夏のバラは「摘蕾した方がいい」と言われる一方で、「咲かせても大丈夫」という意見もあって、迷ってしまいますよね。
実は、どちらも間違いではありません。大切なのは、咲かせる・咲かせないではなく、その株に花を咲かせる体力があるかどうかです。
この記事では、株の体力や育てる環境をもとに、「あなたのバラならどう判断するか」が分かるように、理由から分かりやすく解説します。
バラの夏の花、咲かせる?摘蕾する?
▲猛暑の8月についたバラの蕾
四季咲きバラは、温度さえあれば年に何度も花を咲かせる性質をもっています。真冬でも、温室ならちゃんと咲きます。もちろん夏も咲きます。
バラは5月に咲く花を1番花、その後6月下旬~7月上旬に咲く花を2番花といいます。バラの夏花は、主に3番花以降の、7~8月に咲く花をさします。
この夏花の蕾は「摘みましょう」と言われることが多いです。
一方で、「咲かせても大丈夫」という方もいます。
いったいどうすればいいの?と、悩んでしまいますよね。
・夏花の蕾は摘みましょうと言われるのはナゼか?
・夏の花を咲かせたら株が弱るのか?
・どれくらいなら咲かせても大丈夫なのか?
・どんな状態なら咲かせてはいけないのか?
この記事では、夏花にまつわるさまざまな疑問に答えます。
さらに、咲かせる、咲かせないの判断が自分でできるようになることを目指して、その理由を初心者さんにも分かりやすくしっかり解説します。
結論|理論上は摘蕾した方が株は育ちます
株を育てたいなら摘蕾した方が有利
▲夏花の蕾は摘むのが従来のセオリー
バラは、花を咲かせるためにたくさんのエネルギーを使います。
蕾を摘むことで、花を咲かせるエネルギーを、枝葉や根の生長に振り分けることができます。
つまり、
株を育てたいなら摘蕾した方が有利。
これは昔から言われている基本です。
新苗でもハッキリと生長に差がつく
新苗を育てるときに「秋まで蕾を摘み続けましょう」と言われるのも、このためです。
新苗が売り出される5月以降、病気や害虫の多い梅雨、猛暑の夏と、幼苗には厳しい季節が続きます。最初は株を育てる方を優先させたいので、花を咲かせるエネルギーを節約して、枝や根の生長に振り分けましょうと教えているのです。
花を咲かせながら育てると、花にエネルギーを取られる分、生長はゆっくりになります。
新苗の比較栽培でもハッキリ差が出ています。
→写真準備中
摘蕾した方が夏越ししやすい
新苗以外の夏花も同じです。
夏はバラにとって過ごしにくい季節なので、調子を崩さず健康なまま乗り気ってもらうために、大きなエネルギーを消費する花は咲かせない方が夏越しに有利です。
つまり、
夏花を摘蕾した方が、夏越ししやすい。
と、いえます。
これが従来の考え方です。
夏花は「株の体力」で判断します
つまり、株を健康に育てたいなら、夏花は摘蕾した方が良い。これは、昔から言われている基本であり、今でも間違いではありません。
ただし、夏花を1輪でも咲かせたら株が弱るという意味ではありません。
実際には
・地植えの大きな株
・日当たりが良く健康な株
・十分な管理ができている株
こんな株なら夏花を咲かせても大きな問題になりにくいです。
つまり、「夏花を咲かせるかどうか」ではなく、「その株に花を咲かせる体力があるかどうか」が本当の判断基準なのです。
この記事では、その考え方を初心者の方にも分かるように、順番に説明していきます。
でも、「咲かせても大丈夫」という人がいる理由
プロやベテランの方が「咲かせても大丈夫」って言ってる動画を見たことがあるけど・・・。
そう思った方もいるかも知れません。
それは間違いではありません。
でも、環境や腕次第という前提条件ありきな側面が強いです。
つまり、良い環境で、状態の良い株で、しかもよい腕をもっているなら「咲かせても大丈夫」なのです。
とくに初心者さんの場合、適切な管理ができるかどうか未知数ですよね。そんな場合は、夏花を咲かせるのはリスクが大きいので、蕾のうちに摘むことをオススメします。
夏花を咲かせない方がバラが調子を崩しにくく、夏越ししやすくなるからです。
夏花を咲かせたら必ず弱るとか、枯れるとか、そういうことではありません。あくまでも「リスクが上がる」ということです。
環境も腕もそろっているなら、咲かせても大丈夫なことが多いと思います。
逆にいえば、その条件がそろっていない初心者さんほど、摘蕾した方が失敗しにくくなります。
同じ花1輪でも、株によって負担はまったく違います
▲1.5cm伸びて咲き始めた8月のバラ
基本は、夏は咲かせない方がいいというのも分かった。プロと初心者ではリスクが違うというのも分かった。でも咲かせたい!
