半日陰でバラを育てるなら、もっとも重要なのが品種選びです。日照不足に強いバラを選ぶ際のポイントを5つにまとめて紹介します。+おまけもあるので、参考にして!


半日陰のバラ栽培は、品種選びが重要!

▲ステキなバラばかりで目移りしてしまうけれど・・・

にお迎えするバラはどの品種にしようか?──憧れのバラの育種家の新品種をチェックしたり、自分の庭にない花色のバラを探したり、ステキなローズガーデンで見かけたバラをお迎えしようか、香りの良いバラもいいなぁ、と・・・お迎えするバラをあれこれ選ぶのは、ロザリアンには夢が広がる至福のひとときです。

 

でも、気をつけてください! あなたの庭は、有料ローズガーデンのような日当たり抜群の環境ですか? もし日当たりに不安があるなら、品種選びは冷静に!

 

あまり日当たりの良くない場所でバラを育てる場合に、もっとも重要なのが品種選びです。半日陰だからこそ注意したい品種選びの重要なポイントがあるのです。半日陰栽培の場合、育て方うんぬんより、この品種選びがもっとも重要と言っても過言ではありません。

 

今回は、半日陰栽培の方が知っておきたい品種選びのポイントを5つ紹介します!

 

ポイント1、新品種に飛びつかない!

▲「リラ」は病気耐性は高いが「耐陰性が低い」

年、魅力的な新品種が発表され、ロザリアンなら誰しもついアレもコレもと欲しくなってしまいますが、ちょっと待って!

 

1日じゅうたっぷり日の当たる環境でバラを育てられるなら、衝動買いも楽しいものです。でも、日照条件の悪い環境でしか育てられないなら、衝動買いやラベル写真に一目ぼれして買うのは危険です。

 

半日陰というのは、それだけでかなり栽培難易度が上がる環境です。しかも近年多く作出されている藤色やブルー系、茶系のバラは育てにくいことが多いもの。

 

あなたの庭の日当たりがあまり良くないなら、新品種が発表されてすぐ飛びつくのではなく、少なくとも1年待ちましょう。そして育種家の熱のこもった言葉ではなく、「花ごころ」や「ハイポネックス」「まつおえんげい」など育種家以外の方からの冷静なデータや一般の方からの口コミが出るまで手を出すのは我慢しましょう!

 

日照不足という、バラに厳しい環境だからこそ、データを重視した冷静な品種選びが大切です。

 

ポイント2、半日陰でもよく咲く品種の傾向を知ろう!

んなバラも日照不足は苦手ですが、比較的、日照不足でも大丈夫なバラがあります。どんなバラが半日陰向きなのか、樹形、花色、花形から日照不足に耐えやすい品種の傾向を紹介します。

 

樹形/つるバラや中~大型シュラブ系統のバラがオススメ

▲コンクリートの壁面にたわわに咲く「つるアイスバーグ」の春花

日陰栽培にはつるバラや中型・大型のシュラブ系統のバラがオススメです。理由は次の4つです。

 

1、たくさんの葉で少ない紫外線を効率よく吸収する

つるバラやシュラブ系統のバラは長い枝にたくさんの葉をつけています。たくさんの葉で効率よく紫外線を吸収するので、日照不足にも耐えて元気に育ちやすいのです。

 

2、花咲く時期が限られるので、花に必要な養分が少なくて済む

つるバラは春だけの1季咲きのものが多いので、四季咲き品種よりも花に必要な養分が少なくて済みます。シュラブ系統のバラは日向なら返り咲きする品種もたくさんありますが、半日陰栽培では春のみの1季咲きになることが多く、つるバラと同じように花に必要な養分が少なくて済みます。

 

その結果、木が丈夫に育ちやすいので半日陰でも耐えやすいのです。

 

3、花数が減っても見ごたえがある

つるバラやシュラブ系統のバラはもともと花数が多いので、たとえば日照不足で花数が通常の半分に減ったとしても十分見ごたえがあります。

 

4、日の当たる場所まで枝を誘引できる

日照不足の環境でも、たとえば屋根近くの高い場所なら日当たりが良いというケースもあります。つるバラやシュラブ系統の長い枝を日の当たるところまで伸ばせば、日照不足がかなり軽減できます。

 

花色/花色はピンクか白がオススメ

▲オールドローズ(一説では原種)の「ロサ・ダマスケナ・ビフェラ」

代バラは品種改良により多種多様な花色をもっていますが、オールドローズや原種のバラは、ほぼ白かピンク色をしています。

 

