バラの芽吹きから冬の休眠期まで、1年をとおしてバラがどんなふうに育つのか追いかける「そだレポ」企画です。今回は「ブルードレス」です。季節ごとに更新していくので、お楽しみに!
「ブルードレス」は、こんなバラ
▲丸弁八重咲きの水色のバラ「ブルードレス」
かつて「青バラ」と呼ばれるバラはありませんでした。自然界に青いバラが存在しないからです。そんななか、交配でかなり水色に近い花色の青バラを作出したのが栃木県出身の育種家・小林森治です。代表作は「青竜」や「ターンブルー」。どれも樹勢や耐病性が弱い、栽培難易度の高いバラです。
近年では青バラのバリエーションは増え、ずいぶん樹勢や耐病性の高い育てやすい品種が登場していますが、その多くは「青」というより「紫」です。紫に近いほうが、育てやすい品種になるというのが、多くの育種家の意見です。青バラのターニングポイントとして有名な「ノヴァーリス」も「紫」ですね。
「ブルードレス」は2011年「改良園」作出の水色のバラです。現在ある水色のバラのなかでは、もっとも「青」に近いといわれています。が、やはりこの花色の例にもれず、栽培難易度は高い。
「バラの家」のスコアは、「樹勢/とても弱い」「ウドンコ病/弱い」「黒星病/弱い」「耐陰性/とても弱い」「耐寒性/弱い」「耐暑性/弱い」。
花径6cmていどの丸弁八重咲き。ただし、サイトによっては花径8~10cmという表記もあり。四季咲き。微香。60~90cmのコンパクトな木立ち樹形のバラで、系統はHT。鉢栽培でしっかり管理したい品種です。
▲さまざまな水色のバラたち
近所のバラ園に、さまざまな水色のバラを集めたコーナーがあります。ほぼ白っぽかったり「これは水色というより薄紫かな~?」と思えるバラが多いなか、「ブルードレス」はちゃんと水色でした。
今回育てる「ブルードレス」の環境DATA
四国の家の北側にある庭の鉢植え(日照は半日、風通しは良い場所)
7月に家の南側(日照4時間ほど)に移す予定
一昨年の夏前に届いた大苗
今年の目標/夏バテを起こさず、春花と秋花を咲かせます
育てる人/アスタルティ
*バラの育て方は、育てる場所により、それぞれの木の状態により、また目的や好みによっても人それぞれです。ここで紹介する育て方は、一例として参考になさってください!
3月3日の【ブルードレス】/去年より早い芽吹き
▲キレイな朱色の新芽 写真提供/アスタルティ
青バラは「ノヴァーリス」以前と以後に区分されます。以前のバラは、耐病性も香りも捨てて、ただひたすら「青」を求めた時代。
以後のバラは、「ブルーグラビティ」「リラ」のように耐病性や香りにも気を配りだした時代。ターニングポイントとなるバラが出現しない限り、この流れは変わらないでしょう。
今回育てるバラはその境目に出現したバラ「ブルードレス」。青バラに最も近い、と言われるバラのそだレポをお送りします。
2月末に暖かい日があったためか、早く芽吹いてきました「ブルードレス」。主幹は2本、サイドシュートが2本あります。この品種は枝数が少なくシュートも少ないので、これで十分立派な株だったりも。
新芽はキレイな朱色。だいたい赤か緑の新芽なので新鮮に感じています。
鉢底にスリット状の穴がたくさん開いている水はけの良いプラ鉢(フレグラーポット)10号に植えてあります。この冬は植え替えをせず、エアレーションで株の周囲にイボ竹で10カ所ほど穴をあけて管理しています。
▲「ブルードレス」の株元。枝はどれも細い 写真提供/アスタルティ
「ブルードレス」の主幹はかなり細く、強風で折れないよう支えが必要です。
一昨年、届いたばかりの大苗は、一番太いところでも割りばし程度の太さしかありませんでした。「針金みたい!」というのが第一印象。
はっきりいって、「ガブリエル」「ブルーヘヴン」のほうがしっかりしているレベルでした。
▲参考:1年近く育てた去年3月初旬の様子 写真提供/アスタルティ
届いたばかりの苗は1本足のバラでした。なるべく消耗を抑えながら、根気強く育てる必要がありますね。1年近く育ててようやく、上の写真のとおりです。
枝だけを見ると、「ガブリエル」「ミスティパープル」に近いです。育て方もおそらく似通るかと。
この時期の手入れ
1月 防寒のためのマルチング
「完熟のたい肥」(相原バラ園)で、鉢表面にマルチングを行っています。土壌改良効果もありますし、気温が低いため虫もわきませんでした。
2月 エアレーションの実施&寒肥
今冬は、植え替えしませんでした。エアレーションを施して、土の団粒化を促進しました。
