世界じゅうの面白い情報を集めるサイト「カラパイア」で、トルコの一部地方だけに咲く炭のように真っ黒なバラの画像が紹介され、拡散されています! でも、じつはこれ、デマなのです! ストップ拡散! だまされないで~~!
カラパイアの元ネタは、こちら
http://karapaia.livedoor.biz/
そもそもカラパイアにトルコの黒バラが紹介されたのは2013年12月13日の記事。まずは、その概要を紹介しましょう。
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トルコのシャンルウルファ県ハルフェティには、ここにのみ生息している固有の黒バラがあります。このバラは、写真のように真っ黒です。どうしてこんな色になったかというと、ユーフラテス川特有の土壌の影響を受けているからです。
このように黒くなるのは夏の花だけで、春や秋の花は赤みが強くなります。しかしこの黒バラ、環境変化などの影響を受けて絶滅の危機に瀕しています。ハルフェティの自治体ではこれを守る活動が行われています。
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この記事に添えられた写真が上記の漆黒のバラの写真です。カラパイアのこの写真があまりに印象的だったせいでしょう。なんとこの記事に寄せられたコメントは130件。
「黒薔薇…架空の物だとおもってた」
「黒百合とか言っても本当に黒い花はないんだよってことだったが真っ黒じゃん!是非ほんものを見てみたいな」
「園芸種の黒バラが霞んでしまいそうなくらい真っ黒だ!バラ育ててる人でも知らない人いるんじゃないかな」
「初めて見ました。黒バラって本当に有るんだ・・・びっくり@@;」
これを受けて、「ロケットニュース」や「NAVERまとめ」などいくつもの有名サイトがトルコの黒バラを取り上げ「奇跡のバラ」「黒い宝石」「絶滅が危惧されている希少な花」「愛好家にはバラの王者と呼ばれている!」と、大絶賛しています。
でも、わたしあいびーの感想は、写真みた瞬間「うっそぉ~!」でした。
バラ界の常識「黒バラとは?」
Rose Black Baccara バラ ブラック バカラ / T.Kiya
バラの世界を少しでもかじった人なら知っていることですが。「黒バラ」とは、バラ界でいえば「漆黒のバラ」ではなく「黒みの強い濃い赤バラ」をさします。代表的な黒バラの品種に「ブラック・バカラ」「パパ・メイアン」「ルイ14世」などがあげられます。
黒ユリ、黒いチューリップなど、黒い花はいろいろありますが、例外なく「黒みの強い濃い赤」で、いわゆる「漆黒」の花をわたしは見たことがありません。そして黒い花は、花だけに限らずアントシアニン色素が濃いため、葉や茎も濃い色だったり赤みを帯びていたりします。どうもカラパイアに載せられている写真には違和感を覚えます。
もちろん、わたしはそう深い知識をもっているわけではなく、トルコの限られた地方のバラのことなんて知らないわけですが、直感的に「うさんくさいな~」と思えてしまいました。
米国のデマ検証サイトが「デマ!」と公表
アメリカのデマ検証サイト「Snopes.com」は、2016年5月27日付けでこのカラパイアの記事を取り上げ、「FALSE」つまり「偽情報」であると報じました。その理由として、カラパイアが情報ソースとしているトルコの新聞「Zaman」のネット版に掲載された記事を紹介しています。
Zaman / Via web.archive.org
ここに「ハルフェティの黒バラ」として載せられている写真は、どうみても「一般常識的な黒バラ」、つまり「黒みの強い濃い赤バラ」です。カラパイアが載せているような漆黒のバラではありません。バラは、つぼみがもっとも色が濃く、咲き進むにつれて色が明るくなるのが常識ですから、このつぼみが咲いても漆黒になるとは思えません。
もとは黒みの強い赤バラだった写真をデジタル加工して漆黒のバラにしている証拠写真も、加工前、加工後と並べて紹介されています。
カラパイアが追記で誤りを認め謝罪
「Snopes.com」が2016年5月に公表した記事を受けて、2016年10月2日付けでカラパイアは元記事に追記の形で「デマ」を認め、謝罪しています。
追記:2016/10/02
2016年5月27日のsnopesの記事によると、上記にあげた真っ黒い薔薇の写真はすべて加工されたもので真っ黒い薔薇というものは自然界には存在しないようだ。黒薔薇の記事を掲載するにあたっていくつかの海外サイトを調べたのだが、デマだったようだ。謹んでお詫び申し上げます。
どうやら、Zaman(トルコの新聞)のネット版に書かれていたハルフェティの黒バラの記事につける写真をネット上から拾う段階で、デジタル処理された炭のように真っ黒なバラの写真を拾ってきてしまったというのが真相のようです。
記事を書いたライターに、植物の知識があまりなかったのでしょう。
しかし「ハルフェティの黒バラ」は実在する!
