ネット情報を探していると、検索上位表示されているサイトなのに妙ちきりんなことが書いてあることがあります。バラの育て方もその一つです。その中で「バラは市販の種を購入して種まきします」という一文が、初心者向けの育て方記事にごく当たり前の顔をして複数のサイトに書かれているのが気になったので調べてみました。


バラは種から育てられるの?

▲「ハマナス」のヒップ

ちろんバラは種から育てられます。結実しやすい品種やしにくい品種はありますが、普通にヒップ(バラの実)をつけ、実の中には種ができます。そして、その種を撒けば発芽します

 

とくに原種に近いバラほど実をつけやすく、自然に実をつけたバラの種から育てたバラは、だいたい親木と同じようなバラに育ちます。でも、ときに親と少し違ったバラが育つこともあります。バラは突然変異が起きやすい植物で、種から育てても必ず親と同じ子どもができるとは限らないからです。

 

さらに、自然交雑で新しい品種ができることもあります。人工的に交配して新品種を作出することもできます。バラが突然変異を起こしやすいことや、他の品種と交雑してこれまでにないバラができやすいことを利用して、バラの育種家は、人工的に交配したバラの種を何百と育て、その中から品質の良いものを残して新しいバラの品種として品種登録し、販売しているのです。

 

種から育てたバラは、必ず親と同じバラに育つわけじゃない!

物を種から育てれば、その親と同じ性質を受け継いだ植物になります。もちろん、バラの種からユリが育つはずはなく、ちゃんとバラが育ちます。でも、親とまったく同じバラに育つとは限りません。それぞれの種により、微妙に性質の異なったバラに育ちます。

 

それは人間とよく似ていて、同じ両親から生まれた兄弟が、それぞれ異なった個性をもっているようなものです。同じバラの両親をもったバラでも、異なったバラが咲く実例を紹介しましょう。有名なところでは「黒バラ3兄弟」と呼ばれるバラがあります。

 

▲「パパ・メイアン」1963年フランス/メイアン作出

 


Mr. Lincoln Rose / wplynn

▲「ミスター・リンカーン」1964年アメリカ/Swim & Weeks作出

 

▲「オクラホマ」1964年アメリカ/Swim & Weeks作出

 

「パパ・メイアン」「ミスター・リンカーン」「オクラホマ」、これら3つのバラの交配親はまったく同じ「Chrysler Imperial × Charles Mallerin」です。

 

どれも黒味の強いよく似た赤バラですが、それぞれ少しずつ花や性質が違います。まったく同じ両親から、必ず同じバラが生まれるわけではないのが、これを見ればよく分かりますね。

 

つまりバラは、その種ごとに少しずつ違った花を咲かせる植物なのです。

 

だから、バラの種を商品として販売することは不可能!

Briar Rose seeds
Briar Rose seeds / John Tann

▲バラの種

ごとに少しずつ違った性質のバラが育つということは、例えば「パパ・メイアン」から採った種だとしても、そこから「パパ・メイアン」が育つわけではないということ。「パパ・メイアン」から採った種は、厳密には「パパ・メイアンぽい花が咲くかもしれないバラの種」という、とても曖昧なものにしかなりません。

 

つまり「パパ・メイアン」が育つ種を採ることは不可能ということです。もちろん「パパ・メイアン」だけじゃありません。歴史的名花「ラ・フランス」が育つ種も、超人気つるバラ「ピエール・ドゥ・ロンサール」が育つ種も、強香バラとして人気の「ボレロ」が育つ種も不可能です。

 

バラは、どんな花を年に何度咲かせるか、どんな樹に育つか、香りはどうかなど、細かい品種ごとの特徴から好みのバラを選んで売買される商品です。「パパ・メイアンぽい花が咲くかもしれないバラの種」では、商品になりません(^^;

 

だから、バラの種を商品として販売することは不可能! なのです。

 

バラは接ぎ木か挿し木でクローンを増やすもの

▲接ぎ木のイメージ図

 

から育てても同じ花が咲くわけではないなら、いったいどうやってバラを増やしているかというと、「接ぎ木」または「挿し木」という方法が取られています。

 

接ぎ木は、台木となるバラ(日本ならノイバラが使われます)に、咲かせたいバラの枝を接いで苗を作る方法です。接ぎ口にはテープが巻かれます。通常のバラの苗木は、この接ぎ木手法で作られています。

 

挿し木は、咲かせたいバラの枝を直接地面に挿し、発根させる方法です。短期間にできる挿し木苗は、ミニバラで使われる手法です。

 

どちらも種ではなく、枝から増やす方法です。つまり園芸店で販売されているバラは、すべて育種家が作出した最初の1本から枝を取り増やしたクローンなのです。

 

通常、バラは、苗か鉢花を購入して育てます!

