バラを育ててみたい! とは思うものの、いざ実際に育てようとするとさまざまな疑問がわいてきます。そこでネットで情報を得ようと試みたり、書店で本を購入してみたりするものの、やっぱり分からないという方は意外と多いと思います。他の植物なら比較的簡単に育て方が分かるのに、なぜバラはこんなにややこしいのでしょう? 多くの人が感じる、素朴な疑問に答えます。


何冊、本を買っても、バラの育て方が分からない! どうして?

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ットであちこちのサイトをサーフィンしていて、こういう悲鳴にも似た記事にたどりつきました。その方は、実際にバラを育てているのだけれど、どうしても分からないことが出てくるので何冊もの「バラの育て方」が書かれた書籍を購入したそうです。けれども、何冊購入しても「よく分からない」ままなので「どうしてなんだろう?」と、疑問に思ったのだとか。

 

きっと、同じように感じている人は多いでしょうね。じつはわたしもその一人。理由はいろいろ考えられます。

 

1、栽培環境が多様すぎるため

2、バラにはさまざまな系統と品種があり、それぞれに性質が異なるため

3、日本ではバラといえば長らくハイブリッド・ティー・ローズをさしていたため

4、園芸界をけん引していきたのが、ほとんど男性専門家のため

5、バラの先進国はヨーロッパのため

6、出版社の編集方針のため

 

まだまだあると思われますが、主だったところはこんなところでしょうか? それぞれについて説明を加えたいと思います。

 

理由その1、栽培環境が多様すぎるため

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北海道から沖縄まで気候が違いすぎる!

本は南北に細長い国です。2500kmも離れた北海道と沖縄では気候がまったく異なります。2015年に気象庁が発表したデータによると、札幌(北海道)の1月の平均気温はー1.5度、8月の平均気温が22.4度。一方那覇(沖縄)の1月の平均気温は16.6度、8月の平均気温が28.7度。札幌と那覇では1月の平均気温で18.1度、8月の平均気温で6.3度異なります。

 

気候区分でいえば北海道は亜寒帯に区分されます。降水量が少なく梅雨がありません。夏は涼しく冬の寒さが厳しい気候です。年間の気温差が大きく、半年以上が冬。台風はほぼ上陸せず、冬は寒いうえに雪が降ります。

 

かつて北海道で冷蔵庫を売るときに「冷蔵庫に入れておけば凍らない」と言って売っていたという話を訊いたことがあります。

 

それを裏付けるように、yahoo知恵袋にはこう書かれています。

 

昔の家は今のような高気密高断熱からは程遠く、冬の外気がマイナス20℃くらいまで下がると、室内でも気温はマイナスになってしまいます。

 

しかし冷蔵庫は庫内がプラス4℃くらいに設定されていますから、凍らせるとまずいモノは冷蔵庫に入れておくなんてこともありました。(yahoo知恵袋)

 

その一方で、亜熱帯に区分される沖縄は、一年を通して暖かく、降水量が多く、台風の影響を受けやすい気候です。冬でも雪が降ることはありません

 

沖縄でのダイビングをすすめるサイトではこう書かれています。

 

亜熱帯の沖縄は、一年を通じて暖かく季節の変化が少なく、他県に比べて四季をあまり感じません。「とても暑い夏」と「暖かい春」の二つの季節といった印象が強く、冬を意識することはほとんどないんです。

 

もちろん季節的な行事やイベントなどで季節感を感じることはあるものの、雪も降らないし秋の風物詩である紅葉もあまり見かけません。極端に言うと、沖縄住民は「お正月を迎えるとすぐ春がやってくる」という感覚でしょう(笑)

 

沖縄の人たちは四季にあまり敏感ではありません(笑)(ラピス・マリンスポーツ)

 

本州でも太平洋側と日本海側では大きく気候が異なります。特に北陸から東北にかけては冬に大量の雪が降るので、雪の降らない関東などとはまったく異なった冬になります。

 

これだけさまざまな気候がある日本のすべての地域に対応したバラの育て方を書くのは、かなり難しいことです。そのため、ほとんどの場合は関東を基準にして書かれています。当サイトも管理人の居住地が横浜なので、関東を基準とした書き方になっています。他の地域にお住まいの方には、きっと当てはまらないことが多く、それが「分からない」につながっていると思われます。

 

庭やベランダの環境も人それぞれ

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る人はとても日当たりのよい南向きの広い庭でバラを栽培しています。別のある人は南向きでも燐家と近接しているので1日に3時間ていどしか日照のない庭かもしれません。北向きの庭の人もいるでしょう。

 

燐のビルの壁の照り返しが厳しい、1年じゅう暑くて乾燥したベランダでバラを育てている人もいるでしょうし、西日を含めて数時間しか日照が得られない環境でバラを育てている人もいるでしょう。

