バラ栽培に有効だと聞く「ニームオイル」。はたして「ニーム」はどんな効果があるのか?どう使うのが正しいのか?今回はバラ栽培での「ニーム」の全体像が把握しやすい内容になっています。


バラ栽培での「ニームオイル」の効果やその仕組み、役割についての基本を知ろう!

▲ニームオイルにもさまざまな商品が

ームオイルは、バラや野菜の害虫対策・減農薬栽培でよく語られる資材のひとつです。しかし、「効かない」「よく分からない」という声があるのも事実です。

 

この記事では、「ニームオイル」の基本的な性質と役割・どんな場面で活きるのかを、初心者〜中級者向けに丁寧にまとめました。

 

そもそも「ニーム」とは? なぜ注目されたのか?

▲ニーム(インドセンダン)の木

ームは、学名 Azadirachta indica の常緑高木で、インドや南アジアで古くから暮らしに利用されてきた植物です。

 

5000年以上の歴史をもち世界最古の伝統医学と言われる「アーユルヴェーダ」では「体を浄化する」植物として使われてきました。たとえばニキビや湿疹を「ニーム」の葉を煮出した水で洗ったり、ペーストにして塗ったり、「ニーム」の枝を歯ブラシとして使うことで口腔ケアに役立てたり。これらの習慣は、一部地域で現代でも残っています。さらに穀物貯蔵庫に「ニーム」の葉を入れたり、家畜小屋に枝を吊るして害虫除けに使われたりしました。

 

日本での漢方薬のように「ニーム」は、体と環境のバランスを整える植物として生活のなかで長く利用されてきた歴史があるのです。

 

農業分野でも「ニーム」を利用できるのでは? と、その防虫効果が世界的に注目を集めるのは1960~1970年代に入ってからです。

 

アフリカで大規模なバッタの食害(蝗害)が起きたさい、「ニーム」の木やその周辺の被害が比較的軽かったという現地の経験に着目したドイツの昆虫学者の証言から科学的調査が行われ、「ニーム」には「アザディラクチン」という害虫防除に有効な成分が含まれることが分かったことがその発端です。

 

「ニームオイル」が害虫に効く仕組み

▲バラの大敵「クシヒゲハバチ」の幼虫

ームオイルは「ニーム」の種子から採れる天然のオイルで、ニンニクのような独特の臭みをもちます。「ニームオイル」の主な効果は、根本的に虫を一撃で退治するのではなく、虫の「生活活動」に影響を与えることです。主につぎの3つの作用があげられます。1、摂食抑制 2、成長・脱皮の阻害 3、忌避作用。

 

1、摂食抑制

害虫が食べ物をあまり食べなくなり、結果的に餓死に至らせます。ただし大型の害虫には効果がなく、幼年齢の害虫なら1週間程度で駆除できます。実際、上記の写真にある1.5cmていどのクシヒゲハバチの幼虫なら1週間ていどで体が黄色くなり枝から落ちました。しかし2cmを越えると効果はありませんでした。

 

2、成長・脱皮の阻害

害虫の成長や脱皮を阻害するので、成虫になれず次世代の害虫が増えるのを防ぎます。

 

3、忌避作用

独特の臭いから昆虫を寄せ付けにくくなります。その結果、バラに産卵されるリスクを軽減します。

 

これらは「ニームオイル」に含まれるアザディラクチンなどの成分が、虫の体内で成長ホルモンや行動に干渉し乱すためです。つまり、ニームは虫の増え方を鈍らせる資材として働きます。

 

一般的な農薬と「ニームオイル」の違いは?

▲農薬には農薬の、ニームにはニームの得意分野がある

般的な農薬と「ニームオイル」を比較すると、その効果はまったく異なるのが分かります。両者の簡単な比較表を作ってみました。

 

  農薬 ニームオイル
害虫駆除の効果 短時間で害虫を駆除する 殺虫成分は穏やか
薬効の残留性 残留時間が長い 短時間で分解する
特性 速効性が強い 環境に残留しにくい

 

農薬が短時間で確実に害虫駆除できるのに対して、「ニームオイル」は殺虫成分が弱いうえに紫外線や雨などで比較的短期間で分解するためすぐに効果を失いがちです。

 

これが「ニームオイルは効かない」と言われる理由ですが、同時に「人や環境に優しく安全性が高い」と評価される根拠ともなっています。

 

「ニームオイル」が効く害虫と効かない害虫。病気にも効く?

アブラムシ

▲アブラムシは「ニームオイル」が効きやすい害虫

ラにつく害虫のうち、「ニームオイル」が効果を発揮しやすいのはアブラムシ、コナジラミ、ハダニなどの、体が柔らかい小さい害虫です。これらは、昆虫のホルモンや成長を乱す作用が効きやすいタイプの害虫だからです。ただし、塊になって大量発生している状態ではその効果を実感することはできません。理由は後で説明します。

 

チュウレンジバチ、クシヒゲハバチ、ヨトウムシなどもバラによくつく害虫ですが、これらは「ニームオイル」の効果がないと言われています。しかしわたしの実感としては、ごく小さいうちならある程度効果があると思っています。しかし2cmを越えるくらいのサイズになるとまったく効果は感じられませんでした。

 

「ニームオイル」は病気にも効くと言われますが、じつは殺菌効果はありません。これは、「ニーム」の油分が葉を覆うことで黒星病、ウドンコ病などの発症をある程度抑える働きが期待できるというもので、病気を治療する効果ではありません。予防や拡大を抑える補助として考えましょう。

 

なぜ「ニームオイル」は効かないと感じる人が多いのか?