バラは咲くのを楽しみに育てているのだから、せっかく蕾が上がるならゼヒ咲かせたいと思う方は、とても多いです。とくに夏は、ほんとうに次からつぎへと蕾が上がります。
上の写真のように、ほんの1.5cm枝が伸びただけで咲くこともあるのだから、夏花の回転は本当に早いです。こんな蕾を毎日のように摘みながら、いったい何のためにバラを育てているのか、悲しくなることもあるでしょう。
ここからは、ただ闇雲に咲かせてはダメというのではなく、どんな株なら、どのていど咲かせても大丈夫かを考えていきます。
まずは、環境や株の状態による体力の違いから説明しましょう。
バラそれぞれのもつ体力や、得られるエネルギーを考えてみよう
この「体力」は植物学の用語ではありません。初心者さんにもイメージしやすいよう、株が持っている余力を「体力」と表現しています。
地植えか、鉢植えか、成木か、幼苗か、健康か、弱っているか、さらに日向で育てているか、半日陰で育てているか・・・。バラの株は環境により状態により、貯えている体力も、得られるエネルギーもまったく違います。
そのため、同じ花一つを咲かせる負担も、株により全然違ってきます。
株により、どれくらい負担が違うかを、分かりやすいイメージで表にしました。
花1輪を咲かせるために使う体力を20とした環境別の負担表
| バラの環境と状態 | 基礎体力 | 1輪咲かせた後の体力 |
| 地植えの成木(日向) | 3oo | 280 |
| 鉢植えの成木(日向) | 100 | 80 |
| 鉢植えの新苗(日向) | 70 | 50 |
| 鉢植えの半日陰の成木 | 50 | 30 |
| 鉢植えの半日陰の弱った株 | 30 | 10 |
※体力や数値はあくまでもイメージです。 実際に300や30という数字があるわけではありません。
基礎体力の高い地植えの成木なら1輪の花を咲かせても、まだ体力が280残っています。
一方、基礎体力が30しかない半日陰の弱った株だと、1輪の花を咲かせた後の体力は、なんと10しかありません。
同じ1輪の花でも、健康な庭植えの成木と、半日陰で弱った鉢植えでは、株への負担がこれだけ違うのです。
そして、エネルギーを得られる量も異なります。
これも、イメージしやすいように表にしました。
| バラの環境と状態 | 得られるエネルギー量/1日 |
| 地植えの成木(日向) | +50/1日 |
| 鉢植えの成木(日向) | +30/1日 |
| 鉢植えの新苗(日向) | +20/1日 |
| 鉢植えの半日陰の成木 | +20/1日 |
| 鉢植えの半日陰の弱った株 | +5/1日 |
※数値はあくまでもイメージです。 実際に50や5という数字があるわけではありません。
地植えの成木(日向)は、根域が広く、葉もたくさん茂っています。そのため、葉の光合成も活発で、根からの水分や養分の吸い上げも盛んです。
鉢植えの成木(日向)の場合は、根域が狭くなるので木の大きさも制限されます。このため、どうしても地植えほどのエネルギー量を得られません。
順に、鉢植えの新苗(日向)、鉢植えの半日陰の成木、鉢植えの半日陰の弱った株と得られるエネルギー量が減っていきます。
家計に例えると、株ごとの違いが分かる
バラの体力と毎日得られるエネルギーの関係は、家計で考えると分かりやすいと思います。
体力は貯金、得られるエネルギーは給料です。
日向にある地植えの成木なら、もともとの体力が多い上に、花を咲かせても、毎日たくさんのエネルギーが得られるので、あまり大きな問題になりません。
