多
▲肥料は多すぎても少なすぎてもブラインドの原因に
ブラインドは肥料過多でも起こります。
肥料が多すぎると、バラは根から水分を吸い上げにくくなります。このため、水やりしているのに水切れを起こしブラインドになってしまうことがあります。
8、品種により「ブラインド」になりやすいバラがある!
▲HTの「プリンセスドゥモナコ」はブラインドになりやすい
環境や手入れ関係なしにブラインドになりやすい品種があります。
とくに大輪の見事な花を咲かせるハイブリッド・ティー(HT)系統のバラがブラインドになりやすいと言われます。たとえば「プリンセスドゥモナコ」は、ブラインドになりやすい品種です。
▲フロリバンダ系統の「ブルーバユー」もブラインドになりやすい
ハイブリッド・ティー系統以外でも、フロリバンダ系統やシュラブ系統のバラ、つるバラでもブラインドになりやすい品種があります。
たとえば、フロリバンダ系統の「ブルーバユー」はブラインドになりやすい品種です。
ブラインドの2つの基本的な処理のしかた
1、日向のブラインドは、そのまま放置する
▲放置すればいずれ芽吹き蕾がつく
十分な日当たりのある環境で、春先の天候不順や品種特性からブラインドになってしまったケースの場合は、そのまま放置で構いません。
頂芽は育たなかったけれど、そのエネルギーを使ってやがて脇芽が芽吹いてきます。この脇芽についた蕾は、ほかの花から半月遅れくらいで開花します。
2、5枚葉まで切り戻す
▲5枚葉まで切り戻してもOK!
そのまま放置するのが気持ち悪いと感じる場合、5枚葉のところまで切り戻しても構いません。
十分な日当たりのある環境で、春先の天候不順や品種特性からブラインドになってしまったというケースなら、切り戻し後に頂芽になったところの芽が伸びだし、やがて蕾をつけます。
ブラインド処理しても蕾がつかないコトもある!
▲枝に体力がないなら、どう処理しても蕾はつかない
老朽化した枝や根に問題のある株のブラインド枝は、いくら放置しても切り戻しても蕾がつくことはありません。
▲1株に2本だけ蕾がついた株
日照不足でブラインドになったのなら、切り戻すことで芽が伸びて蕾をつけることもあります。が、新しい芽もやはりブラインドになってしまうこともあります。
樹勢の弱いバラも同じく、切り戻して蕾をつけることもあれば、いくら切り戻してもブラインドになってしまうこともあります。
「ブラインド」はバラ自身の判断。ムリさせないという考え方もアリ!
▲ブラインドはバラ自身の判断による結果
ここまでみてきたように、バラがブラインドになる原因はさまざまです。でも、ひとつだけ確かなことがあります。それは、なにかトラブルがあったから「バラ自身が判断して」蕾をつけなかったのです。
ロザリアンは誰しも、花を楽しむためにバラを育てています。だから、なんとしても花を咲かせたいと奮闘してしまうのは理解できます。
でも、バラの判断を尊重するのも一つの考え方です。
バラがブラインドしてしまったら、すぐに花を咲かせる処理を考えるより、水やりや肥料やりは適切か? 剪定や芽かきは大丈夫か? 少しでも日照を改善できないかなどを点検しなおすチャンスと捉えましょう。
環境が整えば、バラは安心して蕾をつけるはず。春に咲かなくても秋に咲けばいい、または来年咲けばいいと、ゆったり構えるのもロザリアンの大事な心構えです。
「出開き」の処理のしかた
▲出開きはつるバラによくあらわれる
数枚の葉が展開し、そのまま生長を止めてしまった「出開き」の場合、そのまま放置しても、切り戻しても(切り戻せないことが多いと思いますが)蕾をつけることはありません。
出開きは、つるバラに多くあらわれる症状です。つるバラの出開きは、そのまま放置しましょう。花は咲かないけれど、光合成に役立ってくれます。
▲株元の出開きは光合成にも役立たない
木立ち樹形やシュラブ樹形のバラの出開きは、多くは株元付近にあらわれます。
おそらく「これはベイサルシュートになるのかな!?」と、期待して見守った芽が出開きになってガッカリしてしまった、というケースが多いのでは?
こういう芽は放置してもいいのですが、株元付近の芽はほかの葉が茂ってくれば日陰になり、光合成にも役立たないので取り除いて構いません。株全体を見回して、しっかり芽かきがされていないようなら、積極的に取り除いていいと思います。
まとめ
今回は、春先に多くみられるバラの「ブラインド」と「出開き」について、その原因と対処のしかたを紹介しました。
ブラインドも出開きも、花数を減らすにっくき現象です。なんとかして花を咲かせようと躍起になってしまいがちですが、じつはバラがストレスを感じた結果「蕾つけるのやめておこう」と判断したから起きていること。
そう考えれば、ムリに花を咲かせるより、環境を整える方に力を注ぎたいですね。たとえこの春の花数が減っても、その分のエネルギーを使って株が充実します。そうすれば秋にたくさん咲いてくれるはず。来春にも期待ができます。
わたしは、まだ小さい株のブラインドはそのままにすることが多いです。株の充実を優先したいからです。なんなら、せっかく上がった蕾すら摘んでしまうこともあります。
しっかり育っている年数を経た株のブラインドは1度は枝先を切り戻します。この場合、半月遅れで咲いてくれることが多いですが、またブラインドになるなら放置します。健康に育っていれば、秋に咲くはずだからムリさせません^^
▼季節ごとのバラの手入れ一覧は、こちらからどうぞ