白や青紫~濃い紫のすっきりとした花を咲かせるクレマチスは、近年とても人気の高い花です。少し分かりにくいところがあるクレマチスの種類や剪定のしかたなどを、図解を交えて詳しく紹介しています。人気品種も掲載しているので、品種選びの参考にしてください! もちろん育て方もありますよ。


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クレマチスは「つる植物の女王」!

レマチス(Clematis)という学名は、古典ギリシア語の「klema」(「つるの枝」の意味)からつけられました。クレマチスはその学名からして「つる植物の代表」なのですね。ヨーロッパでは古くから「つる植物の女王」と呼ばれています。

 

日本では4~7月ごろに花屋の店先で、行燈仕立てにしたクレマチスの鉢をよく見かけますね。初夏を彩る花として、すっかりおなじみです。

 

クレマチスの花言葉

レマチスの花言葉は「精神の美」「旅人の喜び」「策略」です。

 

「精神の美」という花言葉は、クレマチスのつるがとても細いのに似合わず大きな花を咲かせることに由来しています。苦境に絶えて美しく花開くというイメージでしょう。

 

「旅人の喜び」は、かつてヨーロッパでは宿屋の玄関にクレマチスを植えることが多かったことに由来しています。一夜の宿を求めて訪れた旅人が、ふとクレマチスの花に心癒されたことからつけられたのでしょう。

 

「策略」は、フランスの乞食の習慣に由来しています。クレマチスの葉の汁には接触毒があり、傷口にすりつけるとただれることから、かつてフランスの乞食たちは自分で腕などをただれさせ、より哀れに見せて物乞いをしていたようです。このことからフランスでは、クレマチスを「乞食草」の別名で呼ぶことがあります。

 

クレマチス=「カザグルマ」または「テッセン」ではない!

や青紫色の涼し気な花を咲かせるクレマチスは、日本人にはなじみの深い花です。クレマチスはキンポウゲ科、センニンソウ属の植物です。日本には「カザグルマ」「センニンソウ」「ハンショウヅル」など20種類ていどのクレマチスが自生しています。

 

クレマチス=「カザグルマ」または「テッセン」と勘違いしている方も多いようですが、正確には違います。

 

日本各地に自生しているクレマチスのひとつ「カザグルマ」は、白や紫色の8枚の花びらをもつ花径10cm以上の大きな一季咲きの花です。もうひとつ日本人におなじみの「テッセン」は、中国から渡来したクレマチスで、中国名は「鉄線蓮」といいます。こちらは白い6枚の花びらをもち、花の中央にはしべから変化した紫色の小さな花びらが盛り上がってついています。「テッセン」は1年に何度も花を咲かせる四季咲きの性質をもちます。

 

つまり「カザグルマ」も「テッセン」も、クレマチス属のうちのひとつの種にすぎないのです。

 

1836年、シーボルトが日本のクレマチスを西洋に紹介

▲中国原産のテッセンは四季咲き性をもつ

1836年、ドイツ人医師シーボルトは、日本で採取したたくさんの植物をヨーロッパに持ち込みましたが、そのなかに「カザグルマ」と「テッセン」がありました。さらに1850年にスコットランド出身の植物学者ロバート・フォーチュンが中国原産の「クレマチス・ラヌギノサ」をヨーロッパに紹介しました。「クレマチス・ラヌギノサ」は、花径が20cmもある大輪花です。

 

当時のヨーロッパにもクレマチスはありましたが、ベル型などの小輪の品種しかなく、「テッセン」と、「クレマチス・ラヌギノサ」を交配親とすることで、さまざまな大輪のクレマチスが作り出されました。

 

クレマチスはバラの最高のパートナー

▲クレマチスはバラの最高のパートナー

くからガーデニングが広く愛されてきたヨーロッパでは、クレマチスは「つる植物の女王」と呼ばれます。それくらい、庭に欠かせない植物としてクレマチスが愛されているのです。

 

「つる植物の女王」がクレマチスなら、花の女王は何かといえば、もちろん「バラ」です。

 

クレマチスにはバラにない青系の花色が揃っていること、さらに立体的に咲くバラとはまったく異なる平面的な花やつぼ型のユニークな形に咲きます。クレマチスとバラ、この対照的な花色や花形をもつ花をいっしょに組み合わせると、庭に豊かな表情を与えることから、ガーデニングやバラ愛好家の間でクレマチスが評判になったのです。

 

クレマチスはバラの最高のパートナーとして、庭に欠かせない花として、昔も今もガーデナーたちに愛される植物です。

 