 

たとえ同じ地域でバラを育てていても、一人ひとり、すべて異なった環境でバラを育てているのですから、全員に当てはまるバラの育て方を書くのは難しいことです。

 

栽培経験も水やりの好みも人それぞれ

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めてバラを育てるという人もいれば、たとえバラを育てるのは初めてでも他の植物をいろいろ育てた経験があるという人もいるでしょう。バラを育てて10年以上の経験があるとはいえ、じつは一種類のバラしか育てたことがないという人もいるでしょう。

 

毎日決まった時間に水やりしたいという人もいますし、枯れないていどの水やりしかこなせないという方も。

 

バラを育てる人の経験も水やりの好みもそれぞれなので、すべての方に当てはめた育て方を詳細に書くのは難しいところです。

 

理由その2、バラにはさまざまな系統と品種があり、それぞれに性質が異なるため


▲ダマスク系統のロサ・ダマスケナ・トリギンテペタラ(Rosa × damascena trigintipetala)(カザンリク)

ラは、北半球に150~200種類の原種が存在しています。ヨーロッパの原種、中近東の原種、中国の原種、日本の原種、アメリカの原種。それぞれの原種は、性質が少しずつ異なります。

 

園芸品種のバラは、これら原種を複雑に交配して作出されています。交配して作出されたバラは、もちろん親として使われたバラの性質を受け継ぎます。交配親の性質から、バラは似たタイプの性質をもったグループに分けられています。それが「系統」と呼ばれるグループ分けです。

 

たとえば「ダマスク系統」は、樹はシュラブ樹形で、香りの良い八重咲きの花を咲かせます。多くは一季咲きで強健です。「ハイブリッド・ティー系統」は、樹はブッシュ樹形で、剣弁高芯咲きの大輪の花を咲かせるものが多く、完全四季咲きです。病虫害に遭いやすいものも多くあります。

 

この二つを比べるだけでも、枝の伸び方も、花の形も、一季咲きか四季咲きかも、病虫害に遭いやすいか遭いにくいかも違いますこれだけ性質が異なれば、とうぜん、手入れのしかたも違います。

 

しかも、現代バラは、さらに複雑に交配が繰り返されているので、典型的な系統に分けることができない品種も多くあります。こうなると、それぞれの品種ごとに性質が異なってしまいます。

 

何万とあるバラの品種ごとに、その育て方や管理のしかたを詳細に書くのは・・・ムリですね!

 

理由その3、日本では、バラといえば長らく「ハイブリッド・ティー・ローズ」をさしていたため

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でこそ、バラにはモダン・ローズオールド・ローズがあると知っている方は多いのですが、1990年代まで、日本で「バラ」といえば、それはすべて「モダン・ローズ」を、しかもモダン・ローズのなかの「ハイブリッド・ティー・ローズをさしていました。

 

だから、多くの書籍では「バラ=ハイブリッド・ティー・ローズ」という概念で育て方が書かれています。厳密に言えば「バラの育て方」ではなくて「ハイブリッド・ティー・ローズの育て方」なのです。その本を見ながら「ハイブリッド・ティー・ローズ」以外のバラを育てようとしても当てはまらない、または上手くいかないことが多い。そりゃそうですよね!

 

現代の日本では「ハイブリッド・ティー・ローズ」だけでなく、さまざまなバラの苗が流通しています。オールド・ローズ、原種バラ、つるバラ、あらゆる系統のあらゆる品種のバラが入手できるといえます。

 

たまたま購入したバラが「ハイブリッド・ティー・ローズ」かどうかも分からないという人もいることでしょう。ほんとうに初めてバラを育てるなら、バラによって育て方を変えなければいけないということも知らないでしょう! この状態では何冊バラ(ハイブリッド・ティー・ローズ)の育て方を書いた本を購入したところでピンときません。

 

理由その4、園芸界をけん引してきたのが、ほとんど男性専門家のため

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Gardener / York Minster

本では長らく園芸は中高年の男性の趣味として定着していました。女性に比べて男性は探求心が強く、より難しいものにチャレンジし克服することに喜びを見出す傾向が強いようです。

 

どうすればより大きな花を咲かせることができるか、どうすればより美しい発色にすることができるか、どうすればより効果を上げる栽培法になるか。マニアックな研究と独自の工夫を重ねることで、誰にも真似のできないほど見事なバラを咲かせる、または多くの人が失敗してしまうような気難しいバラを美しく咲かせることに成功する。そういうことに情熱を傾けるところがあると思うのです。

 

より良い方法や完璧な結果を追い求め続けた結果、バラの育て方はとても複雑で難しい、敷居の高いものになってしまったと思うのです。

 

