バラは、いくつかの方法で増やすことができます。ここでは「接ぎ木」「挿し木」「実生」それぞれのやり方を簡単に紹介しています。


バラの増やし方は主に3種類

▲花いっぱいの新苗

ラの増やし方には、3種類の方法があります。「接ぎ木」「挿し木」「実生」の3種類です。まずそれぞれについて、簡単に紹介します。他に「とり木」という方法もありますが、手間がかかる割に多くの苗がつくれないので、ほとんどされません。

 

もっとも一般的な「接ぎ木」

▲株元に巻かれた接ぎ木テープ

ぎ木は、台木に園芸品種の枝を接いで増やす方法です。台木には、日本ではノイバラが利用されます。ノイバラは日本の野山に自生している、日本の環境に適したバラです。そこに、咲かせたい品種(園芸品種)のバラを接ぎ木するのです。こうすることで、園芸品種のバラを早く生長させることができます。

 

一般に流通しているバラ苗は、ほとんど接ぎ木でつくられています。株元にテープが巻かれている苗は、すべて接ぎ木苗です。つまり上の写真のテープが巻かれているところから下が台木(ノイバラ)で、テープから上が園芸品種のバラです。

 

接ぎ木と同じ要領で芽を接ぐ方法もあり、こちらは「芽接ぎ」と呼ばれます。「芽接ぎ」は、生育にバラツキがあるので、現在では「接ぎ木」の方が一般的です。

 

意外と簡単にできる「挿し木」

▲梅雨時期が適期の「緑枝挿し」

を土に挿しておくだけの簡単な増やし方が「挿し木」です。葉が茂っている時期に行う挿し木を「緑枝挿し」、バラの休眠期に行う挿し木を「休眠挿し」と言います。

 

「挿し木」は簡単にできる反面、花を咲かせられるまで樹を育てるのに時間がかかります。また、ノイバラの台木に接ぎ木した苗と比べると、挿し木苗は生長が遅いという欠点があります。一般に流通しているバラ苗に「挿し木苗」がないのは、このためです。

 

ミニバラの花鉢は、すべて「挿し木」の寄せ植え

▲ミニバラの花鉢は「挿し木」の寄せ植え

頭に出回るミニバラの花鉢は、「挿し木」を寄せ植えしてつくられています。ミニバラは樹勢が強いので「挿し木」しやすく、すぐに蕾を上げるため、短期間でミニバラの花鉢がつくれるというメリットがあるからです。

 

しかしこれでは、育てる前提の「苗」とはいえません。長く育て楽しむ「苗」は、たとえミニバラでもノイバラの台木に「接ぎ木」してつくられています。「ミニバラの接ぎ木苗」を店頭で見かけることは、ほとんどありませんので、ネットで購入します。

 

「緑枝挿し」と「休眠挿し」

▲「休眠挿し」から芽吹いたところ

し木には、行う時期により2つの方法があります。葉が茂っている時期に行う「緑枝挿し」と、バラの休眠期に行う「休眠挿し」です。発根するかどうかは品種による差もありますが、慣れてくれば成功確率80%という方もいます。枝を切り戻すタイミングで、試してみるのも楽しいですね。

 

切花品種を挿し木して、咲かせて楽しむこともできます。切り花でのみ流通している「アプローズ」の挿し木を成功させ、鉢バラとして楽しんでいる方もネットで見かけました!

 

挿し木を楽しむには、種苗法に留意して!

外と簡単にできるバラの挿し木ですが、原種以外のバラはすべて作出者(育種家)の作品だということをお忘れなく。基本的に新品種登録してから30年間は、種苗法により育成者権が定められているので、ご自分で楽しむ範囲でお願いします。法律に触れることはないけれど、社会通念的にご近所や友人に差し上げるのもダメです。

 

あくまでもご自分の庭で楽しむ範囲で増やすのは構いません。せっかく美しいバラで楽しませてもらっているのだから、育成者の権利を侵害する行為は厳に慎みましょう!

 

▼種苗法について詳しくは、こちらをご覧ください!

「実生」は、台木生産者と育種家が行う方法

▲「ロサ・エグランテリア」のヒップ

種に近いバラは、ヒップ(バラの実)をつけるものが多くあります。秋の彩りにヒップも可愛らしいものです。ヒップの中には種が入っていて、これを撒けばバラを育てることができます。種から育てることを「実生」といいます。

 

「実生」は、主にバラの台木を生産するために使われます。園芸品種のバラを実生で育てても、親と同じ特性を受け継がず、違ったバラになってしまうので、園芸品種を増やすために「実生」は使いません。

 

一方、「実生」で育てたバラは親と異なった特性をもつということを利用して、新品種をつくるために「実生」が利用されています。育種家たちは、「実生」で新しいバラを創っているのです。

 

バラを種から育てるのは、こういった専門家、もしくはアマチュアでもよほどお好きな方でないと取り組まない特殊な増やし方です。一般的な方法ではありません。

 

「バラは種から育てます」は、間違い!「レインボーローズの咲く種」は嘘!

▲「レインボーローズ」は造花! 

年前、わたしがこのサイトを始めて間もない頃、ネットで「バラの育て方」を検索して驚いたことがありました。多くの植物専門サイトで初心者向けに「バラは種から育てます」と書かれていたのです! 「は?」と、目を疑ったのですが、恐ろしいことにそれが1サイトや2サイトではありませんでした。

 

「お店でバラの種を購入して育てます」と、あちこちに書かれていて、めまいがしそうでした。バラのバの字も知らないライターさんが、どこかで書かれたウソ情報を鵜呑みにして次々同じように書いたんでしょう。さすがにもう、そんな記事は見かけなくなりましたが・・・。

 

当サイトにときどき「バラの種からの育て方」を求めて来られる方がいます。そのほとんどがメルカリなどで「レインボーローズの種」を購入してしまった方です。「レインボーローズ」は造花です。「造花の咲く種」なんてありません!

 

まとめ

「挿し木」についての記事を書こうとしていたんですが・・・。その前段階として「バラの増やし方」についてさらっと書くつもりが、つい長くなってしまい──結局1記事にまとめることにしました。

 

「接ぎ木」「挿し木」「実生」それぞれについて、全体像が分かるように、周辺情報を盛り込んで紹介しました。

 

大好きなバラを自分で増やすのは楽しいことですが、やはり種苗法が気になります。育成者権は守られるべきとの観点から、これまであまり挿し木の仕方を紹介してこなかったのですが、種苗法含めてきちんと紹介しようと考えを改めました。していいこと、してはいけないことを理解した上で楽しみましょう!

 

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