クレマチスは性質から「旧枝咲き」「新旧両枝咲き」「新枝咲き」に分けられる

▲つぼ型の愛らしい花形。テキセンシス系のクレマチス

ラと相性の良いクレマチスですが、系統も多く、咲き方も何種類かあって、何だかイロイロ難しいイメージがある花です。

 

じつはわたしは、「適当にやりゃ大丈夫でしょ!」と、本当に適当に管理&剪定したら、見事に枯らしてしまったという苦い経験があります(^^; それから少しネット情報を集めたのですが、これがまぁややこしい! それで数年、クレマチスは分からないと、投げ出していたのですよね。

 

今回しっかり勉強して、ようやく分かりました。

 

クレマチスには「旧枝咲き」と「新枝咲き」があるのです。

 

そして、「旧枝咲き」のなかには一季咲き品種と四季咲き品種があり、通常は、一季咲き品種を「旧枝咲き」、四季咲き品種を「新旧両枝咲き」と呼び分けています。

 

それぞれの特徴と、管理のしかたを紹介しましょう。

 

「旧枝咲き」タイプは、2年目の枝から今年伸びた枝に花を咲かせる「一季咲き」のクレマチス

▲旧枝咲きの代表「モンタナ系」は、花びらの先がまるく優しい印象

枝咲きタイプは、その年に伸びた1年目の枝には花をつけず、2年目の古い枝から新しく伸びた枝に花をつける性質があります。(下の図を参照してください)。このため、古い枝を大切に維持しなければいけません

 

先の丸い4枚の花びらが優しい印象の「モンタナ系」が、「旧枝咲き」タイプの代表的なクレマチスです。「モンタナ系」は春のみの一季咲きです。

 

「モンタナ系」「冬咲き系」「アーマンディー系」「早咲き大輪系の一部の品種」が「旧枝咲き」タイプです。

 

「旧枝咲き」タイプの生長のしかたと剪定方法

▲茶色が去年伸びた古い枝(2年目の枝)、緑色が今年伸びた新しい枝

1、昨年伸びた2年目の枝の節から花芽が伸び、2~3節のところで花が咲きます。

 

2、花後は、花のすぐ下か、1節下のところで切ります。図は、1節下に切るための赤いラインを引いています。

 

3、その後、切ったすぐ下の節の芽が伸びてきて、つるが長く生長します。「旧枝咲き」タイプは一季咲きなので、あとはこのまま育てます。

 

「新旧両枝咲き」タイプは、「旧枝咲き」タイプのなかの「四季咲き」のクレマチス

▲新旧両枝咲きの「H.F.ヤング」(早咲き大輪系)は、クレマチスらしい涼し気な花

本は旧枝咲きと同じですが、花後に剪定すれば、またそこから伸びた枝の先に花を咲かせる「四季咲き性」をもったクレマチスが「新旧両枝咲き」タイプです。基本は旧枝咲きと同じですから、こちらも古い枝を大切に維持します。

 

「新旧両枝咲き」タイプのクレマチスは、剪定を繰り返すことで年に3回、多いときには4回も花を咲かせることができます。

 

初めてクレマチスを育てるかたにおすすめの早咲き大輪系の「H.F.ヤング」は「新旧両枝咲き」タイプの代表品種です。8枚の剣弁からなる花形と爽やかな花色が、これぞクレマチス! という印象ですね。

 

「フロリダ系」(テッセンの仲間)「早咲き大輪系の一部」「遅咲き大輪系の多く」「タングリカ系」が「新旧両枝咲き」タイプです。

 

「新旧両枝咲き」タイプの生長のしかたと剪定方法

▲茶色が古い枝、緑色が今年出た新しい枝

1、昨年伸びた2年目の枝の節から花芽が伸び、2~3節のところで花が咲きます。

 

2、花後は、真ん中ていどのところで切ります。切る位置が花に近ければ早く次の花(2番花)が咲きますが、花の大きさは小さくなります。切る位置が花から遠ければ次の花が咲くまで時間がかかりますが、大きな花が咲きます。

 

3、2番花が終わったらまた伸びた分の半分ていどのところで切っておくと、3番花が咲かせられます。

 

「新枝咲き」タイプは、今年伸びた枝に花を咲かせる「四季咲き」のクレマチス。つるバラに絡ませるならこのタイプを選んで!