やり方は、イボ竹の支柱を使用し、気温の低い時期に10カ所ほど土に穴をあけました。根頭癌腫病予防のため、エアレーションはこの時期のみと決めています。
寒肥として「RSKバラ園バラの肥料」(松栄産業)を一掴みほど表土に撒きました。
3/2 薬剤散布
「STダコニール1000」+「STサプロール乳剤」(どちらも住友化学園芸)。濃度は規定値です。
3/3 液肥+活力剤
「ストレスブロック」(ハイポネックス)+「高濃度フルボ酸活力液アタックT-1」(花ごころ)
「ストレスブロック」は水10ℓあたり規定値の25%、「アタックT-1」は75%で使用。我が家のバラ全体で一回で20ℓ使っています。薬害が出ないことは、去年の時点で確認しました。
■隙間時間を利用しての芽かき
5分くらいの隙間時間を利用して、コツコツと芽かきをしています。一度にやるより、負担が減りました。
■スタンドに鉢を載せています
冬の間は強風対策で鉢を固めて置いていましたが、春の兆しが見えてきたので空気の循環を良くするためスタンドに載せました。
3月30日の「ブルードレス」/コメ粒大の蕾が発蕾
▲3月30日の「ブルードレス」。樹高は55cm 写真提供/アスタルティ
いつも見るたび思うのですが・・・「ブルードレス」は山に分け入ると生えている低木を思わせる樹形をしています。よくありますよね? こういう木の枝が。
なるべく混みあわないよう芽かきをしていますが、直立樹形なので完全ではありません。
▲若葉の姿。蕾も出来始めています 写真提供/アスタルティ
「ブルードレス」の葉は薄くて、いかにも黒星病に弱そうです。見た目のとおり、露地だと大変弱いです。今のところは、どのバラにも黒星病やウドンコ病は出ていませんが、どこまで持つことやら・・・。
蕾はもうでき始めていますので、4月末には咲くでしょう。
▲トゲ抜き、やってます 写真提供/アスタルティ
「ブルードレス」の木質化した枝の部分は、トゲを指先で押すとポロっと取れる性質があります。これを利用して、根元部分のトゲを取っておくと、とても扱いやすくなりますよ。
この時期の手入れ
【殺菌剤】
3/9 ジマンダイセンフロアブル(ダウ・アグロサイエンス日本)
3/30 フルピカフロアブル(クミアイ化学工業)
展着剤は「アビオンE」(アビオン)を使用しています。殺虫剤は、気温が低かったこともあり未使用。
【肥料】
3/6 RSKバラ園バラの肥料(松栄産業)を一つかみほど、鉢の周囲に撒きました。
【活力剤・バイオスティミュラント資材】
3月上旬、下旬に合計2回、「ストレスブロック」(ハイポネックス)+「高濃度フルボ酸活力液アタックT-1」(花ごころ)
「ストレスブロック」は水10ℓあたり規定値の25%、「アタックT-1」は75%で使用。我が家のバラ全体で一回で20ℓ使っています。
【その他資材】
3/23 カキ殻有機石灰を10g、株の周囲に撒いています。
【芽かき】
隙間時間に、ちょっとずつ間引いています。
4月28日の「ブルードレス」/蕾ふくらむ
▲樹高75cm。一部、蕾の数を減らしています 写真提供/アスタルティ
我が家のほかのバラたちに甚大な被害をもたらした強風の日、「ブルードレス」は、たまたま風の当たりにくい場所にあったため被害がありませんでした。蕾もふくらみはじめ、あと1週間もすれば咲き始めそうです。
この品種は枝が直立しているため、風通しを良くするための葉かきは必須です。が、私が忙しかったため、あまりこの作業はできていません・・・。
▲葉先に一部肥料焼け跡あり。
今年は肥料を多めにあげて、バラの様子を見ています。
一部のバラに若干肥料焼けの影響が出ましたが「ブルードレス」にも少し発生しています。今後は、肥料を少なめに与えていくことにしましょう。
降雨のためボーリングが起きそうですが、置き場がないため雨に当たり続けたままで管理します。撮影前に、少し光が当たらず変色した内側の葉を取り除いています。
この時期の手入れ
【殺菌剤】
4/6 「STダコニール1000」+「STサプロール乳剤」(どちらも住友化学園芸)
4/28 ジマンダイセンフロアブル(ダウ・アグロサイエンス日本)
【殺虫剤】
4/28 プレオフロアブル(住友化学)
【活力剤など】
4/7 「ストレスブロック」(ハイポネックス)+「高濃度フルボ酸活力液アタックT-1」(花ごころ)
【追肥】
4/13 ユーキリン(リン酸肥料)+ミラクル(アミノ酸肥料)を1:1で。(どちらも相原バラ園)
【虫対策】
バラゾウムシやカメムシを見かけたら、「ベニカXネクストスプレー」(住友化学園芸)をシュッと一吹きしています。
5月12日の「ブルードレス」/春の一番花が満開に!
