新苗の育て方の基本は「苗についている蕾は切り取りましょう」です。でも、初心者には蕾を取るなんて勇気がいりますよね。なぜ蕾を落とすのか、どうしても咲かせてはダメなのかについて紹介します。
初心者ロザリアンYOUです。可愛いバラがあったので、新苗を購入しました。でも、新苗についている蕾は咲かせちゃダメって聞いたけど・・・どうしても切り取らないとダメなの? 切らないと枯れちゃう?
まず、新苗とはどんな苗なのか理解しよう!
▲ひょろりとした枝1本の新苗
まず、新苗とはどんな苗で、バラが花を咲かせるとはどういうことなのかを知るところから始めましょう。そうすれば、どうして花を咲かせてはダメなのか、その理由が分かりますよ!
新苗というのは、昨年の10月頃に台木に接ぎ木(または接ぎ芽)して、翌年の4~5月に流通する苗です。つまり接ぎ木から半年ほどしか経っていない赤ちゃんのような苗になります。
1本の枝がのびていますが、この枝は芽吹いてからわずか2~3ヵ月しか経っていない若い枝です。つまり新苗とは、「勢いだけで蕾をつけている、まだまだ不安定な赤ちゃん苗」なのです。
花を咲かせると、株はものすごいエネルギーを消費する!
▲バラは、命を削って咲いている
バラにとって花を咲かせるというのは、ものすごくエネルギーを消費することです。命を削って花を咲かせ子孫を残そうとしているんです。
赤ちゃん苗のわずか2~3ヵ月しか経っていない若い枝先についた、ものすごくエネルギー消費する蕾・・・。株の体力を考えれば、すごく危ない状態だというのが分かりますね。
株の生長を考えれば、蕾は咲かせないのが正解!
▲新苗の蕾はカットが基本
バラは、上手に管理すれば何十年も花を咲かせ続けてくれる樹木です。枝数を増やし、株に体力をつけ、年月を経るごとに1株に咲く花数は増えるし、サイズの大きな立派な花を咲かせてくれます。
今ある「エネルギー食い」の蕾は咲かせない方が、将来的に良い結果につながります。だから「新苗についた蕾は切り取る」というのが、新苗を育てる基本になっているのです。
いま無理して咲かせるよりも、まず株を育てる方を優先しましょう! ということで、新苗についた蕾はカットするのがセオリーとなっています。
「せっかくの蕾を切ってしまうのは、気持ち的にできない!」──だから、新苗は初心者向きではない!
▲ちゅうちょなくガンガン蕾を落とせるようになれば、そろそろ中級・・・かな?
個人的な意見ですが、もったいないと思わずに蕾を落とせるかどうか──が、脱初心者または脱初級者の条件ではないかと思っています。
「新苗は中級者以上向け」と言われる理由のひとつが、「初心者は蕾を落とすことができないから」だと思います。つい咲かせてしまい、その結果、株を弱らせてしまいやすいのでしょう。
さらに、まだ弱々しい株なのに、この先すぐに病虫害の多い梅雨と猛暑の夏がやってくるので、管理で失敗しやすいということも初心者におすすめできない理由です。
「新苗に咲かせても大丈夫」という意見もあるけれど・・・。
▲春の新苗売り場 写真提供/天女の舞子
たしかに株のことを考えれば蕾は切り取った方が良さそうね。それに、どうしても蕾を落とすことができないっていうのは初心者ならではだろうけど・・・でも「新苗に咲かせてもいい」って意見も聞いたことあるけれど?
もちろん、新苗の先についている蕾を1輪咲かせたからといって、必ず枯れてしまうわけではありません。上の写真のように、春の新苗売り場に行けば、花の咲いた新苗がたくさん並んでいます。これらがどれもダメになる株ということではありません。
新苗は、実際の花を確認して好みの品種を選べるというのが大きなメリットなので、花がついているのも大事なことなんです。
でも、花を咲かせれば咲かせるほど株のエネルギーを消費しているのは確かです。だから、購入した新苗の花や蕾は、なるべく早く切り取った方がバラには優しい管理なのです。
新苗の蕾をどうしても咲かせたいなら、せめて1輪だけに留めてはどうでしょう? そして、咲いたら8分咲きくらいで切り取り、株のエネルギーを消費しないように務めましょう!
新苗の蕾を咲かせるとどうなるの?
▲新苗に咲いた「シェエラザード」
上の写真は、新苗の先に咲いた「シェエラザード」です。購入したときから苗についていた花です。「シェエラザード」は房咲きになるので、たくさんの蕾が上がっています。奥の枝にも蕾がありそうなので、おそらく全体では花が2輪咲き、蕾が5つくらいありそうです。
もちろん撮影の後、花も蕾も切り落としましたが、もしこれらすべてを咲かせてしまったら・・・。ひょろひょろの新苗に7輪も咲かせてしまったとしたら──おそらく、株はがっつり弱るでしょう。枯れないまでも、次に新芽をのばすまで、しばらくバラの生長が止まってしまうと思います。
新苗に花を咲かせると、その後の株の生長が悪くなるという影響が出ます。花を咲かせた疲れから回復するまで、しばらく時間がかかるんですね。
八分咲きってどれくらい?
▲左から「八分咲き」「九分咲き」「全開」
新苗に花を咲かせない方がいい理由がよく分かったわ。それじゃ最後に、咲かせてしまったときに切り取る目安の、どれくらいになったら「八分咲き」か、教えてちょうだい。
これは、同じ花の「八分咲き」「九分咲き」「全開」の写真を並べたものです。「八分咲き」は、まだ花びらの立ち上がりがあり、花芯が開いていない状態です。
新苗の先に1輪だけ咲かせた花も、これくらいまで咲き進んだら、株のことを考えて花をカットしてください。
まとめ
今回は、新苗についている蕾を咲かせるか取り去るかについて紹介しました。
結論から言うと、咲かせても取り去ってもいい。けれど咲かせれば咲かせるほど株が弱るので、なるべく咲かせず蕾のうちに取り去る方がバラに優しい管理といえます。
どうしても花を観たい方は、1輪だけ咲かせて、本格的に咲かせるのは秋からと割り切った方がいいですね。8月いっぱいまでは、蕾が上がってもどんどん摘んで花に取られるエネルギーを抑え、株を生長させる方を優先しましょう。
今の花を楽しんで株を弱らせるより、将来たくさんの花が咲くのを期待して、新苗にある蕾は摘んだ方が良さそうですね。理由が分かってスッキリしました!
▼新苗の育て方について詳しくは、こちらを参照してください。
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