▲新枝咲きの代表「ヴィチセラ系」

枝咲きは、今年、地面から顔を出して伸びてきた枝に花を咲かせるタイプです。根はずっと残りますが、地上部は1年で枯れてしまいます。

 

「旧枝咲き」タイプも「新旧両枝咲き」タイプも、どちらも古い枝を大切に残しておかなければいけませんが、「新枝咲き」タイプは、冬に地上部に残っている枝を短く切り詰めることができます毎冬に枝を誘引しなおすつるバラと一緒に咲かせるなら、「新枝咲き」タイプがもっとも扱いやすいクレマチスです。

 

「ヴィチセラ系」「テキセンシス系」「ヴィオルナ系」が、「新枝咲き」タイプです。

 

「新枝咲き」タイプの生長のしかたと剪定方法

▲茶色が古い枝、緑色が今年出た新しい枝

1、去年伸びた2年目の古い枝はほぼ枯れてしまい、その脇から伸びてきた新しい枝の先に花が咲きます。ただし、古い枝からも芽が出ることがあるので、1mくらい残して様子を見るとよいようです。

 

2、1番花の後、切り戻しをしておけば、切ったところのすぐ下にある芽が伸びてきて2番花を咲かせます。切り戻しの場所は、地面から1~3節目のところです。上の図は2節目のところまで切り戻しています。

 

3、2番花が終わったら、伸びた分の半分ていどのところで切っておくと、3番花が咲かせられます。

 

人気のクレマチス品種10選! 系統別にご紹介!

レマチスにはさまざまな品種がありますが、そのなかでも人気の高い品種を10種類、選んでご紹介します!

 

1、エリザベス(モンタナ系)旧枝咲き


クレマチス 『モンタナ・エリザベス』 モンタナ系 9cmポット苗

 

のまるい淡いピンク色の花びらで、とてもかわいらしい印象のクレマチスです。4~5月、株を覆うようにたくさんの花を咲かせます。甘いバニラの香りがある、モンタナ系の人気品種です。一季咲き。

 

2、フレーダ(モンタナ系)旧枝咲き


岐阜県東濃産【クレマチス属】モンタナ系フレーダ 3号ポット

ンタナ系のなかではもっとも濃いチェリー・レッド色の花を咲かせます。葉の色もモンタナ系のなかでは飛びぬけて濃く、赤みのある濃緑色です。香りも楽しめます。一季咲き。

 

3、ジョセフィーヌ(早咲き大輪系)新旧両枝咲き


クレマチスジョセフィーヌ4.5号サイズポット苗

径15cmほどのとても豪華な大輪の花を咲かせます。中央に集まった小さな花びらがじょじょに開いていく八重咲よりももっと花びら多く咲く万重咲きの花形も魅力的。花もちが抜群によく、1ヵ月近く楽しめます。5月~10月まで、くり返し咲く四季咲き。優しい色合いで、日本のみならず海外でも人気の高い品種です。

 

4、H.F.ヤング(早咲き大輪系)新旧両枝咲き


クレマチス 『H.F.ヤング』 ラヌギノーサ系(四季咲き大輪系) 9cmポット苗

かにもクレマチスらしい花径12~15cmの大輪の花をたくさん咲かせる品種です。咲き進むにつれじょじょに色が淡くなる様子も美しい。四季咲き性が強く、4番花までしっかり咲かせることができます。丈夫で育てやすく、初めてクレマチスを育てる方にぴったりです。花期は5~10月。花屋さんの店頭で見かけるのはこの品種が多いです。

 

5、ルージュ・カーディナル(遅咲き大輪系)新旧両枝咲き


10cmほどの輝くような紅色品種です。花芯の黄色との対比がとても美しい。イギリスの区分に従って「遅咲き大輪系」と表記されますが、日本での開花時期は通常のクレマチスと同じ5~10月です。四季咲き。

 

6、ヘンダーソニー(インテグリフォリア系)新枝咲き


クレマチス 『プチフォーコン(ニューヘンダーソニー)』 インテグリフォリア系 9cmポット苗

ンダーソニーは、ツルにならない草状のクレマチスです。草丈は0.2~0.4m。つる性ではなく木立性なので、宿根草のように扱えます。花径3~5cmの青花が、とても爽やかな印象の人気品種です。

 

7、エトワール・ヴィオレット(ヴィチセラ系)新枝咲き


岐阜県東濃産【クレマチス属】ヴィチセラ系エトワール・バイオレット 3号ポット

径6~8cmと、大輪系に比べれば小さな花ですが、小花の多い「新枝咲き」タイプのクレマチスのなかでは大きな花を咲かせます。花数が多く、四季咲き性で、しかも育てやすい品種。バラと組み合わせるにはぴったりなクレマチスです。

 

8、プリンセス・ダイアナ(テキセンシス系)新枝咲き


11月下旬発送 充実大株クレマチス プリンセスダイアナ テクセンシス系 2年生株 12cmポット地植えOK

付きよく育てやすい、もっとも人気のあるクレマチスのひとつです。花径は4~6cmと小ぶりですが、濃いピンク色の星のような花がよく目立ちます。株が充実してくると、古い枝からも芽を伸ばします。四季咲き。

 