家計で言い換えると、貯金が多いうえに給料も高いので、収支がプラスになりやすいということです。
ところが、半日陰にある鉢植えの弱った株の場合、もともとの体力がない上に、花を咲かせてガッツリエネルギーが減った後も、毎日得られるエネルギーが少ないので、なかなか回復できません。
こちらは貯金が少ないうえに給料が低いので、収支がトントンもしくは微増止まりです。
ちょっと水切れや根傷み、病気や害虫で葉を落とすことがあれば、簡単にマイナス収支になってしまいます。
どんな環境でどんな株だと、相対的にリスクが低いのか、逆にリスクが高くなるのか、家計の収支でイメージできたかと思います。
こんな株なら夏花を咲かせても大丈夫
基礎体力の高い健康な株
▲真夏に群れ咲く地植えバラ
ここまで説明してきたとおり、日向にある地植えの健康な成木なら、これ以上株を大きくする必要もないし、調子を崩すリスクも低いので、比較的気軽に夏花を咲かせて楽しめます。
しかし、鉢植えの場合は基礎体力が低く、1日に得られるエネルギー量も少ないので、
状況に応じて半分または1/3と蕾を減らして咲かせた方がリスクが低く、安全に楽しめそうです。
夏も観賞価値の高い花が咲く株
▲観賞価値の低い花しか咲かない株もある
多くのバラは夏の暑さが苦手で、肥料不足や強い日差しの影響もあり、観賞価値の低い花しか咲かせられない株もあります。
この株の夏花はどうなるか? 一度咲かせてみて、どうなるかをそれぞれに判断するといいと思います。
上の写真のように、本来は中大輪の八重咲き品種なのに一重咲きで小輪になり、しかも日焼けでカラカラになってしまうなら。
こういう花しか咲かないのなら、ムリして咲かせず摘蕾した方が株のエネルギーを温存し、夏越ししやすい管理になります。
▲なるべく早いめに摘んで室内で楽しもう
夏も比較的美しい花が楽しめる株の場合は、なるべく早く、6分咲きくらいで摘んで室内に飾って楽しみましょう。
早いめにカットすることで、株にかかる負担を減らすことができます。
こんな株は摘蕾がおすすめです
逆に摘蕾した方が良い株はこんなバラです。
・株の生長を優先したい新苗
・弱った株
・病気や害虫被害で葉を落としてしまった株
・半日陰などあまり環境の良くない場所で育てている株
これらは基礎体力が低く、しかもエネルギーを得にくい株です。
花を咲かせることが大きなリスクにつながりやすいので、摘蕾して、トラブルなく夏越しする方にエネルギーを使ってもらいましょう。
瀕死の株でも蕾を上げることがある
▲春からずっと調子の悪い株
たとえば上の写真のように、ずっと調子の悪い株でも、ポツリと蕾をあげることがあります。
この株は新芽が少し伸びても、すぐに黒く枯れてしまう状態がずっと続いています。暑くなるにつれ、黄色くなる葉も増えてきました。土の乾きも遅く、根になにか異常があるのかもしれません。
いつ枯れてもおかしくないような状態です。
▲小さな蕾がついた
こんな状態でも、蕾を上げることがあります。
蕾がつくのだから、これはもう元気になった証拠だと思い込んでしまう方が多いのですが、これを咲かせるのは危険です。
近年の新しいバラは、ほんとうに蕾をつけやすい品種が多く、調子よく健康に育っている間はいいのですが、瀕死でも蕾をつけてしまうことがあります。
株の状態を冷静に見て、咲かせた方がいいのか、咲かせない方がいいのか、慎重に判断しましょう。
わたしは、この蕾は摘み取ります。