▲「ブルードレス」の春花が満開に 写真提供/アスタルティ
雨や風の影響を大きく受けた、今年のバラ。しかし「ブルードレス」の花は雨風に強く大きな被害を受けませんでした。
この時期は黒星病はほとんど出ないため、月に2回程度の薬剤散布でも十分防ぐことができます。
▲花径は8~9cm 写真提供/アスタルティ
「ブルードレス」の花の大きさは8~9cmほど。太陽の下では、白に紫が乗った色合いに見えます。房咲きになるので、できれば側蕾を間引いた方が、一輪が大きく美しい姿になりますね。
香りは微香。ほとんどないため、わかりません。
▲5/6時点の撮影。日陰では青みが強い 写真提供/アスタルティ
日陰や夕方に見ると、青みが強く見えます。「ブルードレス」は、大体このくらいの色味を維持するよう。
▲5/6時点。咲き進んで全開に 写真提供/アスタルティ
咲き進むと蕊(しべ)が見え始めますが、青紫の花弁に黄色の蕊が映えて美しいです。花もちは良く、1週間ほど保つのでゆっくり鑑賞するのもいいでしょう。
害虫被害ですが、スリップスはあまり来ません。コガネムシはたまに来ますが、好きではないらしく食害はほとんど受けませんでした。
この時期の手入れ
5/5 ベニカネクストスプレー(住友化学園芸)を蕾や花に使用(コガネムシ対策)
5/11 フルピカフロアブル(クミアイ化学工業)
雨の合間に、朝早く殺菌剤を散布しました。
「ブルードレス」は強風が吹く日だけ、鉢が倒れないよう他のバラと固めて置いています。
6月22日の「ブルードレス」/2番花が開花・イラガに注意!
▲6/22の「ブルードレス」。剪定済 写真提供/アスタルティ
気温も高くなり、葉の黄変が目立ちだした「ブルードレス」ですが、合間を見て、少しずつ葉を取っています。
我が家の多くのバラたちは、5月に塩害で葉にダメージを受けました。そんななか「ブルードレス」は置き場所の関係で少しマシだったため、生長に大きな影響はみられなくて助かりました。
▲2番花もちらほら咲き始め 写真提供/アスタルティ
1番花の切り戻しから約1カ月たち、2番花がちらほら咲き始めました。花の大きさはやや小さくなって花径6~7cm程度。花もちは暑さのため短くなり、3~4日経つとハラハラ散るようになりました。
夏場は掃除の簡略化も考えて、早めに蕾を取ってしまい体力を温存するのがよいでしょう。
「ブルードレス」は、夏の暑さには弱めです。木陰や軒下に移すか、二重鉢にすることをおススメします。
▲バラの害虫「ヒロヘリアオイラガ」の幼虫 写真提供/アスタルティ
これは「ブルードレス」についた虫ではありませんが、危険なので紹介します。
柿の木でおなじみ、イラガの幼虫です。体毛に毒針があり、刺されると数日にわたって痛みが残るので、決して触らないように!
安易にスプレー剤を使うのはあまりオススメしません。スプレー剤がかかると下に落ちるので、やるなら、下に新聞紙を敷いておくと後の始末がしやすくなります。
わたしは、長袖長ズボンの上にレインコートを着たあと、手袋をして葉を切り取りました。そのままゴミ袋に入れてから、中にスプレー剤を撒いて口を縛っています。
余談ですが、イラガは柿の木の葉にはよくつくので、昔は集めて庭で焼いてました。バラの葉にはあまり出現しない虫ですが、見かけたら放置せず処置してください。今は小さいですが、大きくなると単独行動をするので厄介な害虫です。
この時期の手入れ
【殺菌・殺虫剤】
5/26 「STダコニール1000」+「STサプロール乳剤」(どちらも住友化学園芸)
6/2 ダイアジノン粒剤3(住友化学園芸)
6/22 ジマンダイセンフロアブル(ダウ・アグロサイエンス日本)
【追肥】 6/16 RSKバラ園バラの肥料(松栄産業)を一つかみほど、鉢の周囲に撒きました。
殺菌剤は2週間に1回していますが、黒星病は出ていません。
塩害で多くのバラが葉にダメージを受けたせいか、今年はイモムシ系はあまり見かけませんでした。あまり美味しくなさそうですしね、見た目的に。
7月下旬~8下旬の「ブルードレス」/意外とキレイな夏花・8月下旬にはさすがに疲れが
▲7月下旬の「ブルードレス」の夏花 写真提供/アスタルティ
まず7月下旬の様子から。「ブルードレス」は、まだまだ活発に蕾を上げています。体力を温存させるために蕾をとってもいいのですが、
花の大きさは3~4cm、
▲咲き進むと退色して白花に 写真提供/アスタルティ
ブルー系の花はだいたい夏に白っぽくなりますが、「
4日程度で切りましたが、もう少し持つかも?