▲代表的な黒バラのひとつ「ルイ14世」
真っ黒なバラの写真は、ハルフェティの黒バラの写真ではありません。自然界に漆黒のバラは存在しません。しかし、ハルフェティの黒バラ自体は実在するようです。Zamanのフランス語版では、次のように書かれているそうです。
イスタンブール大学のTurhan Baytop教授の研究によればこのバラは19世紀にフランスで作出された「ルイ14世」という品種が何らかの経緯で持ち込まれて生まれたのだという。
「なーんだ!」という感じですね。黒バラの代表品種ともいえる「ルイ14世」がハルフェティに持ち込まれて植えられているんですね。それをこの地方で育てると、黒みがより強く出るのでしょう。
さらに、漆黒の黒バラも実在する・・・。
▲レインボーローズの花束
花屋で不自然な色をした花を見たことはないでしょうか? たとえばこれは「レインボーローズ」と呼ばれるバラです。自然にこんなバラが咲くわけではなく、白バラに数種類のインクを吸わせることで人工的に色をつけたバラです。
同じ要領で、黒いインクを吸わせれば漆黒のバラが簡単に作れてしまいます! カラパイアが使用してしまった写真には、黒インクを吸わせて作った黒バラもあったのかもしれませんね。バラにインクで色をつける方法を知っている人なら騙されませんが、きっとあまり花のことを知らない人なら「本当にこんな真っ黒なバラが咲くのねー!」と思ってしまうでしょう。
情報は既に拡散済み!
カラパイアに最初の記事が掲載されたのが2013年。訂正記事を元記事に追記したのが2016年です。この3年の間に有名サイトや個人ブログさらにSNSと、さまざまな媒体を通じてこの情報は世界じゅうに拡散されています。いくら3年前の記事に訂正とお詫びを追記したとしても、わざわざそこを読みにくる人は稀なのではないでしょうか?
拡散された情報を元に、子引き孫引きした記事が毎日量産されていくのがネット社会です。自分も情報発信する側として、情報ソースの取り扱いには十分、気をつけなければと思いましたね。
漆黒のバラ作ってみた!
ちなみに、CG学科在籍ちゅうの娘のらなぴに依頼して、漆黒のバラ画像を作ってもらいました。パパ・メイアンの画像をもとに、ペイントソフトを使ってちゃちゃっと約10分で完成です! 黒い花びらとまわりを馴染ませるため、花びらの縁にうっすら緑色を載せ、微妙に赤も残しているそうです。いかにも実在しそうな出来で怖いです(^^;
そういえば、らなぴがCG学科に入学して最初の授業が「心霊写真を作ろう!」だったというのを思いだしました。今の時代、何でもできちゃいますよね・・・。
▼「パパ・メイアン」の元画像はこちらからご覧ください。
まとめ
カラパイアが2013年に発信したトルコの黒いバラの記事に載せられた漆黒のバラの写真が人気を呼び、ネット内に拡散されたものの、じつはそれは誤りだったということで謝罪と訂正が追記されるということが起こりました。
トルコに黒いバラを大切にしている地域があるのは事実ですが、そこに添えた漆黒のバラの写真は誤りだったのです。けれど、元ネタの子引き孫引きで漆黒のバラの情報は、画像つきで今もどんどん拡散され続けています。
天然の漆黒のバラはありません! が、画像処理ソフトでバラの花の色を操作することは簡単にできるし、インクを吸わせて漆黒のバラを人工的に作るのも簡単です。文章なんていくらでもでっちあげられるし、画像も信用ならないとなると、情報を受ける側は何を信じればいいんでしょうね!
今回はネット情報のもろさと怖さを実感しました。当サイトでは、実感を伴える情報だけを掲載していきたいと思います。それでも間違いはあるかも知れませんが・・・。
その画像の黒薔薇の種として現在ヤフオクで販売されているのをみました。
またその出品者はココナッツの種としてみかんの種のようなものも出品しておりだまされてはいけない気がしています。
きなこもちさん、コメントありがとうございます。
黒バラといっても、本当の黒バラは記事に書いた通り「黒みの強い濃い色の赤バラ」なんですよね。墨のように漆黒の黒バラはありません。「黒バラ」って響きがいいせいか、若い方を中心にとても人気があるようですが、ほとんどの方が漆黒の黒バラがあると誤解してるんですよね。そういう方を狙ったものなんでしょうね。「レインボーローズの種」っていうのもありまして。「レインボーローズ」っていうのは「造花」なので、造花が咲く種なんてあるはずないのに、知らずに購入してしまう人が多いようです。ひっかからないでね! ココナッツの実って、直径20cmとかあるイメージですが・・・いやココナッツについて造詣は深くないんですが・・・う~ん(^^;