今は花を咲かせるより、株を立て直す方に少ないエネルギーを使ってほしいからです。
夏花は次々咲いて楽しい。でも、わたしは少し後悔しています
▲夏花をたっぷり咲かせて窓辺に
数年前のこと。あまりに頻繁に上がってくる夏花の蕾を摘むのがもったいなく感じてしまい、夏の間じゅう咲いたら切り戻すを繰り返したことがあります。
その夏はほんとうに楽しかったです。
テーブルにも窓辺にも、いつも色鮮やかなバラが絶えませんでした。
▲毎朝咲いた花を摘んでテーブルに
毎朝、ベランダのバラを巡って咲き始めた花を摘んで花瓶に飾ります。
夏はとにかく花のサイクルが早く、切り戻しても短期間に次からつぎへと蕾が上がり花を咲かせます。
夏花さいこー♪と、夏じゅう楽しんだ次の年・・・。
▲夏花を咲かせた年から数年たっても弱ったまま
生長が悪くなった株がいくつもありました。
上の写真の株はとくにひどく、新しい良い枝が育たず、細い貧弱な枝しか伸ばせません。
もちろん、夏花を咲かせただけが原因ではないかもしれません。でも、弱った原因のひとつは夏花だったろうと思うのです。
それ以来、夏花をすべて咲かせるようなムチャはやめました。わたしは楽しかったけれど、やはりバラには負担になったのです。
なにより我が家は半日陰の鉢栽培です。根域が狭く、日照も少ないのだから得られるエネルギーが少ない環境です。
冷静に自重すべきだったと反省しています。
コラム│寒冷地では考え方が変わります
▲長野県「しんわの丘ローズガーデン」6月末の様子
書籍でもネットでも、基本的に関東以西の温暖な地域を念頭にバラの育て方が書かれます。今回わたしが書いた「夏花は、株を育てたいなら咲かせない方が良い」というのも、関東以西の地域を念頭にしています。
しかし、日本のなかでも信州や東北、北海道など、寒冷地では考え方が変わります。
上の写真は、長野県にある「しんわの丘ローズガーデン」で6月末に撮影した様子です。1番花がちょうど見ごろで、これから咲く蕾も大量にありました。
関東ではとっくに1番花が終わり、そろそろ2番花が咲こうかという時期です。これだけ開花期に差があるのですね。
寒冷地では、夏も比較的暑さがゆるく、夜温がしっかり下がる環境のため、夏花を楽しみやすい環境です。7月初旬に1番花が終わったら、おそらく2番花は8月になるでしょう。
とくべつに猛暑の夏でない限り、寒冷地なら夏の間も咲かせて大丈夫なことが多いです。
まとめ│株の状態と相談しながら、咲かせる花数を調整しよう
バラの夏花を「咲かせてもいいか」「摘蕾すべきか」。この答は単純にYES・NOで決められるものではありません。
バラが育つ環境が地植えか、鉢栽培か、株の状態は健康か、弱っているか、さらに日向で育てているか、半日陰で育てているか。地域の気候によっても。それぞれの株により考え方は変わります。
健康な地植えの大株なら咲かせても問題ないことが多いし、半日陰の弱った株なら咲かせない方が良いのは確かです。その中間は、半分咲かせるとか、ポツリポツリと1~2輪咲かせるなら大丈夫とか、それぞれの判断が必要です。
今回は、分かりやすいように架空の数字を使ってバラの体力や収支を説明しました。
あなたのバラの体力や収支を良く考えて、どのていど咲かせようか決めてください。株の体力に見合った花数で咲かせましょう。
夏のバラ管理については、こちらをご覧ください
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