3年に1度開催されているバラの国際会議「世界バラ会議」で、ドイツ・ノアックローゼン社の「フラワーカーペットローズ・ピンク」がバラの殿堂入りを果たしました。詳細をお届けします。


第19回「世界バラ会議」がオーストラリアのアデレードで開催

▲2018年に「優秀庭園賞」を受賞した「横浜イングリッシュガーデン」

ラ研究のための国際的な情報共有機関「世界バラ会連合」World Federation of Rose Societies 略してWFRSは、3年に1度「世界バラ会議」を開催しています。

 

2022年10月27日~11月3日の日程で、オーストラリア・アデレードで第19回「世界バラ会議」が開催され、第18番目となる「殿堂入りのバラ」が選出されました。

 

▼「世界バラ会議」「バラの殿堂入り」について詳しくはこちらをどうぞ

第19回世界バラ会議「バラの殿堂入り」は「フラワーカーペットローズ・ピンク」

▲たっぷり咲くフラワーカーペットローズ・ピンク 出展/花ひろばオンライン苗木部

しく「バラの殿堂入り」を果たしたのは、ドイツ・ノアックローゼン社の「フラワーカーペットローズ・ピンク」です。

 

フラワーカーペットローズは、ノアックローゼン社が35年以上の年月をかけて開発した品種で、耐病性が高く、花付き良く、さらに四季咲き性の強い育てやすいバラです。世界の国際的なバラコンクールでバラの賞を25以上獲得し、世界じゅうで1500万本以上が売れている大ベストセラーのバラです。

 

その耐病性の高さからヨーロッパではほとんど薬剤散布がいらないため、公園や道路脇などあまり行き届いた手入れができない場所に植えることができる修景バラ(ランドスケープ・ローズ)として多く利用されています。

 

さらにフラワーカーペットローズは、耐病性の高い新品種の作出を目指す多くの育種家に、親バラとして使われています。日本ではロサ・オリエンティスの木村卓功さんもよく使っていると、ご自身のツイッターに投稿していました。

 

「フラワーカーペットローズ」は耐病性も耐虫性も高く、薬剤散布ほぼ必要なし!

▲花径3~4cm。丸弁半八重咲きの房咲き 出展/花ひろばオンライン苗木部

ラワーカーペットローズにはさまざまな色展開があります。赤(スカーレット)・黄(ゴールド)・ピンク・ピンクの絞り(ピンクスプラッシュ)・淡ピンク(アップルブロッサム)・白(ホワイト)・茶色味のオレンジ(アンバー)。

 

今回、バラの殿堂入りを果たしたのは「ピンク」です。

 

花径3~4cmの丸弁半八重咲きの花を、6~8輪の房咲きにします。1輪だけを観ればありきたりに思える花ですが、このバラが咲いている姿を遠くから観てその良さを実感できる品種で、多くの場合は「修景バラ」に分類されています。

 

「フラワーカーペット」の名前の通り、グランウンドカバーとして使うこともできます。

 

樹高0.6~0.8m。横張り性の樹形で、最終的に横幅は0.8~1mになります。

 

耐病性が高く、害虫にも強いので、薬剤散布がほとんど必要ありません。(もちろんこれは、ヨーロッパ、なかでも寒冷なドイツでの資料です)。

 

香りはありません。

 

作出/1988年 ウエルナー・ノアック(ドイツ・ノアックローゼン社)

 

近年の「バラの殿堂入り」は、耐病性が高く花付きの良い品種が選ばれている!

▲「カクテル」2015年バラの殿堂入り

年「バラの殿堂入り」に選出されている品種は、耐病性が高く、花つきが良く、四季咲き性の高いものが選ばれる傾向が強くなっています。

 

2015年選出の「カクテル」は、耐病性が高く花つきが良いのに加え、つるバラなのに夏にも良く咲き、少ないながらも秋にも咲くという四季咲き性をもちます。

 

▲「ノックアウト」2018年バラの殿堂入り

 

2018年に選出された「ノックアウト」も、上の写真をみれば一目瞭然。株を覆わんばかりの花つきと、バツグンの耐病性の高さで、これも薬剤散布がほとんどいりません。四季咲き性も高く、秋にもまとまって咲きます。

 

耐病性にこだわるのは、ヨーロッパでは個人の庭で薬剤散布ができなくなってきているから。この流れを汲み、「世界バラ会議」でも薬剤散布しなくても良いバラに注目が集まっているのでしょう。

 

優れたバラは、次代のバラ育種に大きく貢献する

▲我が家にある薬剤だけでもこれだけの種類が!

ラは、キレイだけど手入れが大変な植物として知られています。病気や害虫防除のためにいろいろな薬剤を使い、適切な管理を続けてようやく咲かせることができる職人技が必要な植物として、やや敬遠される傾向があります。

 

もちろん、それだけ手をかける価値があるので、バラの魅力にはまってしまった方は、どんどんのめりこんでしまうんですが。

 

でもこの美しい花を、特別な手入れナシで楽しめるようになったら──嬉しいですよね!

 

▲華やかなバラの混植ガーデン

 

普通の宿根草と同じ扱いができるなら、バラの楽しみはもっと増えます。気軽に他の草花と混植することができるようになります。

 

たとえば、上の写真のようにさまざまな植物を混植した花壇は、現在は特別な手入れをしている有料ガーデンでしか実現しない光景です。それは、バラが特別な手入れが必要な植物だからです。でもこんな花壇が、いずれだれでも自宅の庭で気軽に楽しむことができるようになるかも知れません!

 

さらに鉢バラの寄せ植えも、特別なテクニックなしにできるようになるかも!

 

「カクテル」「ノックアウト」「フラワーカーペットローズ」という近年の殿堂入りのバラたちは、そんな未来を予感させる名花揃いです。

 

これらを親や祖父(または祖母)に、いつかバラは「特別な手入れのいらない普通の植物」になるのかも知れません! わたしたちロザリアンは、そんなバラの登場を夢見て、世界の育種家たちを応援して待ちましょう。

 

まとめ

今回は、2022年10月27日~11月3日にかけてオーストラリア・アデレードで開催された第19回「世界バラ会議」で、バラの栄誉殿堂入りを果たした「フラワーカーペットローズ・ピンク」について紹介しました。

 

「フラワーカーペットローズ」は耐病性も耐虫性も高く、ほぼ薬剤散布が必要ないバラとして、世界中で人気の品種です。ただし、冷涼で害虫の少ないヨーロッパでは薬剤散布が必要なくても、わが国・日本でどうなるかは未知数。

 

その確認のため、この秋、新しくこの「フラワーカーペットローズ」を購入しようとしていた矢先の発表で、突然品切れ続出で入手できなかったといういわくつき(== なんとか来年、入手しようと思います。

 

余談ですが、「世界バラ会議」アデレード大会は2021年に開催予定でしたが、世界的なコロナ感染症蔓延のため1年延期になり2022年に開催されました。次回の「世界バラ会議」は、日本の福山で2024年に開催される予定でしたが、これも1年延期して2025年の開催となります。

 

▼「花の情報便」の記事一覧は、こちらからどうぞ

 

cropped-rose1.png
スポンサーリンク