バラは気軽に育てられるんだよ、ということを、もっと広くアピールする方向に行ってくれるといいな、と思います。

 

理由その5、バラの先進国はヨーロッパのため

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english home / jonrawlinson

でも独自のバラの育種文化があったようですが、歴史的にみてバラの育種に特に力を入れたのがヨーロッパだったため、今でもバラの先進国はフランスやイギリスなどのヨーロッパが中心となっています。

 

ヨーロッパで作出された品種のデータは、もちろんヨーロッパで取られたものです。ほとんどのバラ苗ショップではヨーロッパのデータをそのまま記載しているので、それを購入した人が日本の自宅の庭で育ててみてもデータ通りに行かないということが起こります。気候が違うのだから当然ですね。

 

もちろん日本での育ち方を考慮してアドバイスしている書籍やサイトはあります。でも、書籍によりサイトにより書いてあることが異なっていたら、初心者はいったいどれを信用していいのか分かりません

 

理由その6、出版社の編集方針のため

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籍編集者には、大きく二つのタイプがいます。たとえば「バラの育て方」の本を作るにあたって、バラについてしっかり勉強して理解しようと務めるタイプと、バラの育て方を熟知している著者を探すタイプです。

 

バラについて勉強し知識をもってページを作ろうとする編集者は、一般人(つまり読者)の立場に立ってどう書けば分かりやすいか、よく考えて文章も写真や図版などの入れ方も工夫します。専門知識はないので、「監修」という立場の専門家を置き、相談しながら最終的に文章をチェックしてもらい、修正を施して本にまとめます。読者に伝わりやすい良い内容になりますが、時間も手間も金額もかかりがちという欠点があります。

 

バラの育て方の著者を探すタイプの編集者は、著者主導で本を作ります。著者の原稿をちょうだいし、相談しつつも著者の意見を最大限取り入れながら本にまとめます。この場合、本の内容にどこまで編集者が踏み込むかは人それぞれですが、多くの場合は著者まかせになりがちです。編集者は進行管理するだけというケースもあります。著者はバラの専門家であっても本づくりの専門家ではありません。一般読者がどんなことが分からないのか、どうすればより伝わりやすいかを熟知しているわけではありません。本として内容的な間違いはないし、編集者の手間は少なくて済むけれど、読者に寄り添った本になりにくいという欠点があります。

 

このあたりは出版社の編集方針の違いでもあるし、各担当編集者の考え方や技量の違いでもあります。

 

冒頭で紹介した「何冊バラの育て方の本を買ってもよく分からない」と書いていた方が、「女性誌系の本の方が分かりやすい」とも書いていたのですが、それもこの編集方針の違いによります。編集者主導で作ろうとするタイプは女性誌系に多く、著者主導で作ろうとするタイプはそれ以外の出版社(または編集部)に多いと思います。

 

それじゃ実際のところ、どうすればいいの?

ラの育て方が分かりにくい理由は分かったけれど、それじゃ実際のところどうすればいいの? ってところが重要ですよね。

 

近所にバラの育て方をよく知っている友人がいれば一番です! でも、そうでないのなら、自分で育てながら手探りで自分が一番いい方法を学んでいくしかないのだと思います。もちろんバラの書籍は参考になります。関東にお住まいの方で、ハイブリッド・ティー・ローズを育てている方なら特に参考になる部分は多いでしょう。

 

関東以外に住んでいて、ハイブリッド・ティー・ローズ以外のバラを育てるなら、書籍を参考にしながらもバラ販売店の店員さんに訊いたり、ネットで同じような環境で育てている方を探したりしながらトライしてみてください。

 

管理が少しくらい下手でも、すぐ枯れるほどバラはヤワな植物ではありません。バラを育てながら知識を蓄えていくのが一番いい方法だと思います!

 

まとめ

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「バラの育て方」の本を何冊買ってもよく分からないと嘆いている方を見かけたので、その理由について考えてみました。バラ育てには、料理のように皆が同じ条件で作業することができないという難しさがありますよね。ほかにもバラ特有の事情や、出版社の編集事情などもあって、わたし自身も分かりにくいなぁと感じています。

 

それをなんとか分かりやすく伝えたいという思いもあってこのサイトを開設したのですが、やはり読まれる順番を指定できないブログ形式のネットサイトでは、思うようにいかないところがありますね。それに、なんといっても筆者であるわたし自身の知識レベルも栽培経験もまだまだ足りない。修行が必要です!

 

バラを育てるのはとても楽しいことだし、もっと多くの方に気軽に取り組んでもらいたいから、これからもいろんな記事をアップして、自分の勉強にもつなげていきたいと思います。応援よろしく・・・いえ、応援していただけるようにがんばります!

 

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