つまりバラにとってもっともムリのない花色は白かピンク色で、それ以外の花色──たとえば深紅や黄色、近年流行りの藤色や水色、茶系などは複雑な品種改良を経てつくりだされた花色で、バラに少々無理を強いている花色といえます。

 

たとえば深紅のバラやもっと濃い黒バラなどは、開花にものすごくエネルギーを使うと言われます。このため濃い花色のバラを半日陰で育てると、日向よりも花色が薄くなりがちで、ラベル通りの花が咲かないことがよくあります。

 

あまり日当たりの良くない場所で育てるなら、バラがムリなく咲かせやすい白やピンクの花色を選ぶと良い結果につながりやすいです。逆にそれ以外の花色、とくにブルー系や茶系などは、思ったような結果にならないことが多いです。注意してください!

 

花形/小~中輪で、花びらの枚数があまり多くないものがオススメ

▲半八重のつるバラ「アンジェラ」

日陰の環境では、バラは思うように光合成できません。そのため、開花エネルギーの消費が激しい品種は基本的に適しません。

 

花の大きさなら小輪~中輪が適しています。大輪以上の花は開花エネルギーをたくさん必要とするので半日陰栽培にはオススメできません。

 

花びらの枚数でいえば、一重咲きや半八重咲きが適しています。近年流行の、ぎゅぎゅっと薄い花びらを詰め込んだ豪華なカップロゼット咲きの品種は、半日陰栽培にはあまり向きません。1輪に必要なエネルギー量が多いので極端に花数が減り、しかも半日陰は乾きにくい環境なのでボーリングして蕾のまま開きにくくなりがちです。

 

これが絶対ルールではないけれど、選ぶ際の参考になります!

▲家の北壁に咲く「つるブルームーン」 写真提供/ハナたろう

こで紹介した半日陰栽培に向く樹形・花色・花形の傾向は、あくまで「傾向」です。たとえば上の写真のつるブルームーンは、樹形こそつる樹形ですが、花色は藤色だし、花形は大輪で八重咲き品種です。それでも北側の壁でこれだけしっかり咲いてくれています。

 

耐陰性の強い品種をピンポイントで選ぼうとすると、意外と選択肢はありません。なので、ここで紹介した「傾向」を参考に、失敗しづらい品種を選んでください。それでも思うように行かなかったら──まぁ、そんなこともありますよね!

 

ちなみに「つるブルームーン」が耐陰性が強い品種かというと、そうではありません。おそらく耐陰性は普通~弱いくらいだと思います。上の写真は確かに北側の壁ですが、壁の色が白く、しかも壁の前が広く開けた場所なので、北側とはいえかなり明るいことなど、半日陰とはいえ好条件が揃ったからこその花付きなのです。どんな場所でもこういう結果になるとは限りません。

 

ポイント3、「バラの家」のデータを活用しよう!

▲「バラの家」のデータから一発検索ができる!

大なバラの品種を販売する「バラの家」のサイトでは、自社で取り扱うバラをさまざまな検索で抽出できるようになっています。

 

上の画像は、「バラの家」のサイトのページです。上部中央、ピンクの丸印をつけた検索窓に「耐陰性が強い」と入れて検索してみましょう。半日陰でも十分よく咲いてくれるバラたちが一瞬で検索できます。

 

数は限られますが、この中から選べば品種選びで失敗することはありません。

 

しかも、ポイント2「半日陰でもよく咲く品種の傾向を知ろう!」で半日陰向きではないと説明している濃い赤色のバラや濃い赤紫、藤色のバラもあります。やはりつるバラが多いのですが、一見の価値ありです。

 

「耐陰性が強い」バラの選択肢はあまりありませんが、少し日照に不安があるていどの環境なら「耐陰性は普通」で検索してみましょう。こうなると選択肢は一気に広がります。上手く活用してください。

 

ポイント4、バラのコンテスト受賞品種は、やはり優秀!

界じゅうにバラの新品種コンテストはありますが、岐阜県可児市にある「ぎふワールドローズガーデン」で毎年開催されている「ぎふ国際ローズコンテスト」で受賞しているバラ品種は、日本のロザリアンにとって品種選びの確実な指標となります。

 

「ぎふ国際ローズコンテスト」では、バラの美しさや香り、開花の連続性(春以降も良く咲くか)、樹勢など9項目でひとつひとつのバラが審査されます。なかでもとくに重視されているのが「病虫害耐性」で、このコンテストで上位入賞しているバラは、プロにより「あまり手をかけずによく咲く美しいバラ」が選出されているといえます。

 