▲ずらりと並んだバラの苗

般人がバラを育てるには、接ぎ木や挿し木でつくられたバラの苗を園芸店で購入して育てるか、花が咲いていてそのまま飾って楽しめるバラの鉢花を購入して育てます。

 

バラの苗も、バラの鉢花も、どこにでもいくらでも販売されています。園芸店の店先でバラの種を探してもありません。「バラの種ください」なんて園芸店でたずねたら──驚かれてしまいますよ! バラを種から育てるというのは、それくらい非常識なことなのです。

 

バラを種から育てるのはどんな人?

▲ミニバラの盆栽

外的に、バラを種から育てる人もいます。最初に書いたように、バラは突然変異を起こしやすく、交配もしやすい植物なので、これを利用してこれまでにない新しい品種を創ろうという人です。「育種家」と呼ばれるバラのプロです。ほとんどが大きな園芸店に所属している方なのですが、アマチュア育種家も存在します。

 

バラの台木に利用されるノイバラが大量に必要な、バラ苗の生産農家が、種から台木用のバラを育てているという記事も見かけたことがあります。でも、実際は多くの生産農家では挿し木で増やしているそうです。

 

バラのなかでもミニバラは盆栽に利用されることがあります。枝ぶりを重要視する盆栽の世界では、小さいうちから好みの枝に仕立てるために、ミニバラを種から育てることがあると聞いたことがあります。

 

育種家」と「生産農家」と「盆栽」。いずれも一般の園芸家、ましてやバラの初心者からは遠い存在です。

 

レインボーローズの種???

こからは、やや脱線した話題になってしまうのですが。

 

わたしはお店でバラの種が売られているところを見たことがありません。でも、何でもネットで手に入る現代です。もしかしたらバラの種が販売されているんだろうか? そう思って調べてみました。

 

すると、とあるサイトで「レインボーローズの種」を販売していた痕跡を見つけました。

 

レインボーローズとは・・・。

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感想(20件)

インボーローズは、白バラの枝の先から数色のインクを吸わせることで花びらを虹のようにさまざまな色に色分けして染めたバラです。もとはオランダで作られていたバラですが、現在では日本でも作られているようです。人工的に着色された造花ですが生花です。とても瑞々しくてきれいですね!

 

レインボーローズが咲く種が販売されていた!?

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rroses 015 / IrisDragon

インボーローズは白バラに人工的に着色して作られた造花のバラです。それが着色せずに自然に咲くとは──?

 

かつてレインボーローズの種を販売していたサイトは、現在もう取り扱いをしていませんが、いったいどんなものを販売していたのか? 気になります。実際に購入した方の口コミによると、発芽しなかったそうです。

 

わたしは実物を見たわけでも購入したわけでもありませんが、「レインボーローズが咲くバラの種なんてない!」と断言します!だって、「レインボーローズ」は造花なんですから!

 

▼レインボーローズの種についてくわしくは、こちらをご覧ください。

 

 

まとめ

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初心者向けのバラの育て方を載せているサイトに「バラは市販の種を購入して種まきします」と書いてあるのが気になったので、少し調べてみました。記事を書いたライターさん、いったい何を見てこう書かれたのでしょうね。初心者さんが頭を悩ませてしまわないように、はっきり言います。

 

バラの種は99%の確率で市販されていません!

 

そして、バラを種から栽培するのは一般的でもなければ初心者向きでもありません!

 

プロまたは栽培経験豊富な好事家が手を出すジャンルです。

 

初心者は、バラの苗または鉢花を購入して育てましょう!

 

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