9、白万重(フロリダ系)新旧両枝咲き


11月下旬発送 充実大株クレマチス 白万重 フロリダ系 2年生株 12cmポット地植えOK

中央から次々と花びらが展開して、やがて半球形になります。咲き始めは淡い緑色の花は、咲き終りには乳白色になり、とてもきれいです。花もちが良く、1ヵ月ほども美しいまま花を楽しめます。四季咲き。

 

10、カシス(フロリダ系)新旧両枝咲き


11月下旬発送 充実大株クレマチス カシス フロリダ系 2年生株 12cmポット地植えOK

径8~10cmの赤紫色の花びらには、全体に刷毛ではいたような白いかすり模様が入ります。「白万重」と同じように、中央からじょじょに花びらが展開して、やがて半球形になります。丈夫で育てやすい品種です。四季咲き。

 

クレマチスの基本的な育て方

クレマチスを育てる環境は?

レマチスは日当たりと風通しのよい場所を好みます。水はたっぷり必要ですが、水はけの悪い土だと根が痛みやすいので、適度な水はけも大事です。

 

クレマチスは庭植えでも、鉢植えでも育てられます。深植えにしたほうがよく芽が伸びるので、鉢は深さのあるタイプを選びましょう。

 

クレマチスを植えるときは深く植える!

レマチスは、1節くらい深く植えると、土に埋まっている節からも芽を出すことがあります。芽からたくさんの枝が伸び、株立ちになると、それだけ多くの花数が期待できます。

 

クレマチスの枝のほどきかたと誘引のしかた

 

レマチスは、上の図のように、葉を支えている軸(葉柄)が周囲のものに巻き付いて枝を支えながら伸びていきます。ほどくときには、枝を折らないよう注意しながら葉柄をほどいていきます。もしも枝がポキリと折れても、セロハンテープで巻いて補強しておけば、だいたい大丈夫です。

 

クレマチスは、バラと同じようにフェンスや家の壁、アーチ、オベリスクなどに誘引できます。ビニールタイなどで、間に1回ひねりを入れてゆるく留めつけておけば、葉柄が周りのものに巻き付いて、きちんと固定されます。

 

朝顔のように、枝自体を支柱に巻き付けないようにしてください!

 

「旧枝咲き」か「新旧両枝咲き」か「新枝咲き」か。タイプを見極めて剪定!

花後の切り戻しのしかた

花後の切り戻しは、「旧枝咲き」「新旧両枝咲き」「新枝咲き」で、それぞれ方法が異なります。上の方で紹介しているイラストを参考に、それぞれのクレマチスに合った方法で切り戻しをしてください。

 

冬の剪定のしかた

「旧枝咲き」タイプと「新旧両枝咲き」は、古い枝を大切に残します。枝先を少し切り戻すていどにします。

 

「新枝咲き」タイプは、地面から新しく生えてきた枝を大切にします。基本的に古い枝は地際からバッサリ剪定して大丈夫です。ただし、古い枝からも芽が出る場合もあるので、1mほど残して様子を見る方が賢明です。

 

肥料やりのしかた

クレマチスの肥料やりのタイミングは、バラとほぼ同じです。

 

12~1月/有機質肥料を1回

 

3月~花が咲くまで/即効性の液肥を1~2週間に1度

 

花後/緩効性の固形肥料を1回

 

真夏/「新枝咲き」タイプは即効性の液肥を1~2週間に1度。「新枝咲き」タイプ以外は一休み

 

9月~11月/緩効性の固形肥料を月1回ずつ

 

まとめ

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クレマチスの大まかな分類と人気品種、基本的な育て方をまとめて紹介しました。

 

クレマチスはとても変化に富む花形と、バラにはない青系の花色が魅力の植物です。クレマチスだけでも素敵ですが、つるバラを組み合わせるとその魅力は倍増です! ただし、つるバラと組み合わせるにはクレマチスの性質をよく理解して品種を選ばなければいけません。

 

「旧枝咲き」タイプのクレマチスは古い枝を大切に残して育てるので、冬につるバラを誘引しようとするとクレマチスの枝をほどくのがとても大変です。その点、「新枝咲き」タイプのクレマチスなら、冬に地際までばっさり切り詰めて構わないので、バラの誘引作業に差し支えません。つるバラと一緒に咲かせるなら、「新枝咲き」タイプの品種から選んでくださいね。

 

今回しっかり勉強してみて、わたしが以前、適当管理でクレマチスを枯らしてしまった理由が分かりました。どうやら「旧枝咲き」タイプのクレマチスを、冬にばっさり切り詰めてしまったせいだったようです。ちゃんと調べてから育てるべきでした。クレマチスに悪いことしちゃいました。次は失敗しませんよ!

 

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