バラの原種は世界中に150~200種類あるといわれています。すべて北半球のみに分布していて、南半球にバラの原種はありません。原種にはそれぞれユニークな特徴があり、園芸品種と異なった魅力が愛され庭に植えられることも多くあります。ここでは、ヨーロッパ、中近東・西アジア、中国、日本、アメリカの原種バラを紹介します。
バラの原種は北半球に150~200種類
バラは、バラ科バラ属に属する植物をさします。世界中に150~200種類の原種バラがあるといわれていますが、そのすべては北半球のみにあるのだそうです。ヨーロッパにもアメリカ大陸にも、中国にも、そして日本にも原種バラはあります。
中国の西南部(四川省、雲南省)、さらにヒマラヤから西アジアにかけて原種バラが特に多いことから、このあたりがバラ属の起源となる地だろうといわれています。
これら原種のバラ(スピーシーズ=Species)を交配することで、園芸品種は作られています。現在のバラの園芸品種はなんと3万種以上もあるそうですが、原種のバラは、これらすべての園芸品種の親となったバラといえます。
原種バラは、ほとんどが春だけの一季咲きで、園芸品種に比べれば華やかさに欠けるところはありますが、その清楚な姿が好まれて庭に植えられることもよくあります。また、もともと自然に自生しているバラなので、病虫害に強く、どれも育てやすいバラです。
原種バラは略記号で(Sp)と表記されます。原種のバラには自然交配されたものや、枝替わり品種と考えられるものも含まれます。
世界各地の原種バラのうち、主要なものをあげてみましょう。
ヨーロッパの原種バラ
▲ロサ・カニナ(Rosa canina)
ロサ・カニナはヨーロッパの苗木の台木にされるバラです。犬の狂犬病予防に使われていたことから「ドッグ・ローズ」と呼ばれることもあります。
▲ロサ・エグランテリア(Rosa eglanteria)
別名スイートブライヤー。若葉にりんごのような芳香があります。
Chelsea Physic Garden / mmmavocado
▲ロサ・ガリカ・オフィキナリス(Rosa gallica)
ガリカ系園芸品種の親。写真は、原種のロサ・ガリカにもっとも近いとされるロサ・ガリカ・オフィキナリス。
▲キフツゲート(Rosa filipes `kiftsgate´)
ロサ・フェリペスの特別個体で、1954年イギリスの園芸家グラハム・トーマスがイギリスのコツウォルズ地方にある庭園「キフツゲート・コート」で発見し、その名前を品種名とした原種バラです。
▲ロサ・グラウカ(Rosa glauca)またはロサ・ルブリフォリア(Rosa rubrifolia)
灰色がかった赤紫色の葉が美しい原種バラ。
Rosa pimpinellifolia / S. Rae
▲ロサ・スピノシッシマ (Rosa spinosissma) 別名ロサ ・ピンピネリフォリア(Rosa pimpinellifolia)
中近東・西アジアの原種バラ
▲ロサ・フェティダ(Rosa foetida)
黄色いバラの親となった原種バラ
▲ロサ・モスカータ(Rosa moschata)
ムスク香の親となったバラ
中国の原種バラ
▲ロサ・キネンシス(コウシンバラ)(Rosa chinensis)
四季咲き性の親となった原種バラ。
Rose Rosa laevigata バラ ナニワイバラ / T.Kiya
▲ロサ・ラエウィガータ(ナニワバラ)(Rosa laevigata)
純白の一重咲きの原種バラ。
▲ロサ・ギガンティア(Rosa gigantea)
剣弁咲きとティー香の親となった原種バラ。
▲ロサ・モエシー(Rosa moyesii)
原種には珍しい真っ赤なバラ。
▲ロサ・バンクシアエ(モッコウバラ)(Rosa banksiae)
白花(ロサ・バンクシアエ・アルバ)は棘がなく、黄花(ロサ・バンクシアエ・ルテア)は少し棘があります。
Rosa sericea omeiensis pteracantha / peganum
RosaSericeaSubspOmeiensisFormaPteracantha-WingedThornRose_20150622_SunsetBeach_Cutler_P1200052 / wlcutler
▲ロサ・セリケナ・プテラカンサ(Rosa sericana pteracantha)別名ロサ・オメイエンシス・プテラカンサRosa omeiensis pteracantha
白い花弁は4枚または5枚。幅の広い三角形の真っ赤な棘が美しい原種。
▲ロサ・ロクスブルギー(Rosa roxburghii)
花弁の多いこのバラは、完全な円にならず一部欠けた形で咲くので「十六夜(イザヨイ)バラ」の別名があります。
日本の原種バラ
▲ロサ・ムルティフロラ(ノイバラ)(Rosa multiflora)
房咲き性の親となった原種バラ
▲サンショウバラ(Rosa hirtula)
サンショウに似た葉をもつバラで富士・箱根地方が原産地。
▲テリハノイバラ(Rosa wichuraiana)
ランブラー系統のつる性の親となった原種バラ
▲ロサ・ルゴサ(ハマナス)(Rosa rugosa)
「ルゴサ」は、「しわの多い」の意味で、葉脈がくぼむ葉の形状から名づけられました。英名でジャパニーズローズ(Japanese Rose)とも呼ばれます。
北米の原種バラ
▲ロサ・ニティダ(Rosa nitida)
細かい毛のような棘で、とても強健。
Virginia Rose / Stephen Horvath
▲ロサ・ヴァージニアナ(ロサ・ヴィルギニアナ)(Rosa virginiana)
花径5センチほどのピンクの花。強健で、実つきがよい。
まとめ
世界の主要な原種バラを紹介しました。バラというとヨーロッパの花というイメージがあるけれど、中国や日本にもたくさんの原種があります。アメリカにも原種バラがあります。
原種のバラたちはどれも園芸品種に比べるとシンプルな印象です。でも、その楚々とした雰囲気が好まれて、庭に植えられることもあるんです。少しツウ好みのバラと言えるでしょうか?
原種バラはとても強健で、病害虫にも強く、育てやすいバラです。
[…] 原種のバラ(Species) […]