▲害虫の大量発生には効果が追いつかない!

ラ栽培で「ニームオイル」が話題にのぼる反面「ニームオイルは効かない」という声もよく耳にします。その理由は、いくつか考えられます。

 

1、農薬同等の速効性や害虫駆除力がない

上記の比較記事からも分かるとおり、「ニームオイル」は即効性がなく、効果も穏やかなため、散布直後でも害虫の姿がいなくなりません。「ニームオイル」は害虫の繁殖サイクルに影響するもので、じょじょに数を減らすことはできても、すぐにその効果を実感しにくい資材だといえます。

 

2、残効が短い

農薬に比べて薬効が残る期間も短く、紫外線にさらされると最短数時間~2日ていどで分解され無毒化してしまいます。ただし、紫外線の影響が少ない葉裏を中心に散布するなどの工夫で残効期間を延ばすことが可能です。

 

3、大発生には効果が追いつかない

塊状に大量発生した害虫や、食害スピードの速い害虫には薬効が追いつかず対処できません。そのため「ニームオイル」を散布しているのに葉が穴だらけになってしまったという結果になりやすいです。

 

これらは「ニームオイル」の特性上しかたがありません。「ニームオイル」の効果を引き出すには、その特性を理解し、農薬とは違ったアプローチで使う工夫が重要です。これについても後述します。

 

「ニームオイル」が、安全性が高いと言われる理由は?

▲子どもがいる家庭なら安全性は重要

に小さい子どもがいたり、ペットがいたり、我が家のようにお隣とベランダが隣接している集合住宅だったり、バラのすぐ近くで野菜を育てていたり・・・さまざまな理由から農薬を使いたくない人は多いでしょう。このためアマチュアの園芸家には、バラ栽培に限らず安全性の高い資材が求められているという現状があります。

 

「ニームオイル」は紫外線で分解されやすく、雨でも流れて残留性が低いので、子どもやペットがいる家庭でも比較的安心して使うことができます。散布後、1~2時間置いてから庭に出るようにすれば、さらに安全です。

 

「ニームオイル」は短時間で効果を失うという特性をもつので、収穫当日の野菜にかけても大丈夫なくらい安全性の高い資材です。そもそも「ニーム」の葉を乾燥させた「ニーム茶」が存在するくらい、「ニーム」は安全性の高いものです。たとえばバラの近くで野菜を育てていても、「ニームオイル」ならかかっても安心です。

 

「ニームオイル」は、ほぼ葉を食害する害虫のみに効果を発揮するので、ミツバチ(花の蜜を集める)やテントウムシ(アブラムシなどの昆虫を食べる)などの益虫への影響が比較的少ないところも評価されています。

 

使い方を失敗すると、バラが葉焼けする原因にも!

ニームオイルで茶色くなったバラの葉

▲夏の高温期に使うと葉焼けするリスクもある

ームオイルは油です。そのため、高温時期に使うと葉焼けを引き起こしてしまいます。夏に使うと上の写真のように、バラの葉を枯らしてしまう原因になります。

 

気温25度を上回るときには使用しない、朝夕の涼しい時間帯に散布する、新芽や蕾などとくにデリケートな部位には使用しないなどを念頭に、注意して使う必要があります。一度葉焼けしたバラの葉は、元に戻ることはありません。デメリットもしっかり押さえておきましょう。

 

「ニームオイル」を使うさいに考えたい、農薬とは違ったアプローチとは? 環境を整え、バラの減農薬栽培に役立てよう!

▲「ニームオイル」はバラの生育環境を整える資材

こまで見てきたように、「ニームオイル」と一般の農薬はまったく異なった特性をもちます。一般の農薬は、発生してしまった害虫を速攻で駆除するのが得意です。一方「ニームオイル」は、独特の臭いで害虫の飛来数を抑え、たとえ害虫が発生してしまっても増えすぎるのを抑制し、バラの育つ環境を穏やかに整えることで健やかな生長を促すのが得意です。

 

「ニームオイル」を定期的に散布する(4日~1週間間隔をオススメ)ことで、害虫が寄り付きにくい環境をつくり、大発生する前に食い止めることができ、結果として減農薬でバラを育てることが可能になります。

 

けっして「ニームオイル」は万能薬ではありません。これだけでバラの無農薬栽培ができるような魔法のスプレーではありませんが、特性を理解して使うことで、バラの減農薬栽培に役立てることができる面白い資材です。

 

まとめ

今回は「ニームオイル」の全体像について紹介しました。「ニームオイル」は農薬ではありません。ニームという樹木の種子から採れる油を利用した天然の防虫資材です。

 

天然資材のため、農薬のような速効性も劇的な効果もありません。「ニームオイル」の得意分野は害虫の「駆除」ではなくて「予防」や「栽培環境を整える」から結果的に害虫を減らすことです。「ニームオイル」だけでバラの無農薬栽培はムリですが、適切に使うことでバラの減農薬栽培に役立てられます。

 

実際わたしも「ニームオイル」を定期的に散布することで、害虫被害が以前よりずいぶん減ったと実感しています。ほかの資材も併用しながら、本当にいつかバラの無農薬栽培ができるんじゃないか? そんなことを夢見て減農薬栽培にチャレンジしています。

 

次の記事では「ニームオイル」の実際の使い方やコツ、注意点などについて、体験を交えて具体的に紹介します。お楽しみに^^

 

 

【バラ栽培いつか無農薬】の記事は記事数が増えるまで、一旦、下記の「病虫害対策」のコーナーに置いてあります。

 

▼バラの病虫害対策と農薬の記事はこちらからご覧ください

 

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