残念ながら「耐陰性が強い」という審査項目はありませんが、それでも少しくらいの日照不足なら十分良い結果が期待できる優れた品種ぞろいです。

 

▲左が公式サイトに、右が「バラの家」のページにリンクしています

 

新品種コンテストなので、比較的新しいバラからどれか選びたいというときに活用したいのが、このデータです。

 

「ぎふ国際ローズコンテスト」公式サイトでは、すべての出品品種や第1回から最新の結果まで詳しく見ることができ、「バラの家」のサイトでは近年の受賞品種が分かりやすく整理してあります。

 

ポイント5、秋バラが多く咲く品種は半日陰でもよく咲きやすい

▲11月に咲く可憐な「玉蔓」

季咲きバラは春と秋にまとまって咲きますが、春に比べて秋の花数はぐっと減ります。とくにつるバラやシュラブ系統のバラで「四季咲き」表示になっている場合、秋花は1株に1~2輪ということもあり得ます。

 

半日陰栽培でも、なるべくたくさん咲く品種を選びたいなら、秋のバラ園を訪れてみるのも良い方法です。

 

秋に比較的まとまって咲いているつるバラやシュラブ系統のバラなら、きっと半日陰栽培でもたくさん咲いてくれるでしょう。

 

上の写真は河合伸志(かわい・たかし)さん作出の「玉蔓」(たまかずら)11月の様子です。つるバラで秋にこれだけまとまって咲いてくれたら嬉しいですね。

 

▲「玉蔓」の枝替わり「紅玉」の半日陰栽培の春バラ

 

「玉蔓」の枝替わりに赤い「紅玉」(こうぎょく)と朱色の「珠玉」(しゅぎょく)があります。

 

我が家には「紅玉」がありますが、深い軒の一番内側に誘引しているけれど、毎年しっかり咲いてくれます。日当たりの良い環境なら「紅玉」も秋花がまとまって咲きますが、半日陰栽培の我が家では春以外ほとんど咲きません。

 

それでもこの貧弱な日当たりで春にこれだけ咲くのだから、我が家には欠かせない品種です。

 

おまけ/イギリスやドイツ、北欧のバラは半日陰向き?

▲半日陰の我が家でとにかく優秀なイングリッシュローズ

こからは話半分で読んでください。「イギリスは天気の悪い日が多いので、イギリスで作出されたバラは半日陰向き」という噂を聞いたことがあります。最初は「そんなバカな!?」と思ったのですが、よくよく考えてみると、それはアリかも知れないと思いなおしました。

 

バラの育種作業というのは、さまざまに交配させてできた膨大な数のバラの中から良い性質をもったものを選抜していく作業です。良い性質の中には「花付きが良い」というものも含まれるはず。

 

あまり日照条件の良くない地域で良い結果を出した品種なら、それはとりもなおさず「日照不足に強い傾向がある」と言えそうです。イギリスはもちろん、緯度の高いドイツや北欧で作出されたバラも日照不足に強い傾向があるかも知れません。

 

寒さ厳しい「ドイツのバラは寒さには強いけれど暑さに弱い」と言われたり、日本でもかなり酷暑の夏になる地域で作出されている「ロサ・オリエンティスのバラは暑さに強い」と言われるのと同じ理由ですね。

 

まとめ

今回は、半日陰栽培で育てるバラを選ぶさいのポイントを5つ+おまけをお届けしました。

 

半日陰でバラを育てるには、この品種選びがもっとも大切です。どんなに素晴らしいテクニックをもっていても、半日陰で「耐陰性が弱い」バラを育てるのは難しい。上手くいかなくて当たり前。

 

ところが、流行りの品種ほど「耐陰性が弱い」ものが多いのが現状です。藤色、ブルー系、茶系、ほとんどが耐陰性が弱いです。人気の河本バラ園のバラも耐陰性が弱いものが多くて悲しくなります。

 

でも実際に育ててみると、予想外に上手くいくバラがあったり、逆に上手く行かないバラがあったりするのも事実。

 

たとえば我が家のベランダでとてもよく咲くイングリッシュローズの「デスデモーナ」は、「バラの家」のデータによると「耐陰性が弱い」となっているんですよね──だからデータがすべてではなくて、我が家の環境や自分の手入れのしかたに合う・合わないがあるのかも知れません。

 

データでは合わないはずなのに、実際に育ててみたら我が家でよく咲いてくれる!なんてバラに出合えたら嬉しいですよね^^ もちろん、なかなかないことですが──。今回の記事、どうぞ皆さまの品種選びの参考に役立ててください!

 

▼「半日陰のバラ栽培」の記事は「冬の手入れ」の下にあります

 

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