▲8月下旬の「ブルードレス」。くたびれましたね 写真提供/アスタルティ
ここからは8月下旬の様子です。猛暑に耐えていた「ブルードレス」も、
夏剪定は9月初めにやっていくつもりですが、
この時期の手入れ
薬剤散布、追肥共になし。9月初めの夏剪定までは、防除も追肥もしない予定です。気温が高すぎて、どのバラも黒星病にはかかっていません。
雨の当たらない場所においてあるバラは、ハダニが発生しやすいのでホースから水をかけて退治しています。
水やりは、1日2回朝と晩にやっていますが暑くて大変・・・。
8月25日・9月16日の「ブルードレス」/早いめの夏剪定と、その後の枝枯れ
▲8月25日のブルードレス。夏剪定前 写真提供/アスタルティ
猛暑が続いた今年(2024年)の夏。8月末になり、台風10号の影響で涼しくなったので、
気温的には9月前半のほうが良いのでしょうが、
この時点の「ブルードレス」はお疲れ気味。花は咲かなくなってきました。
▲8月25日のブルードレス。10cmほどの夏剪定後 写真提供/アスタルティ
葉が少ないので、切り戻しは10cm程度にしています。今年いっしょに「そだレポ」している「エバンタイユドール」と比べてそう気難しくない品種なので、
「エバンタイユドール」も「ブルードレス」も縦に長い木立ち樹形なので、
▲9/16日のブルードレス。芽吹き始めるも・・・ 写真提供/アスタルティ
ここからは9月16日の様子です。
結局、台風10号は雨台風だったため、
▲枯れつつある枝を切り取り 写真提供/アスタルティ
上の写真の枝先のほう(左側)
切り口には癒合剤(トップジンMペースト)
この時期の手入れ
【殺菌・殺虫剤】
8月25日 「ベニカファインスプレー」(住友化学園芸)散布
9月16日 「ベニカXネクストスプレー」(住友化学園芸)散布
【追肥】
9月7日 「RSKバラ園バラの肥料」(松栄産業)を一つかみほど、鉢の周囲に撒きました。
【活力剤など】
9月7日 「ストレスブロック」(ハイポネックス)+「高濃度フルボ酸活力液アタックT-1」(花ごころ)
8月25日にすべてのバラを夏剪定しましたが、当時風が少し出ていたのでスプレー剤を使用しました。9月16日は、黒星病に弱い品種(「バラの家」の表示でタイプ3・4の品種)のみ薬剤散布しています。
今年は暑すぎたためか、去年より薬剤散布の回数が減っているにもかかわらず病気は出ていません。追肥は台風が過ぎ去った後に施しました。
育てた人紹介/アスタルティ
もともとわたしは、花にあまり興味がありませんでした。
転機になったのは、コロナが蔓延しはじめた2021年3月ごろ。人ごみを避けて立ち寄った園芸店で、キレイに咲いていたマーガレットを1鉢購入しました。そのマーガレットがあまりにキレイだったので、ほかにも何か──と、4月ごろに園芸店を再訪。そこで出会ったのが売れ残りらしき「リアン・ローズ」というバラでした。ほかのバラ苗は傷んでいるものが多かったのですが、「リアン・ローズ」は病気ひとつなく、元気に枝が伸びていました。
そんな健気なバラに元気をもらったわたしは、これも何かの縁と「リアン・ローズ」を購入。「リアン」の意味がフランス語で「絆」ということも知らなかったわたしは、知らず知らずのうちにロザリアンとして歩むことに。
「絆」には「しがらみ」や「呪縛」の意味もあります。わたしはバラを育てるというしがらみに囚われつつも、このそだレポで誰かの助けになればいいと考えています。
そう。
「絆」には「支えあい」や「助け合い」という意味もあるのです。
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